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見窄
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みすぼ
ふりがな文庫
“
見窄
(
みすぼ
)” の例文
村の学校は、其頃まだ
見窄
(
みすぼ
)
らしい尋常科の単級で、外に補習科の生徒が六七人、先生も高島先生一人
限
(
き
)
りだつたので、教場も唯一つ。
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
見窄
(
みすぼ
)
らしい安居院の屋根には、疫病やみのやうな鴉が一羽とまつて、をりをり頓狂な聲を出してそこらをきよろきよろ見まはしてゐる。
飛鳥寺
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
前の晩に
悉皆
(
すつかり
)
荷造りして置いた
見窄
(
みすぼ
)
らしい持物を一臺の
俥
(
くるま
)
に積み、夜逃げするやうにこつそりと濃い朝霧に包まれて濕つた裏街を
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
『
然
(
さ
)
うねえ、も
少
(
すこ
)
し
大
(
おほ
)
きくなりたいの、
知
(
し
)
らず
識
(
し
)
らずの
中
(
うち
)
に』と
云
(
い
)
つて
愛
(
あい
)
ちやんは、『三
寸
(
ずん
)
ばかりぢや
見窄
(
みすぼ
)
らしくッて
不可
(
いけな
)
いわ』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
すると、學校から歸つた後の毎夜々々の長い時間を何もしないで持てあましてゐる自分の姿が
見窄
(
みすぼ
)
らしく目先にちらついた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
▼ もっと見る
下関の桟橋へ着いた七千
噸
(
トン
)
級の
関釜
(
かんぷ
)
連絡船、
楽浪丸
(
らくろうまる
)
の一等船室から一人の
見窄
(
みすぼ
)
らしい西洋人がヒョロヒョロと出て来た。
人間レコード
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
子供を
負
(
お
)
ぶった
見窄
(
みすぼ
)
らしい中年の男に亀井戸
玉
(
たま
)
の
井
(
い
)
までの道を聞かれ、それが電車でなく徒歩で行くのだと聞いて不審をいだき、同情してみたり
雑記帳より(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
今は、この
見窄
(
みすぼ
)
らしい薔薇が、どんな花をひらくか、それだけに、すべての希望をつながなければならぬ。無抵抗主義の成果、見るべし、である。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
恐
(
おそ
)
ろしく
潔癖
(
けつぺき
)
な
霜
(
しも
)
は
其
(
そ
)
の
見窄
(
みすぼ
)
らしい
草木
(
さうもく
)
の
葉
(
は
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
躪
(
にじ
)
りつけた。
人間
(
にんげん
)
の
手
(
て
)
を
藉
(
か
)
りたものは
田
(
た
)
でも
畑
(
はた
)
でも
人間
(
にんげん
)
の
手
(
て
)
を
藉
(
か
)
りて
到處
(
いたるところ
)
をからりとさせる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
銀座の
舗道
(
ほどう
)
から、足を踏みはずしてタッタ百メートルばかり行くと、そこに
吃驚
(
びっくり
)
するほどの
見窄
(
みすぼ
)
らしい門があった。
地獄街道
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その男は、
服装
(
みなり
)
から見ても人柄から見ても、高等
乞食
(
こじき
)
とでも称し得るような
型
(
タイプ
)
をそなえていた、すなわち非常な
見窄
(
みすぼ
)
らしさとともにまた非常な清潔さを。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私は気易いのびのびした心持で、
四辺
(
あたり
)
の
見窄
(
みすぼ
)
らしい石版画の額や、黄色くなった窓レースを眺め廻した。表道路に面した窓の外に素焼の植木鉢が投出してある。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
売れッ子の若い人気作者の
住居
(
すまい
)
とは思われない古風な
武者窓
(
むしゃまど
)
の付いた
頗
(
すこぶ
)
る
見窄
(
みすぼ
)
らしい陰気な長屋であった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「が、酒の
勢
(
いきおい
)
を借りて、と云うのが、打明けた処だろう——しかも今夜——頭から恐入らされたよ。」と、もう
一呼吸
(
ひといき
)
、帽子を深草、
蓑
(
みの
)
より
外套
(
がいとう
)
は
見窄
(
みすぼ
)
らしい。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雑貨店・雑穀屋・呉服店、小さな
見窄
(
みすぼ
)
らしいそれらの店の間に挟まって、一軒の薄汚い居酒屋があった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
それから歸りに、近くにゐる知人のところで油を賣つて、日暮時分にのそ/\歸つて來ると、
見窄
(
みすぼ
)
らしい住居の入口は、夕方はなほ更物淋しい。家の内はもう薄暗かつた。
胡瓜の種
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
道は追々と勾配を増すが、
間明野
(
まみょうの
)
を過ぎて
桑西
(
くわさい
)
に至る迄は迷うようなことは滅多にない。極めて寒村らしく想像される沿道の部落も、
見窄
(
みすぼ
)
らしい住居は余り見受けなかった。
初旅の大菩薩連嶺
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
小学生にでも着せるような袖の軽い着物を、風呂からあがって着け終わった時には、なんという
見窄
(
みすぼ
)
らしくも滑稽な姿になったものかと尾田は幾度も首を曲げて自分を見た。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
義男は自分の
見窄
(
みすぼ
)
らしさをからかつてゐる樣な女の態度に反感を持つて默つてゐた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
其の途端に袂の柿がころ/\と草原に轉がり出た。選りに選つて
見窄
(
みすぼ
)
らしい小ひさな柿なのを、獵師も意外に思ふ風で見てゐたが、更に文吾を捻ぢ伏せて、兩の袂から、懷中までを檢めた。
石川五右衛門の生立
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
それは彼の田舎の家の前を通っている街道に一つ
見窄
(
みすぼ
)
らしい商人宿があって、その二階の
手摺
(
てすり
)
の向こうに、よく朝など出立の前の
朝餉
(
あさげ
)
を食べていたりする旅人の姿が街道から見えるのだった。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
すると、自分の身分、自分の運命、自分の真価値が、到底、いま目前に悠然と寝そべっているこの男に対してはあまりに
見窄
(
みすぼ
)
らしい、比べものにならないものだという羞恥がこみあげて来た。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
家
(
うち
)
も
見窄
(
みすぼ
)
らしかったが、主人も
襟垢
(
えりあか
)
の附た、近く寄ったら
悪臭
(
わるぐさ
)
い
匂
(
におい
)
が
紛
(
ぷん
)
としそうな、
銘仙
(
めいせん
)
か何かの
衣服
(
きもの
)
で、
銀縁眼鏡
(
ぎんぶちめがね
)
で、汚い
髯
(
ひげ
)
の
処斑
(
ところまだら
)
に生えた、土気色をした、
一寸
(
ちょっと
)
見れば病人のような、陰気な
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
伸び上って見ると櫃台の下の
閾
(
しきい
)
の上に孔乙己が坐っている。顔が瘠せて黒くなり何とも言われぬ
見窄
(
みすぼ
)
らしい風体で、破れ袷一枚著て両膝を曲げ、腰にアンペラを敷いて、肩から縄で吊りかけてある。
孔乙己
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
しかも今日来た時に気がついて私の上げて置いた
見窄
(
みすぼ
)
らしい野生の花は
悄然
(
しょんぼり
)
と淋しく挿さっている
外
(
ほか
)
には、今あの人たちがお詣りに来たにもかかわらずそこに花らしいものの影すらないのであった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
御主
(
おんあるじ
)
の
冠
(
かんむり
)
となつた
荊棘
(
いばら
)
の木よ、
血塗
(
ちまみれ
)
の王の
額
(
ひたひ
)
に
嵌
(
は
)
めた
見窄
(
みすぼ
)
らしい冠。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
村の學校は、其頃まだ
見窄
(
みすぼ
)
らしい尋常科の單級で、外に補習科の生徒が六七人、先生も高島先生一人
限
(
き
)
りだつたので、教場も唯一つ。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
其日は紀元節で、
見窄
(
みすぼ
)
らしい新開街の家々にも國旗が
飜
(
ひるがへ
)
つて見えた。さうした商家の軒先に立つて私は番地を訪ねなどした。
足相撲
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
そうして乞食のように
見窄
(
みすぼ
)
らしくなった先生の姿に驚いている生徒たちに向って、ポツポツと講義を初めたのであった。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
亜米利加の
大富豪
(
おほものもち
)
ロツクフエラアが、まだ
年盛
(
としざかり
)
の頃、何処へ出掛けるにも、
見窄
(
みすぼ
)
らしい服を着て平気でゐるので、仲のいゝ友達は気が気でなかつた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
窓外では、
見窄
(
みすぼ
)
らしい
身裝
(
なり
)
をした朝鮮工夫が道路の修繕をしてゐた。僅かばかりの石を入れた籠を重さうに脊負つてノロ/\と坂を上つて來る工夫もあつた。
新婚旅行
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
その地平線の一方には上野
竹
(
たけ
)
の
台
(
だい
)
のあの
見窄
(
みすぼ
)
らしい展覧会場もぼんやり浮き上がっているのに気が付く。
帝展を見ざるの記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
勘次
(
かんじ
)
の
畑
(
はたけ
)
の
蜀黍
(
もろこし
)
は
被害者
(
ひがいしや
)
がいつたやうに、
情
(
なさけ
)
ないやうな
見窄
(
みすぼ
)
らしい
穗
(
ほ
)
がさらりと
立
(
た
)
つてそれでも
其
(
そ
)
の
恐怖心
(
きようふしん
)
に
驅
(
か
)
られたといふやうに
特有
(
もちまへ
)
な一
種
(
しゆ
)
の
騷
(
さわ
)
がしい
響
(
ひゞき
)
を
立
(
た
)
てつゝあつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
広瀬に行く途中雲が切れて雁坂山と破風山を望むことが出来た。長く伸びた山の鼻を廻って少し登ると、原のような平に如何にも
見窄
(
みすぼ
)
らしい人家が十五、六軒あるのに気が付く。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
そこは壊れた敷石の所々に、水溜りの出来ている
見窄
(
みすぼ
)
らしい
家並
(
やなみ
)
のつゞいた町であった。玄関の
円柱
(
はしら
)
に塗った
漆喰
(
しっくい
)
が醜く
剥
(
はが
)
れている家や、壁に大きな
亀裂
(
ひび
)
のいっている家もあった。
緑衣の女
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
荒布
(
あらめ
)
とも見える
襤褸頭巾
(
ぼろずきん
)
に
包
(
くる
)
まって、死んだとも言わず、生きたとも言わず、黙って溝のふちに凍り着く
見窄
(
みすぼ
)
らしげな
可哀
(
あわれ
)
なのもあれば、
常店
(
じょうみせ
)
らしく張出した三方へ、
絹二子
(
きぬふたこ
)
の赤大名
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
絵甲斐機
(
えがいき
)
の
胴裏
(
どううら
)
が如何にも貧弱で
見窄
(
みすぼ
)
らしかったので
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
爾等
(
なんぢら
)
の
見窄
(
みすぼ
)
らしい
繪馬
(
ゑま
)
の前に
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
出入りの執筆同人の文士たちに
見窄
(
みすぼ
)
らしい田舎者の父を見せることを憂へて、折返し私は電報で上京を拒んだ。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
どちらもほんとに結構な心掛だがかう諸式が高くなつては、多くの人の食卓は、これが神様の下され物だらうかと、怪しまれるやうに
見窄
(
みすぼ
)
らしくなつて来る。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ムンムンする香水の匂いで息が詰りそうな中にタッタ一人突立っている
見窄
(
みすぼ
)
らしいあっしの姿が、向うの壁一パイに篏め込んで在る大鏡に映ったのを見た時にゃ
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それを羨まし
氣
(
げ
)
に見ながら、同年輩の
見窄
(
みすぼ
)
らしい
裝
(
なり
)
をした、洗洒しの白手拭を冠つた小娘が、大時計の下に腰掛けてゐる、目のショボ/\した婆樣の膝に凭れてゐた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
兎も角も自分の子供の時にはみんな貴重な舶來物であつた品物が、ちやんと此處等のこんな
見窄
(
みすぼ
)
らしい工場で出來て綺麗なラベルなどを貼られて市場に出てくるのであらう。
写生紀行
(旧字旧仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それに比べると、私の会長振りは
見窄
(
みすぼ
)
らしくて、有れども無きが如くであった。
ペンクラブと芸術院
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
彼
(
か
)
の
大自然
(
だいしぜん
)
の、
悠然
(
いうぜん
)
として、
土
(
つち
)
も
水
(
みづ
)
も
新
(
あた
)
らしく
清
(
きよ
)
く
目覺
(
めざむ
)
るに
對
(
たい
)
して、
欠伸
(
あくび
)
をし、
鼻
(
はな
)
を
鳴
(
な
)
らし、
髯
(
ひげ
)
を
掻
(
か
)
き、
涎
(
よだれ
)
を
切
(
き
)
つて、うよ/\と
棚
(
たな
)
の
蠶
(
かひこ
)
の
蠢
(
うごめ
)
き
出
(
い
)
づる
有状
(
ありさま
)
は、
醜
(
わる
)
く
見窄
(
みすぼ
)
らしいものであるが
大阪まで
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ぐるり山の鼻を廻ると打ち開けた岩の多い緩傾斜の窪地に、入口を此方に向けて建てられた
見窄
(
みすぼ
)
らしい鉱山の事務所が現れる、其下の方にも二つほど可なりの建物があった、飯場であろう。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
男とそして女——何といふ
見窄
(
みすぼ
)
らしい相手であらう。相手が無くて済むのだつたら、結婚は理想的である。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そうして四十を越してから妻を亡くした
見窄
(
みすぼ
)
らしい自分自身の姿が、こころもち
前屈
(
まえかが
)
みになって歩いて行く姿を、二三十
間
(
けん
)
向うの線路の上に、幻覚的に描き出しながらも……。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして尾瀬の風光がいつも昔と変らぬ自然の
儘
(
まま
)
の姿であることに大きな喜びを感ずると共に、魚釣りや蕨取りの
見窄
(
みすぼ
)
らしい小屋に雨露を凌いだことのある身には、改築された長蔵小屋などは
尾瀬の昔と今
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
蘆花君は薄暗い
室
(
へや
)
の隅つこで、
膝小節
(
ひざこぶし
)
を抱へ込んだ儘、こくりこくりと
居睡
(
ゐねむ
)
りをしてゐる。
附近
(
あたり
)
には
見窄
(
みすぼ
)
らしい荷物が一つ
限
(
きり
)
で、何処にもその「善い物」は見つからなかつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
見
常用漢字
小1
部首:⾒
7画
窄
漢検準1級
部首:⽳
10画
“見”で始まる語句
見
見惚
見物
見出
見下
見上
見送
見透
見做
見当