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藪
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やぶ
ふりがな文庫
“
藪
(
やぶ
)” の例文
そして、湿っぽい林道の両側には
熊笹
(
くまざさ
)
の
藪
(
やぶ
)
が高くなり、熊笹の間からは
闊葉樹
(
かつようじゅ
)
が群立して原生樹林帯はしだいに奥暗くなっていった。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
もし
駕籠
(
かご
)
かきの悪者に出逢ったら、
庚申塚
(
こうしんづか
)
の
藪
(
やぶ
)
かげに思うさま弄ばれた揚句、
生命
(
いのち
)
あらばまた
遠国
(
えんごく
)
へ売り飛ばされるにきまっている。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「隣の庭の
藪
(
やぶ
)
の中にありましたよ。ろくに
掃除
(
さうぢ
)
をしない上に、草がひどいから、虫も蛇も出さうで、難儀な搜しものでしたよ、親分」
銭形平次捕物控:279 持参千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
藪
(
やぶ
)
を突ついて蛇を出した」野村とその同志たちはこう云った、「——われわれの味方だと思ったのに、とんでもない逆手を食った」
思い違い物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
浅く傷を癒す医者は
藪
(
やぶ
)
医者だ。良医は患部を底までえぐる。患者は悲鳴をあげて泣き叫ぶが、これによって完全に治療されるのです。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
▼ もっと見る
藤木家の
寺院
(
おてら
)
は、浅草菊屋橋の
畔
(
ほとり
)
にあって、堂々とした、そのくせ閑雅な、広い
庫裏
(
くり
)
をもち、
藪
(
やぶ
)
をもち、かなり墓地も手広かった。
旧聞日本橋:11 朝散太夫の末裔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
あんな大きな
腫物
(
はれもの
)
のあとなんてある
筈
(
はず
)
がないし、筋肉の内部の病気にしても、これ程大きな切口を残す様な
藪
(
やぶ
)
医者は
何所
(
どこ
)
にもないのだ。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
記載されるところによると、この患者は経過がよくて間もなく全快しそうに思われたが、とうとう
藪
(
やぶ
)
医術の犠牲になってしまった。
早すぎる埋葬
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
木や
藪
(
やぶ
)
がけむりのやうにぐらぐらゆれました。一郎は
黄金
(
きん
)
のどんぐりを見、やまねこはとぼけたかほつきで、遠くをみてゐました。
どんぐりと山猫
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
その証拠には、この老人は、ひとの眼に触れたこともないような、
藪
(
やぶ
)
かげの一輪の花の消息にさえ、ちゃんと通じているのである。
キャラコさん:10 馬と老人
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
田圃が湖にならぬが不思議で、どうどうと
瀬
(
せ
)
になって、
前途
(
ゆくて
)
に
一叢
(
ひとむら
)
の
藪
(
やぶ
)
が見える、それを境にしておよそ二町ばかりの間まるで川じゃ。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と言ったが、
藪
(
やぶ
)
から棒ということのようである。若々しく美しい声をしているが、だれであるかを舞い姫は考え当てることもできない。
源氏物語:21 乙女
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
おまけにこう
藪
(
やぶ
)
から棒では何のために太子が抑留されていられるのか、どうにも私には意味の捕捉も付きようのないことであった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ぶらぶら
上
(
のぼ
)
ってその辻まできてみると、椿と
藪
(
やぶ
)
に埋まって
西行
(
さいぎょう
)
法師の
歌碑
(
うたぶみ
)
があり、それと並んで低い竹垣根を
結
(
ゆ
)
い廻した
高札場
(
こうさつば
)
がある。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「リザヴェータまで殺してしまったんだからねえ!」ラスコーリニコフの方へ向きながら、ナスターシャが
藪
(
やぶ
)
から棒にこう言った。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
しかしこの場合です。「あんな
藪
(
やぶ
)
医者では」ナンテ、頭から医者を信用しなければ、どれだけ
名医
(
せんせい
)
が親切に治療してくれてもだめです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
でも見渡す限りのこの不破の古関のあとの、庭にも、
藪
(
やぶ
)
にも、畠にも、
爽涼
(
そうりょう
)
たる初秋の気が
充
(
み
)
ちて、悪気の揺ぐ影は少しもありません。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何
(
なに
)
、
馬
(
うま
)
はゐなかつたか? あそこは一
體
(
たい
)
馬
(
うま
)
なぞには、はひれない
所
(
ところ
)
でございます。
何
(
なに
)
しろ
馬
(
うま
)
の
通
(
かよ
)
ふ
路
(
みち
)
とは、
藪
(
やぶ
)
一
(
ひと
)
つ
隔
(
へだ
)
たつて
居
(
を
)
りますから。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
四郎五郎
(
しろごろう
)
さんの
藪
(
やぶ
)
の
横
(
よこ
)
までかけて
来
(
く
)
ると、まだ三百
米
(
メートル
)
ほど
走
(
はし
)
ったばかりなのに、あつくなって
来
(
き
)
たので、
上衣
(
うわぎ
)
をぬいでしまった。
ごんごろ鐘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
砂路の右側には
藁葺
(
わらぶき
)
の小さな漁師の家が並び、左側には
荻
(
おぎ
)
や雑木の
藪
(
やぶ
)
が続いていた。漁師の
家
(
うち
)
にはもう起きて火を焚いている処があった。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
國「だがねえ旦那え、それは
好
(
い
)
いが、お
前
(
めえ
)
さん
藪
(
やぶ
)
を
突
(
つッつ
)
いて蛇を出してはいけませんぜ、是りゃアとんでもない喧嘩になりますぜ」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
父の茶道は
素
(
もと
)
より
然
(
しか
)
るべき
藪
(
やぶ
)
の
内
(
うち
)
の宗匠に
就
(
つい
)
て仕上げをしていたのであるが、しかも父の強い個性は
徒
(
いたず
)
らな風流を欲しなかった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
お蓮さまの寮とは、反対側のこの小
藪
(
やぶ
)
のなかです。前は、ちょっとした草原になっていて、多人数の斬りあいには、絶好の場処。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そんなら傷ついた曲者はどうして令嬢やアルベールやヴィクトールの眼から逃れ去ったのだろうか?巡査や下男たちが
藪
(
やぶ
)
を分けて探したり
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
雪におおわれた
藪
(
やぶ
)
が、
経帷子
(
きょうかたびら
)
を着た幽霊のように彼の路を取りまいているのを見て、なんどもなんども彼はぞっとしたものだ。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
あの
津辺
(
つべ
)
の
定公
(
さだこう
)
ち親分の寺でね。
落合
(
おちあい
)
の
藪
(
やぶ
)
の中でさ、
大博打
(
おおばくち
)
ができたんだよ。よせばえいのん金公も仲間になったのさ。それを
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「まあ、そんなものでさ。でも、こんな
藪
(
やぶ
)
医者にかかっちゃかなわないなんて、函館の方の人は皆そう言っていましょうよ。」
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
それは一つの
藪
(
やぶ
)
であったか、酒神の祭であったか、それとも一つの
要塞
(
ようさい
)
であったろうか。
眩惑
(
げんわく
)
の羽ばたきによって作られたものかと思われた。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
へんに曲りくねった裏道をすこしも間違えないでずんずん歩いていった。が、そのうちに、大きな屋敷や
藪
(
やぶ
)
ばかりが続いているところへ出た。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
お時が出て行くや否や、小林は
藪
(
やぶ
)
から
棒
(
ぼう
)
にこんな事を云い出した。お延は相手が相手なので、
当
(
あた
)
らず
障
(
さわ
)
らずの返事をしておくに限ると思った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
天井
桟敷
(
さじき
)
に陣どって見物してたんですが、とつぜん
藪
(
やぶ
)
から棒に、いやどうも驚くまいことか、その天井桟敷から、「ブラボー、シルヴァ!」と
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
と呼びながら、
身長
(
せい
)
の高い肩幅の広い男が、大
榎
(
えのき
)
の
裾
(
すそ
)
の、
藪
(
やぶ
)
の蔭から、ノッソリと現われて来た。その声で解ったと見え
甲州鎮撫隊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼はかたわらの
藪
(
やぶ
)
へはいって行ったが、やがて一匹の黄いろい
斑
(
ふ
)
のある大虎が藪のなかから跳り出て、すさまじい
唸
(
うな
)
り声をあげてたけり狂うので
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
まるで
藪
(
やぶ
)
をなしているんだが、みるからにやわらかそうで、食ったらさぞ美味いだろうと思われる。でそこを通るたびに
羨
(
うらや
)
ましくてならなかった。
美味放談
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
そして、
食
(
た
)
べ
残
(
のこ
)
しの牛肉のきれをやって、はなしてやりました。
狸
(
たぬき
)
は肉をもらって、
頭
(
あたま
)
をぴょこぴょこさげながら、
藪
(
やぶ
)
の中へはいっていきました。
ばかな汽車
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
もうそこを逃げ出して、親しい河岸に駆けてゆき、いつもみずからいろんな話を考えるあの
藪
(
やぶ
)
の後ろに、はいり込んでしまいたいような気もした。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それを、指を一本一本折るようにして、やっと放して、
藪
(
やぶ
)
の中に、投げ込んだが、突然、おそわれるような気持になって、バラバラと駆け出した。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
藪
(
やぶ
)
の中の
黄楊
(
つげ
)
の木の
胯
(
また
)
に
頬白
(
ほおじろ
)
の巣があって、幾つそこに
縞
(
しま
)
の入った卵があるとか、
合歓
(
ねむ
)
の花の咲く川端の
窪
(
くぼ
)
んだ穴に、何寸ほどの
鯰
(
なまず
)
と鰻がいるとか
洋灯
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
細
(
ほそ
)
い
足
(
あし
)
のおかげで
走
(
はし
)
るわ、
走
(
はし
)
るわ、よつぽど
遠
(
とほ
)
くまで
迯
(
に
)
げのびたが、
藪
(
やぶ
)
のかげでその
美
(
うつ
)
くしい
角
(
つの
)
めが
笹
(
さヽ
)
に
引掛
(
ひつか
)
かつてとう/\
猟人
(
かりうど
)
につかまつたとさ。
コドモノスケッチ帖:動物園にて
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
農家の庭先、あるいは
藪
(
やぶ
)
の間から突然、犬が現われて、自分らを怪しそうに見て、そしてあくびをして隠れてしまう。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と
婢
(
おんな
)
の呼び来たりて、お豊を抑留しつ。このひまにと武男はつと
藪
(
やぶ
)
を回りて、二三十歩足早に落ち延び、ほっと息つき
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
ええ、ええ、『
本所
(
ほんじょう
)
に蚊がなくなれば
大晦日
(
おおみそか
)
』と云うが、ここのは
藪
(
やぶ
)
ッ
蚊
(
か
)
なんだからなかなか本所どころじゃあない。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
柏井
(
かしわい
)
の
鈴
(
すう
)
ちやんがお嫁に来てくれれば、
私
(
わたし
)
の仕合は言ふまでもない、雅之もどんなにか嬉からう。子を捨てる
藪
(
やぶ
)
は有つても、懲役に遣る親は無いぞ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
八幡
(
やはた
)
の
藪
(
やぶ
)
知らずで路に迷うて行きづまった場合には後へもどって別の道を試みるよりほかにいたし方がないごとく、哲学者も一度入り口までもどって
我らの哲学
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
だんだん遠ざかっていく黒いうしろ姿が村はずれの
藪
(
やぶ
)
のかげにかくれて見えなくなると、健はくるりと左をむいた。
大根の葉
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
今夜はいつになく風が止んで、墓地と畑の境にそそり立った
榛
(
はん
)
の梢が煙のように、
冴
(
さ
)
え渡る月を
抽
(
ぬ
)
いて物すごい光が寒竹の
藪
(
やぶ
)
をあやしく隈どっている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
道もない
険岨
(
けんそ
)
な山を
掻
(
か
)
きわけて登り、水の音を聞いてこの谷に降りて来た。
藪
(
やぶ
)
と木の根を伝い、岩をとび越えまた水の中を押し渡り、
砂礫
(
されき
)
を踏みつけた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
のみならず、その夏はまだこのコースを踏んだ人があまりないと見えて、思はぬ場所に
藪
(
やぶ
)
がはびこつてゐたりして、女連中の足はなかなか
捗
(
はかど
)
らなかつた。
夜の鳥
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
古い池の辺は
藪
(
やぶ
)
で、狐や狸が住んでいた位で、その藪を開いて例の「万国一覧」の覗眼鏡の興行があったのです。
諸国の玩具:――浅草奥山の草分――
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
轟
(
とどろ
)
く音、枝の裂ける音、そうして光りが十ヤードばかり——松や
藪
(
やぶ
)
や、ありとあらゆる物が坂の下へ崩れ落ちて来て、われわれの道をふさいでしまった。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
藪
漢検準1級
部首:⾋
18画
“藪”を含む語句
藪畳
大藪
藪地
藪枯
竹藪
藪蚊
藪鶯
藪入
大竹藪
藪睨
藪原
藪柑子
藪中
藪沢
大藪地
藪蛇
藪蔭
笹藪
孟宗藪
小藪
...