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穢
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きた
ふりがな文庫
“
穢
(
きた
)” の例文
そこには
華手
(
はで
)
なモスリンの
端切
(
はぎ
)
れが乱雲の中に現われた
虹
(
にじ
)
のようにしっとり朝露にしめったまま
穢
(
きた
)
ない馬力の上にしまい忘られていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
すぐに抜け出た
頸足
(
えりあし
)
が、燭台の燈火に照らされたが、
脂肪
(
あぶら
)
気がなくてカサカサとしていて、折れそうに細っこくて
穢
(
きた
)
ならしかった。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
坑夫は世の中で、もっとも
穢
(
きた
)
ないものと感じていたが、かように万物を色の変化と見ると、穢ないも穢なくないもある段じゃない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今日では、アーヴィングを感激させた
穢
(
きた
)
なたらしさは見られず、むしろ反対に、簡素ではあるが清潔な小ざっぱりした美しささえもある。
シェイクスピアの郷里
(新字新仮名)
/
野上豊一郎
(著)
鼻はこする、水っ
洟
(
ぱな
)
はかむ。笊の中は掻きまわす。嗅いで見る。おくびはする。
穢
(
きた
)
ならしいの、
厭
(
いや
)
らしいのといったらないのだ。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
それで金儲けのことについては少しも考えを与えてはならぬところの人が金を儲けようといたしますると、その人は非常に
穢
(
きた
)
なく見えます。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
だから、遊廓だから、町の隔離してあるところだからといって、あそこがどんなに
穢
(
きた
)
ならしくてもよいということはいえません
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あはれ
果敢
(
はか
)
なき
塵塚
(
ちりづか
)
の
中
(
うち
)
に運命を持てりとも、
穢
(
きた
)
なき
汚
(
よご
)
れは
蒙
(
かふ
)
むらじと思へる身の、
猶
(
なほ
)
何所
(
いづこ
)
にか悪魔のひそみて、あやなき物をも思はするよ。
軒もる月
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
彼は
穢
(
きた
)
ない仕事着を着て石の上に腰をかけていた。前には人夫頭の
吉
(
きち
)
が恐ろしい顔をして立っていた。徳市は眼をこすった。
黒白ストーリー
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
乞食には虱を取らせて
呉
(
く
)
れた
褒美
(
ほうび
)
に
飯
(
めし
)
を
遣
(
や
)
ると云う
極
(
きま
)
りで、
是
(
こ
)
れは母の
楽
(
たのし
)
みでしたろうが、私は
穢
(
きた
)
なくて穢なくて
堪
(
たま
)
らぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それは私に同情してではなくて、
清潔
(
きれい
)
好きな彼女にとつて、私の
穢
(
きた
)
ない手が見苦しいからだ、と私はそんな風に邪推した。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
「
※等
(
あねら
)
も
酷
(
ひど
)
かんべ
野
(
の
)
らは」と
彼
(
かれ
)
はおつたの
染
(
そ
)
めつゝあつた
髮
(
かみ
)
が、
交
(
まじ
)
つた
白髮
(
しらが
)
をほんのりと
見
(
み
)
せるまでに
藥
(
くすり
)
の
褪
(
さ
)
めて
穢
(
きた
)
なく
成
(
なつ
)
つたのを
見
(
み
)
つゝいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それにしては日本のあらゆる動くものや交通機関は
巴里
(
パリ
)
あたりのそれに比べるとほんとに貧しく
穢
(
きた
)
ならしく色彩に乏しく、貧乏臭くはあるけれども。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
が、ふと今、鏡に映った自分の姿を眺めると、彼は思わず、『おや、おや! おれの
穢
(
きた
)
なくなったことはどうだい!』
死せる魂:02 または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
長く
活
(
い
)
けて置けばばら/\と落ちて来ますから、あゝ
穢
(
きた
)
ない
打棄
(
うっちゃ
)
ってしまえと、今度は
大山蓮華
(
おおやまれんげ
)
の白いのを活けこの花の
工合
(
ぐあい
)
はまた無いと云ってゝも
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
家をすべての悪臭や
穢
(
きた
)
なさからさっぱりと自由にたもつという非常に高価につく企てがはじまるかが解りかけた。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
お
數
(
かず
)
は懷の福神漬を出したんだけど、若菜さんは、そんなお腹ん中でこぼれた物なんか
穢
(
きた
)
なくて喰べられないつて言ふの。だから、あたし一人で喰べたわ。
梅龍の話
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
禰宜様宮田は、
穢
(
きた
)
ない小屋掛けへ戻って行った。そして大きなバケツを下げて、足袋の中でかじかむ足を引きずりながら小一町ある小川まで水を汲みに行く。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「今の病人の見
苦
(
ぐる
)
しいのを
御
(
ご
)
覧に成りましたか」とドリヷルの細君が問ふと、ムネ・シユリイは「いや
御
(
お
)
蔭で見なかつた。自分はそんな
穢
(
きた
)
ない物は大嫌ひだ。」
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「
貯
(
た
)
めるほど
穢
(
きた
)
ないものは
塵
(
ちり
)
と
金
(
かね
)
なり」という
諺
(
ことわざ
)
があるが、これも貯めようによるべし、おそらく
塵芥
(
ちりあくた
)
とても
貯蔵
(
ちょぞう
)
法よろしきを得たなら、清くする
工夫
(
くふう
)
もあろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
鼠も昔より国に盗賊家に鼠と嫌われ、清少納言も、
穢
(
きた
)
なげなる物、鼠の
住家
(
すみか
)
、つとめて手
晩
(
おそ
)
く洗う人、『
尤
(
もっとも
)
の
草子
(
そうし
)
』に
悪
(
にく
)
き者、物をかじる鼠、花を散らす鳥と言った。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
だがまだまだ仕合せな事に、もともと悪どくない京子の生れ立ちのためか、加奈子は気違いの京子から、他の気違いのする
穢
(
きた
)
ならしさや極道に陰惨な所業は受けなかった。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
見るともなく見ると、昨夜想像したよりもいっそうあたりは
穢
(
きた
)
ない。天井も張らぬ
露
(
む
)
きだしの屋根裏は真黒に
燻
(
くす
)
ぶって、
煤
(
すす
)
だか虫蔓だか、今にも落ちそうになって
垂下
(
ぶらさが
)
っている。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
まだなかなか大石の目の
醒
(
さ
)
める時刻にはならないので、
好
(
い
)
い加減な横町を、上野の山の方へ曲った。狭い町の両側は
穢
(
きた
)
ない長屋で、
塩煎餅
(
しおせんべい
)
を焼いている店や、小さい荒物屋がある。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
きっとないと
請合
(
うけあ
)
える位いの
穢
(
きた
)
なさだが、火も炭も惜気もなく沢山持って来られるのは、肌寒き秋の旅には嬉しいものの一つである。宿から出してくれた凍りがけの茶受には手は出ない。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
ところで、意地の悪い連中は、お前のことを「
穢
(
きた
)
ならしい豚!」と言うのだ。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
市の中央の
大逵
(
おほどほり
)
で、然も白昼、
穢
(
きた
)
ない/\女乞食が土下座して、垢だらけの胸を
披
(
はだ
)
けて人の見る前に乳房を投げ出して居る! この光景は、大都乃至は凡ての他の大都会に決して無い事、否
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
周囲が
穢
(
きた
)
なければ穢ないほど、花の涼しげなのがいよいよ眼立ってみえる。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
さまでの僧正を、なおも
強
(
し
)
いて
穢
(
きた
)
なき臆測で見ようとする人々には、よろしく、僧正と共に青蓮院に
起臥
(
おきふし
)
してみるがよい。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お前だね、この
妖女
(
ウェーヂマ
)
め、あのひとに霧を吹つかけて、
穢
(
きた
)
ない毒を呑ませて、あのひとを銜へこみくさつたのは!」
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
それは大変貧しそうな老い衰えた小男で、陽に焼けた皺だらけの小さい顔は
鉄糞
(
かなくそ
)
で出来ているように
穢
(
きた
)
ならしい。
死の航海
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
扨
(
さて
)
いよ/\この人種の仲間になって一つ
竈
(
かまど
)
の
飯
(
めし
)
を
喰
(
く
)
い本当に親しく近くなろうと
云
(
い
)
うには、
何処
(
どこ
)
となく
穢
(
きた
)
ないように汚れたように思われてツイ
嫌
(
いや
)
になる。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そして危くむこうからも急ぎ足で来る人——使い走りをするらしい
穢
(
きた
)
ない身なりの女だったが——に衝きあたろうとして、その側を夢中ですりぬけながら
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「だからお前はここに待っといでよ。わざわざ手術台の
傍
(
そば
)
まで来て、
穢
(
きた
)
ないところを見る必要はないんだから」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
西木家を監視していた警官も、青年団員も、名刺を出すと訳なく通してくれたが、狭い
穢
(
きた
)
ない家だった。
無系統虎列剌
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
素袷
(
すあわせ
)
一つに
結
(
むすび
)
っ玉の幾つもある細帯に、
焼穴
(
やけあな
)
だらけの前掛を締めて、
穢
(
きた
)
ないとも
何
(
なん
)
とも云いようのない
姿
(
なり
)
だが、生れ付の品と愛敬があって
見惚
(
みと
)
れるような女です。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
やがて爪先へ黒いものが
溜
(
たま
)
り、手の甲が汚れてくるころ、われながら
穢
(
きた
)
ないと思い、やむをえず近所の風呂屋へまで出かける。行って見ると即ちよく来たことだと思う。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
あるアメリカの金持ちが「私は汝にこの金を譲り渡すが、このなかに
穢
(
きた
)
ない
銭
(
ぜに
)
は一文もない」
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
茶屋は少し山蔭の平地に
在
(
あ
)
って、ただ一軒の
穢
(
きた
)
ない小屋にすぎない、家の前には、近所の山から採って来た
雑木
(
ぞうき
)
が盆栽的に並んでいる。真暗な家の中には、夫婦に小供二、三人住んでいる。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
卯平
(
うへい
)
は
天性
(
ね
)
が
清潔好
(
きれいずき
)
であつたが、
百姓
(
ひやくしやう
)
の
生活
(
せいくわつ
)
をして、それに
非常
(
ひじやう
)
な
貧乏
(
びんばふ
)
から
什麽
(
どんな
)
にしても
穢
(
きた
)
ない
物
(
もの
)
の
間
(
あひだ
)
に
起臥
(
きぐわ
)
せねばならぬので
彼
(
かれ
)
も
野田
(
のだ
)
へ
行
(
ゆ
)
くまではそれをも
別段
(
べつだん
)
苦
(
く
)
にはしなかつたのであるが
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
呀
(
あ
)
ツと思はず声を出した時、かの声無き葬列は
礑
(
はた
)
と進行を止めて居た、そして、棺を担いだ二人の前の方の男は左の足を
中有
(
ちう
)
に
浮
(
うか
)
して居た。其
爪端
(
つまさき
)
の処に、
彼
(
か
)
の
穢
(
きた
)
ない女乞食が
摚
(
だう
)
と許り倒れて居た。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
一所に野茨の
叢
(
くさむら
)
があった。五月が来たら花が咲こう。今は芽さえ出ていなかった。ただ
穢
(
きた
)
ならしく
塊
(
かた
)
まっていた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
満腹
飲食
(
のみくい
)
した跡で飯もドッサリ
給
(
た
)
べて残す所なしと云う、誠に意地の
穢
(
きた
)
ない
所謂
(
いわゆる
)
牛飲馬食とも云うべき男である。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
うぶのままもってるか解らないぜ。ただその人間らしい美しさが、貧苦という
塵埃
(
ほこり
)
で
汚
(
よご
)
れているだけなんだ。つまり湯に入れないから
穢
(
きた
)
ないんだ。馬鹿にするな
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
窮地となっても、意地
穢
(
きた
)
なく、小心
狡智
(
こうち
)
、あらゆる非武士的な行為にみずから
辱
(
は
)
じても、飽くまで生きて帰るところへ帰ることをもって、乱波組に働く者の本旨とする。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
兼「
宅
(
うち
)
の婆さんよりア
穢
(
きた
)
ねえようだ、あの婆さんの打った蕎麦だと
醤汁
(
したじ
)
はいらねいぜ」
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
中でも一番多く眼につくのは、今でこそ『酒場』という簡単な文字に変ってしまったけれど、その頃はまだ帝室の紋章たる
*2
双頭の鷲を看板につけていたのが
穢
(
きた
)
なく
黝
(
くす
)
んでしまったやつである。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
醜
(
みにく
)
いほど
血肥
(
ちぶと
)
りな、肉感的な、そしてヒステリカルに涙
脆
(
もろ
)
い
渡井
(
わたらい
)
という十六になる女の生徒が、
穢
(
きた
)
ない手拭を眼にあてあて聞いていたが、突然教室じゅうに聞こえわたるような
啜泣
(
すすりな
)
きをやり始めた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
津田は女に
穢
(
きた
)
ないものを見せるのが
嫌
(
きらい
)
な男であった。ことに自分の穢ないところを見せるは
厭
(
いや
)
であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「北条美作? 妾は知らぬよ。見れば
穢
(
きた
)
ならしいお侍さんだが、一度もこれまで見たことがないよ」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
穢
漢検1級
部首:⽲
18画
“穢”を含む語句
汚穢
醜穢
穢物
薄穢
触穢
穢多
穢濁
垢穢
罪穢
穢土
口穢
濁穢
小穢
穢汚
穢虫
穢悪
汚穢屋
穢辱
浄穢
穢苦
...