當座たうざ)” の例文
新字:当座
しか肝心かんじん家屋敷いへやしきはすぐみぎからひだりへとれるわけにはかなかつた。仕方しかたがないから、叔父をぢ一時いちじ工面くめんたのんで、當座たうざかたけてもらつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
定め分殘わけのこりの八十兩は當座たうざの祝ひにつかふべしとて三人一同に江戸表へ出立なし先吉原を始め品川或ひは深川と所々にてあそびけるがやがて彼八十兩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
つちをなめてもれを立身りつしん手始てはじめにしたきわがひと、れながらくもへたるうそにかためて、名前なまへをも其通そのとほり、當座たうざにこしへらて吾助ごすけとかひけり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わしもときかゝあなれた當座たうざなもんだからさう薄情はくじやうなことも出來できねえとおもつて、そんでも一ばんめて、わしもこまつちやたがこくもちつたあつたのせ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
酒亭さかやはひった當座たうざには、けん食卓テーブルしたたゝきつけて「かみよ、ねがはくは此奴こいつ必要ひつえうあらしめたまふな」なぞといってゐながら、たちまち二杯目はいめさけいて、なん必要ひつえういのに
こんなことからおさんも、去年きよねん……當座たうざ、かりに玉川たまがはとしてく……其家そのいへ出入ではひりにけたやうだつたが、主人あるじか、旦那だんならず、かよつてるのが、謹深つゝしみぶかつゝましやかな人物じんぶつらしくて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宗助そうすけこれより以上いじやうつて坂井さかゐこといたことがなかつた。學校がくかうめた當座たうざは、順境じゆんきやうにゐて得意とくい振舞ふるまひをするものにふと、いまろとおこつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
取出とりいだし祐然にあたへ是は輕少けいせうながら我々より當座たうざ回向料ゑかうれうなりなほ又江戸表へ立歸らばよろし披露ひろう致し御沙汰さた有之候やう取計ひ申すべしと挨拶あいさつに及び夫より祐然にいとまを告げ光照寺くわうせうじ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
らもこんでかゝあなれた當座たうざにやれもやくたねえからきぬいたよ」勘次かんじにはかにしんみりとしていつた。おつたはおしなのことが勘次かんじくちからときかすかに苦笑くせうして
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
春秋はるあきはな紅葉もみぢつゐにしてかんざし造物つくりものならねど當座たうざ交際つきあひ姿すがたこそはやさしげなれ智慧ちゑ宏大くわうだいくは此人このひとすがりてばやとこれも稚氣をさなげさりながら姿すがたれぬはひとこゝろわらひものにされなばそれもはづかしなにとせんとおもふほど兄弟きやうだいあるひとうらやましくなりてお兄樣あにいさまはおやさしいとかおまへさまうらやましとくち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
宗助そうすけ東京とうきやう當座たうざは、時々とき/″\これ類似るゐじ質問しつもん御米およねからけて、その都度つどなぐさめるのに大分だいぶほねれたこともあつたが、近來きんらいまつたわすれたやうなにはなくなつたので
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれ勘次かんじからいくらかづゝのこめむぎけさせて別居べつきよした當座たうざ自分じぶん煮焚にたきをした。それがかへつ氣藥きらくでさうしてすこしづゝはかれした佳味うまかんずる程度ていどものもとめてることが出來できた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
のがれんとする共われなんぞ左樣の舌頭ぜつとうあざむかれんや併し夫には何か證據しようこでも有て左樣には申すかもし當座たうざの出たらめなれば思ひしらすと睨付ねめつければ吉兵衞莞爾につこと打笑ひ其方共のうたがひも理なきにあらず先づ是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)