もうし)” の例文
全くその株を奪われたる事になりしとかもうし候、この記事が動機となりて、今年より多くの登山者を出すを得ば、さいわいこれに過ぎずとぞんじ
越中劍岳先登記 (新字新仮名) / 柴崎芳太郎(著)
当人の小半は代地は場所がらとて便利なだけ定めし近隣のうわさもうるさかるべく少し場所はわるけれど赤坂のほう望ましきやうもうしをり候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
取次ぎが、ぜひ御隠居様にお目にかかりたいともうしますと伝えたとき、台所の敷居に手をつくようなことをせず、表から来いと言わせた。
その堀立小屋は、窓がたいへん少くて、しかもそれが二メートルも上の方に監房かんぼうの空気ぬきよろしくの形に、もうしわけばかりにいていた。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
几董きとうの俳句に「晴るる日や雲を貫く雪の不尽」というがあり、極めて尋常にじょし去りたれども不尽の趣はかえって善く現れもうし候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
鬱陶うっとうしそうにおもてなしなさるは、おそばのチンも子爵様も変った事はないとおつきの女中がもうしたとか、マアとりどりに口賢くちさがなく雑談をしました。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
「しづ/\としつはらひつかまつり関東勢百万も候へ、男は一人もなく候よし雑言もうし、大阪へ引取申候」と『北川覚書』に出ている。
大阪夏之陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
梅五郎ばいごろうもうしました目「何時いつからこのいえに住で居る女「はい八年前から目「其前は何所どこに住だ女「それまではリセリウまちで理髪店を開いて居ました、 ...
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
同人の列につらなりながらこう御無沙汰をしてはもうしわけありません。そこで雑然たることでも書いて見ることにいたします。
雑草一束 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ただ同君の前期の仕事に抑々亦少からぬ衝動を世に与えて居ったという事を日比感じて居りましたまま、かくもうします。
言語体の文章と浮雲 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
新しいのはまだれていないから毒だともうしますが馴れないというのはつまり毒質が分解されないという事ですね。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その時横田もうしそろは、たとい主命なりとも、香木こうぼくは無用の翫物がんぶつ有之これあり、過分の大金をなげうそろこと不可然しかるべからず所詮しょせん本木を伊達家に譲り、末木を買求めたきよし申候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「その時義経公の愛妾あいしょう静御前村国氏の家にご逗留あり義経公は奥州おうしゅう落行おちゆき給いしより今は早頼はやたのみ少なしとてお命を捨給いたる井戸あり静井戸ともうし伝え候也そうろうなり
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
何とぞ、以後は又八どのの事、御わすれくだされたくまずように迄、一筆しめし参らせもうしそろ。かしこ。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どういたしやして、うそかくしもありゃァしません。みんなほんまのことをもうしげてりやすんで。……」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
おさき『よう判っておりまする。これも仏さまのお蔭、あなたのお蔭。あらためてお礼をもうします。わたしに異存はございません。どうぞ思い立った通りにして下さいませ』
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その時あま人申様もうすよう、もしこのたまを取得たらば、この御子みこを世継の御位みくらいになしたまえともうししかば、子細しさいあらじと領承したもう、さて我子ゆえに捨ん命、露ほどもおしからじと
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし幾ら手本無しに生活するともうしましても、そういう人でございましても、どうせ生々ういういしいのでございましょうから、何事かに出合まして、五つや六つの調子を覚えましても
旦那様が出て何ともはアお礼のもうしようはありません、見掛けは綺麗な優しげな、力も何もねえようなお前様が、大の野郎を打殺うちころしただから、お侍はちがったものだと噂をして居りました
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何ともうしても先生御存生中は、真先に松明たいまつを振りつつ御進みありて、御同様を警戒し指導し、少しく遠ざかりたる時は高所にありて差招きくれ候ことゆえ、自然に先生に依頼するの念のみ強く
師を失いたる吾々 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ことに今夕のように、皆様がおそろいで私を歓迎して下さるのは、私にとりては実に有難い。かくもうしても、私の心情をお話しないと、有難いというのが、ただ表向おもてむきの挨拶のように聞こえましょうが……。
人格を認知せざる国民 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたしの身は貴下あなたの手から葬式をして一本の御回向ごえこうを御頼みもうします。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
港八九は成就じょうじゅいたり候得共そうらえども前度せんどことほか入口六ヶ敷候むずかしくそうろうに付増夫ましぶ入而いれて相支候得共あいささえそうらえども至而いたって難題至極ともうし此上は武士之道之心得にも御座候得そうらえば神明へ捧命ほうめい申処もうすところ誓言せいげんすなわち御見分のとおり本意ほんいとげ候事そうろうこと一日千秋の大悦たいえつ拙者せっしゃ本懐ほんかいいたり死後御推察くださるべくそうろう 不具ふぐ
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
新聞記者などが大臣をそしるを見て「いくら新聞屋が法螺ほら吹いたとて、大臣は親任官、新聞屋は素寒貧すかんぴん、月と泥亀すっぽんほどの違いだ」などとののしもうし候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
先生へ折入ってお願ともうしまするはなにとぞあれなる宝をばいかようにも致し、後の世まで残しお伝え下さるよう御計らいなされては下さるまいか。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
例の『五戦記』では、この騎馬武者を誰とも知らず越後の荒川伊豆守なるべしと取沙汰したが、それを「政虎聞キ候テ可討留うちとどむべき物ヲ残リ多シト皆ニもうしよし
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
舶来の上等食塩ともうした処が市中で売っているのはほとんど大概和製食塩の詰換つめかえびんと商標だけが舶来なのです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
義理だつても私口惜貴女/\はなぜ、御教おをしへもうしたやうに御父樣や御兄樣におつしやらなかつたので御座升よお孃樣、唯心で涙をこぼしていらつしやる柄猶御病氣も重り升わと
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「いや、あまり不吉な言葉をはいてはもうしわけないと思い、ためらっているのですが……ひょっとすると、第四斥候隊は火星人の猛撃をうけて、どうかなったのではありますまいか」
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かんしんいたし候ゆえ文して申遣もうしつかわし参らせそろ左候さそうらえば日にまし寒さに向い候えどもいよいよかわらせなく相くらされこのかたも安心いたしおり候ととさんともうしかかさんと申誠に誠に難有ありがたく………
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
方様かたさまに口惜しい程憎まれてこそ誓文せいもん移り気ならぬ真実を命打込うちこんで御見せもうしたけれ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それがし祖父そふ興津右兵衛景通おきつうひょうえかげみちもうしそろ永正えいしょう十一(十七)年駿河国するがのくに興津おきつに生れ、今川治部大輔いまがわじぶたいふ殿に仕え、同国清見きよみせきに住居いたし候。永禄えいろく三年五月二十日今川殿陣亡じんぼう遊ばされそろ時、景通かげみち御供おともいたし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「どうしてどうしてお死になされたとわたしがもうしいとしいお方の側へ、従四位様を並べたら、まるで下郎げろうもっいったようだろうよ」と仰有ってまたちょっと口を結び、力のなさそうな溜息ためいきをなすって
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
かくのごとくいきおい強き恐ろしき歌はまたと有之間敷これあるまじく、八大竜王を叱咤しったするところ竜王も懾伏しょうふく致すべき勢あい現れもうし候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
一、朝食、焼飯にて仕り候て、梅干相添もうし、先づ梅干を先へきゅうし候て、後に焼飯給申すべく候。
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
諄々くどくど黒暗くらやみはじもうしてあなたの様ななさけ知りの御方に浅墓あさはか心入こころいれ愛想あいそつかさるゝもおそろし、さりとて夢さら御厚意ないがしろにするにはあらず、やさしき御言葉は骨にきざんで七生忘れませぬ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
愚僧儀はもと西国さいこく丸円藩まるまるはん御家臣ごかしん深沢重右衛門ふかざわじゅうえもんもうし候者の次男にて有之これあり候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
胃潰瘍いかいようとか胃癌いがんとかいう病気は刺撃性の物を好む人に多いともうします。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
法名を義心英立居士ぎしんえいりゅうこじもうしそろ
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
御返しもうしますと率直に云えば、いやそれは悪い合点がてん一酷いっこくにそう云われずと子爵からの御志、是非御取置おとりおき下され、珠運様には別に御礼をもうしますが姿の見えぬは御たちなされたか、ナニ奥の坐敷ざしきに。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
人生五十の坂も早や間近の身を以て娘同様のものいつも側に引付けしだらもなきていたらくはずかもなく御目にかけ候傍若無人ぼうじゃくぶじん振舞ふるまいいかに場所がらとはもうしながら酒めてははなはだ赤面のいたりに御座候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)