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枝垂
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しだ
ふりがな文庫
“
枝垂
(
しだ
)” の例文
『鶯邨画譜』の方に
枝垂
(
しだ
)
れ
桜
(
ざくら
)
の画があつてその木の枝を
僅
(
わず
)
かに二、三本画いたばかりで枝全体には
悉
(
ことごと
)
く小さな薄赤い
蕾
(
つぼみ
)
が附いて居る。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
其処へ何も知らない乳母は、年の若い女房たちと、
銚子
(
てうし
)
や
高坏
(
たかつき
)
を運んで来た。古い池に
枝垂
(
しだ
)
れた桜も、
蕾
(
つぼみ
)
を持つた事を話しながら。……
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いや、そう思っていたら、六条河原の柳の枝に、焼けていない鳥羽蔵の首だけが、ぶらんと、
薬玉
(
くすだま
)
みたいに、葉柳の中から
枝垂
(
しだ
)
れていた。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
奥は秋本
荀竜
(
じゅんりゅう
)
の邸になっているが、前はちょっとした丘で雑草の繁るに任せ、岸近くには
枝垂
(
しだ
)
れ柳が二、三本、上り下りの
屋形船
(
やかた
)
とともに
釘抜藤吉捕物覚書:08 無明の夜
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
脊は高し、天井の黒い雲から糸桜がすらすらと
枝垂
(
しだ
)
れたようで、いや、どうも……祇園の空から降って来たかと思われました。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
数日前から村の東北にある
枝垂
(
しだ
)
れグリの大木にどこからとなく白竜飛びきたりて巻き付き、はためきわたり、その勢い凄じくて近寄るべくもあらず
東奥異聞
(新字新仮名)
/
佐々木喜善
(著)
春は唯この一ともとに雑沓するという老木の
枝垂
(
しだ
)
れ桜は葉も落ちて、ただ黒々とさながら宵寝という姿であるのを、
疎
(
まば
)
らな人通りの誰顧みる者もなく
六日月
(新字新仮名)
/
岩本素白
(著)
覚えている。そうしてあの
縮緬
(
ちりめん
)
の帯が、先に
枝垂
(
しだ
)
れた花のように、屏風の上にかけられてあって、なかば
眩
(
くら
)
んでいた俺の瞳に、焼きついたのも覚えている
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
道端の垣にリラの花が
枝垂
(
しだ
)
れてゐた。わたしの申出を聴いた時の彼女の返事を今でも覚えてゐる。彼女は右手を後鞍に廻してまともにわたしを振り向いて云つた。
雪
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
親指のさきほどの圓い眞紅なのが、枝といふ枝のさきからさきにかけてぎつしりとなり
枝垂
(
しだ
)
れてゐる。昨日今日の雨で、枝の二三本はおも/\と地についてしまつた。
たべものの木
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
その家は五間ぐらいでしたが、庭が広くて正面に松の大木があり、
枝垂
(
しだ
)
れた下に
雪見灯籠
(
ゆきみどうろう
)
がありました。左と右とにも松があって、それぞれ形の違った石灯籠が置いてありました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
ずっと水上に探り
上
(
のぼ
)
れば水ではなくって一つの柳の木かも知れん、柳の糸のなよなよと
枝垂
(
しだ
)
れているのが地上に垂れて、それが水になって、その末がかく流れになっているのかも知れん
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
大木の
白木蓮
(
しろもくれん
)
、
玉椿
(
たまつばき
)
、
槇
(
まき
)
、
海棠
(
かいだう
)
、黒竹、
枝垂
(
しだ
)
れ桜、大きな
花柘榴
(
はなざくろ
)
、梅、
夾竹桃
(
けふちくたう
)
、いろいろな種類の蘭の鉢。さうしてそれ等の不幸な木はかくも忙しくその居所を変へなければならなかつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
旅やどり、消ゆるばかりに一夜寝て寝ざめて見れば、霜しろし
水
(
み
)
の
辺
(
べ
)
の柳、何一つ音もこそせね、薄墨の空の
霧
(
き
)
らひにただ白く
枝垂
(
しだ
)
れ深めり。枝垂れつつ水にとどけり。また白き葦にとどけり。
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
室
(
へや
)
の一方に輝き並んでいる
螺鈿
(
らでん
)
の茶棚、同じチャブ台、その上に居並ぶ銀の食器、上等の茶器、
金色
(
こんじき
)
燦然
(
さんぜん
)
たる大トランク、その上に置かれた
枝垂
(
しだ
)
れのベコニヤ、
印度
(
いんど
)
の宮殿を思わせる
金糸
(
きんし
)
の壁かけ
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
恋より、——われより、銀の柳の
枝垂
(
しだ
)
れたる
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
岩の上には松の枝が、やはり長々と
枝垂
(
しだ
)
れていた。
素戔嗚
(
すさのお
)
は素早く帆を下すと、その松の枝を片手に
掴
(
つか
)
んで、両足へうんと力を入れた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
先刻
(
さっき
)
から、ただ柳が
枝垂
(
しだ
)
れたように行燈に
凭
(
もた
)
れていた、
黒紋着
(
くろもんつき
)
のその雪女が、りんとなって、両手で紳士の胸を
圧
(
お
)
した。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さくら御門の
枝垂
(
しだ
)
れ桜を
擦
(
す
)
って、大路の一端へ、さんらんと、揺れ出て行く
御幸
(
ごこう
)
の御車にも、
陽炎
(
かげろう
)
が立っていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どこからかそら豆を
茹
(
ゆで
)
る青い匂がした。古風な紅白の棒の看板を立てた理髪店がある。妖艶な柳が地上にとどくまで
枝垂
(
しだ
)
れている。それから五六軒置いて
錆
(
さび
)
朽
(
く
)
ちた洋館作りの写真館が在る。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
旅やどり、消ゆるばかりに、一夜寝て寝ざめて見れば、霜しろし
水
(
み
)
の
辺
(
べ
)
の柳、何一つ音もこそせね、薄墨の空の
霧
(
き
)
らひにただ白く
枝垂
(
しだ
)
れ深めり。
枝垂
(
しだ
)
れつつ水にとどけり。また白き葦にとどけり。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
枝垂
(
しだ
)
れ咲いた軒端の花もよく見えた。
樹木とその葉:11 夏の寂寥
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
藍色の柳の
枝垂
(
しだ
)
れた下にやはり藍色の人が一人、莫迦に長い釣竿を伸ばしてゐる。誰かと思つて覗きこんで見たら、金沢にゐる室生犀星!
春の日のさした往来をぶらぶら一人歩いてゐる
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
茶店の前の
枝垂
(
しだ
)
れ梅から
蕾
(
つぼみ
)
を取って、梅の蕾を、
唇
(
くち
)
に噛みながら、近づく男の姿を待っていた——という一節があって、なぜかそれだけで、接吻の香気を連想させ
梅ちらほら
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一方、杉の生垣を長く、下、石垣にして、その根を
小流
(
こながれ
)
走る。石垣にサフランの花咲き、雑草生ゆ。垣の内、新緑にして柳
一本
(
ひともと
)
、道を
覗
(
のぞ
)
きて
枝垂
(
しだ
)
る。背景勝手に、紫の
木蓮
(
もくれん
)
あるもよし。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どこからかそら豆を
茹
(
ゆで
)
る青い
匂
(
におい
)
がした。古風な紅白の棒の看板を立てた
理髪店
(
りはつてん
)
がある。
妖艶
(
ようえん
)
な
柳
(
やなぎ
)
が地上にとどくまで
枝垂
(
しだ
)
れている。それから五六
軒
(
けん
)
置いて
錆
(
さび
)
朽
(
く
)
ちた洋館作りの写真館が在る。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
現に仏画師はダアワのことを
蓮華
(
れんげ
)
夫人と
渾名
(
あだな
)
している。実際川ばたの
枝垂
(
しだ
)
れ
柳
(
やなぎ
)
の
下
(
した
)
に
乳
(
ち
)
のみ児を
抱
(
だ
)
いている妻の姿は
円光
(
えんこう
)
を負っているといわなければならぬ。
第四の夫から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いつか、私たちは高い石段をのぼり切ッて、大きな
枝垂
(
しだ
)
れ桜を前にした安国寺の一禅室へ入っていた。——すでに沢山な古文書の類が、部屋いっぱい、展列されてあった。
随筆 私本太平記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
北辰妙見
(
ほくしんみょうけん
)
の宮、摩利支天の
御堂
(
みどう
)
、弁財天の
祠
(
ほこら
)
には名木の紅梅の
枝垂
(
しだ
)
れつつ咲くのがある。明星の丘の
毘沙門天
(
びしゃもんてん
)
。虫歯封じに
箸
(
はし
)
を供うる辻の坂の
地蔵菩薩
(
じぞうぼさつ
)
。時雨の如意輪観世音。
笠守
(
かさもり
)
の神。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると表の壁の丁度金鎖草の
枝垂
(
しだ
)
れた新芽が肩に
当
(
あた
)
るほどの所で
門番
(
コンシェルジュ
)
のかみさんと女中のロウジイヌとがふざけて掴み合っていたのが新吉の姿を見ると急に止めて笑いながら朝の挨拶をした。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ころびばてれんの今井二官の
住居
(
すまい
)
のわきにも、変りざきが一本ある。寛永の何年かに邪宗門の女が斬られて、根元へ血をそそいだという
中門前
(
なかもんまえ
)
の
枝垂
(
しだ
)
れ桜は、まだ
蕾
(
つぼみ
)
が固い。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山鴫は
枝垂
(
しだ
)
れた木々の間に、薄白い羽裏を
閃
(
ひらめ
)
かせながら、すぐに
宵暗
(
よひやみ
)
へ消えようとする、——トウルゲネフはその瞬間、銃を肩に当てるが早いか、器用にぐいと引き金を引いた。
山鴫
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
分けて今年は
暖
(
あたたか
)
さに
枝垂
(
しだ
)
れた黒髪はなお
濃
(
こまや
)
かで、中にも
真中
(
まんなか
)
に、月光を浴びて漆のように高く立った火の見
階子
(
ばしご
)
に、袖を掛けた柳の
一本
(
ひともと
)
は
瑠璃天井
(
るりてんじょう
)
の階子段に、遊女の
凭
(
もた
)
れた風情がある。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
青年の指差したのは、真向いの堤に
恰
(
あたか
)
も黄金の滝のように咲き
枝垂
(
しだ
)
れている八重山吹の花むらであった。陽は午後の円熟した光を一雫のおしみもなく、その旺溢した黄金色の全幅にそそぎかけている。
高原の太陽
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
寒松院ヶ原にある
枝垂
(
しだ
)
れ
桜
(
ざくら
)
の下で二重三重の人の垣、事件はそこで起っているものらしい。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これは毎朝川魚を
市
(
いち
)
へ売りに出ます
老爺
(
おやじ
)
で、その日もまだうす暗いのに猿沢の池へかかりますと、あの
采女柳
(
うねめやなぎ
)
の
枝垂
(
しだ
)
れたあたり、建札のある
堤
(
つつみ
)
の下に漫々と湛えた夜明け前の水が
竜
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
まだ非常線も張らねえのに、お
門
(
かど
)
にゃ、
枝垂
(
しだ
)
れ柳の花火が綺麗に見えましょう。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いみじくも
枝垂
(
しだ
)
るるさくら
日
(
ひ
)
の
本
(
もと
)
の
良子
(
ながこ
)
女王
(
によわう
)
が
素直
(
なほ
)
きおん
眉
(
まゆ
)
桜
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
が、若者はさり
気
(
げ
)
ない調子で、噴き井の上に
枝垂
(
しだ
)
れかかった白椿の花を
毮
(
むし
)
りながら
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
衣
(
きぬ
)
ずれの音立てて、手をあげてぞ指さし問いたる。霞ヶ峰の半腹に薄き煙めぐりたり。頂の松
一本
(
ひともと
)
、濃く黒き影あざやかに、左に傾きて
枝垂
(
しだ
)
れたり。頂の
兀
(
は
)
げたるあたり、土の色も白く見ゆ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
地震
(
なゐ
)
崩
(
くづ
)
れそのままなれや石崖に
枝垂
(
しだ
)
れ桜は咲き枝垂れたり
桜
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
さうさう、いつか見た
古備前
(
こびぜん
)
の徳利の口もちよいと
接吻
(
せつぷん
)
位したかつたつけ。鼻の先に染めつけの皿が一枚。
藍色
(
あゐいろ
)
の柳の
枝垂
(
しだ
)
れた下にやはり藍色の人が
一人
(
ひとり
)
、
莫迦
(
ばか
)
に長い
釣竿
(
つりざを
)
を伸ばしてゐる。
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と白い手と一所に、
銚子
(
ちょうし
)
がしなうように見えて、水色の
手絡
(
てがら
)
の
円髷
(
まるまげ
)
が重そうに
俯向
(
うつむ
)
いた。——
嫋
(
なよや
)
かな女だというから、その
容子
(
ようす
)
は想像に難くない。欄干に青柳の
枝垂
(
しだ
)
るる
裡
(
なか
)
に、例の一尺の
岩魚
(
いわな
)
。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
古い池に
枝垂
(
しだ
)
れた桜は、年毎に乏しい花を開いた。その内に姫君も
何時
(
いつ
)
の間にか、
大人寂
(
おとなさ
)
びた美しさを具へ出した。が、頼みに思つた父は、年頃酒を過ごした為に、突然故人になつてしまつた。
六の宮の姫君
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
門
(
かど
)
の目印の柳と共に、
枝垂
(
しだ
)
れたようになって、折から
森閑
(
しんかん
)
と風もない。
国貞えがく
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼は今夜の泊りを考えながら、前よりはやや注意深く、両岸に眼を
配
(
くば
)
って行った。松は水の上まで
枝垂
(
しだ
)
れた枝を、鉄網のように
纏
(
から
)
め合せて、林の奥の神秘な世界を、
執念
(
しゅうね
)
く
人目
(
ひとめ
)
から隠していた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
戸外の広場の
一廓
(
ひとくるわ
)
、総湯の前には、火の見の
階子
(
はしご
)
が、高く初冬の空を
抽
(
ぬ
)
いて、そこに、うら枯れつつも、大樹の柳の、しっとりと
静
(
しずか
)
に
枝垂
(
しだ
)
れたのは、「火事なんかありません。」と言いそうである。
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さつと
音
(
おと
)
して、
柳
(
やなぎ
)
の
地摺
(
ぢず
)
りに
枝垂
(
しだ
)
れた
葉
(
は
)
が、
裾
(
すそ
)
から
渦
(
うづ
)
を
卷
(
ま
)
いて
黒
(
くろ
)
み
渡
(
わた
)
つて、
搖
(
ゆ
)
れると
思
(
おも
)
ふと、
湯氣
(
ゆげ
)
に
蒸
(
む
)
したやうな
生暖
(
なまぬる
)
い
風
(
かぜ
)
が
流
(
なが
)
れるやうに、ぬら/\と
吹掛
(
ふきかゝ
)
つて、
哄
(
どつ
)
と
草
(
くさ
)
も
樹
(
き
)
も
煽
(
あふ
)
つて
鳴
(
な
)
つたが、
裾
(
すそ
)
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
枝
常用漢字
小5
部首:⽊
8画
垂
常用漢字
小6
部首:⼟
8画
“枝垂”で始まる語句
枝垂桜
枝垂柳
枝垂梅
枝垂栗
枝垂櫻