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捉
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とら
ふりがな文庫
“
捉
(
とら
)” の例文
「いや、お待ちください。いま騒ぎ立てたところで、賊を
捉
(
とら
)
えることはできません。誘拐は少なくとも二時間以前に行われたのです」
黒蜥蜴
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「さん・せばすちあん」は船長を
捉
(
とら
)
え、もう一度熱心に話しかける。船長はやはり冷笑したきり、何とも彼の言葉に答えないらしい。
誘惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕
(
ぼく
)
思
(
おも
)
ふに、いつたい
僕等
(
ぼくら
)
日本人
(
にほんじん
)
の
麻雀
(
マージヤン
)
の
遊
(
あそ
)
び
方
(
かた
)
は
神經質
(
しんけいしつ
)
過
(
す
)
ぎる。
或
(
あるひ
)
は
末梢的
(
まつせうてき
)
過
(
す
)
ぎる。
勿論
(
もちろん
)
技
(
ぎ
)
を
爭
(
あらそ
)
ひ、
機
(
き
)
を
捉
(
とら
)
へ、
相手
(
あひて
)
を
覘
(
ねら
)
ふ
勝負事
(
しようぶごと
)
だ。
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
かくてこれ
等
(
ら
)
の
展望
(
てんぼう
)
をほしいまゝにしたわが
郵船
(
ゆうせん
)
はナポリ
港
(
こう
)
に
到着
(
とうちやく
)
し、ヴェスヴィオを
十分
(
じゆうぶん
)
に
見學
(
けんがく
)
し
得
(
う
)
る
機會
(
きかい
)
も
捉
(
とら
)
へられるのである。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
子之助は父を
畏
(
おそ
)
れて、湊屋の下座敷から庭に飛び下り、海岸の浅瀬を
渉
(
わた
)
って逃げようとしたが、使のものに見附けられて
捉
(
とら
)
えられた。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
捉
(
とら
)
うる処法に
合
(
かな
)
えば、門番は
立竦
(
たちすくみ
)
になりて
痛疼
(
いた
)
さに
堪
(
たま
)
らず、「暴徒が起った。
大
(
た
)
……大……大変、これ、一大事じゃ、来てくれい。」
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お豊はそう云いながら、
角樽
(
つのだる
)
を取って、その口から
冷
(
ひや
)
のまま飲もうとした。深喜は近よってその手を
捉
(
とら
)
え、角樽を奪って脇へ置いた。
花も刀も
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「どっこいやらぬ」と引っ
捉
(
とら
)
え、「女の足でこの夜道、しかも険しい山道を、走ったところで間に合わぬ。それより
俺
(
わし
)
の酌でもせい」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
緊束衣
(
きんそくい
)
が、一種の帆布の袋が、私の両腕を
捉
(
とら
)
えた。人々は私の生命について責めを帯びてるのだった。私の事件は上告してあった。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それは眠るにも非ず覚めたるにも非ざる中間に於て悠久なるものを情緒に於て
捉
(
とら
)
えようとするかれ持前の思惟の仕方を続けている。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼女はしかし子供つぽい調子でやつぱり何か
饒舌
(
しゃべ
)
り続けてゐた。それがどんな内容を持つてゐるのか伊曾は全く
捉
(
とら
)
へてゐなかつた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
吾ともなく興の起るのがすでに
嬉
(
うれ
)
しい、その興を
捉
(
とら
)
えて横に
咬
(
か
)
み
竪
(
たて
)
に
砕
(
くだ
)
いて、これを句なり詩なりに仕立上げる順序過程がまた嬉しい。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その単純に似たる客観の描写のうちに図らずも作者の深い複雑な主観を
捉
(
とら
)
え得たときは、読者はそれから深い感銘を得るのである。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
捉
(
とら
)
えどころのない故に一層根強いものであった。ごつんごつんと頭をたたかれたような先年来の労苦が、半夜の
瞼
(
まぶた
)
を濡らすのであろう。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
隊長らしい男が、
駭
(
おどろ
)
いた風で、塵箱にかかった男の腕を
捉
(
とら
)
えた。そして部員を促して、毒瓦斯の沈澱する向うの闇へ、前進していった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
千九百四年以来順次に出版せらるる独逸人 Perzinski の著書は短きものなれど各編ごとに一画家を
捉
(
とら
)
へてこれを論評せり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
菓物
(
くだもの
)
を盗んだといっては、追いかけて
捉
(
とら
)
えられて、路傍の門に細引きでくくり付けられ、あるいは長い
物干竿
(
ものほしざお
)
で、走る背なかを
撲
(
う
)
たれて
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
『
紀
(
こつな
)
どのは、
質屋
(
しちや
)
のことを
御存
(
ごぞん
)
じかな。』と、
玄竹
(
げんちく
)
の
機智
(
きち
)
は、
敵
(
てき
)
の
武器
(
ぶき
)
で
敵
(
てき
)
を
刺
(
さ
)
すやうに、
紀
(
こつな
)
の
言葉
(
ことば
)
を
捉
(
とら
)
へて、
紀
(
こつな
)
の
顏
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
を
赧
(
あか
)
くさせた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
こうした春の日の光の下で、人間の心に
湧
(
わ
)
いて来るこの不思議な悩み、あこがれ、寂しさ、
捉
(
とら
)
えようもない孤独感は何だろうか。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
するとその笑い声の奇態なるに驚いてレクシンを少し横にやったですけれども私の胸倉はやはり
捉
(
とら
)
えて放さなかった。そこで私はいうた。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
こう命ずるような声を岸本は自分の
頭脳
(
あたま
)
の内で聞いた。彼は立ちかける兄の
袖
(
そで
)
を心では
捉
(
とら
)
えながらも、
何事
(
なんに
)
も言出すことが出来なかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
鎌倉にこそ入ったが、そして直義をも
捉
(
とら
)
えはしたが、尊氏自身もまた、みずから掘った
坑
(
あな
)
にひとしい重囲に墜ちていたのだった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
梅雨
(
つゆ
)
が明けて雷が鳴る頃になつた。雷といへば上州あたりには
雷狩
(
かみなりがり
)
をして、
捉
(
とら
)
へた奴を
料
(
れう
)
つて食べる
土地
(
ところ
)
があるげに聞いてゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
愛憎の心理の機微を公平に
捉
(
とら
)
え、人生の風波に
雄々
(
おお
)
しく耐えて、いっさいをほろ苦い微笑でつつもうとしているからだと思う。
「にんじん」とルナアルについて
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
翌日になって豊雄は
閨房
(
ねや
)
から逃げ出して庄司に話した。庄司は
熊野詣
(
くまのもうで
)
に年々来る
鞍馬寺
(
くらまじ
)
の法師に頼んで怪しい物を
捉
(
とら
)
えてもらうことにした。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
自分の作のどういう点がほんとに彼を感動さしたのか——それは一見明瞭のようであって、しかしどこやら
捉
(
とら
)
えどころのない暗い感じだった。
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
不意の出来事に人々は
唯
(
ただ
)
あれ/\といふばかりで、そのうちの一人が娘の帯を引つ
捉
(
とら
)
へようとしたが、手がとゞかないので取逃してしまつた。
梟娘の話
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
感じたのだよ。君は恐ろしい魔手に
捉
(
とら
)
われているのだ。そうして、ベアトリーチェは……彼女はこの秘密についてどういう役割を勤めるのかな
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
「オーライ」作業服を着た男たちは、声とともに、寄ってたかって僕を
捉
(
とら
)
え、用意の麻袋を頭からすっぽり
被
(
かぶ
)
せてしまった。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
お芳は、二人にくらべると、まだそれほどでもなかったが、しかし、彼女のうしろには大巻運平老がいて、不思議な力で彼の心を
捉
(
とら
)
えていた。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
それをさまざまの形にしながら
真似
(
まね
)
るのですが、瞬間的にそう云う女優の癖や感じを
捉
(
とら
)
えることは、彼女は実に上手でした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
今羅摩が牲にせんとせる馬、
脱
(
のが
)
れて私陀の二児の住所へ来たので、二児
甫
(
はじ
)
めて五歳ながら勇力絶倫故、その馬を
捉
(
とら
)
え
留
(
とど
)
めた。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
不意に走り近づいて
捉
(
とら
)
えて見たところ、それは自分の母であって非常に
叱
(
しか
)
りつけられたという話も、その近くの村の人から聴いたことがある。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「それならいゝが、笹野の旦那が折入つての頼みといふのは、——近頃御府内を荒し廻る辻斬を
捉
(
とら
)
へるか、せめて正體を突き留めろといふのだ」
銭形平次捕物控:126 辻斬
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
他の僧徒らまた一顧するや怪しく叫び、期せずして相
捉
(
とら
)
う。たとえば恐怖の流れ狂僧の
枯躯
(
こく
)
を
繞
(
めぐ
)
り、歯がみして向うところを転ずるごとき、間。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
組屋敷の役人が威張りまして町人百姓などを
捉
(
とら
)
えて只今申す圧制とか何とか云うので、少し気に入らんことがあると無闇に
横面
(
よこつら
)
を張飛ばしたり
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
事露見して十一月五日却って赤兄のために
捉
(
とら
)
えられ、九日紀の
温湯
(
ゆ
)
の
行宮
(
あんぐう
)
に送られて其処で皇太子中大兄の
訊問
(
じんもん
)
があった。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
とお雪は山吹のような金色の花模様の中に、ヒラヒラと舞う白い蝶を
捉
(
とら
)
えようとして、浅瀬に
裳
(
も
)
をとられたように引返し
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今まお熊さへ出で行くと見るより、
直
(
ただち
)
に立つて後を追はんとするを、松島、
忽如
(
こつじよ
)
猿臂
(
えんぴ
)
を伸ばして
袂
(
たもと
)
を
捉
(
とら
)
へつ、「梅子さん」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
あるいは、孤島の中にもあらうし、極地に近い辺土にも——そこに棲む人達さえあれば、必ず
捉
(
とら
)
まえてしまうであろう。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
コスモは
疾
(
と
)
うに決心して、その決心を実行するはずであったが、彼はただ熱情に
捉
(
とら
)
えられて頭を悩み苦しめていたのである。彼は理論的に考えた。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
わずかなつぶやきの声をも
捉
(
とら
)
えんとして緊張し、船中にちょっと起こった小さい物音にまで熱心に注意する、われと我が鼓膜に気がつくのである。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
その条件以外にその実体を
捉
(
とら
)
えることのできぬもの、——死も、孤独も、まことにかくの
如
(
ごと
)
きものであろうと思われる。
人生論ノート
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
「あれらは音楽そのものですよ。本格のものもやれるのですが、やはり譜にあまり
捉
(
とら
)
われてはおりません。そんなもの面白くないのでありましょう」
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
文字の精共が、一度ある事柄を
捉
(
とら
)
えて、これを己の姿で現すとなると、その事柄はもはや、
不滅
(
ふめつ
)
の生命を得るのじゃ。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
此方
(
こなた
)
は言葉もなく袖を
捉
(
とら
)
へて駆け出せば、息がはづむ、胸が痛い、そんなに急ぐならば
此方
(
こち
)
は知らぬ、お前一人でお
出
(
いで
)
と怒られて、別れ別れの到着
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
凡近卑小の材を
捉
(
とら
)
えて人生の機微を描こうとした作者の観照的態度に対して批判を加えた者は殆んど一人もなかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
人の如く(記憶によりて思ひ出づれば)、かの美しき目即ち愛がこれをもて
紐
(
ひも
)
を造りて我を
捉
(
とら
)
へし目を見たり —一二
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
仏者に問わば、例の女子は三界に家なしの流義で既に解決されて在るというか知らぬが、かくの如きは
勿論
(
もちろん
)
甚だしき独断の
誤謬
(
ごびゅう
)
に
捉
(
とら
)
われたものである。
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
説明
(
せつめい
)
したゞけではなんでもないことですが、この
時代
(
じだい
)
に、これほど
細
(
こま
)
かく
捉
(
とら
)
へがたいことを
現
(
あらは
)
した
人
(
ひと
)
はないのです。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
捉
常用漢字
中学
部首:⼿
10画
“捉”を含む語句
引捉
取捉
捕捉
把捉
択捉
生捉
蛇捉
捉績
電捉
盲捉戯
擇捉島
捕捉滅尽
捕捉殲滅
一捉
捉出
拘捉
利腕捉
不捉