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つた
ふりがな文庫
“
拙
(
つた
)” の例文
叔父の会津友次郎翁から筆札の
拙
(
つた
)
なさを叱られ、それならひとつ稽古しようかといふので、なによりもまつ先に、文字は自分の意思を
秋艸道人の書について
(新字旧仮名)
/
吉野秀雄
(著)
抱上
(
いだきあ
)
げ今日より後は如何にせん
果報
(
くわはう
)
拙
(
つた
)
なき
乳呑子
(
ちのみご
)
やと聲を
放
(
はな
)
つて
悲
(
かな
)
しむを近所の人々聞知りて
追々
(
おひ/\
)
集
(
あつ
)
まり入來り
悔
(
くや
)
み
言
(
いひ
)
つゝ吉兵衞に力を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
私はいままでが
拙
(
つた
)
なかったように、これからさきも恐らくしくじってしまうかも知れぬ。そのとき人は私の誠実の足らわぬを笑うがいい。
前途なお
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
≪オォルの折れる
迄
(
まで
)
、
腕
(
うで
)
の折れる迄もと思い全力を挙げて戦って参りましたが武運
拙
(
つた
)
なく敗れて故郷の
皆様
(
みなさま
)
に
御合
(
おあわ
)
せする顔もありません。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
私は才分も
拙
(
つた
)
ない、富裕でもない、貴女にとっては不足であろうし、愛して貰う資格はないかもしれない、けれども私は貴女を
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
ああ神の教会を以て白壁または
赤瓦
(
せきが
)
の内に存するものと思いし余の
拙
(
つた
)
なさよ、神の教会は宇宙の広きがごとく広く、善人の多きがごとく多し
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
何でも才
拙
(
つた
)
なく学浅くして
貌
(
かたち
)
さへ醜くき男が万づに勝れて賢き美はしき乙女に
焦
(
こが
)
れて
迚
(
とて
)
も協はざる恋路にやつるゝ憐れさを
嘆
(
かこ
)
つたものださうな。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
と歌も手も
拙
(
つた
)
ないが、才をもって世を渡るに巧みなだけな事を尽してあった。とはいえ、それを受けたのは一葉である。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
更に「自雷」にあらためたのは
何
(
ど
)
ういうわけか判らない。まして後の作者が「児雷」に改めたのは、いよいよ
拙
(
つた
)
ない。
自来也の話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
だから、この老婢がわざ/\幾つも道を越える不便を忍んで少女の店へ茶を求めに行く気持ちも
汲
(
く
)
めなくはなく、老婢の
拙
(
つた
)
ない言訳も
強
(
し
)
ひて追及せず
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
いつでもその
中
(
うち
)
の二、三軒には、
拙
(
つた
)
ない文字で貸家
札
(
ふだ
)
の張られていない事はない。内職の札の下っていない事はない。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
唐津藩に
齎
(
もた
)
らし賜はらば藩公の御喜びあるべく、此文の
偽
(
いつはり
)
ならざる旨も亦明らかなるべしと思ひ
計
(
はか
)
りてなせし事なり。歌の
拙
(
つた
)
なきを笑ひ給ふ事なかれ。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ところがいよいよ籤を引いてから、運
拙
(
つた
)
なかったほうの娘は、やすやすとその決定を承知しようとしなかった。一方の娘はその不信実さに腹をたてた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
たいへん素朴な疑念であった。求めて職が得られないならば、そのときには、純粋に無報酬の行為でもよい。
拙
(
つた
)
なくても、努力するのが、正しいのではないのか。
花燭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「私を見てくれ、私はかく虫けらのごとく貧しく醜く造られ、そしてかく
拙
(
つた
)
なき運命を与えられ、しかしてこのところまで生長した。私に神の祝福を祈ってくれ」
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
「
拙
(
つた
)
ない曲を、永々とおきき下さいましてありがとう存じまする。それでは、
退
(
さ
)
がらせていただきます」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ねえ、わが芸術は
拙
(
つた
)
なけれども、というよろこび、わが吹く笛はとその響きゆく果を感じられるよろこびというものは、これは全く単なる才能の問題ではないのですものね。
獄中への手紙:07 一九四〇年(昭和十五年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
僕は、諸君に折り入っての相談がある。見られるとおり、武運
拙
(
つた
)
なくカラッ尻の態となったが、まだ僕は屈しようとはせぬ。それは、僕に抵当があったからだ。でまず、その品を
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
何んと
拙
(
つた
)
ない幼稚な句ではないか。書いたことは書いたが背中に冷や汗がにじんで来た。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
だがこの単調な仕事が、
酬
(
むく
)
いとしてそれらの作をいや美しくする。かかる反復は
拙
(
つた
)
なき者にも、技術の完成を与える。長い労力の後には、どの職人とてもそれぞれに名工である。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「定めなき
契
(
ちぎ
)
り、
拙
(
つた
)
なき日々の
業因
(
ごういん
)
」、今いう
浮川竹
(
うきかわたけ
)
の流れの身と、異なるところがないようであるが、彼らのような支度では、本式の
田舎
(
いなか
)
わたらいはできそうにも思われない。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「お春どの。そなたは今宵はどうした訳じゃ——何という
拙
(
つた
)
ない手振を見せたのじゃ」
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
かく
万
(
よろ
)
ずの物がしみとおるような力で彼の
内部
(
なか
)
までもはいって来るのに、彼は五十余年の生涯をかけても、何一つ本当につかむこともできないそのおのれの愚かさ
拙
(
つた
)
なさを思って
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
人間はいかほどに卑しく
拙
(
つた
)
なくありとも、天地至妙の調和は、之によりて
毀損
(
きそん
)
せらるゝことなきなり。あはれ、この至妙の調和より、万物皆な或一種の声を放ちつゝあるにあらずや。
万物の声と詩人
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
その吹き出づる哀楽の曲は彼が運命
拙
(
つた
)
なき身の上の旧歓今悲を語るがごとくに人々は感じたであろう。聴き捨てにする人は少なく、一銭二銭を彼の手に握らして立ち去るが多かった。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
順序
(
じゅんじょ
)
として、これからポツポツ
竜宮界
(
りゅうぐうかい
)
のお
話
(
はなし
)
を
致
(
いた
)
さねばならなくなりましたが、もともと
口
(
くち
)
の
拙
(
つた
)
ない
私
(
わたくし
)
が、
私
(
わたくし
)
よりももっと
口
(
くち
)
の
拙
(
つた
)
ない
女
(
おんな
)
の
口
(
くち
)
を
使
(
つか
)
って
通信
(
つうしん
)
を
致
(
いた
)
すのでございますから
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
中には
昨夜
(
ゆうべ
)
の会で
団扇
(
うちわ
)
の大きなのを背中に入れて帰る者もあれば、平たい大皿を懐中し
吸物椀
(
すいものわん
)
の
蓋
(
ふた
)
を
袂
(
たもと
)
にする者もある。又
或
(
あ
)
る奴は、君達がそんな
半端物
(
はんぱもの
)
を挙げて来るのはまだ
拙
(
つた
)
ない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それで
恨
(
うら
)
みを述べると、あべこべに立腹されてしまうから、一馬先生顔色を失い、このところ全く圧倒されて、男一匹、わが身の
拙
(
つた
)
なさ、だらしなさ、それとなく
懊悩
(
おうのう
)
、叛逆の色も深い。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
敵将マカロフ提督
之
(
これ
)
を迎撃せむとし、
倉皇
(
さうくわう
)
令
(
れい
)
を下して其旗艦ペトロパフロスクを港外に進めしが、武運や
拙
(
つた
)
なかりけむ、我が沈設水雷に触れて、巨艦一爆、提督も
亦
(
また
)
艦と運命を共にしぬ。
詩
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その
拙
(
つた
)
なさ加減は言うまでもないが、ただ絵具をなすりつけていろいろな色を出して見ることが非常に愉快なので、何か枕元に置けるような、小さな色の美しい材料があればよいがと思うて
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
女はただ
隼
(
はやぶさ
)
の空を
搏
(
う
)
つがごとくちらと
眸
(
ひとみ
)
を動かしたのみである。男はにやにやと笑った。勝負はすでについた。舌を
腭頭
(
あごさき
)
に飛ばして、泡吹く
蟹
(
かに
)
と、
烏鷺
(
うろ
)
を争うは策のもっとも
拙
(
つた
)
なきものである。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
有ってもその批評が悪いからである。何でも人の上に働く術はそういうもので、批評家が悪いと
如何
(
いか
)
に巧妙なる術を行っても一向それが分らぬ。これを嫉妬心よりして言うと
拙
(
つた
)
ないと言うて笑う。
政治趣味の涵養
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
この蟋蟀だって誠に
拙
(
つた
)
ないもので、その点お話にならないものでした。
迷彩
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
更に其の頼信紙を見せて貰うと、鉛筆の走り書きではあるが文字は至って
拙
(
つた
)
ない、露見を防ぐ為故と拙なく書いたのかも知らぬが、余の鑑定では自分の筆蹟を変えて書く程の力さえ無い人らしい
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
我が歌は
拙
(
つた
)
なかれどもわれの歌
他
(
こと
)
びとならぬこのわれの歌
和歌でない歌
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
心中
(
しんぢう
)
の数へぶし
拙
(
つた
)
なげながら
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
うまれ
拙
(
つた
)
な。
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
看護婦さんの眠っております
隙
(
すき
)
を見ましては、
拙
(
つた
)
ない女文字を走らせるので
御座
(
ござ
)
いますから、さぞかしお読みづらい、おわかりにくい事ばかりと存じますが
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
その手蹟も
拙
(
つた
)
なからず、武士らしい手筋とみえた。本文の書状のうちには、二分判一つを入れるほどの小さい袋もまき込んであるなど、なかなかよく行きとどいていた。
探偵夜話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もうすっかり見えなくなった。
拙
(
つた
)
ない
宿世
(
すくせ
)
か、前世の悪業か、あーあ今日もまた、極楽への行き損じか。誰を恨まんようもない。身も根も疲れ果てた。悲しもうにも涙も尽き果てた
或る秋の紫式部
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
まったく断片的でとりとめのないものだ、けれどもぜんたいに
溢
(
あふ
)
れている恋のよろこび、
凱歌
(
がいか
)
にも似た激しい恋のよろこびが、そして文章と字の
拙
(
つた
)
なさが、彼に深い印象を与えた。
葦
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「これほど
拙
(
つた
)
ないとは思わなかった、印刷して見ると我ながら拙なくて読むに堪えない」と、読終った時は心が
早鐘
(
はやがね
)
を突く如くワクワクして容易に沈着いていられなかったとある。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
拙
(
つた
)
なき器具や
粗
(
あら
)
き素材。売らるる場所とても狭き
店舗
(
てんぽ
)
、または路上の
蓆
(
むしろ
)
。用いらるる個所も散り荒さるる室々。だが摂理は不思議である。これらのことが美しさを器のために保障する。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
能
(
よく
)
し
讀書
(
よみかき
)
も
拙
(
つた
)
なからず料理人の女房に
成
(
なし
)
置
(
おく
)
は
勿體
(
もつたい
)
無きなどと見る人
毎
(
ごと
)
に
言合
(
いひあへ
)
る程成ば吉兵衞は一方成ず思ひ
偕老同穴
(
かいらうどうけつ
)
の
契
(
ちぎ
)
り
淺
(
あさ
)
からず
暫時
(
しばらく
)
連添
(
つれそふ
)
内
(
うち
)
姙娠
(
にんしん
)
なし元祿二年四月廿八日
玉
(
たま
)
の如く
成
(
なる
)
男子を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
「兵どもに、いらざる苦労をさせるお
汝
(
こと
)
らは、ちと
拙
(
つた
)
ないぞ」
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その
拙
(
つた
)
ないことはいうまでもない。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
拙
(
つた
)
なき近詠を左に
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
貴方様方のような名高いお方のお眼に止まりそうにもない
拙
(
つた
)
ないピアノ教師の身として、このような及びもつかぬ事を考えておりますことが、もしも他人にわかりましたならば
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
所持の
御名号
(
ごみょうごう
)
を掛けて、
拙
(
つた
)
ない法話を初めたのでございました
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
追
(
おつ
)
て
成長
(
せいちやう
)
まし/\
器量
(
きりやう
)
拔群
(
ばつくん
)
に
勝
(
すぐ
)
れ
發明
(
はつめい
)
なれば加納將監
夫婦
(
ふうふ
)
は
偏
(
ひとへ
)
に實子の如く
寵
(
いつ
)
くしみ
育
(
そだて
)
ける
扨
(
さて
)
或日
(
あるひ
)
徳太郎君に
附
(
つき
)
の女中みな
集
(
あつま
)
り
四方山
(
よもやま
)
の
咄
(
はなし
)
などしけるが若君には
御運
(
ごうん
)
拙
(
つた
)
なき
御生
(
おうま
)
れなりと申すに徳太郎君
御不審
(
ごふしん
)
に
思
(
おぼし
)
めし女中に向ひ其方ども予が事を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
“拙”の意味
《名詞・形容動詞》
(セツ)得意でない事、苦手。
《代名詞》
(セツ・セチ:古風、しばしば滑稽。明治期以降は職人・芸人・幇間の自称や遊里における用語)自称に用いる。
(出典:Wiktionary)
拙
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“拙”を含む語句
拙者
拙劣
拙僧
気拙
巧拙
下拙
拙者方
拙作
拙宅
古拙
拙老
稚拙
迂拙
拙堂
拙陋
穉拙
拙夫
稚拙味
拙筆
氣拙
...