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抛
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なげう
ふりがな文庫
“
抛
(
なげう
)” の例文
また
或時
(
あるとき
)
、市中より何か
買物
(
かいもの
)
をなして
帰
(
かえ
)
り
掛
(
が
)
け、
鉛筆
(
えんぴつ
)
を借り
少時
(
しばらく
)
計算
(
けいさん
)
せらるると思ううち、アヽ
面倒
(
めんどう
)
だ面倒だとて鉛筆を
抛
(
なげう
)
ち去らる。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
晋の
区純
(
おうじゅん
)
は鼠が門を出かかると
木偶
(
でく
)
が槌で打ち殺す
機関
(
からくり
)
を作った(『類函』四三二)。北欧のトール神の槌は専ら
抛
(
なげう
)
って鬼を殺した。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「望みある者でございます。お
召仕
(
めしつか
)
いくださいましッ。——主と仰ぎ奉って、身命を
抛
(
なげう
)
って、働きたい望みある者でございますッ!」
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
次に私は如何なる場合に、すべての婦人にその子女の養育を
抛
(
なげう
)
ってまで屋外の労働と政治運動とに飛び出すことを奨励したでしょうか。
婦人改造の基礎的考察
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
が、政治的天才は常に大義そのものには一文の銭をも
抛
(
なげう
)
たないものである。唯民衆を支配する為には大義の仮面を用ひなければならぬ。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
男子社会の不品行にして
忌憚
(
きたん
)
するなきその有様は、火の
方
(
まさ
)
に燃ゆるが如し。徳教の急務は百事を
抛
(
なげう
)
ち先ずこの火を消すにあるのみ。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ちょうど生きた
人魂
(
ひとだま
)
だね。
扨
(
さ
)
て門を這入ってみると
北風
(
ほくふう
)
枯梢
(
こしょう
)
を
悲断
(
ひだん
)
して
寒庭
(
かんてい
)
に
抛
(
なげう
)
ち、柱傾き瓦落ちて
流熒
(
りゅうけい
)
を
傷
(
いた
)
むという、散々な有様だ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
英語階梯や「リードル」を携へて洋学先生の門に至りしものが更に之を
抛
(
なげう
)
ちて再び漢学塾を訪ひ、古老先生の教を拝聴せしものは何故ぞ。
明治文学史
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
まして教職を
抛
(
なげう
)
って両手を
袂
(
たもと
)
へ入れたままで
遣
(
や
)
り
切
(
き
)
るのは、立ちながらみいらとなる
工夫
(
くふう
)
と評するよりほかに
賞
(
ほ
)
めようのない方法である。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこですべてを下へ
抛
(
なげう
)
った。さあっと電灯の滑って光る部分が俄かに広くなった。あとは——マアセルはいま寝台の端に腰を下ろして——
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
幾万の家産を
抛
(
なげう
)
ち、義理ある父母を棄てた浩平はそのまま工夫の群に姿を隠したがいつの間にかその前半生の歴史をくらましてしもうた。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
しかし先生が訳詩の筆はミュッセがリュシイにとりかかられて間もなく事によって
抛
(
なげう
)
たれて以来、再び執り上げられる機も
屡
(
しばしば
)
ないとすれば
「珊瑚集」解説
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
そういった
人中
(
ひとなか
)
の商売は
黒人
(
くろと
)
のことですから、万事に抜け目がなく、たとえば売り
溜
(
だ
)
めの銭などは、バラで
抛
(
なげう
)
って置いてある。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
次
(
つぎ
)
に
著意
(
ちやくい
)
して
道
(
みち
)
を
求
(
もと
)
める
人
(
ひと
)
がある。
專念
(
せんねん
)
に
道
(
みち
)
を
求
(
もと
)
めて、
萬事
(
ばんじ
)
を
抛
(
なげう
)
つこともあれば、
日々
(
ひゞ
)
の
務
(
つとめ
)
は
怠
(
おこた
)
らずに、
斷
(
た
)
えず
道
(
みち
)
に
志
(
こゝろざ
)
してゐることもある。
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
あなたは小幡藩士として主家にことあるときは一身を
賭
(
と
)
すであろう。また幕府が軍を催す場合にも命を
抛
(
なげう
)
って働くに違いない。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蒙
(
かうむ
)
り度此上は我々共御家來の
末
(
すゑ
)
に召し出さるれば身命を
抛
(
なげう
)
つて
守護仕
(
しゆごつかまつ
)
るべし御心安く思し召さるべし然れども我々は
是迄
(
これまで
)
惡逆
(
あくぎやく
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
後深く内部生活に沈潜するに及びては、一切前人の証権を
抛
(
なげう
)
ち去つて、自ら独立にわが至情の要求に神の声を聴かむとしぬ。
予が見神の実験
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
旅路の憂さに処女性まであっさり
抛
(
なげう
)
った今では、迷えば迷いっぱなし、気が散れば気が散りっぱなしで、そうなった自分を
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
不可能であるという理由で私は欲求を
抛
(
なげう
)
つことが出来ない。それは私として何という
我儘
(
わがまま
)
であろう。そして自分ながら何という
可憐
(
かれん
)
さであろう。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
余一日、家童、門生の業を
抛
(
なげう
)
ち学を廃するを見、その
故
(
ゆえ
)
を問う。皆
云
(
い
)
う、今日日曜日なり、これをもってかくのごとしと。
日曜日之説
(新字新仮名)
/
柏原孝章
(著)
つまり、よくよくこの仇十洲の回錦図巻に
惚
(
ほ
)
れこんだればこそ、万事を
抛
(
なげう
)
って模写にとりかかったものと見るほかはない。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし、いったん事ある場合真先に夫子のために生命を
抛
(
なげう
)
って顧みぬのは誰よりも自分だと、彼は自ら深く信じていた。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
学者をもって自ら任ずる者は、学理のためには一命を
抛
(
なげう
)
つの覚悟なくして、何をもってこの大任に堪えられよう。学者の眼中、学理あって利害なし。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
独逸
(
ドイツ
)
の大宰相としてビスマーク公に譲らぬところのピュロー公は、議会の反対に苦しんで、
到頭
(
とうとう
)
自分の地位を
抛
(
なげう
)
つの
已
(
や
)
むなきに至ったのであります。
平和事業の将来
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「まだ投げるのは早いです。打つべき手は、まだいくらでもありましょう。こんどは間違いなくやります。一命を
抛
(
なげう
)
ってやります。命令して下さい」
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
幸吉が結婚を承知しなければ、父大宅氏は、村長の栄職を
抛
(
なげう
)
って、S村を退散しなければならない程の事情があった。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
これだけの動機で人の命を絶とうとする際に、生命の貴さに打たれて「
俄
(
にわか
)
に
怨敵
(
おんてき
)
の思ひを忘れ、
忽
(
たちま
)
ち武意の気を
抛
(
なげう
)
つ」
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
その間に、私は自分の性質や境遇が、政治的生活を送るに適しないということを
覚
(
さと
)
って、断然年来の志望を
抛
(
なげう
)
った。
「古琉球」自序
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
ステパンは僧院に這入ると同時に、世間の人が難有く思つてゐる一切の事、自分も奉公をしてゐる間矢張難有く思つてゐた一切の事を
抛
(
なげう
)
つたのである。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
縦令
(
たとへ
)
旦那様
(
だんなさま
)
が
馴染
(
なじみ
)
の女の
帯
(
おび
)
に、百
金
(
きん
)
を
抛
(
なげう
)
たるゝとも
儂
(
わたし
)
が
帯
(
おび
)
に百五十
金
(
きん
)
をはずみ
給
(
たま
)
はゞ、
差引
(
さしひき
)
何の
厭
(
いと
)
ふ所もなき
訳也
(
わけなり
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
唯それだけの事に失望して了つて、その失望の為に、
苟
(
いやし
)
くも男と生れた一生を
抛
(
なげう
)
たうと云ふのだ。人たるの
効
(
かひ
)
は
何処
(
どこ
)
に在る、人たる道はどうしたのか。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
たまたま一、二巻の俳書を見る、敢て研究せず、熟読せず、句の解せざる者十中に九、
乃
(
すなわ
)
ち巻を
抛
(
なげう
)
つて他を為す。
俳句の初歩
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
過ぎし日の水と山との旅の回顧、またこれからも遠く山と水が私を待っているのを想うことを許されるならば、なんで生への執着を
抛
(
なげう
)
つことができよう。
利根川の鮎
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
人間だつたら、大きな悲しみに
鎖
(
とざ
)
された余り、あらゆる希望を
抛
(
なげう
)
つて、死を覚悟したと云ふところでもあらうか。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
既に秀子が為に業務を
抛
(
なげう
)
つ程にまで働いたのも愛の為とは云え平生其の意気の有る人でなくては出来ぬ事、従っては斯る場合の感動も人一倍強いと見え
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
彼は売色塲
裡
(
り
)
に人と成り、此も好色修行に身を
抛
(
なげう
)
ち、彼も華奢豪逸を以て心事となし、此も銀むくの煙管を路傍の
狗
(
いぬ
)
に与へて去るの
傲遊
(
がういう
)
を以て快事となす。
「伽羅枕」及び「新葉末集」
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
ロミオ なに、
無事
(
ぶじ
)
で、
勝誇
(
かちほこ
)
って? マーキューシオーが
殺
(
ころ
)
されたのに!
此上
(
このうへ
)
は
禮儀
(
れいぎ
)
も
寛大
(
くわんだい
)
も
天外
(
てんぐわい
)
に
抛
(
なげう
)
った。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
楠公の湊川に討死せる時、何ぞ至善の觀念あらむ、何ぞ其の心事に目的と手段との別あらむ、唯〻君王一旦の知遇に感激して、微臣百年の身命を
抛
(
なげう
)
ちしのみ。
美的生活を論ず
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
『僕は医科をやったんですが、今は彼女のために、
総
(
すべ
)
てを
抛
(
なげう
)
って手馴れぬ作曲に熱中しているんですよ……』
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
人は石を玉と握ることもあれば、玉を石と
抛
(
なげう
)
つ場合もあります。獅子は子を
崖
(
がけ
)
から落します。我々の捨てるものは、往々我々にとって一番捨て難い
宝
(
たから
)
なのです。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
一人が一人に向つて石を
抛
(
なげう
)
てば相手の女は抛つた方へその心を媚びさせて行くのだと思ふと、義男はあらゆる言葉で目の前の女を罵り盡しても足りない氣がした。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
ゆえにその目的を達せんには彼らの労力ももしくは労力の結果たる財産をも、あるいはその二なき生命をも、これを
抛
(
なげう
)
ちこれを棄つることに
毫
(
ごう
)
も猶予せざるなり。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
一般に人間は生か死かの行詰まりにおいて自ら進んで自己を
抛
(
なげう
)
ち棄てる行為に出でるならば、死にながら生との緊張聯関を保ちつつ、かえって死を生に転換し得る。
メメント モリ
(新字新仮名)
/
田辺元
(著)
今度こそは一切の世縁を
抛
(
なげう
)
たねばならぬ身の上であるから、ゆったりした気持で時折青楓氏の書房を訪い、たとい昔のような集りは出来なくとも、青楓氏と二人で
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
われは静寂の来りて宿る果樹園の、うつくしく穏かなる生活を、今ぞ見たり、今ぞ知りたり、悟りたり。わが
生命
(
いのち
)
、そが
為
(
た
)
めに
焼
(
やか
)
れたるおそろしき思ひを、いざ
抛
(
なげう
)
たん。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
帝命じて各々帰省せしめたもう。燕王
位
(
くらい
)
に
即
(
つ
)
きて、諸官員の職を
抛
(
なげう
)
って
遯去
(
のがれさ
)
りし者の官籍を削る。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
其
(
その
)
活動力
(
くわつどうりよく
)
を
失
(
うしな
)
つて
居
(
を
)
る
間
(
あひだ
)
は、
如何
(
いかん
)
ともする
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
ません、
吾等
(
われら
)
は
潔
(
いさぎ
)
よく
其處
(
そこ
)
に
身命
(
しんめい
)
を
抛
(
なげう
)
つ
事
(
こと
)
は
露惜
(
つゆをし
)
まぬが、
其爲
(
そのため
)
に、
海底戰鬪艇
(
かいていせんとうてい
)
が
遂
(
つひ
)
に
彼等
(
かれら
)
の
手
(
て
)
に
掠奪
(
りやくだつ
)
されて
御覽
(
ごらん
)
なさい
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
しかもこの稿を掲げはじめてより間もなく、居士の病状に異変があり、しばしば筆を
抛
(
なげう
)
たざるを得なかったので、全部を掲了するのに十一月までかかっている。前後十七回。
「俳諧大要」解説
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
「本官は貴官に重大な命令を与える。事の成否は帝国の
安危
(
あんき
)
に
係
(
かか
)
っている。仁科少佐は、天皇陛下並に日本帝国の為、万難を排し、身命を
抛
(
なげう
)
って任務を
遂行
(
すいこう
)
する事を欲する」
計略二重戦:少年密偵
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
文久二年とともに湧き起る
澎湃
(
ほうはい
)
たる行動期の一特色は、すでに地方産商業家の中から
算盤
(
そろばん
)
を棄て資財を
抛
(
なげう
)
ってみずから諸戦野に出動する者が続々として認められた点にある。
志士と経済
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
抛
漢検1級
部首:⼿
7画
“抛”を含む語句
抛棄
抛物線
抛擲
抛出
放抛
打抛
抛込
抛下
追抛
執抛
独鈷抛山
槌抛
捨閉擱抛
抛放
抛捨
抛打
抛射物
抛合
抛却
抛入
...