手招てまね)” の例文
いましも、ふとあねが、この不思議ふしぎたかとういただきまりますと、おもいなしか、そのとう手招てまねぎするようながしたのであります。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
をんな彌次郎やじらうとこうへにあがり、よこになつて、此處こゝいと、手招てまねぎをして彌次郎やじらうをひやかす、彌次郎やじらうひとり
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
犬のくそだの、瀬戸物の欠片かけらだの、びたくぎだの、かぞえていると、やがて、後ろで、お蔦の呼ぶ声がした。門のきわに、その姿が見え、手招てまねきしていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と誰に云ったのだか分らないことばを出しながら、いかにも蓮葉はすははたけから出離れて、そして振り返って手招てまねぎをして
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やうや下女げぢよ退がりきりに退がると、今度こんどだれだか唐紙からかみ一寸いつすんほど細目ほそめけて、くろひか眼丈めだけ其間そのあひだからした。宗助そうすけ面白おもしろくなつて、だまつて手招てまねぎをしてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
林田を自分の寝椅子の方に手招てまねきすると、その耳に口をあてて、重要な援助事項を、簡潔に依頼した。
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それは満更まんざら嘘ではない。何度もおれは手招てまねぎをした。」と、素直すなお御頷おうなずきなさいました。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
百姓ひやくしやうれ、町人ちやうにんれ、同船どうせんゆるす。』と、手招てまねきした。天滿與力てんまよりきがすご/\とふねからるのに、ざまアろとはぬばかりの樣子やうすれちがつて、百姓ひやくしやう町人ちやうにんはどや/\とふねつてた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
宗匠頭巾そうしょうずきんを片手に握り締めて、しきりに坊主頭を振り立てながら、懸命に手招てまねぎする恰好が、どうも尋常でない。まんざらいつもの悪ふざけとも思えないから、不審ふしんを打った大迫玄蕃が
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
以て出で來れば重四郎は見て其所へるのは彌十か是は重四郎樣と云ふ時手招てまねぎして畔倉こゑひそめコレ彌十今手に掛けし此奴等はみな宿無やどなしなれど此死骸このしがいが有ては兎角後が面倒めんだうなり何と此奴こいつ等を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
親方が第二の曲をすませたとき、かの女は手招てまねきをしてわたしをんだ。
両手をあげてしきりに手招てまねきをいたしました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
それから静かに手招てまねきして
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
手招てまねきをするとうじさん
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
すると、あちらに、あか帽子ぼうしをかぶった二人ふたりと、くろ帽子ぼうしをかぶった一人ひとり子供こどもが、三にんでおもしろそうにあそんでいて、自分じぶん手招てまねぎしたのであります。
町の天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ちょっと。」「何さ。」手招てまねぎをして、「来て見なよ。」家内を呼出よびだして、両方から、そっと、顔を差寄さしよせると、じっとしたのが、かすかに黄色なくちばしを傾けた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
博士のわれがねのような声にびっくりして、僕は博士が手招てまねきしている一つの室へとびこんだ。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
巽小文治たつみこぶんじ鞍馬くらま竹童ちくどうも、そのことばについてじゅんじゅんに姓名せいめいを明かしていくと、最初さいしょに、まくのかげから手招てまねきした可児才蔵かにさいぞうもそれへきて話しかけ、さけをのんでいたさむらい
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
病人の枕辺まくらべ存外ぞんがい静かであった。頼りなさそうに疲れた顔をしてそこに坐っている母を手招てまねぎして、「どうですか様子は」と聞いた。母は「今少し持ち合ってるようだよ」と答えた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と云う、御狂乱ごきょうらんの一段を御話したのです。俊寛様は御珍しそうに、その話を聞いていらっしゃいましたが、まだ船の見えるあいだは、手招てまねぎをなすっていらしったと云う、今では名高い御話をすると
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
手招てまねきした。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「だんなさまが、お座敷ざしきにすわって、あちらをていなさると、やまほうで、きんほとけさまが手招てまねきなさった……。」とか、むらにはいろいろのはなしがりました。
博士の傍には金時計が天からかかっている。時計の下には赤い柘榴石ガーネットが心臓のほのおとなって揺れている。そのわきに黒い眼の藤尾さんがほそい腕を出して手招てまねぎをしている。すべてが美くしいである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「しッ……」と、辰は手を振った、そして、しきりに、手招てまねぎしている。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士は、車上から手招てまねきをした。
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのうちとういただきまると、またしても、そのとう自分じぶん手招てまねぎするようながしたのであります。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、蛾次郎がじろうをものかげへ手招てまねきした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
博士は手招てまねきした。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
良吉りょうきちは、毎晩まいばん寝床ねどこなかはいると、まどからもれるほしひかりていろいろのことをかんがえていました。——すると、あるばんのこと、不思議ふしぎにもまどから、かれ手招てまねぐものがあります。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
手招てまねきした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にんは、しきりに、自分じぶん手招てまねぎしていました。少年しょうねんは、おかあさんにいてみて、すぐにもそとていこうとおもいました。かれは、ふらふらとへやのなかあるいて、ちゃほうへいって
町の天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やみ手招てまね
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしのところへおいで。」と、手招てまねきするように、なぐさめてくれたものでした。
町はずれの空き地 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、あちらのいわうえ空色そらいろ着物きものた、自分じぶんおなじいとしごろの十二、三さい子供こどもが、っていて、こっちを手招てまねぎをしていました。正雄まさおさんは、さっそくそのそばへって
海の少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしは、このはじめてるおじいさんを不思議ふしぎおもいました。おじいさんは、こっちをいて、にっこりわらっていました。そして、わたしがだんだん不思議ふしぎおもいながらちかづくと手招てまねぎをしました。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)