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惜気
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おしげ
ふりがな文庫
“
惜気
(
おしげ
)” の例文
旧字:
惜氣
小豆色
(
あずきいろ
)
のセーターを着た助手が、水道のホーズから村山貯水池の水を
惜気
(
おしげ
)
もなく注いで、寝台自動車に冷たい行水を使わせている。
病院風景
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
今どきこの湯つぼへ下りて来る人はあるまいと、千浪は安心して、
惜気
(
おしげ
)
もなくその
身体
(
からだ
)
を湯に
嬲
(
なぶ
)
らせて、上ることも忘れたふうだった。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
跡
(
あと
)
になって玉子の代価を勘定して西洋菓子は高くかかるとよく苦情を申しますが家へ十羽も鶏を飼っておけば
惜気
(
おしげ
)
なく玉子を使えます。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
多「はい、有難うがんすけれども、とうに着ればハア破れやんすから、
矢張
(
やっぱ
)
り此の古襦袢の方が
惜気
(
おしげ
)
がなくって
却
(
かえ
)
って働きようがんす」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
お小夜を突き放して、住み馴れた甲府の深夜も、
惜気
(
おしげ
)
もなく捨てて馳けた高安平四郎は、真っ暗な光沢寺の山門を風のように
潜
(
くぐ
)
っていた。
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
数十万円を投じたその地下道を
惜気
(
おしげ
)
もなく
取壊
(
とりこわ
)
し、改めて某区の出版会社の倉庫の中に、新道を造ったほど、
喧
(
やかま
)
しいものだった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
可なり大きく延びた奴を、
惜気
(
おしげ
)
もなく
股
(
また
)
の根から、ごしごし引いては、下へ落して行く内に、切口の白い所が目立つくらい
夥
(
おびただ
)
しくなった。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夕立の空のように急に御機嫌が変って、人に物をやってしまったり、また自分の物を
惜気
(
おしげ
)
もなくこわしてしまったりします。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どういうもんだか美妙斎は評論が好きで、やたらと幼稚な評論をしては頭の貧弱を
惜気
(
おしげ
)
なく
露
(
さら
)
け出してしまった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
セエラの『偉がらなかった』のは
真実
(
ほんとう
)
でした。彼女は思いやりがあって、
慎
(
つつま
)
しやかな少女でした。で、持っているものは、
惜気
(
おしげ
)
もなく分けてやりました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
私の教育に
惜気
(
おしげ
)
もなく掛けて呉れたのは、私を
天晴
(
あッぱ
)
れ一人前の男に仕立てたいが為であったろうけれど、私は今
眇
(
びょう
)
たる腰弁当で、浮世の
片影
(
かたかげ
)
に潜んでいる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼女は
怜悧
(
れいり
)
な親切な女であった。夫を失った時は三十五歳だった。そして身も心も若かったが、深くはいり込んでいた社交界から
惜気
(
おしげ
)
もなく退いてしまった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
桜の春、また雪の時なんぞは、その緋牡丹の燃えた事、冴えた事、葉にも
苔
(
こけ
)
にも、パッパッと
惜気
(
おしげ
)
なく金銀の
箔
(
はく
)
を使うのが、御殿の廊下へ日の
射
(
さ
)
したように輝いた。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
惜気
(
おしげ
)
なく敷き連らねた高価の毛皮。香炉から上る香の匂い。すなわち、善尽くし美尽くした、鳳凰の間の有様を
憤
(
いきど
)
おらしく見廻わしてから老師は二人を見返ったが
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
実にこれらの美術をば
惜気
(
おしげ
)
もなく破壊して兵営や兵器の
製造場
(
せいぞうば
)
にしてしまったような英断壮挙の結果によって成ったものである事を、
今更
(
いまさら
)
の如くつくづくと思知るのであった。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それは余りにも西洋のものを沢山取り入れるのに急いだため、日本の多くのものを
惜気
(
おしげ
)
もなく棄ててしまったことであります。これは勢い止むを得なかったことでありましょう。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
「ええ、又子供達が荒らしに来たものですから、お寺の人が総出でとってしまったんです。若い坊さんがてっぺんまで登って、枝なんか
惜気
(
おしげ
)
もなく折って下に落していました。」
果樹
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
惜気
(
おしげ
)
もなく剃刀を動かす度に、もう幾年となく鼻の下に
蓄
(
たくわ
)
えて置いたやつが
曲
(
ゆが
)
めた彼の顔を
滑
(
すべ
)
り落ちた。好くも切れない剃刀で、彼は
唇
(
くちびる
)
の
周囲
(
まわり
)
の
腫
(
は
)
れ上るほど力を入れて剃った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
またその当時
人形操
(
あやつ
)
りには
辰松八郎兵衛
(
たつまつはちろべえ
)
、吉田三郎兵衛などが盛名を博し、不世出の大文豪、我国の
沙翁
(
さおう
)
と呼ばれる
近松門左衛門
(
ちかまつもんざえもん
)
が、作者として名作を
惜気
(
おしげ
)
もなく与え、義太夫に語らせ
竹本綾之助
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
一方のかたましい女はもちろんこれをはねつけるが、その隣の女は僧を敬い、
惜気
(
おしげ
)
もなく
鋏
(
はさみ
)
を入れて渡すと、それが実際は人の心の試験だったので、すぐ及第して大きな
御褒美
(
ごほうび
)
を頂戴する。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
何
(
ど
)
の命
何
(
ど
)
の
身体
(
からだ
)
あって侯爵に添うべきや、
然
(
しか
)
も其時、身を我に
投懸
(
なげかけ
)
て、
艶
(
つや
)
やかなる前髪
惜気
(
おしげ
)
もなく
我膝
(
わがひざ
)
に
押付
(
おしつけ
)
、
動気
(
どうき
)
可愛
(
かわゆ
)
らしく泣き
俯
(
ふ
)
しながら、
拙
(
つたな
)
き
妾
(
わたくし
)
めを思い込まれて
其程
(
それほど
)
までになさけ厚き仰せ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼の
袂
(
たもと
)
で石の目はもう崩れている、盤の下へこぼれたのを拾ってざらざらと
惜気
(
おしげ
)
もなく仕舞いこんでしまう。そして何度も繰返しながら
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼女は美くしい
天賦
(
てんぷ
)
の感情を、あるに任せて
惜気
(
おしげ
)
もなく夫の上に
注
(
つ
)
ぎ込む代りに、それを受け入れる夫が、彼女から精神上の営養を得て
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それで誰でも、年の若い学生時代から何でも
彼
(
か
)
でも
沢山
(
たくさん
)
に遠慮なく
惜気
(
おしげ
)
なく「問題の仕入れ」をしておく方がよくはないかという気がする。
科学に志す人へ
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そうして
掛替
(
かけが
)
えのない大事な操は二十文三十文の金に替えて
惜気
(
おしげ
)
がないということが、とにもかくにも不思議です。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
酒は一樽
打抜
(
ぶちぬ
)
いたで、ちっとも
惜気
(
おしげ
)
はござりませぬ。海からでも湧出すように、大気になって、もう一つやらっせえ、丁だ、それ、心祝いに飲ますべい、代は要らぬ。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山三郎は
惜気
(
おしげ
)
もなく二十両の金を井桁屋米藏に遣りましたが、人は助けて置きたいもので。
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
種員は
頬冠
(
ほおかむ
)
りにした
手拭
(
てぬぐい
)
のある事さえ打忘れ今は
惜気
(
おしげ
)
もなく大事な秘密出版の草稿に流るる涙を押拭った。そして仙果
諸共
(
もろとも
)
堀田原をさして
金竜山
(
きんりゅうざん
)
の境内を飛ぶがごとくに走り行く。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そうしてそれらのものには立派なものが沢山ありましたが、新しい時代では
一途
(
いちず
)
に古くさいものと思い込まれました。従ってその
値打
(
ねうち
)
が軽く見られ、日本的な多くのものを
惜気
(
おしげ
)
もなく棄て去りました。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
彼が聴くがままに、二人についての知識を
惜気
(
おしげ
)
もなく供給した下女は、それでも分も心得ていた。急所へ来るとわざと津田の問を
外
(
はず
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思い出の多かるべきはずの竜之助が、その簪に対してはさまでの
惜気
(
おしげ
)
がなくて、なんらの縁のないお玉は、その簪のために泣かねばならなくなりました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
別に何んにもありませんので、
親仁殿
(
おやじどの
)
は
惜気
(
おしげ
)
もなく
打覆
(
ぶっかえ
)
して、もう
一箇
(
ひとつ
)
あった、それも甕で、奥の方へ
縦
(
たて
)
に二ツ並んでいたと申します——さあ、この方が
真物
(
ほんもの
)
でござった。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
物をもいわず裲襠を
剥取
(
はぎと
)
ってずたずたに引裂き鼈甲の櫛笄や
珊瑚
(
さんご
)
の
簪
(
かんざし
)
をば
惜気
(
おしげ
)
もなく
粉微塵
(
こなみじん
)
に
踏砕
(
ふみくだ
)
いた
後
(
のち
)
、女を川の中へ投込んだなり、いかにも
忙
(
せわ
)
しそうに川岸をどんどん駈けて行く。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
晋齋もいろ/\勧めて見ますが何うも承知しないんであぐねております。するとお若は世を
味気
(
あじき
)
なく思いましたやら、
房々
(
ふさ/\
)
した
丈
(
たけ
)
の黒髪根元からプッヽリ
惜気
(
おしげ
)
もなく切って仕舞いました。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
尋常の場合では
小袖
(
こそで
)
の
裾
(
すそ
)
の先にさえ出る事を許されない、長い
襦袢
(
じゅばん
)
の
派手
(
はで
)
な色が、
惜気
(
おしげ
)
もなく津田の眼をはなやかに照した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
米友は
惜気
(
おしげ
)
もなく十二神将や二十八部衆の形をして見せたり、また縁台がさかさになったような形をして、半時間も大道に寝ている必要はなかったのであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と
惜気
(
おしげ
)
もなく、前髪を畳につくまで
平伏
(
ひれふ
)
した。三指づきの折かがみが、こんな中でも、打上る。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
毎朝夫を送り出してから髪に
櫛
(
くし
)
を入れる細君の手には、長い髪の毛が何本となく残った。彼女は
梳
(
す
)
くたびに櫛の歯に
絡
(
から
)
まるその抜毛を残り
惜気
(
おしげ
)
に眺めた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
金の額ぶちのように
背負
(
しょ
)
って、揚々として大得意の
体
(
てい
)
で、
紅閨
(
こうけい
)
のあとを一散歩、
贅
(
ぜい
)
を
遣
(
や
)
る黒外套が、悠然と、柳を眺め、池を
覗
(
のぞ
)
き、火の見を仰いで、
移香
(
うつりが
)
を
惜気
(
おしげ
)
なく、
酔
(
えい
)
ざましに
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
同役の木村は、せっかく太く結い上げて来た
髷
(
まげ
)
を
惜気
(
おしげ
)
もなく左右に振り立てる。
大菩薩峠:08 白根山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
我からと
惜気
(
おしげ
)
もなく咲いた
彼岸桜
(
ひがんざくら
)
に、いよいよ春が来たなと浮かれ出したのもわずか
二三日
(
にさんち
)
の間である。今では桜自身さえ
早待
(
はやま
)
ったと後悔しているだろう。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
犬張子
(
いぬはりこ
)
が横に寝て、起上り
小法師
(
こぼし
)
のころりと
坐
(
すわ
)
った、縁台に、はりもの板を斜めにして、
添乳
(
そえぢ
)
の
衣紋
(
えもん
)
も繕わず、
姉
(
あね
)
さんかぶりを
軽
(
かろ
)
くして、
襷
(
たすき
)
がけの二の腕あたり、日ざしに
惜気
(
おしげ
)
なけれども
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
これを一つ仕立て直してもらって、上っ張りにしようと、人に頼んで被布式に縫い直し、裏地を撤去して、成るべく重量を減らしてもらった、これがまた、丈夫でもあり、
惜気
(
おしげ
)
も無くて至極よろしい。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
左右に振り
蒔
(
ま
)
く粟の
珠
(
たま
)
も非常に軽そうだ。文鳥は身を
逆
(
さか
)
さまにしないばかりに
尖
(
とが
)
った嘴を黄色い粒の中に刺し込んでは、
膨
(
ふ
)
くらんだ首を
惜気
(
おしげ
)
もなく右左へ振る。
文鳥
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
惜気
(
おしげ
)
なく
真鍮
(
しんちゅう
)
の火鉢へ
打撒
(
ぶちま
)
けると、横に
肱掛窓
(
ひじかけまど
)
めいた低い障子が二枚、……其の紙の
破
(
やぶれ
)
から
一文字
(
いちもんじ
)
に吹いた風に、又
※
(
ぱっ
)
としたのが
鮮麗
(
あざやか
)
な
朱鷺色
(
ときいろ
)
を
染
(
そ
)
めた、あゝ、秋が深いと、火の
気勢
(
けはい
)
も
霜
(
しも
)
に
染
(
そ
)
む。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
中
(
うち
)
には、さすが御大名だけあって、好い絵の具を
惜気
(
おしげ
)
もなく使うのがこの画家の特色だから、色がいかにもみごとであると云うような、宗助には耳新らしいけれども
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と指でも
圧
(
おさ
)
えず、
惜気
(
おしげ
)
なく束髪の
鬢
(
びん
)
を
掉
(
ふ
)
って
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
左の手の
平
(
ひら
)
だけを
惜気
(
おしげ
)
もなく氷のような泥だか岩だかへな土だか分らない上へぐしゃりと突いた時は、寒さが二の腕を伝わって肩口から心臓へ飛び込んだような気持がした。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何より
嬉
(
うれ
)
しいのは断えず
煖炉
(
ストーブ
)
に火を
焚
(
た
)
いて、
惜気
(
おしげ
)
もなく光った石炭を
崩
(
くず
)
している事である。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「だから、まあ、よそうよ」と圭さんは自己の
申
(
もう
)
し
出
(
だ
)
しを
惜気
(
おしげ
)
もなし撤回した。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
惜
常用漢字
中学
部首:⼼
11画
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
“惜”で始まる語句
惜
惜別
惜氣
惜哉
惜愛
惜春
惜毛
惜字塔
惜春行楽
惜暮計候