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こぎれい
ふりがな文庫
“
小綺麗
(
こぎれい
)” の例文
この時
小綺麗
(
こぎれい
)
な顔をした、田舎出らしい女中が、
燗
(
かん
)
を附けた
銚子
(
ちょうし
)
を持って来て、障子を開けて出すと主人が女房に
目食
(
めく
)
わせをした。
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
身寄りのない六十五歳の年寄りであったが、耳が遠い外には、これという病気もなく、至極まめまめした、
小綺麗
(
こぎれい
)
な老人であった。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
其處は荒物屋の裏二階で、何となく
小綺麗
(
こぎれい
)
に住んで居りますが、家主の荒物屋で
訊
(
き
)
くと、與三郎の評判はまことに
滅茶々々
(
めちや/\
)
です。
銭形平次捕物控:159 お此お糸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこもまたふだんよりも
小綺麗
(
こぎれい
)
だった。唯
目金
(
めがね
)
をかけた小娘が一人何か店員と話していたのは僕には気がかりにならないこともなかった。
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
万事がそういう風だから、独身で一家を構え
小綺麗
(
こぎれい
)
にくらして行こうと思うと、とても
家
(
うち
)
を明けて毎日出勤するようなことは出来なくなる。
独居雑感
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
顔立ちの整った、ちょっと
小綺麗
(
こぎれい
)
な娘だった。気立てもやさしく、することなすことしっかりしていて、
几帳面
(
きちょうめん
)
で、てきぱきした性質であった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
わたしも無遠慮に出かけてゆくと、老人は
小綺麗
(
こぎれい
)
に片付けてある別室に控えていて、茶や菓子などの御馳走をした上に、いろいろの芝居話をしてくれた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そこを少し行って、大通りを例の細い往来へ切れた彼は、何の苦もなくまた
名宛
(
なあて
)
の
苗字
(
みょうじ
)
を
小綺麗
(
こぎれい
)
な二階建の一軒の
門札
(
もんさつ
)
に
見出
(
みいだ
)
した。彼は玄関へかかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
街路は清潔に
掃除
(
そうじ
)
されて、
鋪石
(
ほせき
)
がしっとりと露に
濡
(
ぬ
)
れていた。どの商店も
小綺麗
(
こぎれい
)
にさっぱりして、
磨
(
みが
)
いた硝子の
飾窓
(
かざりまど
)
には、様々の珍しい商品が並んでいた。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
小綺麗
(
こぎれい
)
なメリンスの
掛蒲団
(
かけぶとん
)
をかけて
置炬燵
(
おきごたつ
)
にあたりながら気慰みに
絽刺
(
ろさ
)
しをしていたところと見えて、右手にそれを持っている。私は窓の横から
窺
(
のぞ
)
きながら
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
全くジャボールは
小綺麗
(
こぎれい
)
な島だ。砂の上に椰子と
蛸樹
(
たこのき
)
と家々とを程良くあしらった小さな箱庭のような。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
奸智
(
かんち
)
にたけた鈴川源十郎、たちまちおさよを実の母のごとく
敬
(
うやま
)
って手をついて詫びぬばかり、ただちに
招
(
しょう
)
じて
小綺麗
(
こぎれい
)
な一
間
(
ま
)
をあたえ、今ではおさよ、何不自由なく
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
若い詩人は
其
(
その
)
粗末な小さな部屋を
小綺麗
(
こぎれい
)
に片
附
(
づ
)
けて居た。一つしか無い窓を開けると
小路
(
こうぢ
)
を隔てて塀の高い監獄の構内を
直
(
す
)
ぐ見
下
(
おろ
)
すのである。妙な
処
(
ところ
)
に住んでるね。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
此所にはまた
菜飯
(
なめし
)
茶屋という
田楽
(
でんがく
)
茶屋がありました。
小綺麗
(
こぎれい
)
な
姉
(
ねえ
)
さんなどが店先ででんがくを
喰
(
く
)
ってお愛想をいったりしたもの、万年屋、
山代屋
(
やましろや
)
など五、六軒もあった。
幕末維新懐古談:12 名高かった店などの印象
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
『
喫驚
(
びツくり
)
して
人
(
ひと
)
の
見境
(
みさかひ
)
もないんだわ!だけど、
扇子
(
せんす
)
と
手套
(
てぶくろ
)
は
持
(
も
)
つて
來
(
き
)
てやつた
方
(
はう
)
が
可
(
い
)
いわ——さうよ、
若
(
も
)
し
有
(
あ
)
つたら』
云
(
い
)
ひ
終
(
をは
)
ると
同時
(
どうじ
)
に
小綺麗
(
こぎれい
)
な
小
(
ちひ
)
さな
家
(
うち
)
へ
來
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
ました
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
マダムの常子も春日町の借家を一軒立ち
退
(
の
)
かせ、そこで
小綺麗
(
こぎれい
)
に暮らしていたが、もう内輪同様になっているので、気が向くと松の家へ入りこみ、世間話に退屈を
凌
(
しの
)
いだ。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
時に大原君
悦
(
よろこ
)
び給え。万事好都合で、好い時には好い事のあるものさ。君も知っているだろう、中川君の家の一軒置いた先に
門構
(
もんがまえ
)
の
小綺麗
(
こぎれい
)
な家がある。あの家が今朝引越しさ。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
行ってみると鶴吉の
家
(
うち
)
は、お
厩河岸
(
うまやがし
)
に近い
露路裏
(
ろじうら
)
で、ちょっと
小綺麗
(
こぎれい
)
な格子づくりです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
東京の道玄坂を
小綺麗
(
こぎれい
)
に
整頓
(
せいとん
)
したような街である。
路
(
みち
)
の両側をぞろぞろ流れて通る人たちも、のんきそうで、そうして、どこかハイカラである。植木の露店には、もう
躑躅
(
つつじ
)
が出ている。
新樹の言葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
さぞかし姉が所帯
窶
(
やつ
)
れをしているであろうと想像していたのに、思ったよりは髪かたちも
小綺麗
(
こぎれい
)
に、身なりを整えているのを見ては、どんなになっても
嗜
(
たしな
)
みを忘れないところのある姉に
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
お松は船の仕事着ではなく
小綺麗
(
こぎれい
)
の
身扮
(
みなり
)
をして、船着場の茶屋に待っています。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
此の汚れたのは持って帰って
小綺麗
(
こぎれい
)
なのと取替えて持って来て貸して下さるか
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
私は例のチベット服しかないからその服を着てずっと大宮さんの所に行ったです。大宮君はある商家の
小綺麗
(
こぎれい
)
な二階を借りて居られる。誠に綺麗好きな人で入るからが気持ちの好い室である。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
修めて
最早
(
もはや
)
卒業せんとせし頃(時に余が年二十三)余は
巴里府
(
ぱりふ
)
プリンス街に下宿し
居
(
い
)
たるが余が借れる
間
(
ま
)
の隣の
室
(
へや
)
に中肉中背にて
髭髯
(
くちひげ
)
を
小綺麗
(
こぎれい
)
に
剃附
(
そりつけ
)
て容貌にも別に癖の無き一人の下宿人あり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
主人の方は横浜の商会に勤めていて、土曜の夕方になるとやって来ては、また月曜の朝早く帰って行くという風で、
小綺麗
(
こぎれい
)
な若い妻君がその小さなお嬢さんを相手に物静かに暮らしていました。
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
近頃
(
ちかごろ
)
、
東京
(
とうきやう
)
に
於
(
お
)
ける、
或
(
あるひ
)
は
日本
(
にほん
)
に
於
(
お
)
ける
麻雀
(
マアジヤン
)
の
流行
(
りうかう
)
は
凄
(
すさ
)
まじいばかりで、
麻雀倶樂部
(
マアジヤンくらぶ
)
の
開業
(
かいげふ
)
は
全
(
まつた
)
く
雨後
(
うご
)
の
筍
(
たけのこ
)
の
如
(
ごと
)
しで
邊鄙
(
へんぴ
)
な
郊外
(
かうぐわい
)
の
町
(
まち
)
にまで
及
(
およ
)
んでゐるやうだが、そこはどこまでも
日本式
(
にほんしき
)
な
小綺麗
(
こぎれい
)
さ
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
奉公名儀で
小綺麗
(
こぎれい
)
な娘をつぎつぎと手に入れるキッカケをつくる。
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
たとえお霜は
襤褸
(
ぼろ
)
を下げても彼女には
小綺麗
(
こぎれい
)
の着物を着せた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
やがて私はあの
小綺麗
(
こぎれい
)
な明るい臺所の中に立つてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
その日も濡れ仏の石壇のまわりはほとんど鳩で一ぱいだった。が、どの鳩も
今日
(
こんにち
)
のように
小綺麗
(
こぎれい
)
に見えはしなかったらしい。
少年
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お
負
(
まけ
)
に
小綺麗
(
こぎれい
)
な所で店賃の安い所へ越したいから、世話をしてくれろと云うので、切通しの質屋の隠居のいた跡へ、面倒を見て越させて遣った。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ベートーヴェンが都振りの
小綺麗
(
こぎれい
)
な紳士で終ったならば、——私はそれを考えただけでも
戦慄
(
せんりつ
)
を禁じ得ない——我らはおそらく音楽芸術の巨大な分野
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
うろうろ
徘徊
(
はいかい
)
している
人相
(
にんそう
)
の悪い
車夫
(
しゃふ
)
がちょっと
風采
(
みなり
)
の
小綺麗
(
こぎれい
)
な通行人の
後
(
あと
)
に
煩
(
うるさ
)
く付き
纏
(
まと
)
って乗車を
勧
(
すす
)
めている。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そのなかにただ一人、市川
九女八
(
くめはち
)
の弟子で、以前は三崎座に出ていたかつらという
小綺麗
(
こぎれい
)
な若い女優があった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私はかつて夢の中で、数人の友だちと一緒に、町の或る
小綺麗
(
こぎれい
)
な喫茶店に入つた。そこの給仕女に一人の
悧発
(
りはつ
)
さうな顔をした、たいそう愛くるしい少女が居た。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
その向う横町に
代言
(
だいげん
)
だか
周旋屋
(
しゅうせんや
)
だか分らない
小綺麗
(
こぎれい
)
な
格子戸作
(
こうしどづく
)
りの
家
(
うち
)
があって、時々表へ女記者一名、女コック一名至急入用などという広告を
黒板
(
ボールド
)
へ書いて出す。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
椰子の根元に立った二人の幼児は、島民らしくない
小綺麗
(
こぎれい
)
な服を着ている。彼らと話を始めようとしたのだが、
生憎
(
あいにく
)
、コンニチハの外、何にも日本語を知らないのである。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
待合の建物があまり
瀟洒
(
しょうしゃ
)
でもなく、
雰囲気
(
ふんいき
)
も清潔でないので、最初石畳の
鋪
(
し
)
き詰まった横町などへ入ってみた時には、どこも鼻のつかえるようなせせっこましさで少し
小綺麗
(
こぎれい
)
な
家
(
うち
)
はまた
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と、そこの茶の間の古い
長火鉢
(
ながひばち
)
の傍には、見たところ六十五、六の品の好い
小綺麗
(
こぎれい
)
な老婦人が静かに坐って
煙草
(
たばこ
)
を
喫
(
す
)
っていた。母親はその老婦人にちょっと会釈しながら、私の方を向いて
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
と落ちついて言って私に
蜜柑
(
みかん
)
などをすすめる。電気をつけてみると、部屋が
小綺麗
(
こぎれい
)
に
整頓
(
せいとん
)
せられているのがわかり、とても狂人の住んでいる部屋とは思えない。幸福な家庭の匂いさえするのである。
女神
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それも
京橋辺
(
きょうばしへん
)
の酒屋の隠居所を、ある
伝手
(
つて
)
から二階だけ貸して貰ったので、
畳
(
たたみ
)
建具
(
たてぐ
)
も世間並の下宿に比べると、
遥
(
はるか
)
に
小綺麗
(
こぎれい
)
に出来上っていた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
うろ/\
徘徊
(
はいくわい
)
してゐる
人相
(
にんさう
)
の悪い
車夫
(
しやふ
)
が
一寸
(
ちよつと
)
風采
(
みなり
)
の
小綺麗
(
こぎれい
)
な通行人の
後
(
あと
)
に
煩
(
うるさ
)
く付き
纏
(
まと
)
つて乗車を
勧
(
すゝ
)
めてゐる。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
わたしが毎日入浴する
麹町
(
こうじまち
)
四丁目の湯屋にも二階があって、若い
小綺麗
(
こぎれい
)
な
姐
(
ねえ
)
さんが二、三人いた。
思い出草
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その上、当時の中学生といえば、シラミをひねってエラそうなことをいうのが一番豪傑で、いやに
小綺麗
(
こぎれい
)
で、勉強ばかりしているのは「あいつは話せない」と、一蹴された。
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
女の家は狭かったけれども
小綺麗
(
こぎれい
)
にかつ住心地よくできていた。縁の
隅
(
すみ
)
に丸く彫り抜いた
御影
(
みかげ
)
の
手水鉢
(
ちょうずばち
)
が
据
(
す
)
えてあって、
手拭掛
(
てぬぐいかけ
)
には小新らしい三越の手拭さえ
揺
(
ゆら
)
めいていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこは
見附
(
みつき
)
の好い
小綺麗
(
こぎれい
)
な店屋であった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「そりやその方が好いだよう。子供のなりも見好くしたり、自分も
小綺麗
(
こぎれい
)
になつたりするはやつぱし浮世の飾りだよう。」
一塊の土
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
湯屋
(
ゆうや
)
の二階というものは、明治十八、九年の頃まで残っていたと思う。わたしが毎日入浴する麹町四丁目の湯屋にも二階があって、若い
小綺麗
(
こぎれい
)
な
姐
(
ねえ
)
さんが二、三人居た。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
小綺麗
(
こぎれい
)
に片づいた茶の間は勿論、
文化竈
(
ぶんかかまど
)
を据えた台所さえ舅や姑の居間よりも
遥
(
はる
)
かに重吉には親しかった。彼は一時は知事などにもなった或政治家の次男だった。
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しもた家の多い山の手を始め
小綺麗
(
こぎれい
)
な商店の軒を並べた、江戸伝来の下町も何か彼を圧迫した。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“小綺麗”の意味
《名詞》
きちんとして清潔であるさま。少し気がきいて整っているさま。
(出典:Wiktionary)
小
常用漢字
小1
部首:⼩
3画
綺
漢検1級
部首:⽷
14画
麗
常用漢字
中学
部首:⿅
19画
“小”で始まる語句
小
小児
小径
小鳥
小僧
小言
小路
小遣
小刀
小父