家賃やちん)” の例文
その布団の持ち主の住んでいた家の家賃やちんは、そのころただの六十せんでした。それだけでもどんなにみすぼらしい家かはおわかりでしょう。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
新小川町のとにかく中流ちゅうりゅう住宅じゅうたくをいでて、家賃やちん十円といういまの家へうつってきたについては、一じょう悲劇ひげきがあった結果けっかである。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
箆棒べらぼう家賃やちんでもとゞこほつたにや、辨償まよはなくつちやりやすめえし、それこさあらが身上しんしやうなんざつぶれてもにやえやしねえ、だにもなんにも
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
言譯いひわけきくみゝはなし家賃やちんをさめるかたなけるかみちふたつぞ何方どちらにでもなされとぽんとはたくその煙管きせるうちわつてやりたいつらがまち目的もくてきなしに今日けふまでと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夫迄それまでつき一度いちど此方こちらからきよ家賃やちんたしてると、むかふからその受取うけとりこすだけ交渉かうせふぎなかつたのだから、がけうへ西洋人せいやうじんんでゐると同樣どうやうで、隣人りんじんとしてのしたしみは
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こといへは、風通かぜとほしもよし室取まどりもよし造作ざうさく建具たてぐごときも、こゝらにのきならべた貸家かしやとはおもむきちがつて、それ家賃やちんもかつかうだとくのに……不思議ふしぎしてるものが居着ゐつかない。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかるにお房は、彼の財布さいふにはそこが無いものと思ツて、追續おツつぎ/\/\預算以外の支出を要求して、米屋八百屋の借をはらはせたり、家賃やちんの滯をめさせたり、まとまツて幾らといふ烏金からすがねくちまで拂はせた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
また今更いまさらかんがへれば旅行りよかうりて、無慘々々むざ/\あたら千ゑんつかてたのは奈何いかにも殘念ざんねん酒店さかやには麥酒ビールはらひが三十二ゑんとゞこほる、家賃やちんとても其通そのとほり、ダリユシカはひそか古服ふるふくやら、書物しよもつなどをつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
家賃やちんが入ります」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そうしてついに何も食べるものがない日が来ました。言うまでもなく、家賃やちんなどを支払しはらっているどころではありません。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ほかに六じょう二間ふたま台所だいどころつき二じょう一間ひとまある。これで家賃やちんが十円とは、おどろくほど家賃も高くなったものだ。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
さうしたら村落むらにえゝ鹽梅あんべえうちあるもんだからりて身上しんしやうたせべとおもつて保證ほしようつてくろつちつたところがたえした挨拶あいさつなのさ、三十せんか五十せん家賃やちんをねえ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いへ何處どこまでも奇麗きれいにてこみのければ、のうちには二人ふたり三人みたり拜見はいけんをとてるものもきにはあらねど、敷金しきゝん三月分みつきぶん家賃やちん三十日限さんじふにちかぎりのとりたてにて七圓なゝゑん五十錢ごじつせんといふに
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
く/\原因を聞いて見ると、いま持主もちぬしが高利貸で、家賃やちん無暗むやみげるのが、業腹ごうはらだと云ふので、与次郎が此方こつちから立退たちのきを宣告したのださうだ。それでは与次郎に責任がある訳だ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
また今更いまさらかんがえれば旅行りょこうりて、無惨々々むざむざあたら千えんつかてたのはいかにも残念ざんねん酒店さかやには麦酒ビールはらいが三十二えんとどこおる、家賃やちんとてもそのとおり、ダリュシカはひそか古服ふるふくやら、書物しょもつなどをっている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
西田は細君さいくんに対し、外手そとで町に家のあったこと、本所ほんじょしてからの業務ぎょうむ方法ほうほう、そのほかここの家賃やちんのとどこおりまで弁済べんさいしてあげるということまで話して、細君をなぐさめた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
そんなことつたつておめえ、あれだつてひとりでゝもんぢやなしつものつてはたらくのに三十せんや五十せん家賃やちんはらへねえこともんめえな、それもなんならおめえ一月ひとつきでも二月ふたつきでも見試みためして
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
遂には、今に借手かりてがなくつて屹度家賃やちんげるにちがひないから、其時もう一遍談判して是非借りやうぢやありませんかと云ふ結論であつた。広田先生は別に、さういふ料簡もないと見えて、かう云つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
オヽおまへ留守るす差配さはいどのがえられてといひさしてしばたゝくまぶたつゆ白岡鬼平しらをかきへいといふ有名いうめい無慈悲むじひもの惡鬼あくき羅刹らせつよと蔭口かげぐちするは澁團扇しぶうちはえんはなれぬ店子共たなこども得手勝手えてがつて家賃やちん奇麗きれいはらひて盆暮ぼんくれ砂糖袋さたうぶくろあましるさへはしかばぐる目尻めじり諸共もろとも眉毛まゆげによぶ地藏顏ぢざうがほにもゆべけれど
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)