土藏どざう)” の例文
新字:土蔵
とうさんの祖母おばあさんの隱居所いんきよじよになつてた二かい土藏どざうあひだとほりぬけて、うら木小屋きごやはうおり石段いしだんよこに、その井戸ゐどがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
てゝせり呉服ごふくるかげもなかりしが六間間口ろくけんまぐちくろぬり土藏どざうときのまに身代しんだいたちあがりてをとこ二人ふたりうちあに無論むろんいへ相續あととりおとゝには母方はゝかたたえたるせい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれつめたいかぜとほ土藏どざう戸前とまへしめつぽいいしうへこしけて、ふるくからいへにあつた江戸名所圖會えどめいしよづゑ江戸砂子えどすなごといふほん物珍ものめづらしさうにながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見るに折節をりふし土藏どざう普請ふしんにて足代あししろの掛り居たればこれ僥倖さいはひと其足代よりのぼりしが流石さすが我ながらにおそろしく戰々わな/\慄々ふるへる
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゝつたな——裏川岸うらがし土藏どざうこしにくついて、しよんぼりとつたつけ。晩方ばんがたぢやああつたが、あたりがもう/\として、むかぎしも、ぼつとくらい。をりから一杯いつぱい上汐あげしほさ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ未明みめいまた土藏どざうかくれた。内儀かみさんは傭人やとひにんくちかたいましめてそとれないやうと苦心くしんをした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのおひな井戸ゐどから石段いしだんあがり、土藏どざうよことほり、桑畠くはばたけあひだとほつて、おうち臺所だいどころまでづゝみづはこびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
見るに間口まぐちは六七間奧行おくゆきも十間餘土藏どざうは二戸前あり聞しにまし大層たいそうなるくらし成りければ獨心中に歡び是程の暮しならば我等一人ぐらゐどのやうにも世話してれるならんと小腰こごし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なんことぢや、おほゝ、成程なるほどけとる。𤏋ぱつあがつたところぢやが、燒原やけはらつとる土藏どざうぢやて。あのまゝ駈𢌞かけまはつてもちかまはりにけるものはなんにもないての。おほゝ。安心々々あんしん/\
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それでも自分じぶんいへにはられないので、どうかかくしてくれとかれ土藏どざうれてもらつた。勘次かんじ其處そこでも不安ふあんへないので其處そこしばら使つかはずにしまつてある四尺桶しやくをけへこつそりともぐつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
みねしゆう白金しろかね臺町だいまち貸長屋かしながやの百けんちて、あがりものばかりにじやう綺羅きら美々びゝしく、れ一みねへの用事ようじありてかどまできしが、千りやうにては出來できまじき土藏どざう普請ふしんうらやましき富貴ふうきたりし
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うち土藏どざうにはとしをとつたしろへびんでりました。そのへび土藏どざうの『ぬし』だから、かまはずにけとつて、いし一つげつけるものもありませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
此路このみち眞直まつすぐまゐりますと、左樣さやう三河島みかはしまと、みちひとをしへられて、おや/\と、引返ひきかへし、白壁しらかべゆる土藏どざうをあてにあぜ突切つツきるに、ちよろ/\みづのあるなかむらさきはないたるくさあり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おつぎは内儀かみさんにばれてとなりとまつた。内儀かみさんはおつぎと與吉よきちたゞ二人ふたりいへくにはしのびなかつたのである。になつてから勘次かんじ土藏どざうからされて傭人やとひにんそばに一あかした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たくはへしが後には江戸えどへも見世みせを出さんととほ油町あぶらちやう間口まぐち十間奧行おくゆき新道迄しんだうまで二十間餘の地をかひ土藏どざうもあり立派りつぱなる大身代おほしんだいとなり番頭ばんとう若い者都合つがふ廿餘人に及びけることひとへに井筒屋茂兵衞が多分のよき得意とくい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)