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どざう
彼は
冷たい
風の
吹き
通す
土藏の
戸前の
濕つぽい
石の
上に
腰を
掛けて、
古くから
家にあつた
江戸名所圖會と
江戸砂子といふ
本を
物珍しさうに
眺めた。
見るに
折節土藏の
普請にて
足代の掛り居たれば
是僥倖と其足代より
登りしが
流石我ながらに
怖ろしく
戰々慄々を
あらゆる記憶の
数々が電光のやうに
閃く。最初
地方町の小学校へ行く
頃は毎日のやうに
喧嘩して遊んだ。やがては
皆なから近所の
板塀や
土蔵の壁に
相々傘をかゝれて
囃された。