ない)” の例文
〔譯〕象山しようざんの、宇宙うちうないの事は皆おの分内ぶんないの事は、れ男子擔當たんたうの志かくの如きを謂ふなり。陳澔ちんかう此を引いて射義しやぎちゆうす、きはめてなり。
「大将、ちょっとちょっと、他人ひとにいっちゃあいけませんよ、ないですよ、これです、素敵に面白いのです、五十銭奮発して下さい」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
されば谷川のこの猿ヶ石に落合うものはなはだ多く、俗に七内八崎ななないやさきありと称す。ないは沢または谷のことにて、奥州の地名には多くあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
造船所ざうせんじよない一部いちぶ貯藏ちよぞうされてあつたのだが、あゝ、昨夜さくや大海嘯おほつなみではその一個いつこ無事ぶじではるまい、イヤ、けつして無事ぶじはづはありません。
もし僕がなんじわれにあたえよと申し出すことを、彼女もないない待ち受けているならば、彼女はあらかじめそれを承諾しそうな気色を示すべきはずである。
山田やまだ出嫌でぎらひであつたが、わたし飛行自由ひぎやうじざいはうであるから、四方しはうまじはりむすびました、ところ予備門よびもんないあまねたづねて見ると、なか/\斯道しだう好者すきしや潜伏せんぷくしてるので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その音を聞きつけて、次の間から、岩淵達之助いわぶちたつのすけ等々力とどろきないの二人が、あわただしく走りでてきて
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
右の方の一戸は商会に成つて居て門をはひつたない玄関の上にリユウバンスの石膏せきかう像が据ゑられて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
習慣ならわしで調子が高い、ごくないの話のつもりが、処々、どころでない。半ば以上は二階へ届く。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにこうして父子おやこわかれわかれになっていても、おとうさんとにいさんのあいだないしょの約束やくそくがあって、どちらがけてもおたがいにたすうことになっているのかもしれない。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なにをいうても今は悪魔にみいられているので、いかようの御沙汰もあろうかと、それがしもないない懸念しておったが、今になんの御沙汰もなくば、存外穏便に済もうも知れぬ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
道元はこの主張を謬説と呼ぶのみならず、また「仏法仏道に通ぜざるもの」、「仏をしらず、教をしらず、しんをしらず、ないをしらず、をしらざるもの」(正法眼蔵仏教)と呼んだ。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
今日けふはわざ/\其為そのためたのだから、いやでも応でもちゝに逢はなければならない。相変らず、ない玄関の方から廻つて座敷へると、めづらしくあにの誠吾が胡坐あぐらをかいて、さけを呑んでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
書生の生活酒の悪癖私はれまで緒方の塾に這入はいらずに屋敷からかよって居たのであるが、安政三年の十一月頃から塾に這入はいっない塾生となり、是れがそもそも私の書生生活、活動の始まりだ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
繼ぎ其上九助伯父九郎兵衞と申者も名主惣内母後家ごけ密通みつつう致し居り尋常なみ/\ならぬ中ゆゑ親類ない相談さうだんの上にて里へ金五十兩付て離縁りえんいたし其後惣内と夫婦に相なり伯父九郎兵衞も介抱かいはう人と名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
箏の稽古の方は、箏を父親が好かないので、ないしょで弟子入りしたのだった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
殿様も誠に御仁慈ごじんじ厚く、また御重役方も皆しん智仁ちじんのお方々だという事を承わって居りますが、拙者はな、お屋敷ないに罪あるもので、既にお手討にもなるべき者を助けました事が一廉ひとかどございます
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ないこれにかゝりてれはなにぞとふに、らずや霜月しもつきとりれい神社じんじや欲深樣よくふかさまのかつぎたまれぞくまくだごしらへといふ、正月しようぐわつ門松かどまつとりすつるよりかゝりて、一ねんうちとほしのれはまこと商賣人しようばいにん
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「なお、仰せには、赤橋守時さまのお骨折りにて、執事、寄人よりゅうど、ほか歴々の間で、すでにない評定は相すみおれど、一応の吟味、或いは、対決などが行われるやも計りがたい。……されば、その辺のお覚悟もと」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されば谷川のこの猿が石に落ち合ふものはなはだ多く、俗に七内八崎ななないやさきありと称す。ないは沢または谷のことにて、奥州の地名には多くあり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
「無論、それです。だが、まだ警察には知らせてないのです。この人達にもないしょですよ。沢山の見物人達に騒がれては、かえって鳥を逃がしてしまいますからね」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それより洞中どうちゆう造船所ぞうせんじよないのこくまなく見物けんぶつしたが、ふとると、洞窟どうくつ一隅いちぐうに、いわ自然しぜんえぐられて、だいなる穴倉あなぐらとなしたるところ其處そこに、嚴重げんぢうなるてつとびらまうけられて
丹波につぐ高弟、岩淵達之助いわぶちたつのすけと、等々力とどろきないのふたりが、門ぎわに立ちあらわれました。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
今日はわざわざその為に来たのだから、いやでも応でも父に逢わなければならない。相変らず、ない玄関の方から廻って座敷へ来ると、珍らしく兄の誠吾が胡坐あぐらをかいて、酒を呑んでいた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
召連立歸たちかへりけり因て彼是かれこれする内に夜も明離あけはなれければ名主用右衞門は文藏に向ひ今更いまさら申はせんなき事ながら此間御役人御出にて御ないたゞしの節に取扱とりあつかひなば又々如何樣にも内談ないだんの致し方も是あるべき所其節心付かざるこそ殘念ざんねんの事共なれ今と成ては是非ぜひに及ばずと申けるに母のおもせを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きみその决心けつしんがあるなら屹度きつと出來できます、鐵車てつしや製造所せいぞうしよは、秘密造船所ひみつざうせんじよない何處どこかにまうけ、充分じゆうぶん材料ざいれうわたくしほうから供給けうきうし、またきみ助手たすけてとしては、毎日まいにち午前ごぜん午後ごゞ交代かうたい
呆然と立ちつくした源三郎の耳に、この時、米が煮えるように、クックッと四方からただよってきた音——それは、等々力とどろきない岩淵達之助いわぶちたつのすけら、司馬道場のやつらの、呼吸をつめた笑い声でありました。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)