)” の例文
「まあ!」と立って床を延べようとしていた女は、急に小倉のひざの上につっした。そして泣き入るのだった。小倉はびっくりした。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「あの若者わかもの毎日まいにちつっしたきり、ものべずにいる様子ようすだが、あのままいてかつえにになれでもしたら、おてらけがれになる。」
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いいにくそうに伝兵衛がいうと、お那珂なかは、畳へ手をついて、何かいうつもりなのが、そのまま、泣きじゃくって、してしまった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がう/\と戸障子としやうじをゆするかぜがざツとむねはらつて、やゝかるくなるやうにおもはれて、したものも、わづかかほげると……うだらう
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし掛蒲団かけぶとん跳返はねかえされたようにすその方に重なり合っているのです。そうしてK自身は向うむきにしているのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
突然もあまりに突然——しかし葉子にせまるその心持ちは、さらに葉子を畳に突っして泣かせるほど強いものだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
黙ってして聞いていた文吉は、詞の切れるのを待って、頭をもたげた。みはった目は異様にかがやいている。そして一声「檀那だんな、それは違います」と叫んだ。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
しかも心持右側を下にしてし加減に眼を閉じているその屍体は、房々と渦巻いた金髪は乱れて地上に長く波うって、右腕は付根からぎとられていた。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
明智の跡を追って屋根に上ったものか、ここにとどまって山野夫人の介抱かいほうをしたものかと迷ったのだ。夫人は彼の足許にうつして死んだ様に身動きもしない。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
都て不快な衝動しようどうあたへたにかゝはらず、しかも心には何んといふことは無く爽快そうくわいな氣が通ツて、例へば重い石か何んぞにせられてゐた草のが、不圖ふといしを除かれて
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
おっしゃって、いまは、透き通るようなお手をお組みなされ、しばらく無言でいらっしゃる、お側へツッして、平常ふだん教えて下すった祈願いのりの言葉を二た度三度繰返してとなえるうち
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
流元ながしもとで氷を砕いて立上ろうとすると、くらくらとして急にあたりが暗くなって終った。それからどれ位経ったか、赤ン坊の泣声に気がつくと、私は台所の板敷につっしていた。
愛の為めに (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
が、その格子の音がするほんの二秒ほど前に女は恐ろしい驚くべき緊張と凝視との世界から切りはなたれて、ほそ腰から二つに折れたように気を失って前へつっしたのであった。
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
にぎりしめたこぶしの上に顔をせた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
机の上にしたことを思い出した。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そして驚く耀蔵の耳へ口をよせながら、ううーむ……と作り声をあげて、彼のからだにからみながら、諸倒もろだおれに、して首を垂れた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こういって、その男は観音かんのんさまのまえにつっしました。それなり幾日いくにちたってもうごこうとはしませんでした。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
一目見るやぐらぐらと眩暈めまいを感じて一たまりもなくまた突っしてしまった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
スチーヴンソンは腹這はらばいに寝て小説を書いたそうだから、しになって筆を持てばきっと血がかさにのぼってくる。かようにいろいろな人がいろいろの事を考え出したが、まだ誰も成功しない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勝頼はついに、泣かんばかりな声をしてした。豪気強情、稀に見る自尊心の持主も、快川のまえには身もだえしていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとなん千とないたまは一にふっとえました。おおあらしがいて、かみなりしました。龍王りゅうおう家来けらいたちも、あたまかかえてゆかの上につっしてしまいました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
葉子はしたままでさめざめと泣き出した。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
で——伊織は、思わず草の中にしてしまった。生れてから十四の年まで、こんな怖いと思ったことはまだなかった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するともなく、がらがらッと、てんもいっしょにくずちたかとおもうようなすさまじいおとがしました。お百姓ひゃくしょうおもわずみみさえて、の上につっしました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
石見守はさかずきかさねて見てもいなかったが、バッと音がしたので庭先にわさきへおもてを向けてみると、もう百姓とむすめ死骸しがいがふたところにつッしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といって、みんなでわるわる、ものって行ってやりました。若者わかものはそれをもらってべながら、とうとう三七二十一にちあいだおなところにつっしたまま、一生懸命いっしょうけんめいいのりをしていました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
にも関わらず、かの女は、その後で、どっと、せきあげる涙と淋しさとを、どうしようもなく、してしまった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
軍夫たちは、一斉に、わっと喚き合って、草の中へした。——間をいて、また十発ばかり弾が飛んで来た。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真っ暗な床の上に、がれいのように、俯ッしていた郁次郎は、悪夢からさめたように、ふと、頭だけをもたげた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
依然、ものはいわなかったが、ついに、たもとを噛んで、がばとすと、黒髪の下からよよと泣く声がもれた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
棟方与右衛門は、一室の中央に、何もかも覚悟の上らしく、整然と片づけた中に腹を切ってしていた。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
友矩が出てゆくと、他の人々もむらがり寄って、なお怒りまない但馬守と、声もなく地にしている又十郎の間とを、ようやく分け隔て連れて行った。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とうになくてはならない盟友めいゆう加賀見忍剣かがみにんけんはたおれている。木隠龍太郎こがくれりゅうたろうも血の中にしてしまっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真っ暗な部屋の中とばかり思っていたひとみを、不意に、怖ろしい光明で射られたので、そのまま、うッしてしまうと、思わず、念仏をさけんでしまいました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京流吉岡の伝統を負って立つべき十剣のうちの、小橋蔵人くらんどがまず先にたおれてしまい、今また御池十郎左衛門ともあろうほどの者が、つづいて大地へした。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もくり……と毒水どくすい波紋はもんがよれたかと思うと、せになった水死人すいしにん水草みずぐさの根をゆらゆらとはなれる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
露八は、淀川に沿って、枚方ひらかたの方角へと、歩きだした。血か、油か、淀は鉛色なまりいろにぎらぎらして、時々、せになった幕兵の死骸が空俵あきだわらみたいにながれて来る。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
突然、吉次も不覚な嗚咽おえつをもらしてしまった。がばと、ひじを顔にあてたまま、草のなかへした。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不意を食らった味方の裏切に、なんの骨折りもなく二人はグッタリと土を掴んでしてしまう。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのお人の姿が、やがて、小舟のうちに坐って、がくと、して見えたかと思うと
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
森啓之助が手離すとともに、お米の体は朽木倒くちきだおれに、砂利場の山へうっしてしまった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「三平っ、三平。床板を、その畳を、早くせろ。床口ゆかぐちを、閉めてからにしろっ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのくせ、もう焔のような顔して、しながら、息もくるしげなのである。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
手で口をふさがれたように、武蔵は息が止まった。岩につかまっていても体をズズズと持って行かれそうな風圧をおぼえた。……しばらく目をつぶったままじっとしていたのである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
牛の背にしたまま、お杉婆は無言だった。その無言のうちには、かたきと思う人間のために、こういう世話になるのを好まない性来の勝気が——むしろ無念そうに顔の底に潜んでいた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
机に肘をのせてしたまま、北条新蔵はうとうとと眠ってしまった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊織は、もうてなかった。刀を持ったまま地にしてしまった。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はたの陰へ、したのであった。平次郎が振り下ろした手斧ちょうなの刃は、そのはたけてあるすじの糸をばらばらに切ったので、糸は蜘蛛くもの巣のように、彼の体にもお吉の髪の毛にも乱れかかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お杉婆は顔をしかめ、武蔵の手を拒んで、草の上にした。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と叫んで、父の体へしがみついたまま、してしまった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)