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黴
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かび
ふりがな文庫
“
黴
(
かび
)” の例文
やがて下から声かけられて、母親が板戸を締めはじめると、お庄もむっと
黴
(
かび
)
くさい部屋から脱けて、足元の暗い段梯子を降りて行った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そのように、最後の幻までも奪い去られたとすれば、いつか彼女には
黴
(
かび
)
が生え、樹皮で作った青臭い棺の中に入れられることもあろう。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
饐
(
す
)
え朽ちた欄干を越え、異様な
黴
(
かび
)
の匂いやら
蜘蛛
(
くも
)
の巣やらを面で払った。そして最も奥の深いところの
御厨子
(
みずし
)
の内へかくれこんだ。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし、それでもまだまだ日本の大部分の土地に蔽いかぶさるあの陰欝な、人にも物にも皆
黴
(
かび
)
が生えるような梅雨とは程遠いものである。
郭公のおとずれ
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
第二の幽霊
駄目
(
だめ
)
、駄目。
何処
(
どこ
)
の芝居でも
御倉
(
おくら
)
にしてゐる。やつてゐるのは
不相変
(
あひかはらず
)
、
黴
(
かび
)
の生えた旧劇ばかりさ。君の小説はどうなつたい?
LOS CAPRICHOS
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
すこしでも湿気があると
黴
(
かび
)
が生えて品質が悪くなる。内地用の茶は僅かに火を入れる丈であるから、香気を失うことがすくない。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
コシ 鹿児島附近では
黴
(
かび
)
も
麹
(
こうじ
)
もともにコシといい、またいろいろの皮膚の病にもコシ・コセカキ・コシキヤマイという語がある。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「寒の水で
搗
(
つ
)
いたから
黴
(
かび
)
やしめえと思うが、水餅にして置くほうがいいかもしれねえ」まるで怒ったような声で彼はそう云った
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
○チースは
黴
(
かび
)
の生じやすきものにて外国人はその黴あるものを珍重するなり。黴あるものはその上皮を削去りて料理に用ゆべし。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それに
黴
(
かび
)
の臭いの外に、胸の悪くなる特殊の臭気が、
間歇
(
かんけつ
)
的に鼻を
衝
(
つ
)
いた。その臭気には
靄
(
もや
)
のように影があるように思われた。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
七月の末から雨がつづいて、インク瓶にまで
黴
(
かび
)
が生えて薄気味わるい程でしたが、やっと久し振りでいいお天気になりました。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そして両者のいずれがより大なる視界を持っているか。試みに選んでもみよ。一個の
黴
(
かび
)
は、一群の花である。一片の星雲は無数の星である。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
われわれは一日に三回食事時に会い、お互いに、われわれがそれであるところの古い
黴
(
かび
)
くさいチーズの味をあらためて相手に味わわさせる。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
むしろ
黴
(
かび
)
の生えた既成観念や、飽き飽きしたロマンティックな情緒を強いられるより、どんなに心安くて清々するか解らない。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
津波のような回想にあえぎ苦しんだ。
黴
(
かび
)
くさい納戸の空気に浸れば、身も心もとろけるような喜びがありそうに思われるのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
藩札は
赭
(
あか
)
き紙ぎれ、皺に
寂
(
さ
)
び
黴
(
かび
)
くさき
札
(
さつ
)
、うち
廃
(
すた
)
り忘られし屑、うち束ね山と積めども、用も無し邪魔ふさげぞと、
放
(
はふ
)
られてあはれや朽ちぬ。
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
内田大使の任期は
漸
(
やつ
)
と一年か一年半で済む事だらうから、白米は五俵もあつたら十分だらう。味噌は
黴
(
かび
)
さへ我慢したら何時までも食べられる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そこを潜ると、
黴
(
かび
)
くさい真暗な倉庫の中に出る。妙なところへ連れこまれたなあと思っているうちに眼が
暗
(
やみ
)
になれてくる。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
トゥヰンビー館といえば、札幌の演武場くらいを俺は想像していたんだが、行ってみたら、白官舎を半分にして
黴
(
かび
)
を生やしたような建物だった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
羽目は黒いが、永年の風雨に荒廃し、黒さも薄墨色にぼんやりしたところへ、緑っぽく細かい
黴
(
かび
)
が、蛾の
翅
(
はね
)
の粉を撒いたように滲みついていた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
が、誰も人の住んでいるけはいはありません。キチンと片付いて、何一つ道具とてもない
黴
(
かび
)
だらけの
琉球畳
(
りゅうきゅうだたみ
)
だけが、
白々
(
しらじら
)
と光っているばかりです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
薔薇
(
ばら
)
の花は
頭
(
かしら
)
に咲て活人は絵となる世の中独り文章
而已
(
のみ
)
は
黴
(
かび
)
の生えた
陳奮翰
(
ちんぷんかん
)
の四角張りたるに
頬返
(
ほおがえ
)
しを附けかね又は舌足らずの
物言
(
ものいい
)
を学びて口に
涎
(
よだれ
)
を
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
彼は自分の服装のことなどはまるで心にもとめなかった。彼の着ている制服といえば、緑色があせて変なにんじんに
黴
(
かび
)
が生えたような色をしていた。
外套
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
冷なる學校の
榻
(
たふ
)
に坐して、
黴
(
かび
)
の
生
(
は
)
えたるハツバス・ダアダアが講釋に耳傾けんは、あまりに甲斐なき事ならずや。見よ、我が馬に
騎
(
の
)
りて
市
(
まち
)
を行くを。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「屍蝋」……ある医書の「屍蝋」の項が、私の目の前に、その著者の
黴
(
かび
)
くさい絵姿と共に浮んで来た。一体全体、この男は何を云わんとしているのだ。
白昼夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
かれの予測した古い
黴
(
かび
)
のような匂いや、埃のむれや、至るところに不思議な軋り泣きする階段をおもしろく感じた。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
蠹
(
しみ
)
の巣のようになっていて、古い
黴
(
かび
)
臭い香もしながら字は
明瞭
(
めいりょう
)
に残って、今書かれたとも思われる文章のこまごまと確かな筋の通っているのを読んで
源氏物語:47 橋姫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
第一本文が
無闇
(
むやみ
)
に
六
(
むつ
)
かしい上にその註釈なるものが、どれも大抵は何となく
黴
(
かび
)
臭い雰囲気の中を手捜りで連れて行かれるような感じのするものであった。
変った話
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
長いこと、人間が住まなかったからであろう、部屋の中は
馬糞紙
(
ばふんし
)
のような、ボコボコした古い
匂
(
にお
)
いがこもっていて、黒い畳の縁には薄く
黴
(
かび
)
の
跡
(
あと
)
があった。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
されどこの輪の
周圍
(
まはり
)
のいと高きところの殘しゝ
轍
(
あと
)
を人かへりみず、
良酒
(
よきさけ
)
のありしところに
黴
(
かび
)
生ず 一一二—一一四
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
掃除をして餅の
黴
(
かび
)
をけずり、玉子や茶道具をそばにならべ、小皿に
醤油
(
しょうゆ
)
をうつすじぶんにはちょうど湯がわく。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
物に
黴
(
かび
)
を誘ふことの甚しい雨であつた。此間にお桐の容体は
革
(
あらたま
)
つた。絶間なしに
痰
(
たん
)
を吐いて居た。肺が全部腐敗して出て来るかと思はれるほど烈しかつた。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
動
(
やや
)
もすれば、新しい現代の生活を
呪詛
(
じゅそ
)
して、
黴
(
かび
)
の生えた因習思想を維持しようとする人たちを見受けます。
「女らしさ」とは何か
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
世間をおそれる身が長く
端居
(
はしい
)
はできないので、二人の仲直りを見とどけて綾衣は早々に奥へはいった。昼でも暗い納戸には
湿
(
しめ
)
って
黴
(
かび
)
臭い空気がみなぎっていた。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
甲谷は先に立った山口の後から土間を降りると、真暗な
黴
(
かび
)
臭い四角な口から
梯子
(
はしご
)
を伝って地下室へ降りた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
今朝
(
けさ
)
まではインキが乾いて間もない、青々としたペンの
痕跡
(
あと
)
に見えたのが、今はスッカリ真黒くなって、行と行との間には黄色い
黴
(
かび
)
さえ付いているようである。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
孤独の寂し味のなかに包まれて、なんのことはない、餅の上に生えた
黴
(
かび
)
のようなライフを味おうている。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
倉庫に特有な
黴
(
かび
)
の
臭
(
にお
)
いでもあるけれども、それにいろ/\な物の交った、複雑な、不愉快な臭いである。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
まず第一に、湿った
黴
(
かび
)
臭い地下室からのように、ドイツ魂から
滴
(
したた
)
っている、胸悪くなる多感性があった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
父はそんなものには目もくれず、カステイラなどはいつでも
黴
(
かび
)
が生える。それでも手をつけさせなかった。家族のものは
勿体
(
もったい
)
ないといったが、どうにもならない。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
従って誰しもが前々よりややもするといいたかった言葉であって、すでにすでに平凡化し、
黴
(
かび
)
が生え、今さらのごとくそれをいうと野暮に聞こえるほどのものである。
現代茶人批判
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
白い
黴
(
かび
)
やうのものがひろがつてゐるが、烈しい臭気に彼も亦、そのことに気がついて、小口貸金手軽に御用立てます、と云ふ広告を読みながら、排泄するのであつた。
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
けだし彼等にとってみれば、あの
黴
(
かび
)
臭い古都の空気ほど、没趣味で散文的なものは宇宙にないのだ。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
其処に夏になると美しい衣に滲み出る
黴
(
かび
)
のような、周囲に不調和な平原の
陋習
(
ろうしゅう
)
の
迹
(
あと
)
が汚なく印せらるるにしても、其他の、殊に別山から雄山に続く長い頂上の何処に
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
気がつくと、私は
黴
(
かび
)
のにおいのする暗い地面に倒れていた。土臭い風が
生温
(
なまぬる
)
く顔に吹きつけていた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
軟
(
やはら
)
かな
風
(
かぜ
)
が
凉
(
すゞ
)
しく
吹
(
ふ
)
いて
松
(
まつ
)
の
花粉
(
くわふん
)
が
埃
(
ほこり
)
のやうに
濕
(
しめ
)
つた
土
(
つち
)
を
掩
(
おほ
)
うて、
小麥
(
こむぎ
)
の
穗
(
ほ
)
にもびつしりと
黴
(
かび
)
のやうな
花
(
はな
)
が
附
(
つ
)
いた。
百姓
(
ひやくしやう
)
は
皆
(
みな
)
自分
(
じぶん
)
の
手足
(
てあし
)
に
不足
(
ふそく
)
を
感
(
かん
)
ずる
程
(
ほど
)
忙
(
いそが
)
しくなる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
根太
(
ねだ
)
も
畳
(
たヽみ
)
も
大方
(
おほかた
)
朽
(
く
)
ち落ちて、
其上
(
そのうへ
)
に
鼠
(
ねずみ
)
の毛を
挘
(
むし
)
り
散
(
ちら
)
した
様
(
やう
)
な
埃
(
ほこり
)
と、
麹
(
かうじ
)
の様な
黴
(
かび
)
とが積つて居る。落ち残つた
根太
(
ねだ
)
の
横木
(
よこぎ
)
を一つ
跨
(
また
)
いだ時、
無気味
(
ぶきみ
)
な
菌
(
きのこ
)
の
様
(
やう
)
なものを踏んだ。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
黴
(
かび
)
の
生
(
はえ
)
た
駄洒落
(
だじゃれ
)
を
熨斗
(
のし
)
に
添
(
そえ
)
て度々進呈すれど少しも取り
容
(
い
)
れず、随分面白く異見を
饒舌
(
しゃべ
)
っても、
却
(
かえ
)
って珠運が
溜息
(
ためいき
)
の
合
(
あい
)
の手の
如
(
ごと
)
くなり、是では行かぬと本調子整々堂々
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
老爺さんの頭はだんだん凸凹が多く深くなって、
黴
(
かび
)
がはえたようにそのくぼみに
埃
(
ほこり
)
がたまる——
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
冷
(
すず
)
しい草屋根の下に住んだ時とは違って、板屋根は日に近い。壁は乾くと同時に白く
黴
(
かび
)
が来た。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“黴(カビ)”の解説
カビ(黴)とは、菌類の一部の姿を指す言葉である。あるいはそれに似た様子に見える、肉眼的に観察される微生物の集落(コロニー)の俗称でもある。
(出典:Wikipedia)
黴
漢検1級
部首:⿊
23画
“黴”を含む語句
黴菌
黴臭
黴毒
黴菌病
青黴
検黴
駆黴
駆黴剤
駆黴療法
黴毒女
黴毒性
黴毒菌
黴附
黴類