トップ
>
趣
>
おもむ
ふりがな文庫
“
趣
(
おもむ
)” の例文
一が去り、二が
来
(
きた
)
り、二が消えて三が生まるるがために
嬉
(
うれ
)
しいのではない。初から
窈然
(
ようぜん
)
として
同所
(
どうしょ
)
に
把住
(
はじゅう
)
する
趣
(
おもむ
)
きで嬉しいのである。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
降蔵の話によると、彼は水戸浪士中の幹部のものが三、四人の供を連れ、いずれも平服で加州の陣屋へ
趣
(
おもむ
)
くところを目撃したという。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
趣
(
おもむ
)
きを
如何
(
どう
)
いふ
風
(
ふう
)
に
畫
(
か
)
いたら、
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こゝろ
)
を
夢
(
ゆめ
)
のやうに
鎖
(
と
)
ざして
居
(
ゐ
)
る
謎
(
なぞ
)
を
解
(
と
)
くことが
出來
(
でき
)
るかと、それのみに
心
(
こゝろ
)
を
奪
(
と
)
られて
歩
(
ある
)
いた。
画の悲み
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
煙りの裾、碑の前に、つつましく屈み、合掌しているのが娘で、その姿が、数本の小松に
遮
(
さえぎ
)
られていたので、かえって
趣
(
おもむ
)
き深く眺められた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夕立雲
(
ゆふだちぐも
)
が
立籠
(
たちこ
)
めたのでもなさゝうで、
山嶽
(
さんがく
)
の
趣
(
おもむ
)
きは
墨染
(
すみぞめ
)
の
法衣
(
ころも
)
を
襲
(
かさ
)
ねて、
肩
(
かた
)
に
紫
(
むらさき
)
の
濃
(
こ
)
い
袈裟
(
けさ
)
した、
大聖僧
(
だいせいそう
)
の
態
(
たい
)
がないでもない。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
御老中などへの運動もさまざまなさる
趣
(
おもむ
)
きでありましたが、この噂をえたりかしこしと、もってのほかのおとりつめよう。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
宗平は
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
キセル
)
に
莨
(
たばこ
)
をつめつつ語る、さして興味ある物語でもないが、こうした時こうした場所では、それも
趣
(
おもむ
)
きふかくきかれたのであった。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
取調べられ三次が白状の
趣
(
おもむ
)
きを申聞らるゝに長庵心中に是はと
仰天
(
ぎやうてん
)
なせしかども
急度
(
きつと
)
腹
(
はら
)
を
居
(
す
)
ゑ
是
(
これ
)
とても更に知らずとの申立によりて又もや三次を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
私の方の実験室は、よくいえば雑草の乱れ
咲
(
さ
)
いたような
趣
(
おもむ
)
きがある。むしろ普通にいえば
埃溜
(
ごみた
)
めのような実験室である。
実験室の記憶
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
名古屋城の金の
鯱
(
しゃち
)
も教授にはさほど注目を惹かなかったので、むしろその形態の
趣
(
おもむ
)
きや、城の屋根瓦が波のような感じをもつことをよろこばれました。
アインシュタイン教授をわが国に迎えて
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
「
勝
(
すぐ
)
れた智慧をもっている
菩薩
(
ひと
)
は、
乃
(
いま
)
し生死をつくすに至るまで、
恆
(
つね
)
に衆生の
利益
(
りやく
)
をなして、しかも涅槃に
趣
(
おもむ
)
かず」
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
兵法
(
へいはふ
)
に、百
里
(
り
)
にして
(四六)
利
(
り
)
に
趣
(
おもむ
)
く
者
(
もの
)
は、
上將
(
じやうしやう
)
を
蹶
(
たふ
)
し、五十
里
(
り
)
にして
利
(
り
)
に
趣
(
おもむ
)
く
者
(
もの
)
は、
(四七)
軍
(
ぐん
)
、
半
(
なか
)
ば
至
(
いた
)
る
国訳史記列伝:05 孫子呉起列伝第五
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
氏
(
うじ
)
育ち共に
賤
(
いや
)
しくなく、
眉目
(
びもく
)
清秀、容姿また
閑雅
(
かんが
)
の
趣
(
おもむ
)
きがあって、書を好むこと色を好むが
如
(
ごと
)
しとは言えないまでも、とにかく幼少の頃より神妙に学に志して
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼がその思考の
趣
(
おもむ
)
くままに従うならば、彼がおそらくはこの世にもたらすべき子供達を養うことが出来るであろうか、という疑惑を感ぜざるを得ないのである。
人口論:01 第一篇 世界の未開国及び過去の時代における人口に対する妨げについて
(新字新仮名)
/
トマス・ロバート・マルサス
(著)
音に聞くシャン・ゼリゼーの通りが余りに広漠として何処に風流街の
趣
(
おもむ
)
きがあるのか
歯痒
(
はが
)
ゆく思えた。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
天井一パイに草根木皮を掛け連ねて、一間に三間の板敷が、さながら藥のトンネルと言つた
趣
(
おもむ
)
きです。
銭形平次捕物控:202 隠し念仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「長らく滞在にも
拘
(
かかわ
)
らず
下知
(
げち
)
の
趣
(
おもむ
)
きききいれざる段は不届きである。金談は断るから、左様心得ろ」
安吾史譚:05 勝夢酔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
嗚呼
(
あゝ
)
墳墓、汝の冷々たる舌、汝の常に餓ゑたる口、何者をか
噬
(
か
)
まざらん、何物をか呑まざらん、而して墳墓よ、汝も亦た遂に空々漠々たり、水流滔々として洋海に
趣
(
おもむ
)
けど
富嶽の詩神を思ふ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
「ここが、
名人
(
めいじん
)
じゃ、
自然
(
しぜん
)
の
趣
(
おもむ
)
きが、こんな
小
(
ちい
)
さなさかずきの
中
(
なか
)
にあふれている
感
(
かん
)
じがする。」
さかずきの輪廻
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
然る後において、画家は、好む処、心の
趣
(
おもむ
)
く処に従い、風景、静物、人体、その他あらゆるこの世の万象を描く事において絶対の自由と気ままとが許されているはずである。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
若
(
も
)
し此地に
移住
(
いじゆう
)
し来るものあらんか、湯の小屋の
温泉
(
おんせん
)
も
亦
(
また
)
世
(
よ
)
に
顕
(
あらは
)
れて
繁栄
(
はんえい
)
に
趣
(
おもむ
)
くや必せり。
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
決して人様の物を取る様な娘ではないので誠にどうも飛んだ災難で、お筆は
一途
(
いちず
)
に残念に思いました処から、駈出して入水致したを、お助け下さいました
趣
(
おもむ
)
きで有難う存じます
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
もしそれ第二種のいわゆる革命家に到りては、大いに
趣
(
おもむ
)
きを
殊
(
こと
)
にするものあり、彼らは眼の人たるのみならず、手の人たるのみならず、眼に見る所、直ちに手にも行うの人なり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
と云つたやうな
趣
(
おもむ
)
きのある街で、土塀が
崩
(
くづ
)
れてゐたり家竝が傾きかかつてゐたり——勢ひのいいのは植物だけで時とすると
吃驚
(
びつくり
)
させるやうな
向日葵
(
ひまはり
)
があつたりカンナが咲いてゐたりする。
檸檬
(旧字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
阿蘇駅が坊中と言っていた時は、もっと素朴で、登山口らしい
趣
(
おもむ
)
きがあった。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
ごみごみした
市井
(
しせい
)
の
賑
(
にぎや
)
かさがごっちゃになったような
趣
(
おもむ
)
きがありました。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
文化
(
ぶんくわ
)
とか
開明
(
かいめい
)
とかの
餘光
(
よくわう
)
に
何事
(
なにごと
)
も
根
(
ね
)
から
葉
(
は
)
から
堀
(
ほり
)
かへして百
年
(
ねん
)
千
年
(
ねん
)
むかしの
人
(
ひと
)
の
心
(
こヽろ
)
の
中
(
なか
)
まで
解剖
(
かいばう
)
する
世
(
よ
)
に、これを
職掌
(
しよくしよう
)
の
醫道
(
いだう
)
の
妙
(
めう
)
にも
我
(
わ
)
が
天授
(
てんじゆ
)
の
齡
(
よは
)
ひは
何
(
ど
)
うもならず、
學士
(
がくし
)
札幌
(
さつぽろ
)
へ
趣
(
おもむ
)
きし
歳
(
とし
)
の
秋
(
あき
)
経つくゑ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
自然と風向きがその方に
趣
(
おもむ
)
くのはまことに止むを得ないことである。
素人製陶本窯を築くべからず:――製陶上についてかつて前山久吉さんを激怒せしめた私のあやまち――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
国字国語の如きは時勢の
趣
(
おもむ
)
くままに
任
(
まか
)
すより
外
(
ほか
)
はない。
仮寐の夢
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
やがて、
知己
(
ちかづき
)
になって知れたが、都合あって、
飛騨
(
ひだ
)
の山の中の郵便局へ転任となって、その任に
趣
(
おもむ
)
く途中だと云う。——それにいささか
疑
(
うたがい
)
はない。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
閉
(
とぢ
)
て控へたり此時
名主
(
なぬし
)
甚左衞門進出て申す樣只今願の
趣
(
おもむ
)
き
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
致したり扨々驚き入たる
心底
(
しんてい
)
幼年には勝りし
發明
(
はつめい
)
天晴
(
あつぱれ
)
の心立なり斯迄
思込
(
おもひこみ
)
し事を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
この
趣
(
おもむ
)
きを解し得て、始めて
吾人
(
ごじん
)
の所作は壮烈にもなる、閑雅にもなる、すべての困苦に打ち勝って、胸中の一点の無上趣味を満足せしめたくなる。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今尚諸国を
経巡
(
へめぐ
)
りて、
斯道
(
しどう
)
の達人を求めおる次第、しかるに只今お聞きすれば、忍術の心得ござる
趣
(
おもむ
)
き、拙者にとっては何よりの幸い、なにとぞ拙者の
懇望
(
こんもう
)
を入れられ
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「わかい頃には、」と兄は草をむしりながら、「庭に草のぼうぼうと
生
(
は
)
えているのも
趣
(
おもむ
)
きがあるとも思ったものだが、としをとって来ると、一本の草でも気になっていけない。」
庭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
男は
真先
(
まっさき
)
に
世間外
(
せけんがい
)
に、はた世間のあるのを知って、空想をして実現せしめんがために、身を
以
(
も
)
って
直
(
ただ
)
ちに
幽冥
(
ゆうめい
)
に
趣
(
おもむ
)
いたもののようであるが、
婦人
(
おんな
)
はまだ半信半疑でいるのは
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五兵衞吉兵衞の兩人へ引渡しに成たりける元より久八が
縊
(
くび
)
り
殺
(
ころ
)
したる
趣
(
おもむ
)
き
自訴
(
じそ
)
せしかば翌日甲州屋吉兵衞伊勢屋五兵衞久八の
伯父
(
をぢ
)
六右衞門一同等御
呼出
(
よびだ
)
しにて調べとこそは成りにけれ。
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
獣皮で作った天幕がその間に点々と
散在
(
まじ
)
っているのも別世界らしい
趣
(
おもむ
)
きがある。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
趣
常用漢字
中学
部首:⾛
15画
“趣”を含む語句
趣向
趣味
意趣
意趣返
風趣
異国趣味
旨趣
此趣
趣意
興趣
情趣
画趣
野趣
帰趣
趣旨
御意趣
意趣遺恨
五趣生死
御趣意
浪漫趣味
...