越前ゑちぜん)” の例文
越前ゑちぜん武生たけふの、わびしい旅宿やどの、ゆきうもれたのきはなれて、二ちやうばかりもすゝんだとき吹雪ふゞき行惱ゆきなやみながら、わたしは——おもひました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こふに取次出來れば越前守申さるには夜中やちうはなはだ恐入存ずれど天下の一大事に付越前ゑちぜん推參すゐさん仕つて候何卒中納言樣へ御目通おめどほりの儀願上奉るむね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きみ身體からだ丈夫ぢやうぶだから結構けつこうだ」とよく何處どこかに故障こしやうおこ安井やすゐうらやましがつた。この安井やすゐといふのはくに越前ゑちぜんだが、なが横濱よこはまたので、言葉ことば樣子やうすがう東京とうきやうものとことなるてんがなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「敦賀と申すと、あの越前ゑちぜんの敦賀でござるかな。あの越前の——」
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それ大雪おほゆきのために進行しんかうつゞけられなくなつて、晩方ばんがた武生驛たけふえき越前ゑちぜん)へとまつたのです。ひて一町場ひとちやうばぐらゐは前進ぜんしん出來できないことはない。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
爲にも及ばじ依て小西屋へ參りし醫師いしは何れの者やらわからずとせんついて其方も醫師の事ゆゑ今越前ゑちぜんが問たきことありそも/\醫師は螢雪けいせつの學のまどに年をかさね人の生命いのち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは能登のと越中ゑつちう加賀かがよりして、本願寺ほんぐわんじまゐりの夥多あまた信徒しんとたちが、ころほとん色絲いろいとるがごとく、越前ゑちぜん——上街道かみかいだう往來ゆききしたおもむきである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もらひ信州へ參り越後の方を尋ね候處不慮ふりよの災なんに逢ひ終には猿島河の下にて首を見付みつけたるは先達て申上候と言にぞ越前ゑちぜん守殿何源次郎其方つまは右の二のうでに源次郎命と彫物ほりものをしてを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
のちにもふが——いつもはくだん得意とくいくるまで、上街道かみかいだう越前ゑちぜん敦賀つるがたのに——爾時そのときは、旅費りよひ都合つがふで。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
備中びつちう一時あるとき越前ゑちぜん領土巡検りやうどじゆんけんやくを、主人しゆじん義景よしかげよりうけたまはり、供方ともかた二十にんばかりをれて、領分りやうぶんたみ状態じやうたいさつせんため、だゝる越前ゑちぜん大川おほかは足羽川あすはがはのほとりにかゝる。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けばこれから越前ゑちぜんつて、ちがふが永平寺えいへいじたづねるものがある、たゞ敦賀つるが一泊いつぱくとのこと。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
にしとしあきのはじめ、汽船きせん加能丸かのうまる百餘ひやくよ乘客じようかく搭載たふさいして、加州かしう金石かないはむかひて、越前ゑちぜん敦賀港つるがかうはつするや、一天いつてん麗朗うらゝか微風びふう船首せんしゆでて、海路かいろ平穩へいをんきはめたるにもかゝはらず
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
東枕ひがしまくらも、西枕にしまくらも、まくらしたまゝ何處どこをさしてくのであらう。汽車案内きしやあんない細字さいじを、しかめづらすかすと、わかつた——遙々はる/″\きやう大阪おほさか神戸かうべとほる……越前ゑちぜんではない、備前國びぜんのくに糸崎いとざきである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところで、随筆ずゐひつ出処しゆつしよだとすると、なんのために、奥州おうしう越前ゑちぜんうつして、越中ゑつちう備中びつちうにかへたらう、ソレあるひは越中ゑつちうふんどしひゞいて、強力がうりき威厳ゐげんきづつけやうかの深慮しんりよたのかもはかられぬ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これは越前ゑちぜん名代なだい強力がうりき一日あるひ狩倉かりくら大熊おほくま出逢であひ、てるやりくまのために喰折くひをられこと鉄拳てつけんげてくまをば一けんもと打殺うちころしこの勇力ゆうりよくはかくのごとくであるとくまかは馬標うまじるしとした。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)