つく)” の例文
「知っていますよ、だからなおさらおまえに菓子は売れない。しかもわしのうちつくる上菓子などは、おまえの口にするものじゃない」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つの美味あれば、一家擧げて共にし、衣服をつくるにも、必ず善きものは年長者にゆづり、自分勝手じぶんがつてかまへず、互に誠を盡すべし。
遺教 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
カスタアドや乾酪チイズのお菓子や佛蘭西の饅頭菓子を製造つくつたり、獵禽とりの翼や足を縛つたり、デザァトのあしらひのつくり方なんかを教はつてゐた。
はッと私は空想の世界を去って、鑢をポケットに押し入れるなり、紙の漏斗じょうろつくって、火薬を電球の中へ注入しはじめた。
鼻に基く殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
うすると、こゝろきざんで、想像さうざうつくげた……しろ俘虜とりこ模型もけい彫像てうざうが、一団いちだんゆきごとく、沼縁ぬまべりにすらりとつ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
マルセーユの歌に対してつくりたる独逸ドイツ祖国歌は非常の賞賛を得て、一篇の短歌能く末代の名を存せしと聞く。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
四邊の山林から樟腦を作る楠と紙をつくるに用ふる糊の原料である空木うつぎの木とを採伐することに着手した。
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
これを想う時営利主義のもとにおいては、正しい民藝品がつくられる機会はないわけです。もしこのままに制度が続くなら、正しい工藝の未来はあり得ないでしょう。
民芸とは何か (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
白い鳥の羽でつくつた団扇を、時々大事さうに使つてゐる容子では、多分、儒者か何かにちがひない。
酒虫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
纐纈布でつくられた、帆と袍とは闇の中を、焔のように輝きながら、水と陸とに別れたのである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
されどもとほ東方ひんがしの、曙姫あけぼのひめ寢所ねどころから、あの活々いき/\した太陽たいやう小昏をぐらとばりけかくれば、おもこゝろせがれめはそのあかるさから迯戻にげもどり、まどぢ、きらうて、れからよるをばつくりをる。
思ふにコロボツクルは是等の石器せききを用ゐて草木さうもくつぶ食用しよくえうつくりしならん。石皿のけつして適切てきせつには非ざれど、き名をおもひ付かざればしばら通稱つうしやうに從ふのみ。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
服曾比猟キソヒカリする月は来にけりとありて上古は今のごとく染汁ソメシルつくりて衣服を染ることはなくてハリの実或はすみれかきつばたなどの色よき物をキヌに摺りツケてあやをなせるなり其摺着スリツクル
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
左にうつしし画にてそのつくり様を見たもうべし(第四図イ)、『鹿苑院殿御元服記ろくおんいんどのごげんぷくき』永和元年三月の条、〈御車新造、東寺より御輿、御力者十三人、牛飼五人、雑色ぞうしき九人、車副くるまぞい釜取以下〉とあるは
『よし、さらば、詰問きつもんせん』王樣わうさま冱々さえ/″\しからぬ御容子ごようすにて、うでみ、まゆひそめ、兩眼りようがんほとんど茫乎ぼうツとなるまで料理人クツク凝視みつめてられましたが、やがてふとこゑで、『栗饅頭くりまんぢうなにからつくられるか?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
どうかよい本につくってやって下さいと、挨拶にゆかれたそうである。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
草場船山せんざんの句あり、かの瓦もてつくりたる硯に題する古詩のうちに——
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「晩にね、僕が、煙草の吸殻すいがら飯粒めしつぶで練って、膏薬こうやくつくってやろう」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「後でないしょでアイスクリームをつくってあげますよ。」
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
中堂の大厨おおくりやの方では、あしたの朝の僧衆のために、たくさんな豆腐をつくっているとみえて、豆を煮るにおいがどこともなく流れてくる。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
必要によって当時の図書館長バルビールに命じてつくらせました、函入はこいり新装の、一千巻、一架ひとたなの内容は、宗教四十巻、叙事詩四十巻、戯曲四十巻、その他の詩篇六十巻。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御者ぎょしゃ懶惰ぶしゃうはしため指頭ゆびさきから發掘ほじりだ圓蟲まるむしといふやつ半分はんぶんがたも鼠裝束ねずみしゃうぞくちひさい羽蟲はむし車體しゃたいはしばみから、それをば太古おほむかしから妖精すだま車工くるましきまってゐる栗鼠りす蠐螬ぢむしとがつくりをった。
つくれる埴瓮はにべ遺物かたみ——それかあらぬ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
心臟ハート女王樣ぢよわうさま栗饅頭くりまんぢうつくつた
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
紙幣は、人間が、便法としてつくつた假定の證標であつて、眞實は、金のやり取りが社會でも人生でもない。精神の代表を運輸してゐるのだ。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
ロミオ ほかのとくらぶれば彌〻いよ/\彼女あれをば絶美ぜつびぢゃとはねばならぬことになる。美人びじんひたひるゝ幸福しあはせ假面めんどもは、れも黒々くろ/″\つくってはあれど、それがかへってそのそこしろかほ思出おもひださする。
「家中ではないが、備中玉島の郷士ごうし千原せんばら九右衛門という。いま陣中ではもっぱらこの附近の絵図面などをつくらせておるが」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ご覧の通り、手前どもの店は、表を張っておりませぬし、薬草は山でつくり、売子は春秋の二回に、仕入れた荷を背負って、諸国へ行商あきないに出てしまいまする。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
砂糖などというものはめたことは愚か、見たこともない。——特に、織田殿がお泊りなので、上賓じょうひんへ馳走のため、膳部の者が自慢でつくったものだという。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
名知らぬ南方の小禽ことり黄金こがねの鳥籠に入れたものと、ばてれん達が本国から連れて来た料理人につくらせた南蛮菓子をうつわれた物とを捧げて、三名のばてれんは
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きょうは、お蔭さまで、うちの馬が仔を産みましたで、少しばかり草餅をつくりました。お口にあいませぬが、お慰みにもと、少しばかり持って参りましたで」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしの店で売る菓子は、おまえ方のような怠惰な者に食わせるためつくっている菓子ではない。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今なお足の傷手いたでえないので、歩行のときは甚だしい跛行びっこをひく。(これは痼疾こしつとなって生涯の不具となった)——で、彼は、栗山善助に命じて、軽敏に乗用できる陣輿をつくらせておいた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ご褒美ほうびをあげよう。爺や、わたしのつくったお萩餅はぎをおあがり……爺や」
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしとは深い御縁があるので、生き遺物がたみとも思し召し、思い出の地の山水を絵付えつけして、特に丹精をこらしてつくられた香炉じゃが、寺に納めておけば、末代まで長く什宝じゅうほうとして伝わるであろうから——
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ年々つくって乞われる檀家だんかへ贈るならわしは残っていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)