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蛸
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たこ
ふりがな文庫
“
蛸
(
たこ
)” の例文
ぎらぎらと天日に輝く油つこい葉、幹を支へる
蛸
(
たこ
)
のやうな枝根の紅樹林の壁が、海防でも、サイゴンでも港湾の入口につらなつてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
『畳二畳敷程の
蛸
(
たこ
)
がな、砂の上を這ふてましたのやらう。そうしたら傍に居た娘はんがびつくりしやはつてきやつと云やはりましたで。』
住吉祭
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
それで沢山の長い根は、その木の根本を中心にして放射状に水平にひろがり、
蛸
(
たこ
)
が八方へ足をのばしたような恰好になっていた。
ツンドラへの旅
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
談中——主なるものは、
茸
(
きのこ
)
で、
渠
(
かれ
)
が番組の茸を
遁
(
に
)
げて、
比羅
(
びら
)
の、
蛸
(
たこ
)
のとあのくたらを説いたのでも、ほぼ不断の態度が知れよう。
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
王家なるものは、各枝が地にたれ根をおろして一本の木になるというあのインドの
蛸
(
たこ
)
の木にも似ている。各枝は一王朝となることができる。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
▼ もっと見る
祭や祝ごとの日には、特に
小豆
(
あずき
)
や菜のあえもの、塩辛や
蛸
(
たこ
)
などを入れてこの団子をこしらえることもあった(頸城郡誌稿)。
食料名彙
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
蛸
(
たこ
)
よ蛸よと呼ばれて、いつもお
傍
(
そば
)
ちかく
侍
(
はべ
)
って若殿にけしからぬ事を御指南申したりして、若殿と共にげらげら下品に笑い合っているのである。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
お銀はその病室から、そのころ出たての針金を縮ませて足を工夫した
蜘蛛
(
くも
)
や
蛸
(
たこ
)
の翫具を持って来て、それを床の上にかけわたされた糸に
繋
(
つな
)
いだ。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
含みて夫は
職人衆
(
しよくにんしう
)
の
符號
(
ふちやう
)
にて其なげしと云は
下帶
(
したおび
)
の事なりくぢらとは
鐵釘
(
かなくぎ
)
の事
股引
(
もゝひき
)
をば
蛸
(
たこ
)
と云ふ是れ皆職人衆の
平常
(
つね
)
に云ふ
符號詞
(
ふちやうことば
)
なりと能々
譯
(
わけ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
桜の根は
貪婪
(
どんらん
)
な
蛸
(
たこ
)
のやうに、それを抱きかかへ、いそぎんちやくの食糸のやうな毛根を
聚
(
あつ
)
めて、その液体を吸つてゐる。
桜の樹の下には
(新字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
刄物
(
はもの
)
を
以
(
もつ
)
て
突
(
つ
)
つ
刺
(
つあ
)
しても
同
(
どう
)
一である。
蛸壺
(
たこつぼ
)
の
底
(
そこ
)
には
必
(
かなら
)
ず
小
(
ちひ
)
さな
穴
(
あな
)
が
穿
(
うが
)
たれてある。
臀
(
しり
)
からふつと
息
(
いき
)
を
吹
(
ふ
)
つ
掛
(
か
)
けると
蛸
(
たこ
)
は
驚
(
おどろ
)
いてすると
壺
(
つぼ
)
から
逃
(
に
)
げる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
竹籠、スコップ、
雁爪
(
がんづめ
)
などが積みあげられ、赤錆になった
錨
(
いかり
)
が一本、足を切られた
蛸
(
たこ
)
のように、投げだされてある。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
巨大なる
蛸
(
たこ
)
の頭を切り取って載せたように、頭頂は大薬鑵であるが、ボンの
凹
(
くぼ
)
には
芼爾
(
もうじ
)
とした毛が房を成している。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
半時ほど旋りて胴中
炮烙
(
ほうろく
)
の大きさに膨れまた舞う内に
後先
(
あとさき
)
各二に裂けて四となり、また舞い続けて八となり、すなわち
蛸
(
たこ
)
と
化
(
な
)
りて沖に游ぎ去ったと見ゆ。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
角帽をかむる日まで、レントゲン技術員として勉強していた教室、ああ、一緒に入学試験を受け、同じく角帽の栄冠を得た親友
蛸
(
たこ
)
ちゃんはどうなったろう。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
植物の
蔓
(
つた
)
が、まるで
蛸
(
たこ
)
の
脚
(
あし
)
のようにぐらぐらと動きまわって、どこかにまきつく棒とか縄とかないかと、しきりにさがしもとめている有様がうつっていた。
火星兵団
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
顔見知りの一等卒が、
蛸
(
たこ
)
をゆでたように、真赤になって、
似指
(
ちんぼこ
)
を振りだしのまゝとび出してきた。猫をつまむように、
軍衣袴
(
ぐんいこ
)
と、襦袢
袴下
(
こした
)
をつまんでいた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
ニッケルの金属の光りに絡んだ彼女のしなやかな指先は、丁度めがねで覗いた海底の
蛸
(
たこ
)
の足のようであった。
掠奪せられたる男
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
先ごろ女中のお梅が市場へ
蛸
(
たこ
)
を買いに行った時、なるべく足の沢山あるのを下さいといったら魚屋のおやじが、蛸の足は昔から八本ときまってますと答えた。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
お前さんの改心は本物だ、そこまで腹が定ったら今さらお仕置を受けるまでもない、わずかばかりだがその金を持って京へお出で、
蛸
(
たこ
)
薬師下る所に
桶屋
(
おけや
)
がある
暗がりの乙松
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
消化がわるいから僕は
蛸
(
たこ
)
が
嫌
(
きらい
)
だというような口上で、もし好物であったなら、いかほど不消化でも、だまって、足は八本共に平げるほどな覚悟だろうと思います。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
風流たる
蛸
(
たこ
)
公子。また春潮に浮かれ来る。手を握つて
妾
(
しょう
)
が心かなしむ。君が疣何ぞ太甚だひややかなる。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
と、大きな音がして腹が裂けるとともに、その中から大きな
蛸
(
たこ
)
が出て来たが、それが猛烈な勢いで達磨の新公に飛びかかるなり、真黒い毒どくしい墨をぱっと吐いた。
妖蛸
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかし私は今は新京極というその頃の誓願寺や、錦小路天神、
蛸
(
たこ
)
薬師、道場、祇園の御旅には、いろいろの興行物があり、小芝居もしていたので、それを時々覗いた。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
けれども、右門はさようとも、いいやともいわずに、さっさと引き揚げていってしまったものでしたから、かんかんどころか、
蛸
(
たこ
)
のようになって伝六があびせかけました。
右門捕物帖:04 青眉の女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
五角、
扇形
(
おうぎがた
)
、
軍配
(
ぐんばい
)
、
与勘平
(
よかんぺい
)
、
印絆纒
(
しるしばんてん
)
、
盃
(
さかずき
)
、
蝙蝠
(
こうもり
)
、
蛸
(
たこ
)
、
鳶
(
とんび
)
、
烏賊
(
いか
)
、
奴
(
やっこ
)
、
福助
(
ふくすけ
)
、
瓢箪
(
ひょうたん
)
、切抜き……。
顎十郎捕物帳:07 紙凧
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そして其筋の計算に由れば、偉大なる風博士は僕と共謀のうえ遺書を
捏造
(
ねつぞう
)
して自殺を装い、かくてかの憎むべき
蛸
(
たこ
)
博士の名誉毀損をたくらんだに相違あるまいと
睨
(
にら
)
んだのである。
風博士
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
今日でも
稀
(
まれ
)
には見掛けるが、昔の凧屋の看板というものが面白かった。
籠
(
かご
)
で
蛸
(
たこ
)
の形を拵らえて、目玉に金紙が張ってあって、それが風でくるりくるりと引っくり返るようになっていた。
凧の話
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
凪
(
な
)
いだ海の底を、
蛸
(
たこ
)
の這うのも見えるほど、水も空も、この夕方は澄んでいた。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真逆様
(
まっさかさま
)
に海中へ飛び込んだ救うべくもない不幸な娘と、それから、もう一人……
蛸
(
たこ
)
のようにツルツルでグニャグニャの、赤い、柔らかな……そうだ、精神的なショックや、過労の
刺戟
(
しげき
)
のために
灯台鬼
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
フランソアーズは音楽家ではなかったけれど、音楽が詩を食い荒らす
蛸
(
たこ
)
のように、詩を害しながら発展してゆくのをさえ、一つの
頽廃
(
たいはい
)
的兆候と見なしがちだった。クリストフはそれに反対した。
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
同じ仲間の秋刀魚や鯛や
鰈
(
かれい
)
や
鰊
(
にしん
)
や
蛸
(
たこ
)
や、其他海でついぞ見かけたことのないやうな、珍らしい魚たちまで賑やかにならべられてゐましたので、この秋刀魚は少しも寂しいことはなかつたのでしたが
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
鰻
(
うなぎ
)
、
鯰
(
なまず
)
、
鰌
(
どじょう
)
、ハゼ、イナ、などが釣れ、海では、鯛、
鱸
(
すずき
)
、
鯒
(
こち
)
、
鰈
(
かれい
)
、
鰺
(
あじ
)
、
鱚
(
きす
)
、
烏賊
(
いか
)
、
蛸
(
たこ
)
、カサゴ、アイナメ、ソイ、平目、小松魚、サバ、ボラ、メナダ、
太刀魚
(
たちうお
)
、ベラ、イシモチ、その他所によつて
日本の釣技
(新字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
その
糧
(
かて
)
が、今は、
乃
(
すなは
)
ち、敷島に對して殘つてゐる戀だ。三味、太鼓の音だ。身づから踊り出したい樣な空氣だ。かういふものがすべて自己といふ
蛸
(
たこ
)
の手足で、それを義雄は喰ふよりほかに道がない。
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
漁夫の仲間には、北海道の奥地の開墾地や、鉄道敷設の土工部屋へ「
蛸
(
たこ
)
」に売られたことのあるものや、各地を食いつめた「渡り者」や、酒だけ飲めば何もかもなく、ただそれでいいものなどがいた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
ガラツ八は
蛸
(
たこ
)
のやうな
唇
(
くち
)
をしました。
銭形平次捕物控:072 買つた遺書
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
貪婪
(
どんらん
)
の
蛸
(
たこ
)
に比すべし、
骨堂
(
こつだう
)
なり。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
桜の根は
貪婪
(
どんらん
)
な
蛸
(
たこ
)
のように、それを抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を
聚
(
あつ
)
めて、その液体を吸っている。
桜の樹の下には
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
魚市の鯛、
蝶
(
かれい
)
、
烏賊
(
いか
)
蛸
(
たこ
)
を眼下に見て、薄暗い
雫
(
しずく
)
に——人の影を泳がせた処は、
喜見城
(
きけんじょう
)
出現と云った
趣
(
おもむき
)
もありますが。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かりにも史書の
闕
(
けつ
)
を補うというがごとき態度ではなかったので、もしこんな話が後代に及んで珍重されたとするならば、それはもう『義経記』も耳に
蛸
(
たこ
)
で
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それでも
猶旦
(
やつぱり
)
騙
(
だま
)
されぬ
時
(
とき
)
は
小
(
ちひ
)
さな
穴
(
あな
)
から
熱湯
(
ねつたう
)
をぽつちりと
臀
(
しり
)
に
注
(
そゝ
)
げば
蛸
(
たこ
)
は
必
(
かなら
)
ず
慌
(
あわ
)
てゝ
漁師
(
れふし
)
の
前
(
まへ
)
に
跳
(
をど
)
り
出
(
だ
)
す。
熱
(
あつ
)
い一
滴
(
てき
)
によつて
容易
(
ようい
)
に
蛸
(
たこ
)
は
騙
(
だま
)
されるのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
『
醒睡笑
(
せいすいしょう
)
』に、海辺の者山家に聟を持ち、
蛸
(
たこ
)
と
辛螺
(
にし
)
と
蛤
(
はまぐり
)
を贈りしを、
山賤
(
やまがつ
)
輩何物と知らず村僧に問うと、竜王の陽物、鬼の拳、手頃の礫じゃと教えたとある通り
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
坊主頭の船頭は、
粗末
(
ぞんざい
)
な言葉で、
蛸
(
たこ
)
を捕るんだと答えた。この奇抜な返事には千代子も百代子も驚ろくよりもおかしかったと見えて、たちまち声を出して笑った。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大きい重油の燃焼炉が地下室の真中にがん
張
(
ば
)
っていて、それから太い送気筒が、七、八本各部屋の床へ、
蛸
(
たこ
)
の足のようにのび上っている。ちょっと怪奇な恰好である。
ウィネッカの秋
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
絞り染。
蛸
(
たこ
)
の脚。茶殻。
蝦
(
えび
)
。
蜂
(
はち
)
の巣。
苺
(
いちご
)
。
蟻
(
あり
)
。蓮の実。
蠅
(
はえ
)
。うろこ。みんな、きらい。ふり仮名も、きらい。小さい仮名は、
虱
(
しらみ
)
みたい。グミの実、桑の実、どっちもきらい。
皮膚と心
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
早くいえば、それは
蛸
(
たこ
)
と昆蟲の中間の様なものであった。すなわち大きな頭部を持ち、それを細い体が重そうに持ちあげているのだ。頭部には、大きな目が二つついていた。
火星探険
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その多くの見世物の中で、特に私の興味を
捉
(
とら
)
えたものは
蛸
(
たこ
)
めがねという
馬鹿気
(
ばかげ
)
た奴だった。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
巨大なる
蛸
(
たこ
)
の頭を切り取って載せたように、頭頂は
大薬鑵
(
おおやかん
)
であるが、ボンの
凹
(
くぼ
)
には
芼爾
(
もうじ
)
とした毛が房を成している。巨大な、どんよりとした眼が、パッカリと二つあいていて眉毛は無い。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
脚
(
あし
)
を切られた
蛸
(
たこ
)
みたいに真っ赤なものが、そこに
転
(
ころ
)
がっているのである。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
沼には
柵
(
さく
)
がめぐらされて、二本の樹木が岸に立っていた。右手のは
白楊樹
(
はくようじゅ
)
で、
梢
(
こずえ
)
の葉は落ちつくして震えていた。後方のは大きな
胡桃
(
くるみ
)
の木で、黒い裸の枝を差しのべて偉大な
蛸
(
たこ
)
のような格好だった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
“蛸(タコ)”の解説
タコ(蛸、鮹、章魚、鱆、海和魚、学名:octopoda)は、頭足綱 - 鞘形亜綱 - 八腕形上目のタコ目に分類される軟体動物の総称。
(出典:Wikipedia)
蛸
漢検準1級
部首:⾍
13画
“蛸”を含む語句
蛸樹
飯蛸
大蛸
茹蛸
蛸入道
蛸壺
蛸薬師
小蛸
蛸市
蛸肴
大蛸入道
乾蛸
酢蛸
蠨蛸
蛸顱巻
蛸釣舟
蛸配
蛸遁
蛸草
蛸絞
...