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ひもと
ふりがな文庫
“
繙
(
ひもと
)” の例文
卑しくも私の趣味性を
唆
(
そそ
)
るものあらば座右に備えて
悠々自適
(
ゆうゆうじてき
)
し、興来って新古の壱巻をも
繙
(
ひもと
)
けば、
河鹿笛
(
かじかぶえ
)
もならし、朝鮮太鼓も打つ
亡び行く江戸趣味
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
僕はうどんが煮える間を、米が
炊
(
た
)
ける間を大抵いつも詩集を
繙
(
ひもと
)
く。小説なんかよりはこの方が勝手だから。こんな詩を見つけたりする。
落穂拾い
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
わたくしは或日蔵書を整理しながら、露伴先生の『
讕言
(
らんげん
)
』中に収められた
釣魚
(
ちょうぎょ
)
の紀行をよみ、また
三島政行
(
みしままさゆき
)
の『葛西志』を
繙
(
ひもと
)
いた。
放水路
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
東西の犯罪史を
繙
(
ひもと
)
けば分る様に、大犯罪者であればある程、常人には理解し難い様な、子供らしい、馬鹿げた虚栄心を持っているのだ。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
小勢
(
こぜい
)
な
人数
(
にんず
)
には広過ぎる古い家がひっそりしている中に、
私
(
わたくし
)
は
行李
(
こうり
)
を解いて書物を
繙
(
ひもと
)
き始めた。なぜか私は気が落ち付かなかった。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
先生は「戦後わたくしが
繙
(
ひもと
)
いた新しい仏蘭西の詩集はアポリネール、ヴァレリイ、ジュル・ロマンその他二三家の集に過ぎない」
「珊瑚集」解説
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
試みに『霊異記』や『法華験記』『今昔物語』等の古書を
繙
(
ひもと
)
いてみるならば、これらの例話はいくらでも提出することができるのである。
俗法師考
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
鈍根な貧乏性を
頑
(
かたく
)
なに守っている
吝嗇家
(
りんしょくか
)
のように、本多正信とぼそぼそ話していない時は、独り居室で書物など
繙
(
ひもと
)
いている折が多かった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この様な句を読むとすると、
嘗
(
かつ
)
てロデンバックの短篇集を
繙
(
ひもと
)
いたことのある人ならきつとあの廃都ブリュジュの夕暮を思ひ描くに相違ない。
水に沈むロメオとユリヤ
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
一巻の絵巻物が出て来たのを
繙
(
ひもと
)
いて見て行く。始めの方はもうぼろぼろに朽ちているが、それでもところどころに比較的鮮明な部分はある。
厄年と etc.
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
第二種の論者よりは幾分か多くの洋籍を
繙
(
ひもと
)
き、英米学者の代議政体論、議院政治論、憲法論、立法論などは彼らよりも一層精しく講究せり。
近時政論考
(新字新仮名)
/
陸羯南
(著)
露伴、幸田氏のものされたる、「いさなとり」を
繙
(
ひもと
)
けば、その壮観、目に親しく
睹
(
み
)
るがごとき詳細なる記述に接す、われ敢てここに
贅
(
ぜい
)
せず。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
それを研究することも
根
(
こん
)
がよく、ひまがあれば古今の医書を
繙
(
ひもと
)
いて、細かに調べているのだが、どうしたものか先生の病で
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いづれの題目といへども芭蕉または芭蕉派の俳句に比して蕪村の積極的なることは蕪村集を
繙
(
ひもと
)
く者誰かこれを知らざらん。一々ここに
贅
(
ぜい
)
せず。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
そうしてその堕落史を
繙
(
ひもと
)
く人があるなら、それは近代から筆が起され、現代において絶頂に近づいてきたのを知るであろう。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
詩集はかなり
繙
(
ひもと
)
きましたが白楽天のは殊に愛誦して居りましたし中でもこの長恨歌には深い懐かしみを持って居りました。
芙蓉の花にも似た美しい楊貴妃を
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
然
(
しか
)
したつた一つの彼女の形見である『ワザーリング、ハイツ』を
繙
(
ひもと
)
く者には何れだけ強く深い人生の経験が、この不幸な
愛は、力は土より
(新字旧仮名)
/
中沢臨川
(著)
昨日
(
きのう
)
までは
督責
(
とくせき
)
されなければ取出さなかッた書物をも今日は我から
繙
(
ひもと
)
くようになり、
随
(
したが
)
ッて学業も進歩するので、人も
賞讃
(
ほめそや
)
せば両親も喜ばしく
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
では何故かと云うに、僕がそれ以前に図書室を調査した時、ポープ、ファルケ、レナウなどの詩集が、最近に
繙
(
ひもと
)
かれていたのを知ったからだよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
も一つは余が餘りに君とは近親であるから平常君が文學書など
繙
(
ひもと
)
いて居るのを知つて居ても、所謂文士仲間に
左
(
と
)
や
右
(
か
)
う言はれる程では勿論ないし
貝殻追放:007 愚者の鼻息
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
私は一日医書を
繙
(
ひもと
)
き、「若返り法と永遠の生命」の項について研究した。その結果得た結論は次の如きものであった。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
種々
(
いろいろ
)
な経営にいそがしいあの吉本さんにも、こうした「モダアン・ペインタアス」なぞを
繙
(
ひもと
)
こうとした静かな時があったであろうかと想像して見た。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
詳
(
つまびらか
)
なることは今わたくしの記憶に存せぬが、彼批評家には必ずや文集があるべく、これを
繙
(
ひもと
)
いたら、百物語評を検出することもまた容易であろう。
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
わが奇を好む心は、かの
露肆
(
ほしみせ
)
の主人が言に
挑
(
いど
)
まれて、愈〻
熾
(
さかん
)
になりぬ。われは人なき處に於いて、はじめて此卷を
繙
(
ひもと
)
かん折を、待ち兼ぬるのみなりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
どこの国の犯罪史を
繙
(
ひもと
)
いてみても、絶対的に先例が無かっただろう‥‥‥と思われるような、あの異常な事件の上にようやく一道の光明を投げあたえた。
臨時急行列車の紛失
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
犯罪史を
繙
(
ひもと
)
いて、犯罪の暴露の経過を見ると、犯人にとって最も危険なのは彼自身の良心です。彼等は勇敢に犯行をなすに
不拘
(
かかわらず
)
、犯行後極めて臆病です。
悪魔の弟子
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
(モウロは像を押頂きて元の棚に祭り、正吉とテーブルに向い合いて、再び聖書を
繙
(
ひもと
)
く。月のひかり。梟の声。)
人狼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一夜
(
いちや
)
幼君
(
えうくん
)
燈火
(
とうくわ
)
の
下
(
もと
)
に
典籍
(
てんせき
)
を
繙
(
ひもと
)
きて、
寂寞
(
せきばく
)
としておはしたる、
御耳
(
おんみゝ
)
を
驚
(
おどろ
)
かして、「
君
(
きみ
)
、
密
(
ひそか
)
に
申上
(
まをしあ
)
ぐべきことの
候
(
さふらふ
)
」と
御前
(
ごぜん
)
に
伺候
(
しかう
)
せしは、
君
(
きみ
)
の
腹心
(
ふくしん
)
の
何某
(
なにがし
)
なり。
十万石
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
今は孝行者が多い世の中だから、孝経なぞ読まなくなつたが、
往時
(
むかし
)
は何ぞといつてはこの経書を
繙
(
ひもと
)
いたものだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
伯父の死後七年にして、
支那
(
シナ
)
事変が起った時、三造は始めて伯父の著書『支那分割の運命』を
繙
(
ひもと
)
いて見た。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
ある日『おもろさうし』の十の巻「ありきゑとのおもろさうし」(旅行の歌の双紙の義)を
繙
(
ひもと
)
いていると、ふと「ねいしまいしがふし」というオモロが目についた。
土塊石片録
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
贔負目
(
ひいきめ
)
には
雪中
(
せつちゆう
)
の
梅
(
うめ
)
春待
(
はるま
)
つまの
身過
(
みす
)
ぎ
世過
(
よす
)
ぎ
小節
(
せうせつ
)
に
關
(
かゝ
)
はらぬが
大勇
(
だいゆう
)
なり
辻待
(
つじまち
)
の
暇
(
いとま
)
に
原書
(
げんしよ
)
繙
(
ひもと
)
いて
居
(
ゐ
)
さうなものと
色眼鏡
(
いろめがね
)
かけて
見
(
み
)
る
世上
(
せじやう
)
の
物
(
もの
)
映
(
うつ
)
るは
自己
(
おのれ
)
が
眼鏡
(
めがね
)
がらなり
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
……諸君……
牢記
(
ろうき
)
して忘るる勿れ。神様というものは常に吾が○○以上に尊敬せねばならぬものである。その実例は日本外史を
繙
(
ひもと
)
いてみれば直ぐにわかる事である。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
はては文学者A氏の全集を
繙
(
ひもと
)
き、その遺書の第一節の文章なり意味なりから、何か解決の手がかりは得られないかと詮索して見たが、結局何も得るところはなかった。
闘争
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
兄の宗次郎は、その時唐物の香炉に、銀葉を置いて、秘蔵の名香をたきながら、静かに歌書を
繙
(
ひもと
)
き、妹の芳江はその側で、兄の冬物のつくろいなどをしておりました。
奇談クラブ〔戦後版〕:12 乞食志願
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
暫くしてその書が到着したので鬼の首でも取ったように喜び、日夜その書を
繙
(
ひもと
)
いてこれを
翫読
(
がんどく
)
し自得して種々の植物を覚えた。それがために大分植物の知識が出来た。
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
勿論、退屈な時、手当り次第に雑誌でも
繙
(
ひもと
)
くように其場かぎりな、相手にも自分にも責任をもたない気分で目だけ楽しませようと云うのならば何も云うべきことはない。
印象:九月の帝国劇場
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
名所圖繪を
繙
(
ひもと
)
きても、其頃は
路
(
みち
)
嶮に、
溪
(
けい
)
危
(
あやう
)
く、少しく意を用ゐざれば、千
尋
(
じん
)
の
深谷
(
しんこく
)
に
墮
(
お
)
つるの憂ありしものゝ如くなるを、
纔
(
わづ
)
かに百餘年を隔てたる
今日
(
こんにち
)
、
棧橋
(
かけはし
)
の
跟
(
あと
)
なく
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
などゝ云う
冷罵
(
れいば
)
を、店員どもに浴びせられながら、一種の反抗心を以て
繙
(
ひもと
)
いたようなものゝ、己には実際、
此
(
こ
)
の有名なる
戯曲
(
ぎきょく
)
の
妙味
(
みょうみ
)
が、
何処
(
どこ
)
にあるのやら分らなかった。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もはやうち震えながらしか
繙
(
ひもと
)
くことのできない神聖な作品のうちに、愛していたものの純潔さを何物にも曇らされることなく、昔と同じ激しい感動をふたたび見出す時
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
こんな不潔な
絃歌
(
げんか
)
の
巷
(
ちまた
)
で、女に家をもたせたりして納まっている自分を
擽
(
くすぐ
)
ったく思い、ひそかに反省することもあり、そんな時に限って、
気紛
(
きまぐ
)
れ半分宗教書を
繙
(
ひもと
)
いたり
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
石川の歌集を
繙
(
ひもと
)
く人は、その作品の中に
小奴
(
こやつこ
)
といふ女性が歌はれてゐることを気づくであらう。
石川啄木と小奴
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
「ウィルヘルム・テル」を
繙
(
ひもと
)
くときはじめて記される言葉はクーライエンのメロディーである。
反響
(
エコー
)
のようにこれに答える山上の牧歌は、そのヴァリアツィヨーンである。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
私がその決心をしたのは、先生の『善の研究』を
繙
(
ひもと
)
いて以来のことである。それはこの本がまだ岩波から出ていなかった時で、絶版になっていたのを、古本で見附けてきた。
西田先生のことども
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
嗣いで起こるべき少壮の学徒は、むしろこの一書を
繙
(
ひもと
)
くことによって、相戒めてさらに切実なる進路を見出そうとするであろう。それがまたわれわれの最大なる期待である。
遠野物語
(新字旧仮名)
/
柳田国男
(著)
誰
(
たれ
)
でも、
國史
(
こくし
)
を
繙
(
ひもと
)
く
人
(
ひと
)
は、
必
(
かなら
)
ず
歴代
(
れきだい
)
の
天皇
(
てんのう
)
がその
都
(
みやこ
)
を
遷
(
せん
)
したまへることを
見
(
み
)
るであらう。それは
神武天皇即位
(
じんむてんのうそくゐ
)
から、
持統天皇
(
ぢとうてんのう
)
八
年
(
ねん
)
まで四十二
代
(
だい
)
、千三百五十三
年間
(
ねんかん
)
繼續
(
けいぞく
)
した。
日本建築の発達と地震
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
即
(
すなはち
)
文化の一具を欠くものと
謂可
(
いふべ
)
し。(中略)余
茲
(
ここ
)
に感ずる所あり。
寸暇
(
すんか
)
を得るの際、米仏
等
(
とう
)
の書を
繙
(
ひもと
)
き、その要領を
纂訳
(
へんやく
)
したるもの、此
冊子
(
さつし
)
を成す。
因
(
よつ
)
て之を各国演劇史と
名
(
なづ
)
く
本の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
我国においては、
藤原咲平
(
ふじわらさくへい
)
博士がその権威者であって、『雲』という立派な著書が出ているから、その方に興味のある方はこの藤原博士の『雲』を
繙
(
ひもと
)
かれるのがよいであろう。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
竹刀
(
しない
)
や木刀で打ち合うことだけでは満足しないで、沢庵禅師の「不動智」とか、宮本武蔵の「五輪の書」とか、そういう聖賢や名人の著書を
繙
(
ひもと
)
くことによって、研究を進めた。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かくてあるべきにあらざれば下宿へ還って『
用捨箱
(
ようしゃばこ
)
』を
繙
(
ひもと
)
くと「
鍋取公家
(
なべとりくげ
)
というは卑しめていうにはあらず、
老懸
(
おいかけ
)
を掛けたるをいえるなり、老懸を俗に鍋取また
釜取
(
かまとり
)
ともいう」
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
繙
漢検1級
部首:⽷
18画
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