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総
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すべ
ふりがな文庫
“
総
(
すべ
)” の例文
旧字:
總
総
(
すべ
)
てこの町の、かうした家では、何か薄暗い
土倉
(
つちぐら
)
のやうな土間があつて、それが相当だゝつ広い領分を占めてゐるので、夏は涼しい。
町の踊り場
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
総
(
すべ
)
ての悩みも悲しみも、苦しみも
悶
(
もだ
)
えも、胸に秘めて、ただ
鬱々
(
うつうつ
)
と一人
哀
(
かな
)
しきもの思いに沈むというような可憐な表情を持つ花です。
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
セルギウスが一人暮しをして、身の
周囲
(
まはり
)
の事を
総
(
すべ
)
て一人で取りまかなひ、パンと供物とで命を繋いでゐた時代は遠く過ぎ去つてゐる。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
「さようさよう、理詰めと云うことじゃ。敢て兵法ばかりでなく、万事万端浮世の事は、すべからく
総
(
すべ
)
て科学的でなければならない」
加利福尼亜の宝島:(お伽冒険談)
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
中田
(
なかだ
)
は、なぜそんなところへ行ったのか、我ながらハッキリとした憶えはないのだが、
総
(
すべ
)
てに、あらゆるものに、
自棄
(
じき
)
を味わった彼は
自殺
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
▼ もっと見る
それに
何時
(
いつ
)
の間にか慣れてしまったせいか、静かにしているときの主人より、凶暴なときの児太郎がかれの
総
(
すべ
)
てを
刺戟
(
しげき
)
したからである。
お小姓児太郎
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
彼はまだ何か云ふ積りであつたが
総
(
すべ
)
てが馬鹿らしいので、そのまゝ口をつぐんでしまつた。而して深い呼吸をせはしく続けてゐた。
An Incident
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
それに引代え、軍の先鋒は信玄の秘蔵の大将であり、其他の将士も皆音に聞えた猛士であるが、この戦に殆んど
総
(
すべ
)
て討死して仕舞った。
長篠合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
今まで余の集め得たる証拠は
総
(
すべ
)
て
彼
(
か
)
れの
外
(
ほか
)
に
真
(
まこと
)
の罪人あることを示せるに彼れ自ら白状したりとは何事ぞ、
斯
(
かゝ
)
る事の有り得べきや
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
総
(
すべ
)
て自分のような男は皆な同じ行き方をするので、運命といえば運命。
蛙
(
かえる
)
が
何時
(
いつ
)
までも蛙であると同じ意味の運命。別に不思議はない。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
改革は
一瀉千里
(
いっしゃせんり
)
の勢を以て進めり。
総
(
すべ
)
ての障碍を打破りて進めり。抵抗者は罰せられ、異論者は
斥
(
しりぞ
)
けられ、不熱心者は遠ざけらる。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
飛行場は陸軍省に属して居ても、官営
万能
(
まんのう
)
𤍠に
罹
(
かゝ
)
つて居る日本と違つて格納庫も其れに納めてある飛行機も
総
(
すべ
)
て私人の所有である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
総
(
すべ
)
て今までとは様子が違う、それを昇の居る前で母親に怪しまれた時はお勢もぱッと顔を
※
(
あか
)
めて、
如何
(
いか
)
にも
極
(
きま
)
りが悪そうに見えた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
例えば
耶蘇
(
やそ
)
教の神さんでも、その昔人民が罪悪に
陥
(
おちい
)
って
済度
(
さいど
)
し難いからというて大いに
憤
(
いきどお
)
り、大洪水を起して
総
(
すべ
)
ての罪悪人を殺し
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
これは
些細
(
ささい
)
な一例でしかないけれど、
総
(
すべ
)
てこの例によって類推出来る様な人間の社交上の態度が、内気な彼を沈黙させるに充分であった。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
地球上の
総
(
すべ
)
ての文化が完成されればこのようになるものだという模型を造っているような社会形態が、日本だと思うと云ってくれないか。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
菊之丞は、拡げられた
香盤
(
こうばん
)
をのぞき込む。
成程
(
なるほど
)
、何枚かの図面には、
総
(
すべ
)
て付け込みのしるしが一面に書き込まれているのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
然らば
其時
(
そのとき
)
汝は
宇宙
(
うちう
)
に
存在
(
そんざい
)
する
総
(
すべ
)
ての
誠実
(
せいじつ
)
なる人と
一致
(
いつち
)
せしなり、一致の
難
(
かたき
)
は外が来て汝と一致せざるに非ずして汝の
誠実
(
せいじつ
)
ならざるにあり。
時事雑評二三
(新字旧仮名)
/
内村鑑三
(著)
そして、身長の高い、眼の大きい、鼻の高い、美しいと云ふより
総
(
すべ
)
てがリツチな容貌をした女には如何にもこれが似合ひさうに思つた。——
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
総
(
すべ
)
ての真に価値を発見する自然主義もまた充分なる生命を存して、この二者の調和が今後の
重
(
おも
)
なる傾向となるべきものと思うのであります。
教育と文芸
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
総
(
すべ
)
て嘘といふものは、一、二度は善けれど、たびたび詠まれては面白き嘘も面白からず相成申候。まして面白からぬ嘘はいふまでもなく候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
男子十二歳ニ至レバ
総
(
すべ
)
テ剣法ヲ学ビ、夜間就眠スル時ノ外ハ剣ヲ脱スルトイフコトナシ。而シテ眠ル時ハコレヲ枕頭ニ安置ス。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
我々って、いったいなんだ? 我々なんて、ありゃせん。
総
(
すべ
)
ての人っていうのは、誰でもないんだ。お前は、聞いてきたことを
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
合意の上で貸借して、それで儲くるのが不正なら、
総
(
すべ
)
ての商業は皆不正でないか。学者の目からは、
金儲
(
かねまうけ
)
する者は皆不正な事をしとるんじや
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
この作者に
由
(
よ
)
つて自分は初めて未来の世界を見ることが出来、明日の詩を聞くことが出来た。自分達の周囲は今
総
(
すべ
)
て
凍
(
い
)
て附いてしまつてゐる。
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
もしこの精神的欠陥に対する心理療法が完成したなら古今の聖賢の教訓は
総
(
すべ
)
て皆廃紙となってしまうというのがその頃の二葉亭の説であった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
断ち、或いは、もっと意表外な作戦に出て来ないとも限りません。その上でのおうごきは、
総
(
すべ
)
て、
後手後手
(
ごてごて
)
と相成りましょう
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
細君は
総
(
すべ
)
てをそこに置いたまま去って終う、一口に云えば食客の待遇である。予はまさかに怒る訳にもゆかない、食わぬということも出来かねた。
浜菊
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
第七十六条 法律規則命令又ハ
何等
(
なんら
)
ノ名称ヲ
用
(
もち
)
ヰタルニ
拘
(
かかわ
)
ラス
此
(
こ
)
ノ憲法ニ
矛盾
(
むじゅん
)
セサル現行ノ法令ハ
総
(
すべ
)
テ
遵由
(
じゅんゆう
)
ノ効力ヲ
有
(
ゆう
)
ス
大日本帝国憲法
(旧字旧仮名)
/
日本国
(著)
いと
凄
(
すさ
)
まじかりしに引き換え、
総
(
すべ
)
てわが家の座敷牢などに入れられしほどの待遇にて、この両人の内、代る代る護衛しながら常に妾と雑話をなし
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
総
(
すべ
)
て前置というものは、かくの如く置かねばならぬ必要ある場合に限りて置くべきものであって、必要のないのにむやみに置くべきものではない。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
一つの技術が世界
悉
(
ことごと
)
くの芸術の様式と内容の
総
(
すべ
)
てを含んでしまうという技法は今までにまだ発見されていないようだ。
油絵新技法
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
その激した心には、芳子がこの
懺悔
(
ざんげ
)
を
敢
(
あえ
)
てした理由——
総
(
すべ
)
てを打明けて縋ろうとした態度を解釈する余裕が無かった。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
天気が
好
(
い
)
いと思って合羽を脱いで外へ出れば雨が降って来たり、芸者を買えばブツ/\と
憤
(
おこ
)
ってばかりいたり、
総
(
すべ
)
て十分にいかんものでございます。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それで
総
(
すべ
)
てであった。つまり彼らは、それ以外に云うべき言葉を何一つ持ち合していなかった。
無惨
(
むざん
)
な立場に追いつめられていたというべきだろう。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
市長は
巷
(
ちまた
)
を
分捕
(
ぶんど
)
り、漁人は水辺におのが居を定めた。
総
(
すべ
)
ての分割の、とっくにすんだ後で、詩人がのっそりやって来た。彼は
遥
(
はる
)
か遠方からやって来た。
心の王者
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
よく
端役
(
はやく
)
という事をいうが、活動写真には端役というべきものはないように思われる。どれもこれも
総
(
すべ
)
てが何らかの意味で働いているように思われる。
活動写真
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
その外天気の好い夜昼を何千
度
(
たび
)
でも楽んで過ごす事が出来る。健康の喜びの感じが
体中
(
からだじゅう
)
の脈々を流れて通る。この色々のものが
総
(
すべ
)
て愉快に感ぜられる。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
こうして一間に閉じ籠ったきり、何事も手がつかなかった。
総
(
すべ
)
ての事はガニマール氏の言うがままにしておいた。
探偵小説アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
当時の芸術はその時代とその風景のみならず
総
(
すべ
)
ての事物に対して称賛と感謝の情とを以て感興の最大源泉となし
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
煙は中天に
満々
(
みちみち
)
て、炎は虚空に
隙
(
ひま
)
もなし。
視
(
まのあた
)
りに見奉れる者、更に
眼
(
まなこ
)
を
当
(
あて
)
ず、遥に
伝聞
(
つたへき
)
く人は、
肝魂
(
きもたましひ
)
を失へり。
法相
(
ほつさう
)
三論の法門聖教、
総
(
すべ
)
て一巻も残らず。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
帰着する所は一個の最上府なり、
爰
(
こゝ
)
に
総
(
すべ
)
ての運命を形成せり、爰に総ての過去と、総ての未来とを注射せり、歴史は其過去を語り、約束は其の未来を談ず。
思想の聖殿
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
総
(
すべ
)
ての政治を
予
(
あらかじ
)
め定めた法律に遵拠して行うといういわゆる「法治国」の思想は、比較的に新しいものであるが、この法治国思想の起らない前といえども
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
その
一事
(
ひとこと
)
をもって
総
(
すべ
)
ての推測を下すのではないが、憎くはないがこの女一人のためには、何もかも失ってもと思い込むほどの熱情は、なかったのであろう。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
丑松は
斯
(
この
)
細君の気の短い、
忍耐力
(
こらへじやう
)
の無い、愚痴なところも感じ易いところも
総
(
すべ
)
て
外部
(
そと
)
へ
露出
(
あらは
)
れて居るやうな——まあ、四十女に
克
(
よ
)
くある性質を
看
(
み
)
て取つた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
何でもその説によると、地獄にはその頃人間が
総
(
すべ
)
てで四千八百六十六万六千三百二十二人居た事になつてゐる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼女はあらためてパパとママンになりそうな人が
欲
(
ほ
)
しいと希望を持ち出した。この
界隈
(
かいわい
)
に
在
(
あ
)
っては
総
(
すべ
)
てのことが喜劇の
厳粛
(
げんしゅく
)
性をもって真面目に受け取られた。
売春婦リゼット
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
かたがた歌道茶事までも
堪能
(
たんのう
)
に渡らせらるるが、天下に比類なき所ならずや、茶儀は無用の虚礼なりと申さば、国家の大礼、先祖の
祭祀
(
さいし
)
も
総
(
すべ
)
て虚礼なるべし
興津弥五右衛門の遺書
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
世の中の
総
(
すべ
)
てを
呪
(
のろ
)
ってるんだ。皆で寄ってたかって彼女を今日の
深淵
(
しんえん
)
に追い込んでしまったんだ。だから僕にも信頼しないんだ。こんな絶望があるだろうか。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
私
(
わたくし
)
は
貴方
(
あなた
)
が
総
(
すべ
)
てを
綜合
(
そうごう
)
する
傾向
(
けいこう
)
をもっているのを、
面白
(
おもしろ
)
く
感
(
かん
)
じかつ
敬服
(
けいふく
)
致
(
いた
)
したのです、また
貴方
(
あなた
)
が
今
(
いま
)
述
(
の
)
べられた
私
(
わたくし
)
の
人物評
(
じんぶつひょう
)
は、ただ
感心
(
かんしん
)
する
外
(
ほか
)
はありません。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
総
常用漢字
小5
部首:⽷
14画
“総”を含む語句
上総
総身
下総
総領
総角
上総介
総督
総毛立
総々
総括
総追捕使
総計
総帥
総髪
総出
総立
下総国
総代
総崩
安房上総
...