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ひそか
ふりがな文庫
“
窃
(
ひそか
)” の例文
旧字:
竊
お登和嬢
窃
(
ひそか
)
に兄の袖を
惹
(
ひ
)
き「そうすると大原さんは二、三日内に御出発なさるようになりましょうか」と今更別るるを
本意
(
ほい
)
なく思う。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
然
(
しかれ
)
どもなほ
安
(
やすん
)
ぜず、
窃
(
ひそか
)
に歎じて曰く宮本武蔵は
※々
(
ひひ
)
を退治せり。洋人の色に飢るや綿羊を犯すものあり。僕
未
(
いまだ
)
能
(
よ
)
くここに到るを得ずと。
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
私は嬉しかった。早速此
持重説
(
じちょうせつ
)
を我物にして了って、之を以て実行に
逸
(
はや
)
る友人等を非難し、
而
(
そう
)
して
窃
(
ひそか
)
に自ら弁護する料にしていた。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
その巻紙は貫一が
遺
(
のこ
)
せし筆の跡などにはあらで、いつかは宮の彼に送らんとて、別れし後の思の
丈
(
たけ
)
を
窃
(
ひそか
)
に
書聯
(
かきつら
)
ねたるものなりかし。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
折々はその習慣に慣れようと思いましてもいかにも不潔で
窃
(
ひそか
)
に自分で茶椀なりあるいは椀なりを洗って喰うような事もあります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
▼ もっと見る
身の潔白を立てる為には、今後
何処
(
どこ
)
で
行逢
(
ゆきあ
)
おうとも決して
彼女
(
かれ
)
とは口を利くまいと、
窃
(
ひそか
)
に決心している矢先へ、
恰
(
あたか
)
も
彼
(
か
)
のお葉が現われた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
或日それを
窃
(
ひそか
)
に持出しコツコツ悪戯して遊んで居たところ、重さは重し力は無し、
過
(
あやま
)
って如何なる
機会
(
はずみ
)
にか膝頭を斬りました。
少年時代
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その他なお商家の
豪奢
(
ごうしゃ
)
を尽したる例甚だ多く、
就中
(
なかんずく
)
外妾
(
がいしょう
)
を
蓄
(
たくわ
)
うること商人に最も多くして、手代の
輩
(
やから
)
に至るまで
窃
(
ひそか
)
に養わざるものなしという。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
万に一は自分の身に
叶
(
かな
)
うこともあらんかと
独
(
ひと
)
り
窃
(
ひそか
)
に夢を
画
(
えが
)
きたることもなきに
非
(
あら
)
ざれども、
畢竟
(
ひっきょう
)
痴人の夢にして、迚も生涯に叶うべき事に非ず。
人生の楽事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
孔子は女子と小人とは養い難しといっているが、
窃
(
ひそか
)
に思うに、孔子は
閨房
(
けいぼう
)
に於て、あるいはその夫人に大いに苦しめられたものではあるまいか。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
幕兵との
戦
(
いくさ
)
があったために、甲府の町に往くこともできなかったが、二三日のうちには、隙を見て妻を
訪
(
おとな
)
おうと心
窃
(
ひそか
)
に喜んでいるところであった。
怪僧
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
健在
(
すこやか
)
なれ、御身等、今若、牛若、
生立
(
おいた
)
てよ、と
窃
(
ひそか
)
に河野の一門を
呪
(
のろ
)
って、主税は
袂
(
たもと
)
から
戛然
(
かちり
)
と音する松の葉を投げて、足
疾
(
と
)
くその前を通り過ぎた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
又自分は
是
(
これ
)
等娼婦の公開——モンマルトルに限らず
巴里
(
パリイ
)
全市に
亘
(
わた
)
つて——が子女の教育を妨害する事の多大であるのを想像して
窃
(
ひそか
)
に戦慄致します。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
『著者は田舎を愛すれども、都会を捨つる能わず、心
窃
(
ひそか
)
に都会と田舎の間に架する
橋梁
(
きょうりょう
)
の其板の一枚たらん事を期す。』
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
保は師範学校の授くる所の学術が、自己の
攻
(
おさ
)
めんと欲する所のものと相反しているのを見て、
窃
(
ひそか
)
に退学を企てていた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
この四五日のざわ/\とした家の様子で、兄妹とも
窃
(
ひそか
)
に「父の帰宅」を感づいてゐたのだが、
然
(
しか
)
し、誰も子供たちにそれを話してくれなかつたのである。
父の帰宅
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
今私が赤い衣物も着ずして三度の食事を無事に喰べて行けるのも皆これがためだと思って
窃
(
ひそか
)
に感謝している。
イエスキリストの友誼
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
この調子なら、先生やっぱり仲
睦
(
むつま
)
じくやっているな。そこで、僕は
窃
(
ひそか
)
に、御両人を祝福したことであった。
一人二役
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
才のあるなしよりは自分の信奉するツルゲーネフやドストエフスキーやゴンチャローフの態度と違った行き方をして生活の方便とするを内心
窃
(
ひそか
)
に
爪弾
(
つまはじ
)
きしていた。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
と
姫
(
ひめ
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
いだ
)
さんため、
只
(
たゞ
)
一人
(
ひとり
)
にて
參
(
まゐ
)
りしは、
窃
(
ひそか
)
に
庵室
(
いほり
)
にかくまひおき、
後日
(
ごじつ
)
機
(
をり
)
を
見
(
み
)
て、ロミオへ
送
(
おく
)
り
屆
(
とゞ
)
けん
存念
(
ぞんねん
)
、
然
(
しか
)
るに
參
(
まゐ
)
り
見
(
み
)
れば、
姫
(
ひめ
)
の
目覺
(
めざ
)
むる
少
(
すこ
)
しき
前方
(
まへかた
)
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
自然に
委
(
まか
)
せて作意ということをしなかったから、いつも中軸のところだった。学問なんてものは眼中になかったのである。今でも然うだ。
窃
(
ひそか
)
に一見識と思っている。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
昨日見かけた編笠の武士が、敵水品陣十郎か否か、それを
窃
(
ひそか
)
に確かめようと、上尾宿の旅籠桔梗屋を立って、高萩村へ行こうとして、今来かかった途中なのである。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
山下の民に被害の無い程度で上のような大爆発をやってくれぬものかと私は
窃
(
ひそか
)
にそれを希望し、さくや姫にも祈願し、一生のうちに一度でもよいからそれが見えれば
牧野富太郎自叙伝:02 第二部 混混録
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
『
左様
(
さよう
)
。いや
探偵
(
たんてい
)
にしろ、また
私
(
わたくし
)
に
窃
(
ひそか
)
に
警察
(
けいさつ
)
から
廻
(
ま
)
わされた
医者
(
いしゃ
)
にしろ、どちらだって
同様
(
どうよう
)
です。』
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
政論社会は
窃
(
ひそか
)
にこの論派の激烈なるを危ぶみ、なお第二期における民権論派を視るがごとくせり。
近時政論考
(新字新仮名)
/
陸羯南
(著)
そこが因果で別れることも出来ないところから、この
両人
(
ふたり
)
はその
夜
(
よ
)
のうち
窃
(
ひそか
)
に根岸を
脱出
(
ぬけだ
)
し、綾瀬川へ身を投げて心中した。死骸が
翌朝
(
よくあさ
)
千住大橋際へ漂着いたしました。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この大作品を当時の
埃及
(
エジプト
)
王の御覧に供した
後
(
のち
)
、或る夜
窃
(
ひそか
)
に梯子を持って行って、その鼻の表現を自然の作用であるかのように欠き落したのではあるまいかとも考えられます。
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
大風
室
(
むろ
)
を
四匝
(
しさふ
)
せる石壁を透徹して
雷吼
(
らいこう
)
す、
駭魄
(
がいはく
)
して耳目きはめて鋭敏となり、昨夜御殿場旅館階上の月を
憶
(
おも
)
ひ起し、一人
窃
(
ひそか
)
に戸を排して出で、火孔に吹き飛ばされぬ用心して
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
近来はしばしば、家庭の不幸に遇い、心身共に
銷磨
(
しょうま
)
して、成すべきことも成さず、尽すべきことも尽さなかった。今日、諸君のこの厚意に対して、心
窃
(
ひそか
)
に
忸怩
(
じくじ
)
たらざるを得ない。
或教授の退職の辞
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
殊
(
こと
)
に、彼が初めて団十郎の舞台を見た時に、彼は心の中で
窃
(
ひそか
)
に江戸の歌舞伎を
軽蔑
(
けいべつ
)
した。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
然るを隣なる猟師之を怪み、
窃
(
ひそか
)
に
窺
(
うかが
)
ひ置きて、深夜に彼に先だち行きて待つに、思はず例の者に行逢ひたり。鬼とや思ひけん
弾
(
たま
)
こめて打ちたり。打たれて遁げければ猟師も帰りぬ。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
二人して夜
窃
(
ひそか
)
に隣部落へはいり込む。一人が眠つてゐる女の髪を、鉤のついた槍に捲きつける。一人は自分の槍を女の胸につきつける。女は眼をさましても、声を出す事が出来ない。
嫁泥棒譚
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
予が今に理窟を云うの癖があるは此の時代の遺習かと、独りで
窃
(
ひそか
)
におかしく思っとる。学問の上に最も不幸なりし予は、遂に六箇月を出でざるに早く廃学せねばならぬ境遇に陥った。
家庭小言
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
あの時は老師は余程疲れて居られた、会談中は別に気もつかなかったが、後からの容体は大分悪いと予は
窃
(
ひそか
)
に心配したほどであった。翌朝信州へ行くといって御出たが、どうかと思うた。
楞迦窟老大師の一年忌に当りて
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
或時決して見ることはならぬと
警
(
いまし
)
めて、一間に籠ったのを、母親が怪んで
窃
(
ひそか
)
に覗き見ると、
盥
(
たらい
)
の中でお産をして、三疋の竜の子を生んで居たそうである。それから娘はパッタリ来なくなった。
黒部川を遡る
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
其後
斯道
(
しどう
)
の専門家たる新村出博士の研究によって、現在他には林若樹氏と新村氏との所蔵のみが世に知られて居るということを学んだが、此両大家に伍するを得たことは私の
窃
(
ひそか
)
に喜ぶ所であり
春水と三馬
(新字新仮名)
/
桑木厳翼
(著)
無政府主義者が鉱山のシャフトの
排水樋
(
はいすいひ
)
を夜
窃
(
ひそか
)
に鋸でゴシゴシ切っておく、水がドンドン坑内に
溢
(
あふ
)
れ入って、立坑といわず横坑といわず廃坑といわず知らぬ間に水が廻って、廻り切ったと思うと
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
且つ
夫
(
そ
)
れ仙千代と共に随ひ行きし勝千代が父は、彼の秀吉が覚よき石川伯耆守にして、徳川の家中には、兼ねてより、
窃
(
ひそか
)
に其の二心を疑へる者さへありければ、作左は素より
忠侃
(
ちうかん
)
一辺の男なれど
大久保湖州
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
風体
(
ふうてい
)
によりて
夫々
(
それ/″\
)
の身の上を
推測
(
おしはか
)
るに、
例
(
れい
)
の
織
(
お
)
るが
如
(
ごと
)
くなれば
心
(
こゝろ
)
甚
(
はなは
)
だ
忙
(
いそが
)
はしけれど
南無
(
なむ
)
や
大慈
(
たいじ
)
大悲
(
たいひ
)
のこれ
程
(
ほど
)
なる
消遣
(
なぐさみ
)
のありとは
覚
(
おぼ
)
えず
無縁
(
むえん
)
も
有縁
(
うえん
)
の物語を作り
得
(
え
)
て
独
(
ひと
)
り
窃
(
ひそか
)
にほゝゑまれたる事に
候
(
そろ
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
「信綱記」に依れば、伊豆守の家中においても、番所にて「たばこ」を呑むことを堅く禁じたが、或日土蔵番の者が
窃
(
ひそか
)
に
鮑殻
(
ほうかく
)
に火を入れて来て「たばこ」を呑み、番所の畳を少し焦した事がある。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
そういう教育法は人間の個性を殺すものですから母たる者は学校に向って抗議するのが当然ですけれど、
窃
(
ひそか
)
に聡明を以て任じているそれらの新主婦たちは全くこういう事実を等閑に附しております。
婦人改造と高等教育
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
レペルは
窃
(
ひそか
)
に其の法を盗んだのだなどと本家を奪いに掛かるもありましょう、中には此の様な法は罪人に姿を変えさするに通ずるのみで詰り犯罪を奨励して国家社会を危くする者だと叫ぶ者も出来
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
自分は
窃
(
ひそか
)
に微笑せざるを得なかつた。辯當をつかふのでお秋さんがお茶を汲んで山芋を一皿呉れた。お秋さんは
草鞋
(
わらぢ
)
をとつた丈で脚袢の儘疊へ膝をついて居る。自分へ茶を出すため
態々
(
わざ/\
)
あがつたのだ。
炭焼のむすめ
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
窃
(
ひそか
)
に死ぬ迄の大俗を自分だけでは覚悟して居るのであります。
入庵雑記
(新字旧仮名)
/
尾崎放哉
(著)
私は或事を
企
(
たくら
)
んで
窃
(
ひそか
)
に夜の更けるのを待つてをりました。
反古
(旧字旧仮名)
/
小山内薫
(著)
位の自負心は、
窃
(
ひそか
)
に
肚
(
はら
)
の底に蓄えている。
御萩と七種粥
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
もしや妻君が我身をあの人に世話せんとする心にはあらぬかと気味の悪きように覚えて台所の口に立ったまま
窃
(
ひそか
)
に座敷の様子を窺う。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
平生わたくし達は心
窃
(
ひそか
)
にこの事を悲しんでいるので、ここに前時代の遺址たる菊塢が廃園の如何を論じようという心にはなろう筈がない。
百花園
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
直行は又その辛し、恨し、悲しとやうの情に堪へざらんとする満枝が顔をば、
窃
(
ひそか
)
に
金壺眼
(
かなつぼまなこ
)
の一角を
溶
(
とろか
)
しつつ
眺入
(
ながめい
)
るにぞありける。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
其人
(
それ
)
が私に御膳を上げたいからと言って
窃
(
ひそか
)
に招待致しましたからそこに参りますと、私を全くもって英国の国事探偵吏であるという
認
(
みとめ
)
を付けました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
窃
常用漢字
中学
部首:⽳
9画
“窃”を含む語句
窃盗
剽窃
窃々
窃取
心窃
窃視
窃笑
窃盜
窃窕
強窃盗
窃比我於老彭
露窃
窃眇
窃盗狂者
窃盗狂
窃盗事件
窃書
窃伺
尚窃
小窃偸
...