石橋いしばし)” の例文
かつ面白おもしろ人物じんぶつであるから交際かうさいして見給みたまへとふのでありました、これからわたしまた山田やまだ石橋いしばしとを引合ひきあはせて、桃園とうゑんむすんだかたちです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その畜生ちくしやうおとされるとは、なにかの因縁いんえんちがひございません。それは石橋いしばしすこさきに、なが端綱はづないたままみちばたの青芒あをすすきつてりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さかした石橋いしばしがある。渡らなければ真直に理科大学の方へ出る。渡れば水際みづぎはつたつて此方こつちへ来る。二人ふたりは石橋を渡つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
五百らの乗った五ちょう駕籠かごを矢島優善やすよしが宰領して、若党二人を連れて、石橋いしばし駅に掛かると、仙台藩の哨兵線しょうへいせんに出合った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
不忍しのばずいけうかぶ弁天堂とその前の石橋いしばしとは、上野の山をおおう杉と松とに対して、または池一面に咲く蓮花はすのはなに対して最もよく調和したものではないか。
赤蜻蛉あかとんぼう田圃たんぼみだるれば横堀よこぼりうづらなくころちかづきぬ、朝夕あさゆふ秋風あきかぜにしみわたりて上清じやうせいみせ蚊遣香かやりかう懷爐灰くわいろばいをゆづり、石橋いしばし田村たむらやが粉挽こなひうすおとさびしく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
數ある石橋いしばし岩根より出で、つゝみと濠をよこぎりて坎にいたれば、坎はこれを斷ちこれを集めぬ 一六—一八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
五六十歩往って小さな石橋いしばしを渡り、東に折れて百歩余往ってまた大きな方の田川に架した欄干らんかん無しの石橋を渡り、やがて二つに分岐ぶんきして、直な方は人家の木立の間を村にかく
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
縦令たとひ石橋いしばしたゝいて理窟りくつひね頑固ぐわんことうことの如く、文学者ぶんがくしやもつ放埓はうらつ遊惰いうだ怠慢たいまん痴呆ちはう社会しやくわい穀潰ごくつぶ太平たいへい寄生虫きせいちうとなすも、かく文学者ぶんがくしや天下てんか最幸さいかう最福さいふくなる者たるにすこしも差閊さしつかへなし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
橋は心覚えのある石橋いしばし巌組いわぐみである。気が着けば、あの、かくれだきの音は遠くだう/\と鳴つて、風の如くに響くが、かすれるほどの糸のも乱れず、唇をあわすばかりの唄もさえぎられず、嵐の下の虫の声。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それを石橋いしばしわたしとでしきり掘出ほりだしにかゝつた、すると群雄ぐんいう四方しはうよりおこつて、ひゞきの声におうずるがごとしです、これ硯友社けんいうしや創立さうりつ導火線だうくわせんつたので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もつともわたしがからつたときには、うまからちたのでございませう、粟田口あはだぐち石橋いしばしうへに、うんうんうなつてりました。時刻じこくでございますか? 時刻じこく昨夜さくや初更しよかうごろでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
きがひありしといふべけれ。石橋いしばしをたたいて五十年無事に世を渡り得しものは誠に結構と申すの外なし。一度ひとたび足踏みすべらせて橋下きょうかの激流におちいれば渾身こんしんの力尽して泳がんのみ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
さりとも一のがれがたければ、いつしかあつうりて、むね動悸どうきのくるしうるに、づしてはまねどもひとしらぬうちにとにはでゝいけ石橋いしばしわたつて築山つきやま背後うしろ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二人ふたりはすぐ石橋いしばしを渡つて、左へ折れた。ひといへ路次ろじの様な所を十間程行き尽して、門の手前から板橋を此方側こちらがはへ渡り返して、しばらくかはふちのぼると、もう人は通らない。広い野である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これわたし竹馬ちくばとも久我くがぼう石橋いしばしとはおちやみづ師範学校しはんがくかう同窓どうそうであつたためわたし紹介せうかいしたのでしたが、の理由は第一わたしこのみおなじうするし
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
長吉はいつも巡査が立番たちばんしている左手の石橋いしばしから淡島あわしまさまの方までがずっと見透みとおされる四辻よつつじまで歩いて来て、通りがかりの人々が立止って眺めるままに、自分も何という事なく
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もっともわたしがからめ取った時には、馬から落ちたのでございましょう、粟田口あわだぐち石橋いしばしの上に、うんうんうなって居りました。時刻でございますか? 時刻は昨夜さくや初更しょこう頃でございます。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三四郎は答をする前に、立つてのそ/\あるいて行つた。石橋いしばしうへ
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
長吉ちやうきちはいつも巡査じゆんさ立番たちばんしてゐる左手の石橋いしばしから淡島あはしまさまのはうまでがずつと見透みとほされる四辻よつゝじまで歩いて来て、とほりがゝりの人々が立止たちどまつてながめるまゝに、自分もなんといふ事なく
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
坂路を隔てて仏蘭西人アリベーと呼びしものの邸址やしきあと、今は岩崎家の別墅べっしょとなり、短葉松植ゑつらねし土墻ついじは城塞めきたる石塀となりぬ。岩崎家の東鄰には依然として思案外史しあんがいし石橋いしばし氏のきょあり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
自分がそもそも最初に深川の方面へ出掛けて行ったのもやはりこの汐留しおどめ石橋いしばしの下から出発するちいさな石油の蒸汽船に乗ったのであるが、それすら今では既に既に消滅してしまった時代の逸話となった。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)