“睨:にら” の例文
“睨:にら”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花66
海野十三59
中里介山40
吉川英治29
野村胡堂29
“睨:にら”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語16.3%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)5.3%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆1.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
客は外套の毛皮のえりに肥ったほおうずめながら、見ると云うよりは、にらむように、狭い店の中へ眼をやった。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
とさそくに受けて、今度は「憎らしい」と来るだろうと待っていると、新井田の奥さんは思う壷どおり、やさにらみをしながら、
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
少女は耳の附け根まであかくなった顔をびた銀盆で半分かくし、瞳の茶色なおおきい眼を更におおきくして彼をにらんだ。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
中隊長は、不満げに、彼をにらんだ。「も一度。そんなささつつがあるか!」その眼は、そう云っているようだった。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
わたくし日出雄少年ひでをせうねん背部うしろ庇護かばつて、キツと猛狒ゴリラ瞳孔ひとみにらんだ。
本邦にも、飛騨ひだ牛蒡ごぼう種てふ家筋あり、その男女が悪意もてにらむと、人は申すに及ばず菜大根すらしぼむ。
「本名はそちらから名乗ってみるがよい、今は知らず、神尾主膳はもと三千石の旗本、もう少しにらみの利いた男であったはず」
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
役人は意地悪い顔つきで、私をにらみつけている。仕様しようがない。なけなしの財布の底をはたくよりほかに途がない。
震災の日に生き別れ、それから一度焼け落ちた吾妻橋の上でにらみ合って別れ、それからずっとこのかた彼女を見なかった。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大物ぬしの前まで来て、はじめて悠然と足を止めたが、わしのような眼をじっと据えて、大物主をにらんだものである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
書机デスクをギュッとにらみすえたまま、また、ゆっくりゆっくりそのほうへ歩いてゆく。こんどは、さっきよりも楽にゆく。
キャラコさん:06 ぬすびと (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しかしそれで納まるはずがない。にらみあいが数日続いた。尾沢生は相変わらずカンカラカンをやる。気のよわい照彦様は、
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
妾のお妻はきっと顔をあげて、平次をにらみましたが、平次の調子があんまり平らかなので、そのまま黙ってしまいました。
と、にらみ返されたのは、さもあるはずでしたが、それにしても一瞬浪人の白眼はくがんが、あまりといえば凄い目であった。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それをナオミは、黙って、まじまじと、棒のように突っ立ったまま、あきれ返ったと云う風ににらみつけているだけでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
するとその女性は、けがらわしいとでもいうようなひどい嫌悪けんお侮蔑ぶべつの眼つきで、いつまでも私をにらんでいた。
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
貫一はその殺気にうたれて一指をも得動かさず、むなしまなこかがやかして満枝のおもてにらみたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「まあ、」とすずしい目をみはって、きっにらむがごとくにしたが、口に微笑が含まれて、苦しくはない様子。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実業家もらぬ、新聞屋も入らぬ、芸妓げいしゃも入らぬ、余のごとき書物とにらめくらをしているものは無論入らぬ。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのころから、父親はよく夢中で新聞の相場附けを見たり、夜深よなかに外へ飛び出して、空とにらめッくらをしたりしていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
髪をこってりと櫛目だてて分け、安物だがズボンの折目はきっちり立った荒い縞背広を着たその男は、黒い四角い顔で私をにらみ、
刻々 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
タキこと欲しがるのだずおん。なかの雀このタキ、野火の黄色え黄色え焔ごしに、悪だまなくこでマロサマばにらめたずおん。
雀こ (新字新仮名) / 太宰治(著)
と云いながらひょろ/\とよろけてハタと臀餅しりもちき、ようやく起きあがってひたいにら
かねて怪しいとにらんでいた小山すみれが、博士の首に綱をかけてくびり殺すところをまざまざと見せられ、全身の血は逆流した。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とうとう取逃がしたかと、残念そうに両人が室内をにらんでいると、ふと目についた物がある。それは一台の小型タンクであった。
そしてかつては、ソ満国境を前方ににらみながら、前進飛行基地のバラックに、頭と頭とを並べて起伏おきふした仲だった。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
捜査課長は、木のつちたくの上をコツンと叩いた。加害者と被害者とはにらみ合ったまま、へやを出ていった。
一九五〇年の殺人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
春が来ても、夏が去っても、秋が来ても、全くの無関係においてライオンは相場師の形相において家族と来客をにらんでいる。
叔父はこくこく坐睡いねむりをしていたっけ。わっしあ若気だ、襟巻で顔を隠して、にらむように二人を見たのよ、ね。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うっかり御馳走になっていいものだかどうだか……米友は一合の酒と鰻の丼を後生大事ごしょうだいじにらめていました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
白雲がまなじりを決してその黒船をにらんだ瞬間、ただいま決闘――と認定せる二つの人影のことは全く忘れ去りました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今し、その憧れの伊勢の国をながめている、というよりはにらんでいるのですが、それは今にはじまったことではありません。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
うんとお絹の横顔をにらみつけると、例の乳白色の少しえてはいるが、魅力のある白い頬に、白粉をこってりとつけている。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかしながらかつて論じたのは東山時代を主としてにらんだ足利時代の総論で、本篇は足利時代を東山時代に総括しての論である。
その途端とたんに、死んでいる夫人が彼をあざけるようにじろりとにらむとともに、一つの眼で何か目配せをしたように見えた。
彼は、クラクラする眩暈めまいを振切って立上るとそのボックスを、グッとにらんでつき飛ばされるように、松喜亭を出た。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
邪慳じやけんはら退けて、きツにらむでせると、そのまゝがつくりとかうべれた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、なおかつ、いまの師直の一言には尊氏もおもわず生唾なまつばをのんだらしい。じっとそのおもてをにらまえるように見て。
物言ものいはずにらふやうにりては、屋根やねあり、天井てんじやうあり、かべのあるとふばかり
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
見つけない男が、竹槍を向けて何か云った。ほかにも、長柄刀ながまきを持ったのが二人ほど、自分のほうをにらんでいる。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薄々京屋の様子をさぐっていた平次は、この殺しの奥に、容易ならぬものが潜んでいるとにらんだのも無理のないことでした。
と近侍らの眼も、猟犬の眼も、二使を、にらまえて、二の句をいわせなかった。ふたりは、ほうほうのていで、大坂へ帰った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人とも、指紋ではなくて、何かしらえたいの知れぬ化物ににらみつけられているような、不思議な気味悪さを感じたからだ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼はにがい顔をして、相手のまゆの間をにらみつけた。が、内心は少からず、狼狽ろうばいに狼狽を重ねていた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
『サア言え! 聞いたらきいたと言え! かくすかお前は』と僕の顔をにらみつけましたから、僕も益々可怕こわくなり、
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
翁はじっとしていられなくなって廻された独楽こまのように身体のしん棒で立上った。娘をはたっとにらみ、焦げつく声でいった。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その気持の張りと柳吉が帰って来た喜びとで、その夜興奮して眠れず、眼をピカピカ光らせて低い天井てんじょうにらんでいた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
彼は一瞬間、その女の顔をにらむようにして視詰めた。そして無言で、すぐにその手を握った。細長いしなやかな白い指だった。
指と指環 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ビールだるのやうなはらてゝ、物凄ものすごまなこ水夫すゐふどもにらけると
棒の様になった支配人をにらみながら、曲者は次第に近寄って、机の上の宝石を掴もうとした瞬間背後うしろで異様な叫声がした。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
なにしてけつかつたんだ」勘次かんじはおつぎをにらみつけた。おつぎは俯向うつむいてだまつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私の顔が二重に写っている鏡の底に、私をにらんでいる男の大きい眼、私は旅から生きてかえった事がうれしくなっている。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
阿賀妻はなじるようにそう云った。うっかりしていると、ぬッと頭をもたげる昔の切り口上であった。厳然とにらみつけていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
彼は阻まれたように思って顔をあげた。一座のものの眼はぎらぎらと彼をにらんで光っていた。口をつぐまねばならぬ場合であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
こは人間と思ひのほか、おおいなる猿なりければ。にっくき奴めとにらまへしに、そのまま這奴しゃつは逃げせぬ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
その女だって、その臭い口で声を張って唱ったんだと思うと、聞いていて、口惜くやしい、にらんでやりたいようですわ。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
だが、その酒料をゆするにしてからが、無法なゆすり方は決してしない、こいつはゆするべき筋があるとにらんだ時に限るのである。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ようやく楽屋を出て来た小柳は、そこの暗いかげにも二人の手先が立っているのを見て、くやしそうに半七の方をじろりとにらんだ。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
細木夫人はその瞬間、自分の方をにらんでいる、一人の見知らぬ少女の、そんなにもこわい眼つきに驚いたようだった。
聖家族 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
娘は口元で笑いながら額越しににらむ真似をした,自分はわがまま子と言われるのよりは、何とかほかの名を附けてもらいたかッた。
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
幾度悲鳴を上げられたり、つねられたり、にらまれたりしても、一向感じないし、感じても次の時には忘れてしまうのかも知れない。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「あとで悔いても及びませぬ。姫君のお仕置が怖しいとは思いませぬか」大納言をにらみ、刺した。「月の国の仕返しを受けますよ」
紫大納言 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
声と一緒に、ほとんど夢中で、頼母は、庭へ飛び下り、これも夢中で抜いた刀を、中段に構え、切っ先越しに、部屋の中をにらんだ。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、徳太郎とくたろう暖簾口のれんぐちから見世みせほうにらみつけたまま、返事へんじもしなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
やっと尺八を吹き終えた坊さんは、笛を袋へ納めると、眼に一杯涙をたたえながらきっと屋敷の方をにらみつけていました。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
巡査はだまれと言わぬばかり、わたくしの顔をにらみ、手を伸していきなりわたくしの外套のぼたんをはずし、裏を返して見て、
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しかも口のあたりには腫物ができているような、がさがさな色としつのようなものからなり、じっとわたしの方をにらみました。
あじゃり (新字新仮名) / 室生犀星(著)
とは思うが、あの時、刀のつかをにぎってにらんだ銀左衛門の眼がまだこびりついていて、背すじから恐怖が去らなかった。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまり後世の八州十手預りの顔役を配下にもち、併せて、税吏を督す位置にあったのであるから、これ以上なにらみはない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
僕らのやりとりをしばらく横目でにらんでいましたが、頃あいを見はからって、ぐふんとわざとらしいせきをして、おもむろに、
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
はッたとにらみ捨てにして、雲霧はそのまま走り出そうとしましたが、睨まれて帰ったり泣き出すような子供ではない高麗村の次郎、
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくら月給で買われた身体からだだって、あいた時間まで学校へしばりつけて机とにらめっくらをさせるなんて法があるものか。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「誰が来たんだ」と主人が聞くと「学校の生徒さんでございます」と御三は雪江さんの泣顔を横目ににらめながら答えた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と王様とお妃様は又椅子に腰をおかけになりました。そうして王様は真赤に怒ってオシャベリ姫をおにらみになりました。
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作かぐつちみどり(著)
とにも角にもこうして二、三分間にらみ合ったまま立ちすくんでいるうちに、私はとうとう堪えられなくなって次の言葉を発した。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二百畳敷もあろうかと思われる円形の土間の中央には、奇怪なプリズム形をした大望遠鏡が斜に天の一角をにらんでいる。
空中墳墓 (新字新仮名) / 海野十三(著)
助手の須永は、先ほどから勝誇ったように元気になってくる鴨田理学士の身体を、片隅かたすみからにらみつけていた。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
森彦は三吉をにらむようにして言ったが、しまいには自分でも可笑しく成ったと見えて、反返そりかえって笑った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
目をみはって、その水中の木材よ、いで、浮べ、ひれふって木戸に迎えよ、とにらむばかりにみつめたのでござるそうな。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兄のにらむのも見返みかへらずに、貢さんは蝋燭と庖丁とを持つて内陣ないぢんぶ様にあがつて行つた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
臼井の眼が小山すみれ嬢の方へ動いた。すみれ嬢は猫のように大きな目をじっとえて、臼井の顔をにらみかえした。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「お江戸から、その殿様のお妾を盗んで来て、なんでも、たしかにこの府中のうちに泊ったにちがいないとにらまれたんだそうでがす」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「係長さん、へんなこえを出さないでくださいよ。今、所長さんが、戸口から、じろっとこっちをにらんで通りましたよ」
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
パイ軍曹の顔が、なぜか、さっとかわった。そしてピート一等兵を、じっとにらえていたが、やがて口をひらき、
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「何じゃいし。」と振向くと、……亭主いつの間にか、神棚のもとに、しゃと構えて、帳面を引繰ひっくって、苦くにらみ、
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
博士の、静粛な白銀しろがねの林の中なる白鷺の貴婦人の臨月の観察に、ズトン! は大禁物であるから、にらまれては事こわしだ。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
兵馬は小石を拾ってねらいをつけると、犬はまた後退あとずさりして、兵馬のかおにらみながらうなる。
主膳の三ツ眼はクルクルとして、その絵の傍へもう一つの幻影をこしらえて、それを燃ゆるような眼でにらみ出しました。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そこで、今までは仰向けに与八とにらめくらをしていた悪女が、今度はすっかり後頭部と背中を見せてしまったものです。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それでも机の抽斗ひきだしには小さな鏡が入れてあって、時によると一時間もランプの下で鏡をにらめている事がある。
まじょりか皿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
(源右衛門と法師達とにらみ合って詰め寄る。朝の勤行を終え、衆僧を従えて門内を通りかかった円命阿闍梨、立出る。)
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
鳴門舞の謡声うたごえより、なお太やかな音声おんじょうをして、阿波守重喜ハッタと庭面にわもにらみすえた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はさっきから不逞ふていな面構えをして、顔から飛び出すような眼をもって、相手の維茂、為憲以下の者をにらまえていたが、
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
帳場と呼ばれた男はその事なら飲み込めたという風に、時々上眼うわめにらにらみ、色々な事を彼れにただした。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そしてその「一匹食わんうちに」という表現でまたその婆さんは可怕こわい顔をして吉田をにらんで見せるのだった。
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
僕は心の中ではこの詩に感服していながら、ちょっとここのところがこざかしいと云えば云える腹立たしさで、彼女をジロリとにらんだ。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
博士は、車を停めると、双眼鏡そうがんきょうをとりだして、新手あらての人造人間部隊をじっとにらんでいたが、
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
こっそりと柳町やなぎちょうへ遊びに出たりするくらいのことで、毎日おもしろくもない甲州の山ばかりをにらめて暮らしていましたが
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ううむ、内じゃないの。おほりとこで、長い尻尾で、あの、目が光って、わたい、私をにらんで、こわかったの。」
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先生は薬研を眼よりも高く差し上げて、鰡八大尽の使者をにらみつけたところは、かなりすごいものでありました。
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