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物足
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ものた
ふりがな文庫
“
物足
(
ものた
)” の例文
そして、
二人
(
ふたり
)
は、
銭
(
ぜに
)
をもらい、いままでのごとく、
困
(
こま
)
ったことはなかったけれど、
少年
(
しょうねん
)
にとってただ一つ、
物足
(
ものた
)
らないものがありました。
街の幸福
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
さういふ
靜
(
しづ
)
かな
人
(
ひと
)
の
物足
(
ものた
)
りない
心持
(
こゝろも
)
ちを、さびしいとも
悲
(
かな
)
しいともいはないで、それかといつて、
雪
(
ゆき
)
のふりかゝつてゐるのを
怨
(
うら
)
むでもなく
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
「日糖事件丈ぢや
物足
(
ものた
)
りないからね」と奥歯に物の
挟
(
はさ
)
まつた様に云つた。代助は
黙
(
だま
)
つて酒を飲んだ。
話
(
はなし
)
は此調子で段々はずみを
失
(
うしな
)
ふ様に見えた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
唯
(
たゞ
)
少
(
すこ
)
し
遠慮勝
(
えんりよがち
)
なのと、
余
(
あま
)
り
多
(
おほ
)
く
口数
(
くちかず
)
を
利
(
き
)
かぬのが、
何
(
なん
)
となく
私
(
わたし
)
には
物足
(
ものた
)
りないので、
私
(
わたし
)
が
其
(
それ
)
であるから
尚更
(
なほさら
)
始末
(
しまつ
)
が
悪
(
わる
)
い。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
それがこの庭までやつてくるのだ。夏のやうに
白鷺
(
しらさぎ
)
が空をかすめて飛ばないのは
物足
(
ものた
)
りないけれども、それだけのつぐなひは十分あるやうな気がする。
一番気乗のする時
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
お
客
(
きゃく
)
さまが
見
(
み
)
えた
時
(
とき
)
に、こちらの
世界
(
せかい
)
で
何
(
なに
)
が一ばん
物足
(
ものた
)
りないかといえば、それは
食物
(
たべもの
)
のないことでございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
オランダイチゴは
今日
(
こんにち
)
市場では、単にイチゴと呼んで通じている。けれども単にイチゴでは
物足
(
ものた
)
りなく、
且
(
か
)
つ他のイチゴ(市場には出ぬけれど)とその名が混雑する。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
加之
(
それに
)
顏にも
弛
(
たる
)
むだ點がある、何うしても平民の娘だ。これが周三に取ツて何となく
物足
(
ものた
)
りぬやうに思はれて、何だか
紅
(
あか
)
い
匂
(
にほひ
)
の無い花を見るやうな心地がするのであツた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
○
折角
(
せっかく
)
ハイキングに行っても、帰って来て
是非
(
ぜひ
)
銀座へ寄らねば何となく
物足
(
ものた
)
り無い。
現代若き女性気質集
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
今になると、彼はまだ出るのが
厭
(
いや
)
なのだ。水浴びに来たのに、これくらいでは
物足
(
ものた
)
りない。出なければならないと思うと、水がもう怖くはないのである。さっきは鉛、今は、羽根だ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
しかし朝になって見ると、初めて逢った人達の感じが好かっただけ、それだけ旅人としての
物足
(
ものた
)
らなさが岸本の胸に忍び込んで来た。彼は皆の言った事を考えて見て、ボンヤリしてしまった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これの
濟
(
す
)
までは
箸
(
はし
)
も
取
(
と
)
られず、一日
怠
(
おこた
)
る
事
(
こと
)
のあれば
終日
(
ひねもす
)
氣持
(
きもち
)
の
唯
(
たゞ
)
ならず、
物足
(
ものた
)
らぬやうに
氣
(
き
)
に
成
(
な
)
るといふも、
聞
(
き
)
く
人
(
ひと
)
の
耳
(
みゝ
)
には
洒落者
(
しやれもの
)
の
蕩樂
(
だうらく
)
と
取
(
と
)
られぬべき
事
(
こと
)
、
其身
(
そのみ
)
に
成
(
な
)
りては
誠
(
まこと
)
に
詮
(
せん
)
なき
癖
(
くせ
)
をつけて
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
……
細
(
ほそ
)
い
杖
(
ステツキ
)
を
持
(
も
)
たないのが
物足
(
ものた
)
りないくらゐなもので。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
物足
(
ものた
)
るや
葡萄
(
ぶだう
)
無花果
(
いちじゆく
)
倉ずまひ
自選 荷風百句
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
別れが今は
物足
(
ものた
)
らぬかな
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
私
(
わたくし
)
は
何
(
なに
)
やら
奇妙
(
きみょう
)
な
感
(
かん
)
じ……
予
(
かね
)
て
考
(
かんが
)
えていたのとはまるきり
異
(
ちが
)
った、
何
(
なに
)
やらしみじみとせぬ、
何
(
なに
)
やら
物足
(
ものた
)
りない
感
(
かん
)
じに、はっと
愕
(
おどろ
)
かされたのでございます……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
たゞ代助には是丈の勇気を出すのが苦痛であつた。
夫
(
それ
)
で
家
(
うち
)
へ帰つた。其代り帰つても、
落
(
お
)
ち
付
(
つ
)
かない様な、
物足
(
ものた
)
らない様な、妙な心持がした。ので、又
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
て酒を
飲
(
の
)
んだ。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
夜更
(
よふけ
)
の電燈の下に彼の勉強を怠らなかつた。同時に又彼が以前書いた十何篇かの論文には、——
就中
(
なかんづく
)
「リイプクネヒトを憶ふ」の一篇にはだんだん
物足
(
ものた
)
らなさを感じ出した。
或社会主義者
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
また
光治
(
こうじ
)
には、あの
少年
(
しょうねん
)
が
自分
(
じぶん
)
に
向
(
む
)
かって
笛
(
ふえ
)
を
吹
(
ふ
)
いたのは
君
(
きみ
)
かと
問
(
と
)
いながら、すこしもうまく
吹
(
ふ
)
いたとはいわなかったのが、なんとなく
物足
(
ものた
)
らなく
心
(
こころ
)
に
感
(
かん
)
じられたのであります。
どこで笛吹く
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
何
(
なに
)
があっけないと
申
(
もう
)
して、
斯
(
こ
)
んなあっけない
仕事
(
しごと
)
はめったにあるものでなく、
相当
(
そうとう
)
幽界
(
ゆうかい
)
の
生活
(
せいかつ
)
に
慣
(
な
)
れた
私
(
わたくし
)
でさえ、いささか
物足
(
ものた
)
りなさを
感
(
かん
)
じない
訳
(
わけ
)
にもまいりませんでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
其時
(
そのとき
)
彼
(
かれ
)
は
美
(
うつ
)
くしい
山
(
やま
)
の
色
(
いろ
)
と
清
(
きよ
)
い
水
(
みづ
)
の
色
(
いろ
)
が、
最初
(
さいしよ
)
程
(
ほど
)
鮮明
(
せんめい
)
な
影
(
かげ
)
を
自分
(
じぶん
)
の
頭
(
あたま
)
に
宿
(
やど
)
さないのを
物足
(
ものた
)
らず
思
(
おも
)
ひ
始
(
はじ
)
めた。
彼
(
かれ
)
は
暖
(
あたゝ
)
かな
若
(
わか
)
い
血
(
ち
)
を
抱
(
いだ
)
いて、
其
(
その
)
熱
(
ほて
)
りを
冷
(
さま
)
す
深
(
ふか
)
い
緑
(
みどり
)
に
逢
(
あ
)
へなくなつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
御互
(
おたがひ
)
が
御互
(
おたがひ
)
に
飽
(
あ
)
きるの、
物足
(
ものた
)
りなくなるのといふ
心
(
こゝろ
)
は
微塵
(
みぢん
)
も
起
(
おこ
)
らなかつたけれども、
御互
(
おたがひ
)
の
頭
(
あたま
)
に
受
(
う
)
け
入
(
い
)
れる
生活
(
せいくわつ
)
の
内容
(
ないよう
)
には、
刺戟
(
しげき
)
に
乏
(
とぼ
)
しい
或物
(
あるもの
)
が
潛
(
ひそ
)
んでゐる
樣
(
やう
)
な
鈍
(
にぶ
)
い
訴
(
うつたへ
)
があつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
明日
(
あした
)
も御
已
(
や
)
めだ」と
答
(
こた
)
へて、自分の
室
(
へや
)
へ
這入
(
はい
)
つた。そこには
床
(
とこ
)
がもう
敷
(
し
)
いてあつた。代助は
先刻
(
さつき
)
栓
(
せん
)
を
抜
(
ぬ
)
いた香水を取つて、
括枕
(
くゝりまくら
)
の
上
(
うへ
)
に
一滴
(
いつてき
)
垂
(
た
)
らした。
夫
(
それ
)
では何だか
物足
(
ものた
)
りなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
本當
(
ほんたう
)
にな」と
宗助
(
そうすけ
)
は
腹
(
はら
)
が
張
(
は
)
つて
充分
(
じゆうぶん
)
物足
(
ものた
)
りた
樣子
(
やうす
)
であつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
足
常用漢字
小1
部首:⾜
7画
“物”で始まる語句
物
物凄
物語
物憂
物識
物怪
物騒
物置
物音
物思