片側かたがは)” の例文
三四郎は一歩退しりぞいて、今通つて来たみち片側かたがはを振り返つて見た。同じ様に外国の景色をいたものが幾点となくかゝつてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかもなくこの陰鬱いんうつ往来わうらい迂曲うねりながらにすこしく爪先上つまさきあがりになつてくかと思ふと、片側かたがはに赤くつた妙見寺めうけんじへい
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
讀者よ、くすしき戲れを聞け、彼等みな目を片側かたがはにむけたり、しかも第一にかくなせるは彼等の中ことにその心なかりしものなりき 一一八—一二〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
銀行ぎんかうよこにして、片側かたがははら正面しやうめんに、野中のなか一軒家いつけんやごとく、長方形ちやうはうけいつた假普請かりぶしん洋館やうくわん一棟ひとむねのきへぶつつけがきの(かは)のおほきくえた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私のはいつのにかわきしたくゞつてゐました。私は東明館前とうめいくわんまへからみぎれて、わけもなくあかるくにぎやかなまち片側かたがはを、店々みせ/\うて神保町じんぼうちやうはうへと歩いて行きました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
こないだの關東かんとう大震災だいしんさいのときには、淺草あさくさ觀音かんのんのおどううらのいてふの片側かたがは半分はんぶんけても、半分はんぶん枝葉えだはのためにがおどうえうつるのをふせぎました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
おとなは今のやうに丸帶まるおびははやらない、丸帶まるおびはよつぽど大よそゆき——つまり儀式ばつた時にばかり用ふるので、片側帶かたかはおびがあたりまへだつたから、腹合はらあはせの片側かたがはの上等品は、唐繻子たうじゆすだつた。
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
電柱の片側かたがはくらき月夜り石ころにかやに露ぞ滿ちたる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
片側かたがはなるはみな顏をカステルロにむけてサント・ピエートロにゆき、片側なるは山にむかひて行くごとくなりき 三一—三三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
麹町かうぢまち番町ばんちやう火事くわじは、わたしたち鄰家りんか二三軒にさんげんが、みな跣足はだし逃出にげだして、片側かたがは平家ひらや屋根やねからかはら土煙つちけむりげてくづるゝ向側むかうがは駈拔かけぬけて、いくらか危險きけんすくなさうな、四角よつかどまがつた
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
梯子段はしごだんあがると、廊下らうか片側かたがはかほあらなが便所べんじよ杉戸すぎどがあり、片側かたがはには三でふと六でふ座敷ざしき三間みまほど、いづれもきやくがあるらしくつたふすまそとにスリツパがてゝある。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
もと枯枝かれえだまじつた杉垣すぎがきがあつて、となりには仕切しきりになつてゐたが、此間このあひだ家主やぬしれたときあなだらけの杉葉すぎは奇麗きれいはらつて、いまではふしおほ板塀いたべい片側かたがは勝手口かつてぐちまでふさいで仕舞しまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
電柱の片側かたがはくらき月夜り石ころにかやに露ぞ満ちたる
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そは片側かたがはには、全世界にはびこる罪を一しづくまた一滴、目より注ぎいだす民、あまりにふち近くゐたればなり 七—九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
片側かたがはのまばらがき一重ひとへに、ごしや/\と立亂たちみだれ、あるひけ、あるひかたむき、あるひくづれた石塔せきたふの、横鬢よこびんおもところへ、胡粉ごふんしろく、さま/″\な符號ふがうがつけてある。卵塔場らんたふば移轉いてん準備じゆんびらしい。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
歩いてうちいつか浅草公園の裏手うらてへ出た。細いとほりの片側かたがはには深いどぶがあつて、それを越した鉄柵てつさくむかうには、処々ところ/″\冬枯ふゆがれして立つ大木たいぼくしたに、五区ごく揚弓店やうきゆうてんきたならしい裏手うらてがつゞいて見える。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
我等古き橋より見しに片側かたがはを歩みて我等のかたに來れる群ありてまたおなじく鞭に逐はれき 七九—八一
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
成程なるほどきにいたうへにも、寝起ねおきにこんな自由じいうなのはめづらしいとおもつた。せき片側かたがはへ十五ぐらゐ一杯いつぱいしきつた、たゞ両側りやうがはつてて、ながらだと楽々らく/\ひぢけられる。脇息けふそくさまがある。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)