故郷こきょう)” の例文
そこで、故郷こきょう伝説でんせつをもとにして「イェスタ・ベルリング物語」という作品を書いて出してみますと、それがみごとに当選しました。
くして、三日ののちに重蔵は死んだ。人間の運命は不思議なもので、彼は故郷こきょうの土とるべく、偶然にここへ帰って来たのであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ちょうどそのころ、兵免令へいめんれいくだったので、かれはひとまずいのいえにおちついて、いよいよ故郷こきょうかえることにしたのであります。
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしは、もう人形使にんぎょうつかいをやめまして、故郷こきょうかえるつもりでおりました。この人形も、もう人様ひとさまにお目にかけないつもりでおりました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
△「わしはその大和路の者であるが、少し仔細あって、えゝ長らく江戸表にいたが、故郷こきょうぼうがたく又帰りたくなって帰って来ました」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
予は第二の故郷こきょうとして徳島に住する事殆んど四十年、為に数十回鳴門を渡りたるも、暴風激浪の為めに苦しめらるる事を記憶せざるなり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
成経 わしはただ一度だけ故郷こきょうの土がみたい。ただ一度だけ家族と会えばまたこの島に帰ってもよい。だがただ一度だけは。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それで、まず故郷こきょうのヴェルムランドのことから書いてみようと思いました。あそこにはおもしろい話や行事ぎょうじがたくさんある。
もって、ひろいのなかへでていくがいい。だが、まれ故郷こきょうやおやじの名まえを口にするんじゃないぞ。わしがはじをかくことになるからな。
おしい事をした。その巾着は、私が東京へ行っていた時分に、故郷こきょうの家が近火きんかに焼けた時、その百人一首も一所に焼けたよ。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あなたも、いずれお死ににならなければならないでしょうし、わたしも故郷こきょうぼうじがたしで、このへんをもういちど見ておきたいとおもったのです。
立ちあがって七八町の先に、再びわが生まれ故郷こきょうを眺めなおした時には、もう以前のような心の痛みはなかった。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「ゆけ、おまえたちはおまえたちのに帰って自由に幸福であれ。ぼくらもまたいまぼくらの故郷こきょうへ帰るのだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そのご親切はありがとうございますが、私はこれから一生涯しょうがい故郷こきょうをはなれない決心をいたしました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
元来温井検校の家は日蓮宗にちれんしゅうであって検校を除く温井一家の墓は検校の故郷こきょう江州ごうしゅう日野町の某寺にある。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私は永く故郷こきょうを離れる決心をその時に起したのです。叔父の顔を見まいと心のうちで誓ったのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先頃ふと大病たいびょうかかった者があると聞いて、故郷こきょうに帰る途中立寄ってみるとわずかに一人に会った。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
儂は何処までも自己本位の生活をした。ある学生は、あなたの故郷こきょう此処ここでは無い、大きな樹木じゅもくを植えたり家を建てたりはよくない、と切に忠告した。儂は顧みなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
うらみこそあれ、もう奉公する気のない浜松城をすてて、一日もはやく、故郷こきょうの甲府にかえりたいと思っているまに、武田家たけだけは、織田おだ徳川とくがわのためにほろぼされ、いるも敵地
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんだあ」とか、「とろくせえ」とか、「こいつがれ」などと、春吉君がそのことばあるがため、じぶんの故郷こきょうをきらっているような、げびた方言を、平気で使われるのである。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
『しかしきみわたしなにもワルシャワへ必要ひつよういのだから、きみ一人ひとりたまえ、そうしてわたしをどうぞさき故郷こきょうかえしてください。』アンドレイ、エヒミチは哀願あいがんするようにうた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
この土地ではよるも戸を締めない。乞食こじきもいなければ、盗賊もいないからである。斜面をなしている海辺かいへんの地の上に、神の平和のようなものが広がっている。何もかも故郷こきょうのドイツなどとは違う。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
人屋ひとやの軒から、故郷こきょうを慕って
自分じぶんたちのまれた、故郷こきょう深林しんりんをふたたびかすめてび、さらに、くるは、にぶ砂漠さばくして、とおくまでいったのでありました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
康頼 しかしあれには二首の歌がりつけてあります。故郷こきょうをしたう歌が。心あるものはまさかいてしまいはしますまい。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そのころ、故郷こきょう伝説でんせつをもとにして「イェスタ・ベルリング物語」という作品を書き、これによってラーゲルレーヴさんは一躍いちやく有名になりました。
コスモとコスマとは、人形を大事だいじにかかえて、故郷こきょうかえっていきました。たくさんもらったお金を、半分ばかり、ターコール僧正そうじょうへおくりました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
きょねんの夏、ニールスは、うまれ故郷こきょうに近いヨルドベリヤの近くの、ある農家のうかで、ガチョウばんにやとわれていました。
種々いろ/\考えました処が、江戸には親類もありますから、何卒どうぞ江戸へ参りいと思いまして、故郷こきょうが懐かしいまゝ無理に離縁を取って出ましたが、手振り編笠あみがさ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たとえまた、兄さんの百年の後においても、この美しい景色けしきをもった故郷こきょうをどうして見すてることができましょう。翠緑すいりょくにつつまれた山、紺碧こんぺきの水をたたえた谷。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ぼくの故郷こきょうのじまんと誤解ごかいしてくれたもうな、五月五日は日本においては少年の最大祝日なのだ。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
明治の初年、薩摩近い故郷こきょうから熊本に引出で、一時寄寓きぐうして居た親戚の家から父が買った大きな草葺のあばら家に移った時、八歳の兄は「破れ家でも吾家わがいえが好い」と喜んで踊ったそうである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
バナナのかわは、わかおとこおんなとが、たのしそうにかたい、わらっているこえをききますと、きゅうまれた、みなみ故郷こきょうこいしくなりました。
河水の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ターコール僧正そうじょうがおいのりをしてるとき、コスモとコスマとは、故郷こきょうへのたびをいそいでいました。コスモはいいました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
都をたつ時あなたがたにことづかった物があった。故郷こきょうからの迎えの使いを拒絶きょぜつするほどのあなたがたに、たいした用はないかもしれんが。(家来に)かの品を。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
故郷こきょうにいるのがいやになって、みんな遠い外国がいこくへいってしまいました。おかあさんは、子どもたちになにひとつ、手だすけをしてもらったことはありませんでした。
按摩になってと思いまして入ったんでございますが、漸々だん/\銭が無くなっちまいましたから、江戸へ帰っても借金はあり、と云って故郷こきょうぼうがたく、何うかして帰りてえが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
べにすずめは、だまって、しばらく思案しあんれていましたが、やがて、みなみ故郷こきょうへはかえらずに、きたをさしてってしまいました。
紅すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
っかさまは芝居でも御見物なすってお帰りになる事だろうから、中々一ト月や二タ月は故郷こきょうぼうがたしで、あっちこっちをお廻りなさるから、急にはお帰りになるまいと存じましたに
おじいさんは、故郷こきょうにいるまご姿すがたえがきました。すると、いつのまにか、そのにはあつなみだが、いっぱいたまっていました。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
長く居る気はありません、貴方もほんの当座の腰掛でいらっしゃるが口に出せんでも心中にるね、内祝言ないしゅうげんは済んでも別に貴方の披露ひろめもなし披露をなさる訳もない、貴方も故郷こきょう懐しゅうございましょう
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
子供こどもは、たくさんの土産物みやげものと、おかねとをって、はるばると故郷こきょうかえってきたのであります。そして、むら人々ひとびとあつくおれいもうしました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
きた故郷こきょうるときに、二小鳥ことりは、どこへいっても、けっして、ふたりは、はなればなれにならず、たがいにたすおうとちかいました。
ふるさと (新字新仮名) / 小川未明(著)
それにつけて、三びきのありは、父母ふぼのすんでいる故郷こきょうを、こいしくおもったのです。けれど、いくらおもっても、かえることができませんでした。
三匹のあり (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、いろいろのことがありましたけれど、とにかく、ついに二人ふたりは、無事ぶじ故郷こきょうしまくことができたのであります。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
彼女かのじょは、吹雪ふぶきのうちにうずもれている、故郷こきょうのさびしいむらえがいて、そこにあわれなははや、姉弟きょうだいおもったのであります。
二番めの娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひめさまは、そのみちは、自分じぶんのきた時分じぶんとおったみちでないので、ほんとうに、故郷こきょうかえることができるだろうかと、不安ふあんおもわれましたが
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「こっちへくるときに、ともだちにやってしまった……。なにしろ、十五のれにてきたんだものな。あれから十ねん故郷こきょうかえらないのだ。」
こま (新字新仮名) / 小川未明(著)
それで、故郷こきょうかえ旅費りょひにでもなればいいということを——こころのうちでは、そんなになるとはおもわなかったけれど——いったのでありました。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、すこしでもたくさん、かねをためて、故郷こきょうかえって、うち人々ひとびとよろこばし、安楽あんらくおくりたいとおもったのであります。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)