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平打
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ひらうち
ふりがな文庫
“
平打
(
ひらうち
)” の例文
御客様は茶の
平打
(
ひらうち
)
の
紐
(
ひも
)
を結んで、火鉢の前にべたりと坐って御覧なさいました。急に、ついと立ってまたその御羽織を脱ぎ捨てながら
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「親分、この四本の
簪
(
かんざし
)
のうち、
平打
(
ひらうち
)
の二本だけは
眞物
(
ほんもの
)
の銀だが、あとの二本は
眞鍮臺
(
しんちうだい
)
に銀流しをかけた、飛んだ
贋物
(
いかもの
)
ですぜ」
銭形平次捕物控:004 呪ひの銀簪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
返事を、
引込
(
ひっこ
)
めた舌の
尖
(
さき
)
で丸めて、
黙
(
だんま
)
りのまま、若い女房が、すぐ店へ出ると……文金の高島田、銀の
平打
(
ひらうち
)
、
高彫
(
たかぼり
)
の
菊簪
(
きくかんざし
)
。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その手に
平打
(
ひらうち
)
の釵が光るのを登は見た。
逆手
(
さかて
)
に持ったその釵は銀であろうか、先のするどく
尖
(
とが
)
った二本の足は、暗がりの中で鈍く光ってみえた。
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
艶々
(
つやつや
)
しい
頭髪
(
かみ
)
の中から抜き取ったのが、四寸ばかりの銀の
平打
(
ひらうち
)
の
簪
(
かんざし
)
。これが窮したあげくの思案と見えて
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
品
(
ひん
)
のよき
高髷
(
たかまげ
)
にお
根
(
ね
)
がけは
櫻色
(
さくらいろ
)
を
重
(
かさ
)
ねたる
白
(
しろ
)
の
丈長
(
たけなが
)
、
平打
(
ひらうち
)
の
銀簪
(
ぎんかん
)
一
(
ひと
)
つ
淡泊
(
あつさり
)
と
遊
(
あそ
)
ばして
學校
(
がくかう
)
がよひのお
姿
(
すがた
)
今
(
いま
)
も
目
(
め
)
に
殘
(
のこ
)
りて、
何時
(
いつ
)
舊
(
もと
)
のやうに
御平癒
(
おなほり
)
遊
(
あそ
)
ばすやらと
心細
(
こゝろぼそ
)
し
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
島田髷
(
しまだまげ
)
に
平打
(
ひらうち
)
をさして、こてこて白粉や紅を塗って、
瘟気
(
いきれ
)
のする人込みのなかを歩いているお庄の
猥
(
みだ
)
らなような顔が、明るいところへ出ると、
羞
(
はじ
)
らわしげに
赧
(
あか
)
らんだ。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
修蔵は、両手で
懐中
(
ふところ
)
を抱えた。その肩を、伝右衛門は思わずかっとして蹴った。お麗の大事にしている
手筥
(
てばこ
)
が、転がった。銀の
平打
(
ひらうち
)
だの、べっ甲の
櫛
(
くし
)
だのが散らばった。
べんがら炬燵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
質素な、白丈長をキリリと島田の根にまいた、紫矢がすりに黒じゆすの帶、べつこうの櫛に銀の
平打
(
ひらうち
)
一枚、小褄をキリリとあげた武家の娘のいさぎよさは實に清艶である。
下町娘
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「ほほほほほ、おかしか無い。」と言いながら娘は
平打
(
ひらうち
)
の
簪
(
かんざし
)
を島田の根元にさし直した。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
湯帰りと見えて、
縞
(
しま
)
の
半纏
(
はんてん
)
の肩へ
濡
(
ぬ
)
れ
手拭
(
てぬぐい
)
を掛けたのだの、
木綿物
(
もめんもの
)
に
角帯
(
かくおび
)
を
締
(
し
)
めて、わざとらしく
平打
(
ひらうち
)
の羽織の
紐
(
ひも
)
の真中へ
擬物
(
まがいもの
)
の
翡翠
(
ひすい
)
を通したのだのはむしろ上等の部であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この
金具
(
かなもの
)
のみにても、貴重なるものは百金を要す、
平打
(
ひらうち
)
なるあり、
丸打
(
まるうち
)
なるあり、ゴム入あり、
菖蒲織
(
しやうぶおり
)
あり、くはしくは流行の部に就いて見るべし。
当世女装一斑
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうして、この中でお礼とは何かと見ると、刀の
下緒
(
さげお
)
の間に
挿
(
はさ
)
んであったと
覚
(
おぼ
)
しく、それを抜き出して手に持ったのは、意外にも一本の銀の
平打
(
ひらうち
)
の
簪
(
かんざし
)
でありました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
総縫の振袖に
竪矢
(
たてや
)
の字、
鼈甲
(
べっこう
)
の
花笄
(
はなこうがい
)
も艶ならば、
平打
(
ひらうち
)
の差しかたも、はこせこの胸のふくらみも、
緋
(
ひ
)
ぢりめんの
襦袢
(
じゅばん
)
の袖のこぼれも、
惚々
(
ほれぼれ
)
とする姿で、立っているのだった。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
娘の
品
(
ひん
)
や身なりから
推
(
お
)
しても、てッきり、紋くずしの
平打
(
ひらうち
)
とかばら
斑
(
ふ
)
の櫛のあつらえとかいうに相違ないと
合点
(
がてん
)
したところが、何か使い古しの
細工物
(
さいくもの
)
でも金に代えたいらしい口ぶりで
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つぶしに大きな
平打
(
ひらうち
)
の
銀簪
(
ぎんかんざし
)
、
八丈
(
はちじょう
)
の
半纏
(
はんてん
)
に
紺足袋
(
こんたび
)
をはき、霜やけにて少し頬の赤くなりし
円顔
(
まるがお
)
鼻高からず、
襟白粉
(
えりおしろい
)
に
唐縮緬
(
とうちりめん
)
の
半襟
(
はんえり
)
の汚れた
塩梅
(
あんばい
)
、知らざるものは
矢場女
(
やばおんな
)
とも思ふべけれど
桑中喜語
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
冬は
合羽
(
かっぱ
)
が
凍
(
こお
)
る。秋は灯心が細る。夏は
褌
(
ふどし
)
を洗う。春は——
平打
(
ひらうち
)
の
銀簪
(
ぎんかん
)
を畳の上に落したまま、
貝合
(
かいあわ
)
せの貝の裏が朱と金と
藍
(
あい
)
に光る
傍
(
かたわら
)
に、ころりんと
掻
(
か
)
き鳴らし、またころりんと掻き乱す。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
さても
好
(
この
)
みの
斯
(
か
)
くまでに
上手
(
じやうず
)
なるか、
但
(
たゞ
)
しは
此人
(
このひと
)
の
身
(
み
)
に
添
(
そ
)
ひし
果報
(
くわはう
)
か、
銀
(
しろかね
)
の
平打
(
ひらうち
)
一つに
鴇色
(
ときいろ
)
ぶさの
根掛
(
ねがけ
)
むすびしを、
優
(
いう
)
にうつくしく
似合
(
にあ
)
ひ
給
(
たま
)
へりと
見
(
み
)
れば、
束髮
(
そくはつ
)
さしの
花
(
はな
)
一輪
(
いちりん
)
も
中々
(
なか/\
)
に
愛
(
あい
)
らしく
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
白ッぽい糸織の羽織の
裙
(
すそ
)
を払って、金の
平打
(
ひらうち
)
の
指環
(
ゆびわ
)
を
嵌
(
は
)
めた手を長火鉢の縁から放し、座蒲団を外してふわりと立つと、むッくりと起きた飼犬が一頭。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さては両人共崖に
墜
(
お
)
ち候が
勿怪
(
もっけ
)
の
仕合
(
しあわせ
)
にて、手
疵
(
きず
)
も負はず立去り候もの
歟
(
か
)
など思ひながら、ふと足元を見候に、草の上に
平打
(
ひらうち
)
の
銀簪
(
ぎんかんざし
)
一本落ちをり候は、申すまでもなくかの娘御の物なるべくと
榎物語
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ガウンの袖口には黄色い
平打
(
ひらうち
)
の
紐
(
ひも
)
が、ぐるりと縫い廻してあった。これは装飾のためとも見られるし、または袖口を
括
(
くく
)
る用意とも受取れた。ただし先生には全く両様の意義を失った紐に過ぎなかった。
博士問題とマードック先生と余
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
黄八丈の
袖
(
そで
)
の長き書生羽織めして、品のよき
高髷
(
たかまげ
)
にお根がけは桜色を重ねたる白の
丈長
(
たけなが
)
、
平打
(
ひらうち
)
の
銀簪
(
ぎんかん
)
一つ
淡泊
(
あつさり
)
と遊して学校がよひのお姿今も目に残りて、
何時
(
いつ
)
旧
(
もと
)
のやうに
御平癒
(
おなほり
)
あそばすやらと心細し
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ここから、南瓜の葉がくれに
熟
(
じっ
)
と
覗
(
のぞ
)
くと、霧が濃くなり露のしたたる、水々とした濡色の島田
髷
(
まげ
)
に、
平打
(
ひらうち
)
がキラリとした。中洲のお京さん、一雪である。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雪の襟脚、黒髪と水際立って、銀の
平打
(
ひらうち
)
の
簪
(
かんざし
)
に
透彫
(
すかしぼり
)
の紋所、
撫子
(
なでしこ
)
の露も垂れそう。
後毛
(
おくれげ
)
もない結立ての島田
髷
(
まげ
)
、背高く見ゆる
衣紋
(
えもん
)
つき、備わった品の
可
(
よ
)
さ。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と一つ
婀娜
(
あだ
)
な声を、きらりと銀の
平打
(
ひらうち
)
に搦めて投込んだ、と思うが
疾
(
はや
)
いが、ばたばたと
階下
(
した
)
へ駆下りたが
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
此時
(
このとき
)
、
白襟
(
しろえり
)
の
衣紋
(
えもん
)
正
(
たゞ
)
しく、
濃
(
こ
)
いお
納戸
(
なんど
)
の
單衣
(
ひとへ
)
着
(
き
)
て、
紺地
(
こんぢ
)
の
帶
(
おび
)
胸
(
むな
)
高
(
たか
)
う、
高島田
(
たかしまだ
)
の
品
(
ひん
)
よきに、
銀
(
ぎん
)
の
平打
(
ひらうち
)
の
笄
(
かうがい
)
のみ、
唯
(
たゞ
)
黒髮
(
くろかみ
)
の
中
(
なか
)
に
淡
(
あは
)
くかざしたるが、
手車
(
てぐるま
)
と
見
(
み
)
えたり、
小豆色
(
あづきいろ
)
の
膝
(
ひざ
)
かけして
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
紅梅焼
(
こうばいやき
)
と思うのが、ちらちらと、もみじの散るようで、通りかかった誰かの
割
(
わり
)
鹿
(
か
)
の
子
(
こ
)
の
黄金
(
きん
)
の
平打
(
ひらうち
)
に、
白露
(
しらつゆ
)
がかかる景気の——その紅梅焼の店の前へ、お
参
(
まいり
)
の帰りみち、通りがかりに
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
結城
(
ゆうき
)
の
袷
(
あわせ
)
に
博多
(
はかた
)
の帯、黒八丈の襟を
襲
(
かさ
)
ねて少し
裄短
(
ゆきみじか
)
に着た、上には糸織
藍微塵
(
あいみじん
)
の羽織
平打
(
ひらうち
)
の
胸紐
(
むなひも
)
、上靴は
引掛
(
ひっか
)
け、これに靴足袋を
穿
(
は
)
いているのは、
蓋
(
けだ
)
し宅診が済むと直ちに洋服に変って
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お稲さんは黙って
俯向
(
うつむ
)
いていたんですって。左挿しに、毛筋を通して銀の
平打
(
ひらうち
)
を挿込んだ時、先が
突刺
(
つっささ
)
りやしないかと思った。はっと髪結さんが抜戻した
発奮
(
はずみ
)
で、飛石へカチリと落ちました。……
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ほつれた
圓髷
(
まげ
)
に、
黄金
(
きん
)
の
平打
(
ひらうち
)
の
簪
(
かんざし
)
を、
照々
(
てら/\
)
と
左插
(
ひだりざし
)
。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
指に
平打
(
ひらうち
)
の
黄金
(
きん
)
の太く
逞
(
たく
)
ましいのを
嵌
(
は
)
めていた。
革鞄の怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
平
常用漢字
小3
部首:⼲
5画
打
常用漢字
小3
部首:⼿
5画
“平打”で始まる語句
平打紐