小町こまち)” の例文
小野おの小町こまち几帳きちょうの陰に草紙そうしを読んでいる。そこへ突然黄泉よみ使つかいが現れる。黄泉の使は色の黒い若者。しかも耳はうさぎの耳である。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小町こまちの真筆のあなめあなめの歌、孔子様のさんきんで書いてある顔回がんかいひさご耶蘇やその血が染みている十字架の切れ端などというものを買込んで
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それは二枚折の時代のついた金屏風で、極彩色の六歌仙が描かれていたが、その丁度小野おの小町こまちの顔の所が、無惨にも一寸いっすんばかり破れたのだ。
心理試験 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
白金町しろがねちょうだからしろがね小町こまちとか、相生町あいおいちょう相生小町あいおいこまちなどというのは、聞く耳もいいが、おはぐろ溝小町どぶこまち本所割下水小町ほんじょわりげすいこまちなんてのは感心しません。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
浅草の三小町こまちといわれた娘、武家出の上品さと、下町育ちの意気を塩梅あんばいし、何かこう、したたるような魅力の持主でした。
浮世うきよかゞみといふもののなくば、かほよきもみにくきもらで、ぶんやすんじたるおもひ、九しやくけん楊貴妃ようきひ小町こまちくして、美色びしよくまへだれがけ奧床おくゆかしうてぎぬべし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
暗に『千載集』以前の智巧的傾向をおさえ、近き世に再び姿がかわって「花山僧正かざんそうじょう在原ありはら中将・素性そせい小町こまちがのち、絶えたる歌の様わづかに聞ゆる時侍る」
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
昼は小町こまちの街頭に立って、往来ゆききの大衆に向かって法華経を説いた。彼の説教の態度が予言者的なゼスチュアを伴ったものであったことはたやすく想像できる。
……さて時にうけたまはるが太夫たゆう貴女あなたは其だけの御身分、それだけの芸の力で、人が雨乞あまごいをせよ、と言はば、すぐに優伎わざおぎの舞台に出て、小町こまちしずかも勤めるのかな。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
御頼み申ますと云にぞお勇はいやもうまへさんの樣な御人柄と云ことに金の五六十兩御持參と有ば世間にほしがる所は降程ふるほど御座りますしかし定めて器量きりやうの御望み小野をの小町こまち衣通姫そとほりひめの樣な手いらずの娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
もっとも業平朝臣あそんと云うお方は美男と見えまして、男の好いのは業平のようだといい女で器量の好いのを小町こまちのようだと申しますが、業平朝臣は東国あずまへお下りあって、しばらく本所業平村に居りまして
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今日の身に我をさそひしなかの姉小町こまちのはてを祈れとにぬ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
伊具いぐは。小町こまち中務なかつかさは」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小町こまち采女うねめと焦がれたが
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大勢おおぜい神将しんしょう、あるいはほこり、あるいはけんひっさげ、小野おの小町こまちの屋根をまもっている。そこへ黄泉よみの使、蹌踉そうろうと空へ現れる。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うまれたらあらたまるかともおもふてたのであらうなれど、たとへ小町こまち西施せいしいてて、衣通姫そとほりひめひをつてせてれてもわたし放蕩のらなほらぬことめていたを
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何々小町こまちと呼ばれた程の器量よしで、その上、教育こそ地味な技芸学校を出たばかりだったが、女としては可成理解力にも富んでいたし、昔気質かたぎの母親のしつけにもよったのだろうが
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ねまき姿もしどけなく、恐怖と昏迷に白い顔をひきつらせて、キッと立っている妻恋小町つまごいこまち——らぬ小町こまちの半身に、かたわらの灯影が明るくゆらめき、半身はむらさきの闇に沈んでいる。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「何だ、ざまは。小町こまちしずかぢやあるめえし、増長をしやがるからだ。」
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
送りけるが彼の十兵衞の娘お富お文はそろひも揃ひし容貌きりやうにて殊に姉のお文は小町こまち西施せいしはぢらうばかりの嬋妍あでやかもの加之そのうへ田舍ゐなかそだちには似氣にげもなく絲竹いとたけの道は更なり讀書よみかきつたなからずいとやさしき性質成れば傍輩はうばい女郎もいたはりて何から何まで深切しんせつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小町こまち娘をりぬいた
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
発作的ほっさてきに笑い出しながら)玉造たまつくり小町こまちと云う人がいます。あの人を代りにつれて行って下さい。
二人小町 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小町こまちいろらふ島田髷しまだまげ寫眞鏡しやしんきやう式部しきぶさいにほこる英文和譯ゑいぶんわやく、つんで机上きじようにうづたかけれども此男このおとこなんののぞりてからずか、仲人なかうどもヽさへづりきヽながしにしてれなりけりとは不審いぶかしからずや
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あかりすとまた小町こまちる、いや、うつくしいことつたら。」
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鬼子おにことよべどとびんだるおたかとて今年ことし二八にはちのつぼみの花色はないろゆたかにしてにほひこまやかに天晴あつぱ當代たうだい小町こまち衣通そとほりひめと世間せけんさぬも道理だうりあらかぜあたりもせばあの柳腰やなぎごしなにとせんと仇口あだぐちにさへうはされて五十ごとう稻荷いなり縁日えんにち後姿うしろすがたのみもはいたるわかものは榮譽えいよ幸福かうふくうへやあらん卒業そつげふ試驗しけん優等證いうとうしようなんのものかは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)