みの)” の例文
旧字:
「ああ。わかった。わたしは、あのくわをつくるときに、こめや、まめが、たくさんみのってくれるようにとばかりおもっていた。それだからだ。」
おじいさんとくわ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「——左大臣家へ、参られたら、忠平公へ、よろしくお伝え申しあげてくれい。春秋のみのり物や、四時のお便りは欠かしていないが」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
峠を越すと、広い平原になって、そこから城下の方まで、十里四方の水田がひろがって、田には黄金こがねの稲が一杯にみのっていました。
三人の百姓 (新字新仮名) / 秋田雨雀(著)
空には秋のような日が照り渡って、地上には麦がみのり、大鎌や小鎌を持った農夫たちが、至るところの畑の中で、戦争のようにいそがしく働いている。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
事件はこれからですが、ね、ある日、それは夏でしたね、私の裏庭には、一本の大きななつめの木があって、それに棗の実がいっぱいにみのっていたのです。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
新約聖書に、耶蘇やそみのらぬ無花果いちじくを通りかゝりにのろうたら、夕方帰る時最早枯れて居たと云う記事がある。耶蘇程の心力の強い人には出来そうな事だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
丁々坊 またたというは、およそこれでござるな。何が、芝居しばいは、大山おおやま一つ、かきみのったような見物でござる。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それらの樹木がみのらす果実はたいてい干乾ひからびていた。生命の液汁はことごとく観念となって凝結していた。クリストフはそれらの観念の間に見分けがつかなかった。
およそ神祇をまつる者、馬牛肉を食う者、人に財を分たぬ者は必ず死ぬ、わが言を信ぜずば三月に至って日月光なし、またわれは草に青い花を咲かせ、木に穀をみのらせ
待て! われわれは、まだ、自分の手で作り出さなければならぬもの、また作り出し得るもの、自分の畑でみのらすべき種を、悲しい哉、悉く彼等作者に仰いでゐるんだ。
職業(教訓劇) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
それは幾十年という長い年月をこの山里に生いたった者の淡い誇りでもあり、果実と山人との間の天然の親しみの不可分な妙境の尊さででもあった。果物くだものは四季にみのった。
かき・みかん・かに (新字新仮名) / 中島哀浪(著)
こがらしに吹きさらされた松本平とも違い、冬というものを知らぬげな伊豆の海岸の、右には柑橘かんきつみのり、眼のさめるほどあおい海を左にしての湯治帰りだから、世界もパッと明るい。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あれと追駈おっかけッこをして見たり、樹に逐い登らして、それを竿でつゝいたり、弱った秋蝉ひぐらしを捕ってやったり、ほうせん花のみのってはじけるのを自分でも面白くって、むしって見たり
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
富は祈祷のみに依て来らず、働くは祈るなり(Laborare est orare)、身と心とを神にまか精々せいせい以て働きて見よ、神も宇宙も汝を助け汝の労力はみのるぞかし。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
いくら骨を折つても、穀物がみのつたことはない。垣は誰も破らぬに独りでに破れて仕舞ふ。牛は逃げて仕舞つたり、菜の中へ這入つたりします。無益な艸は外よりも早く延びます。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
古河より先きに住んで租税の負担をして居る人民が今日其土地に居ることが出来ない、祖先来の田畑を耕すことがならず、祖先来の田畑がみのらなくなつたと云ふ事実と比較が出来るものでない。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あの連中だとて、俺のような苦しみをめなかったとは、どうして言われよう? 彼らはよくその試練に堪えて、自分が籾であることを立証したばかりだ。俺は生れながらにみのらない糠であった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
新蔵といい、菊之助といい、いずれもひいでてみのらざるもの、殊に哀惜の感が深い。菊之助は我が子に父の職業を継がせるなと言った。新蔵の弟子たちは廃業した。これらの消息は何を語っているか。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すもゝみのるみなみ独逸ドイツのたかきくにの中にありといふミユンヘンの町
歌の潤い (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
乾燥が出来ないために、折角みのったものまで腐る始末だった。小作はわやわやと事務所に集って小作料割引の歎願をしたが無益だった。彼らはあんじょう燕麦売揚うりあげ代金の中から厳密に小作料を控除された。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
刈りしのち穂には出でてもみのらねば人の手ふれぬひつぢ穂やわれ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
めて福州の第中に居る。茘枝あり初めてみのる。絶大にして美、名づけて亮功紅と曰ふ。亮功は深家御書閣の名なり。靖康中、深、建昌軍に謫せられ、既に行く。茘枝復た実らず。明年深帰りしに、茘枝復たもとの如し。云々
五穀ごこくみのらぬ里やある
県歌 信濃の国 (新字新仮名) / 浅井洌(著)
そのとしは、りんごにむしがつかずよくみのって、予想よそうしたよりも、おおくの収穫しゅうかくがあったのであります。むら人々ひとびとは、たがいにかたらいました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二匹の牛、十匹の羊、五匹の豚が、あらゆる物に調理され、酒は山東さんとう生粋きっすい秋果しゅうかはこの山のみのりだし、隠れたる芸能の粋士もまた寨中さいちゅうに少なくない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔仏その従弟調達が阿闍世あじゃせ王より日々五百釜の供養を受け、全盛するを見、諸比丘を戒めたに、芭蕉はみのって死し、竹も蘆も実って死し、騾は孕んで死し、士は貧を以て自ら喪うと言った。
いずれも流れの末永く人を湿うるおし田をみのらすと申し伝えられてあります。
それが、日数ひかずがたつにつれて、それらの野菜やさいは、ふとったり、また、まるまるとえたり、大粒おおつぶみのったりしましたからね。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
黄河の水ひとたび溢るれば、何万人の人命は消えますが、蒼落そうらくとしてまたみのり人は増してゆく。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安心あんしんあそばしてください、下界げかい穀物こくもつがすきまもなく、に、やまに、はたにしげっています。また樹々きぎには果物くだものかさなりってみのっています。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「なかなかよくみのっておりますな。うねこえも、母上がお手ずからおやりになりましたか」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はるになると、むらのあちら、こちらに、ゆきのような、しろいなしのはなきました。そして、いずれも、なつのころにはみごとにみのったのであります。
ことにことしの秋はよくみのり、国中豊楽を唱えておりますれば、この際、各地の地頭官吏をはじめ、田吏でんりにいたるまでを、襄陽じょうようにあつめて、慰労のかりを催し大宴を張り、もってご威勢を人民に示し
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あきになっておはぐろいろみのるのをたのしみにしていたのに、このごろたくさんありががったり、がったりして、とうとうえだをつくってしまった。
戦友 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「——広いなあ。この広い平地に、これだけ稲の種がみのったら!」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほか、いちごのはたけがあり、なつにかけて、おかのスロープには、大粒おおつぶなぶどうのふさが、みごとにみのるのでした。
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
「お上人さまの功徳でも、この秋は、ふッさりと穂がみのろうぞや」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうか、こめまめが、よくみのってくれるように。」と、てつって、百しょうのつかうくわなどをつくっていました。
おじいさんとくわ (新字新仮名) / 小川未明(著)
だれも、ここへはやってこないから安心あんしんなさい。そして、まあここから、ちょっとそとをのぞいてごらんなさい。あんなにきびがみのっているじゃありませんか。
汽車の中のくまと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あちらのには、あんなにこめみのっているじゃありませんか。おまえさんがどこへりようとかってなんだ。
汽車の中のくまと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、来年らいねんいねみのるころになると、太吉たきちじいさんは、あたらしいかがしをつくりました。去年きょねん子鳥ことりたちはもう親鳥おやどりとなって、おなじように、その子供こどもたちにかって
からすとかがし (新字新仮名) / 小川未明(著)
くるとしはる、またりんごのはなしろゆきのごとくきました。そして、なつには、青々あおあおみのりました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おまえは、そのまちむことになる。やまには、黄色きいろに、果物くだものみのっているし、ながれのふちにも、野原のはらにも、あかはないている。おまえはこんないいところはないとおもう。
幸福の鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、ここに別荘べっそうてます。うつくしいはないているし、果物くだものは、みのっているし、温泉おんせんがわいている。こんないいところはありません。どんなうつくしいひともくるでしょう。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねん、十ねんのちには、りっぱな楽園らくえんとなるでしょう。果物くだものは、いまでも、みんなのべきれぬほどみのっています。うみからはさかなれますし、また、やまにゆけば温泉おんせんがわいています。
花咲く島の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むらは、小高こだかいところにありました。はるから、なつにかけて、養蚕ようさんいそがしく、あきに、また、果物くだものうつくしくたんぼみのりました。おおきないけがあって、いけのまわりは、しらかばのはやしでありました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、りんごには、おかげでわるむしがつかずによくみのりました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)