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あて
ふりがな文庫
“
宛
(
あて
)” の例文
毎日警視総監
宛
(
あて
)
に何十通となく来るので、私の投書も、ろくろく眼も通されずに
屑籠
(
くずかご
)
の中へほうりこまれたのではないかとも思われる。
誰が何故彼を殺したか
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
即ち本店を復興すると同時に、東京市内各区に一つ
宛
(
あて
)
デパート式のデパートを作ったが、それがズドンと当って繁昌するわ繁昌するわ。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
代助はやがて書斎へ帰つて、手紙を二三本
書
(
か
)
いた。一本は朝鮮の統監府に居る友人
宛
(
あて
)
で、
先達
(
せんだつ
)
て送つて呉れた高麗焼の礼状である。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
父
宛
(
あて
)
に来た書状も、一通り目を通すのが、彼女の役だった。その朝は、父宛の書留が一通
雑
(
ま
)
じっていた。それは内容証明の書留だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
既
(
すで
)
に殺されんとしました時、葉末と
宣
(
なの
)
る娘のため危いところを助けられ、夢見る心地で明け方の山路を
宛
(
あて
)
もなく逃げ惑っております時
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
「たよりないとも思ひますわ。行先のことなど考へますとね。けれど男の方ほど
宛
(
あて
)
にならないものはないやうな気もしますわ。」
二黒の巳
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
唐突に
宛
(
あて
)
もない事を云ッてみたが、先生少しも驚かず、
何故
(
なにゆえ
)
かふむと鼻を鳴らして、只「
羨
(
うらや
)
ましいな。もう一度そんな身になってみたい」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
其耳が
宛
(
あて
)
に成らないサ。君の
父上
(
おとつ
)
さんは
西乃入
(
にしのいり
)
の牧場に居るんだらう。あの
烏帽子
(
ゑぼし
)
ヶ
嶽
(
だけ
)
の
谷間
(
たにあひ
)
に居るんだらう。それ、見給へ。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
イベットは両手で小田島の腕を握り、毛織物を通して感じられる日本人独特の筋肉が円く盛上った上膊に
顳顬
(
こめかみ
)
を
宛
(
あて
)
がった。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「お話中でございますが、司令官閣下、
只今
(
ただいま
)
、T三号の受信機に至急呼出信号を感じました。秘密第十区からの司令官
宛
(
あて
)
の秘密電話であります」
空襲警報
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
中積船が来たら
托送
(
たくそう
)
しようと、同じ
苗字
(
みょうじ
)
の女名前がその
宛
(
あて
)
先きになっている小包や手紙が、彼等の荷物の中から出てきた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
憎
(
に
)
くしと
思
(
おも
)
へど
流石
(
さすが
)
に
義理
(
ぎり
)
は
愁
(
つ
)
らき
物
(
もの
)
かや、
母親
(
はゝおや
)
かげの
毒舌
(
どくぜつ
)
をかくして
風
(
かぜ
)
引
(
ひ
)
かぬやうに
小抱卷
(
こかいまき
)
何
(
なに
)
くれと
枕
(
まくら
)
まで
宛
(
あて
)
がひて、
明日
(
あす
)
の
支度
(
したく
)
のむしり
田作
(
ごまめ
)
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
人々の
中
(
うち
)
にて一番早く心を
推鎮
(
おししず
)
めしは目科なり彼れ五六遍も嚊煙草の空箱を鼻に
宛
(
あて
)
たる
末
(
すえ
)
、
件
(
くだん
)
の巡査に打向いて荒々しく
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
十一日に貯金の全部百二十円を銀行から引出し、同店員で
従兄
(
いとこ
)
に当る若者
宛
(
あて
)
の
遺書
(
いしょ
)
を
認
(
したた
)
め、己がデスクの
抽斗
(
ひきだし
)
に入れた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
山村のおさく師匠の腎臓病が悪くなって近所の病院へ入院したと云う端書が、弟子の一人から妙子
宛
(
あて
)
に届いたのは八月に
這入
(
はい
)
って間もなくであった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
夕方、比嘉は、寄り合ひがあるといふので、富岡は、再会を約して、医院を出たが、何処へ行くといふ
宛
(
あて
)
もなかつた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
必ず大きな
札
(
さつ
)
を出しておつりを勘定させる、その上に押し合いへし合いお互いに運動を妨害するから、どうしても一人
宛
(
あて
)
平均三十秒はかかるであろう。
マーカス・ショーとレビュー式教育
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
なほも一つ言ひたい事がある、それは翻訳なるものは、あまり
宛
(
あて
)
にならないといふ事である。
能
(
あた
)
ふべくは翻訳などは見ない事にして貰ひたいのである。
翻訳製造株式会社
(新字旧仮名)
/
戸川秋骨
(著)
この遺書は倅才右衛門
宛
(
あて
)
にいたしおき候えば、子々孫々
相伝
(
あいつた
)
え、某が志を継ぎ、御当家に
奉対
(
たいしたてまつり
)
、忠誠を
擢
(
ぬきん
)
ずべく候。
興津弥五右衛門の遺書
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
英夫は、船長に頼んで、平林大尉
宛
(
あて
)
に、船の中での出来事や、香山飯店のスパイ団の活動を無電で知らしてやった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
御月番の御老中へ
宛
(
あて
)
急飛
(
きふひ
)
を差立らる
爰
(
こゝ
)
に又天一坊の
旅館
(
りよくわん
)
には山内伊賀亮常樂院赤川大膳藤井左京等
尚
(
なほ
)
も
密談
(
みつだん
)
に及び大坂は
餘程
(
よほど
)
に
富
(
とむ
)
地
(
ち
)
なり此處にて
用金
(
ようきん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ですが、一挙に今夜の決行をうながしたのは、前夜、しかも深更になって、柳沢家の甲府町方役宅へ、徳川万太郎
宛
(
あて
)
にとどいた、無名の飛脚からです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
咲子
宛
(
あて
)
のもので、彼女の名も居所も書いてなかった。何か厚ぼったいその封書を手にした瞬間、彼はちょっと暗い気持になったが、とにかく開けて見た。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私も彼等の仲間入りがしたくて、毎日、やきもきしながら、ことによるとお前が匿名で私によこすかも知れない手紙、そんな来る
宛
(
あて
)
のない手紙を待っていた。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
俸給は年三十
磅
(
ポンド
)
に御座候。××州、ミルコオトに近きソーンフィールド、フェアファックス夫人
宛
(
あて
)
に證明書、姓名、住所及びすべて詳細を御送附被下度願上候。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
正午頃からいろいろな人間が見にきたが、みな
宛
(
あて
)
はずれな顔で帰った。夜の十一時過ぎ、四十二、三の実業家らしい紳士が、新聞を鷲掴みにして駆けこんできた。
悪の花束
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
青銅の
框
(
わく
)
を
嵌
(
は
)
めた眼鏡を外套の
隠袋
(
かくし
)
から取りだして、眼へ
宛
(
あて
)
がおうとしてみた、がいくら眉を
皺
(
しか
)
め、頬を捻じ上げ、鼻まで
仰
(
あ
)
お向かせて眼鏡を支えようとしてみても
あいびき
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
なほ数人の方々に手紙を書かうとしてゐるところに、発行所
宛
(
あて
)
に赤彦君危篤の電報が届いた。僕は手紙を書くことをやめて家に帰つた。家にもやはり電報が届いてゐた。
島木赤彦臨終記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
したが今夜百文でも二百文でも貰って帰らなければ私の命を助けて呉れた大事なお
父様
(
とっさん
)
に
明日
(
あした
)
喰べさせるものを
宛
(
あて
)
がう事も出来ず、と云ってお
腹
(
なか
)
を
空
(
すか
)
させては済まない
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それは
何
(
いず
)
れも、
極
(
きま
)
り切った様に、つまらぬ文句のものばかりであったが、彼女は、女の優しい
心遣
(
こころづか
)
いから、どの様な手紙であろうとも、自分に
宛
(
あて
)
られたものは、
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
おまき婆さんが幾ら十分の食い物を
宛
(
あて
)
がって置いても、彼等はやはり盗み食いを止めなかった。
半七捕物帳:12 猫騒動
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そのとき宗務大臣ビゴー・ド・プレアムヌー氏に
宛
(
あて
)
て、不平満々たる内密な寸簡をしたためた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
何
(
なん
)
でも
蓮
(
はす
)
の画と
不二見西行
(
ふじみさいぎやう
)
の画とがあつた。写真版の次は書簡集だつた。「子供が死んだから、小説は書けない。
御寛恕
(
ごくわんじよ
)
下さい」と云ふのがあつた。
宛
(
あて
)
は
畑耕一
(
はたかういち
)
氏だつた。
本の事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
跳ね起きて、いづくを
宛
(
あて
)
ともなく、狹く曲りたる
巷
(
ちまた
)
を走りぬ。途にて逢ひたるは、杖もて敷石を
敲
(
たゝ
)
き、高聲にて歌ふ男一人のみなりき。しばらくして廣きところに出でぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
「間違いない。被害者
宛
(
あて
)
の手紙が入っている。きみ、なんというんだい? その掏摸は?」
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
次の手紙は母
宛
(
あて
)
になっていますが、私のために書かれたものなので、母はすぐに団子坂から曙町まで持って来られて、「これはお前の教科書だよ」といって渡されたのでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
海濱
(
かいひん
)
に
流
(
なが
)
れ
寄
(
よ
)
る
事
(
こと
)
もやと、
甲斐
(
かひ
)
/″\しく
巡視
(
じゆんし
)
に
出
(
で
)
かけたが、
無論
(
むろん
)
宛
(
あて
)
になる
事
(
こと
)
では
無
(
な
)
い。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
小生ただいま居所不定、(近くアパアトを捜す予定)だから御通信はすべて社
宛
(
あて
)
に下さる様。住所がきまったなら、お
報
(
しら
)
せする。要用のみで失敬。武蔵野新聞社学芸部、長沢伝六。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
殊
(
こと
)
に困難を感ずるのは今のいわゆる自称文学者とか自称美文家とかいう先生たちの文章だ。僕ら
如
(
ごと
)
き専門の文学者でさえ
振仮名
(
ふりがな
)
を
宛
(
あて
)
にしなければ読む事の出来ない文字が沢山ある。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
階下の事務室に寝ているものを起して六時になったら名
宛
(
あて
)
のところへ持ってゆけと言附けたあとで、彼女は恩師であり恋人であった故人のあとを追う
終焉
(
しゅうえん
)
の旅立ちの仕度にかかった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
で、もし彼に化学の本を
宛
(
あて
)
がったとしても、やはりそれを拒みはしなかっただろう。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
部落常会で助役さんの説明するところによると、今から一人
宛
(
あて
)
米二合八勺として十月一日までの数量以上を持っているものは、たとい一俵でも二俵でも政府へ供出しなければいけない。
米
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
それにマンネリングのお父さんからの丁寧な手紙がつけてありましたが、それは私の
名
(
な
)
宛
(
あて
)
であったので、読んでから焼いてしまいました。お父さんはあなたに満足していないようでしたよ
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
ワーリャ なんだって、ドクトル
宛
(
あて
)
の手紙を持って行かなかったんだろう?
桜の園
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
就
(
つい
)
ては
壹岐
(
いき
)
様から
斯様
(
かよう
)
々々の
御
(
ご
)
伝言で、お手紙は
是
(
こ
)
れですからお届け申すと丁寧に
認
(
したた
)
めて
遣
(
や
)
って、ソレカラ封をせずに渡した
即
(
すなわ
)
ち
大橋六助
(
おおはしろくすけ
)
に
宛
(
あて
)
た手紙を本人に届ける
為
(
た
)
めに、私が手紙を
書添
(
かきそ
)
えて
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
K君——今はただ以上の事実を、君に
宛
(
あて
)
て報告するに
止
(
とど
)
めておこう。
友人一家の死
(新字新仮名)
/
松崎天民
(著)
移転先は病院へも秘密にし、そして「俺ハ考ヘル所ガアツテ好キ勝手ナ生活ヲスル。干渉スルナ。居所ヲ調ベルト承知センゾ。昭和十二年九月十日午前二時
誌
(
シル
)
ス」といふ
端書
(
はがき
)
を母と兄
宛
(
あて
)
に書き送つた。
六白金星
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
「君を思ふ」と
巴里
(
パリイ
)
宛
(
あて
)
に。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
こんな出来事のあったことも知らず、松浦民弥は
宛
(
あて
)
はなかったが、敵三十郎に逢いたいものと、お城下をそちこち
彷徨
(
さまよ
)
っていた。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかも
余
(
よ
)
は他の日本人のごとく紹介状を持って世話になりに行く
宛
(
あて
)
もなく、また在留の旧知とては無論ない身の上であるから
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
宛
常用漢字
中学
部首:⼧
8画
“宛”を含む語句
宛然
宛行
宛転
宛名
名宛
宛嵌
宛如
押宛
宛所
宛城
宛字
手宛
大宛
人宛
目宛
引宛
宛転滑脱
宛込
宛転悠揚
幸子宛
...