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ふさ
ふりがな文庫
“
塞
(
ふさ
)” の例文
千兩箱は
大晦日
(
おほみそか
)
の晩から積んであつて、松のうちはその儘にして置くさうです。床の前は
塞
(
ふさ
)
がつて居るから誰も氣が付きやしません。
銭形平次捕物控:248 屠蘇の杯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
しかるに『岐蘇考』に天正十二年山村良勝
妻籠
(
つまご
)
に城守りした時、郷民徳川勢に通じて水の手を
塞
(
ふさ
)
ぎけるに、良勝白米もて馬を洗わせ
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
重ね重ね奇怪だ、無礼だ。身分違いの身で、土下座でもして謝るならまだしも、人がましゅうし目の前に立ち
塞
(
ふさ
)
がって、それなる奴を
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
東の空を重たげに
塞
(
ふさ
)
いでいた、黒ずんだ
牡丹
(
ぼたん
)
色の雲が裂けて、いつか朝の日光が、きらきらと森の梢を染めだしているのが、見えた。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私
(
わたし
)
は
襟
(
ゑり
)
を
被
(
かぶ
)
つて
耳
(
みゝ
)
を
塞
(
ふさ
)
いだ!
誰
(
だれ
)
が
無事
(
ぶじ
)
だ、と
知
(
し
)
らせて
来
(
き
)
ても、
最
(
も
)
う
聞
(
き
)
くまい、と
拗
(
す
)
ねたやうに……
勿論
(
もちろん
)
、
何
(
なん
)
とも
言
(
い
)
つては
来
(
き
)
ません。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
▼ もっと見る
軈
(
やが
)
てお引けということに成っても元より座敷は
塞
(
ふさ
)
がって居りますから、名代部屋へ入れられ、
同伴
(
つれ
)
もそれ/″\収まりがつきました。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
これも余り善い成績ではなかつた。とかくこんなことして草花帖が段々に画き
塞
(
ふさ
)
がれて行くのがうれしい。八月四日記。(八月六日)
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
神楽坂
(
かぐらざか
)
へかゝると、
寂
(
ひつそ
)
りとした
路
(
みち
)
が左右の
二階家
(
にかいや
)
に
挟
(
はさ
)
まれて、
細長
(
ほそなが
)
く
前
(
まへ
)
を
塞
(
ふさ
)
いでゐた。中途迄
上
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
たら、それが急に鳴り
出
(
だ
)
した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
俺
(
お
)
ら
其
(
そ
)
の
手拭
(
てぬげ
)
被
(
かぶ
)
つてこつち
向
(
む
)
いてる
姐樣
(
あねさま
)
こと
寄
(
よ
)
せて
見
(
み
)
てえもんだな」
立
(
た
)
ち
塞
(
ふさ
)
がつた
陰
(
かげ
)
から
瞽女
(
ごぜ
)
の
一人
(
ひとり
)
へ
揶揄
(
からか
)
つていつたものがある。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
しかし、石神堂の間道もあのとおり
塞
(
ふさ
)
がせてありますから彼に翼のない以上、ふたたび江戸城の外へ逃げ出す気づかいは絶対にない。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
土地の凍結がある程度まで進行して、地下水の
排
(
は
)
け口を
塞
(
ふさ
)
ぎ、内部に圧が加わってくると、地下水の一部は裏込めの層に浸入してくる。
永久凍土地帯
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
そう云えばあの仏蘭西窓の外を
塞
(
ふさ
)
いで、時々大きな白帆が通りすぎるのも、何となくもの珍しい心もちで眺めた覚えがありましたっけ。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ゴチャゴチャと不規則に立ち
塞
(
ふさ
)
がっている山が次第に四方へ片づいて、人の住むべき地歩を少しばかり譲っているような気がする。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
近い岸より、遠い山脈が
襞目
(
ひだめ
)
を
碧落
(
へきらく
)
にくつきり刻み出してゐた。ところどころで
落鮎
(
おちあゆ
)
を
塞
(
ふさ
)
ぐ
魚梁
(
やな
)
の
簾
(
す
)
に
漉
(
こ
)
される水音が白く聞える。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
今迄越えて来た山と山との間の路が地図でも見るやうに
分明
(
はつきり
)
指点せらるゝと共に、この
小嶺
(
せうれい
)
に
塞
(
ふさ
)
がれて見得なかつた前面の風景も
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
(画家
徐
(
しずか
)
に娘の前に
跪
(
ひざまず
)
き、娘を見上ぐ。娘両手にて画家の目を
塞
(
ふさ
)
ぎ、顔次第に晴やかになりて微笑み、少し苦情らしき調子にて。)
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
私はお宮がそんなにしているのが分ると、さっきから一ぱいに
塞
(
ふさ
)
がっていた胸がたちまち和らかに溶けて軽くなったようになった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
のつそりハッと俯伏せしまゝ五体を
濤
(
なみ
)
と
動
(
ゆる
)
がして、十兵衞めが生命はさ、さ、さし出しまする、と云ひし
限
(
ぎ
)
り
喉
(
のど
)
塞
(
ふさ
)
がりて言語絶え
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
ただしその窮とは困窮、貧窮等の窮にあらず、人の言路を
塞
(
ふさ
)
ぎ、人の
業作
(
ぎょうさ
)
を妨ぐる等のごとく、人類天然の働きを窮せしむることなり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
けれども小僧はこれを押し止めて、猿共を皆
洞穴
(
ほらあな
)
の中に隠して入り口を
塞
(
ふさ
)
いで、自分一人森の外に出て狼の来るのを待っていた。
猿小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
萠円山人
(著)
総監はにこりと笑って、さもさも安心したというような顔付をして眼を
塞
(
ふさ
)
いだ。その時、松島氏はその顔色を見てぎょっとした。
外務大臣の死
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
伊織が続いて出ると、脇差を抜いた下島の
仲間
(
ちゅうげん
)
が立ち
塞
(
ふさ
)
がった。「
退
(
の
)
け」と叫んだ伊織の横に払った刀に仲間は腕を切られて後へ引いた。
じいさんばあさん
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と言ってお銀様は、竜之助の
面
(
かお
)
を見ることができました。けれども、わざと眼を
塞
(
ふさ
)
いでいるこの人の物静かなのを見ただけでありました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「あ!」と叫びし口は
頓
(
とみ
)
に
塞
(
ふさ
)
がざりき。満枝は
仇無
(
あどな
)
げに口を
掩
(
おほ
)
ひて笑へり。この罰として貫一は
直
(
ただち
)
に三服の吸付莨を
強
(
し
)
ひられぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それゆえは西北の風強くして砂を打ち上げて川口を
塞
(
ふさ
)
ぎ
埋
(
うず
)
むれば、その水ただちに海に入ることあたわず、川口にて東へ曲り流るるなり。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
我血は湧き返りて、渾身震ひ氣息
塞
(
ふさ
)
がりたり。此時人の足音して
一間
(
ひとま
)
の扉は外より開かれ、主人はフエデリゴと共に入り來りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
何と言っても濁り気のなく感じ
易
(
やす
)
い青年時代に知った最初の情人の名であったほど、それほど旅の心の閉じ
塞
(
ふさ
)
がってしまった時。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
坦々たる古道の尽くるあたり、
荊棘
(
けいきよく
)
路を
塞
(
ふさ
)
ぎたる原野に
対
(
むかひ
)
て、これが開拓を勤むる勇猛の徒を
貶
(
けな
)
す者は
怯
(
きよう
)
に
非
(
あ
)
らずむば惰なり。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
私の入れられた箱は、四方とも
塞
(
ふさ
)
がれていて、たゞ、出入口の小さな戸口のほかには、空気抜きのため
錐
(
きり
)
の穴が二つ三つつけてありました。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
掘
(
ほら
)
ざれば家の用
路
(
ろ
)
を
塞
(
ふさ
)
ぎ
人家
(
じんか
)
を
埋
(
うづめ
)
て人の
出
(
いづ
)
べき
処
(
ところ
)
もなく、
力強
(
ちからつよき
)
家も
幾万斤
(
いくまんきん
)
の雪の
重量
(
おもさ
)
に
推砕
(
おしくだかれ
)
んをおそるゝゆゑ、家として雪を
掘
(
ほら
)
ざるはなし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
利己的なる近代人が人生の過悪に目を
塞
(
ふさ
)
ぎ、その煩雑を厭い、美しき女を連れて湖畔の水楼に住まんとするのは隠遁ではない。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
しかし何者かに口を
塞
(
ふさ
)
がれ、
咽喉
(
のど
)
を
絞
(
し
)
められつゝも、懸命に抵抗しているように、今にも呼吸が詰まりそうに云うのであった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
手が
塞
(
ふさ
)
がっている?
物貰
(
ものもら
)
いと私は間違えられたのだ! 脳天から打ちのめされたような気がして、私はもうふらふらとした。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
緑色の
衝立
(
ついたて
)
が病室の内部を
塞
(
ふさ
)
いでいたが、入口の
壁際
(
かべぎわ
)
にある手洗の鏡に映る姿で、妻はベッドに寝たまま、彼のやって来るのを知るのだった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そこへ内務省と大きく白ペンキでマークしたトラックが一台道を
塞
(
ふさ
)
いで止まってその上に一杯に積んだ岩塊を三、四人の人夫が下ろしていた。
雨の上高地
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして最後に、彼の目の前には、殆ど四五寸の近さで、異様に大きな
鼠色
(
ねずみいろ
)
の肉塊の山が立ち
塞
(
ふさ
)
がっていた。それは春川月子の左の肩であった。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その牢屋の中でいためられたのだらうか? その小さな
塞
(
ふさ
)
いだ室の中で、仕事を遂げるのに窒息する程の悲惨な沢山の困難にも怒らないのだ。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
雲黒く気重く、身
蒸
(
む
)
され心
塞
(
ふさ
)
がれ、迷想
頻
(
しきり
)
に
蝟集
(
ゐしふ
)
し来る、これ奇なり、怪なり、然れども人間遂にこれを免かること難し。
「油地獄」を読む:(〔斎藤〕緑雨著)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
白いものが、夫の手から飛んで来て、あたしの
鼻孔
(
びこう
)
を
塞
(
ふさ
)
いだ。——きつい
香
(
かお
)
りだ。と、その
儘
(
まま
)
、あたしは気が遠くなった。
俘囚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
やがて
塞
(
ふさ
)
がれた生命の流が疎通する。かくて献身者は生命の流のしかもその中流に舟を浮べて、舟の漂い行くに任せて、ひとりほほえんでいる。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
「しかし席順ってものがある。此方が上になれば、就職の必要のあるものがそれだけ下になる。指定席を持っているものが普通席を
塞
(
ふさ
)
ぐ勘定さ」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
纔
(
わづか
)
に
一人
(
いちにん
)
専用の特別一等室だけが
塞
(
ふさ
)
がらずにあると聞いて、六百円の一等乗船券に更に一割の
増金
(
ましきん
)
を払つて
辛
(
から
)
うじて其れに載せることが出来た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
すなわち吉田は首を動かしてその夜着の隙間を
塞
(
ふさ
)
いだ。すると猫は大胆にも枕の上へあがって来てまた別の隙間へ
遮二無二
(
しゃにむに
)
首を突っ込もうとした。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
しかし、梶はこの風穴を
塞
(
ふさ
)
ぎとめては尽く呼吸の断ち切れてしまう日本人の肉体を今さら不思議な物として眺め始めた。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
松本はちょうど誰かいい相棒をほしいところだったから酷くよろこんだ。そーッと曽根に気づかれないように彼の背後から両手で彼の目を
塞
(
ふさ
)
いだ。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
あなたの
盗
(
ぬす
)
み見た横顔は、
苦悩
(
くのう
)
と
疲労
(
ひろう
)
のあとが、ありありとしていて、いかにも
醜
(
みにく
)
く、ぼくは眼を
塞
(
ふさ
)
ぎたい想いでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
我は既に魂等全く
掩
(
おほ
)
ひ
塞
(
ふさ
)
がれ玻璃の中なる
藁屑
(
わらくづ
)
の如く見え
透
(
す
)
ける處にゐたり(これを詩となすだに恐ろし) 一〇—一二
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
勿論その当時、お元の親たちはかれに口止め料をあたえて秘密を守る約束を固めて置いたが、広い世間の口をことごとく
塞
(
ふさ
)
ぐわけには行かなかった。
半七捕物帳:37 松茸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
街を通つてゐても、或る店先などに人が大勢立ち
塞
(
ふさ
)
がつてゐて、其の家で誰れかが争論でもしてゐるのを見ると私は直ぐ国の父の上に思ひを
馳
(
は
)
せた。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
そして子供の手を突離して駈け出そうとする、が
可怪
(
おか
)
しなことに死んだ
筈
(
はず
)
の
痩
(
や
)
せ青ざめた子供達が、彼の先へ先へとコロがって
足許
(
あしもと
)
を
塞
(
ふさ
)
いでしまう。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
塞
常用漢字
中学
部首:⼟
13画
“塞”を含む語句
閉塞
塞外
逼塞
立塞
塞翁
優婆塞
城塞
馬耳塞
山塞
息塞
馬塞
娑婆塞
韻塞
口塞
荊与棘塞路
方塞
柬埔塞
栓塞
堰塞
馬塞耳
...