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凝
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こ
ふりがな文庫
“
凝
(
こ
)” の例文
昔しながらの薄着で、肩が
凝
(
こ
)
ると言つて
襯衣
(
しやつ
)
は決して着ないから、襦袢の白い襟の間から茶褐色に痩せた斑點のある肌が見えてゐた。
ごりがん
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
その
美
(
うつく
)
しい
空
(
そら
)
に
奪
(
うば
)
はれてゐた
眼
(
め
)
を、ふと一
本
(
ぽん
)
の
小松
(
こまつ
)
の
上
(
うへ
)
に
落
(
お
)
すと、
私
(
わたし
)
は
不思議
(
ふしぎ
)
なものでも
見付
(
みつ
)
けたやうに、
暫
(
しばら
)
くそれに
目
(
め
)
を
凝
(
こ
)
らした。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
しかも其の恋は
愈々
(
いよいよ
)
外れて行くだけだった。彼はいつか運命ということを考え詰めるようになった。彼はしきりに手相に
凝
(
こ
)
り出した。
ガルスワーシーの家
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それは恐ろしい犧牲ですが、その犧牲をさへ意識しないほど、代々の香七、香兵衞、香之助は忠義一途に
凝
(
こ
)
り固まつて居たのでせう。
銭形平次捕物控:224 五つの壺
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれども歴史的の研究を
凝
(
こ
)
らし、広く材料を集めて成った本でありまして、実にカーライルが生涯の血を絞って書いた本であります。
後世への最大遺物
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
▼ もっと見る
あまり人が
凝
(
こ
)
らないところが凝っていて、緊張している筈のところがだらんとゆるんでいる。あんまはくぐもった声でそう説明した。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
英語がお得意らしいが、語彙が片寄っていて、皿のことをメスギャー、ベッドのことをストレッチャーなどと
凝
(
こ
)
った呼びかたをする。
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
横手からそう遠くない
千屋
(
せんや
)
村あたりの
蓑
(
みの
)
や
深沓
(
ふかぐつ
)
で大変細工のよいのを見かけます。蓑はここでも襟飾りに
矢絣
(
やがすり
)
などを入れて
凝
(
こ
)
ります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
彼のよろい具足は、お抱えの
明珍
(
みょうちん
)
に図案させ、
縅
(
おどし
)
から彫金のかな具一ツまで、粋を
凝
(
こ
)
らしめたものである。それをいま彼は着ていた。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
千代田の大奥には、
硝子
(
びいどろ
)
を透かして見るような、澄明な秋の
陽
(
ひ
)
がにおって、お
長廊下
(
ながろうか
)
の隅すみに、水のような大気が
凝
(
こ
)
って動かない。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
貪欲界
(
どんよくかい
)
の雲は
凝
(
こ
)
りて
歩々
(
ほほ
)
に厚く
護
(
まも
)
り、
離恨天
(
りこんてん
)
の雨は随所
直
(
ただち
)
に
灑
(
そそ
)
ぐ、
一飛
(
いつぴ
)
一躍出でては人の肉を
啖
(
くら
)
ひ、半生半死
入
(
い
)
りては我と
膓
(
はらわた
)
を
劈
(
つんざ
)
く。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
夜
(
よ
)
が
深
(
ふ
)
けるに
隨
(
したが
)
つて
霜
(
しも
)
は三
人
(
にん
)
の
周圍
(
しうゐ
)
に
密接
(
みつせつ
)
して
凝
(
こ
)
らうとしつゝ
火
(
ひ
)
の
力
(
ちから
)
をすら
壓
(
お
)
しつけた。
彼等
(
かれら
)
は
冷
(
さ
)
めて
行
(
ゆ
)
く
火
(
ひ
)
に
段々
(
だん/\
)
と
筵
(
むしろ
)
を
近
(
ちか
)
づけた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それは十畳吊の
萌黄地
(
もえぎじ
)
の近江麻で、裾は浅黄
縮緬
(
ちりめん
)
、四隅の大房から吊手の
輪乳
(
わちち
)
に至るまで、
凝
(
こ
)
ったものであったから
主翁
(
ていしゅ
)
は気にいった。
沼田の蚊帳
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
じいっと
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らすと、大きな
蜘蛛
(
くも
)
が、脚をいっぱいに伸して、奇怪な
文身
(
いれずみ
)
か何かのように、兄の頬にへばりついてるではないか。
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
ほとんど生れてはじめて都会らしい都会に足を踏みこむのでしたから、少年にとっては一世一代の
凝
(
こ
)
った身なりであったわけです。
おしゃれ童子
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
いずれにしても空中の水蒸気が
凝
(
こ
)
って水滴となったもので実質においては雲と少しも異なっておらぬ。この滴が大きくなれば雨である。
歳時記新註
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
妾の寝台は隅から隅まで
印度
(
インド
)
風で
凝
(
こ
)
り固まっていた。白いのは天井裏のパンカアと、
海月
(
くらげ
)
色に光る
切子
(
きりこ
)
硝子のシャンデリヤだけだった。
ココナットの実
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
あんまり出たらめは困るけれども、必しも風格高きを要せず、名文であることを要せず、博識なるを要せず、
凝
(
こ
)
ることを要しない。
解嘲
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
装いを
凝
(
こ
)
らした二人は鋭い眼を中の庭にはしらせ、仕えの女たちのうごきにも心をときめかしたが、橘は依然姿さえ見せなかった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
青年は橋の一にたたずみて流れの
裾
(
すそ
)
を見
下
(
お
)
ろしぬ。
紅
(
くれない
)
に染め
出
(
い
)
でし
楓
(
かえで
)
の葉末に
凝
(
こ
)
る露は朝日を受けねど空の光を映して玉のごとし。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
子供の名をお染にするというくらいの
凝
(
こ
)
り方で、千代のことは鶴千代と
千代萩
(
せんだいはぎ
)
で呼び、汚い汚いといいながらも子供を可愛がった。
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
彼は優雅な口調とか
凝
(
こ
)
った趣味とか精練された文体などという、田舎にとってはまだごく新しいくだらないものをたくさん持っている。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
淺瀬の一を渡らずしては、いかなる道によりても再びこれを得るをえざりき(汝よく思ひを
凝
(
こ
)
らさばさとるなるべし) 八八—九〇
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
それから二三日すると、どういう相談がまとまったものか、お絹が装いを
凝
(
こ
)
らして、程遠からぬ同じ根岸の千隆寺へ通いはじめました。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして彼女はそのままの姿で、眠りついたブラウンのそばで、狭苦しい寝床に、眼を見開き息を
凝
(
こ
)
らしながら、夜通しじっとしていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼は停留所の前にある茶店で、写真版だの石版だのと、思い思いに意匠を
凝
(
こ
)
らした温泉場の広告絵を眺めながら、
昼食
(
ちゅうじき
)
を
認
(
した
)
ためた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何となれば我等は樹皮と葉とに過ぎずして、只我等がみづからの裡に持てる、大いなる死こそ、すべてのものの
凝
(
こ
)
つて成りし果實なれば。
リルケ年譜
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
自分では時々肩の
凝
(
こ
)
りを感ずる位だけど、医者の言によれば右肺に大分
浸潤
(
しんじゅん
)
があるらしい、そして激変を憂うるとのことである。
恩人
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
一同は怖しいながらに息の音を
凝
(
こ
)
らして見送っていると池の方向へは行かずに、広い野原を横切って、隣村の方へ過ぎて行った。
北の冬
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
四十二 いずれの望遠鏡にも、必ず一人は
縋
(
すが
)
り付く勇者がある。いよいよ衝突の時はどの様になるだろうと、その人々は皆
眸
(
ひとみ
)
を
凝
(
こ
)
らした。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
酒のしみるのが分らないほど、思いに
凝
(
こ
)
っていらっしゃるなら、ことのついでだ。今からひと押し、押しこんでいったらどうでごわすかよ
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それは、多分に彼の変態性の欲望が原因したのであったが、職業とする所の趣味道楽が、ひどく
凝
(
こ
)
り
固
(
かたま
)
ったことも一部の
因
(
いん
)
をなしていた。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ひどく祈祷に
凝
(
こ
)
っていて、聖母のお祭などにはことにやかましくて、その日にはわしまで自分の部屋から書斎へ追っぱらう始末なんだよ
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
刑法の条文などをあちらこちら参考にしながら、かなり工夫を
凝
(
こ
)
らしてくれたのである。その上に、彼はこんなことをいった。
島原心中
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
舞台の前に詰めかけて息を
凝
(
こ
)
らしている私たちは、銅鑼がボーンと鳴ると、芝居好きが大薩摩をきくときのように胸をときめかしたものだ。
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そして、彼は依然その場を離れないで、しかも、触れる吐息さえ怖れるもののように、じいっと耳を
凝
(
こ
)
らしはじめたのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
さう、さう、それで思ひ出すのは、私が肩が
凝
(
こ
)
つたと云ふと、「谷崎さんは大島を着てゐながら肩が凝つたなんて贅沢だわ」
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこで彼は目を
凝
(
こ
)
らした。何者かが起き上らうとしてゐる。何者かが、その樹に體を縛られたまま、起き上らうとしてゐる。
旗手クリストフ・リルケ抄
(旧字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
実家
(
さと
)
の方は其頃
両親
(
ふたおや
)
は亡くなり、番頭を妹に
娶
(
めあ
)
はせた養子が、浄瑠璃に
凝
(
こ
)
つた
揚句
(
あげく
)
店
(
みせ
)
を売払つて大坂へ遂転したので、
断絶同様
(
だんぜつどうやう
)
に成つて居る。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
今それをアニリン
染料
(
せんりょう
)
の紫に
比
(
くら
)
ぶれば、
地色
(
じいろ
)
が
派手
(
はで
)
でないから、
玄人
(
くろうと
)
が見れば
凝
(
こ
)
っているが、
素人
(
しろうと
)
の前では損をするわけだ。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
そのまま
凝
(
こ
)
って石となるという
希臘
(
ギリシャ
)
の怪物メズサの眼さえこれには及ぶまいと思われるほどに鬼気を含んでいるのであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この頃からチベットを
出
(
い
)
ずる時まで、即ち五月十五、六日頃までは、頭も痛まず肩も
凝
(
こ
)
らず充分勉強することが出来ました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
それから後には神官を望んで、白服を着て
烏帽子
(
えぼし
)
を被った時もありましたが、後にはまた禅は
茶味禅味
(
ちゃみぜんみ
)
だといって、禅に
凝
(
こ
)
った事もありました。
我が宗教観
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
我々は大都会が文明社会の
腫物
(
はれもの
)
だという言葉を想起せざるを得ない。最近の東京は確かに日本人の弱所欠点が
凝
(
こ
)
って一団となったものであった。
地異印象記
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
韻士は力を籠めて韻致を探り、哲学者は思ひを
凝
(
こ
)
らして析解を試むるも、迷宮の迷宮たるは始めより今に至るまで大に変るところはあらざらむ。
松島に於て芭蕉翁を読む
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
あるいはまた密室に
跪
(
ひざまず
)
き四辺人なきのときにおいて、ひそかにわが邦将来のことをば積誠を
凝
(
こ
)
らして上帝に祈る熱心なるキリスト教徒もあらん。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
そして、その教へを脱する頃になつて、千代子の方が信者になつた、が、かの女も今では
變挺
(
へんてこ
)
な
陰陽學
(
おんみやうがく
)
に
凝
(
こ
)
つてしまつた。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
家付の我儘娘、重二郎は学問に
凝
(
こ
)
って居りますから、
襖
(
ふすま
)
を隔てゝ
更
(
ふけ
)
るまで書見をいたします。お照は
夜着
(
よぎ
)
を
冠
(
かぶ
)
って向うを向いて寝てしまいます。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その入野の
薄
(
すすき
)
と
初尾花
(
はつおばな
)
と、いずれであろうかと云って、いずれの時かと続けたので、随分
煩
(
うるさ
)
いほどな技巧を
凝
(
こ
)
らしている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
壺
(
つぼ
)
、火入れの作り方に源氏は意匠を
凝
(
こ
)
らさせていたが、その壺へ諸所でできた中のすぐれた薫香を、試みた上で入れようと思っているのであった。
源氏物語:32 梅が枝
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
凝
常用漢字
中学
部首:⼎
16画
“凝”を含む語句
凝然
凝視
凝結
凝乎
混凝土
凝固
凝塊
凝滞
凝集
三上水凝刀自女
凝脂
凝灰岩
思凝
凝議
凝坐
煮凝
凝固土
凝如
凝着
唐太常凝菴
...