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長廊下
千代田の大奥には、
硝子を透かして見るような、澄明な秋の
陽がにおって、お
長廊下の隅すみに、水のような大気が
凝って動かない。
ガラガラガラと
妙な音があなたへ
馳けてゆくのに、
戸まどいをした目をそらすと、
見当らないはず、
長廊下を向こうの方へ自分の
槍が引きずられてゆく。
御前を
間三
間ばかりを
隔つて其の
御先払として、
袿、
紅の
袴で、
裾を長く
曳いて、
静々と
唯一人、
折から菊、
朱葉の
長廊下を渡つて来たのは
藤の
局であつた。