長廊下ながろうか)” の例文
千代田の大奥には、硝子びいどろを透かして見るような、澄明な秋のがにおって、お長廊下ながろうかの隅すみに、水のような大気がって動かない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ガラガラガラとみょうな音があなたへけてゆくのに、まどいをした目をそらすと、見当みあたらないはず、長廊下ながろうかを向こうの方へ自分のやりが引きずられてゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御前おんまえあわいげんばかりをへだつて其の御先払おさきばらいとして、うちぎくれないはかまで、すそを長くいて、静々しずしずただ一人、おりから菊、朱葉もみじ長廊下ながろうかを渡つて来たのはふじつぼねであつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
保吉は庫裡くりの玄関に新しいエナメルのくつぎ、日当りの長廊下ながろうかを畳ばかり新しい会葬者席へ通った。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
照彦てるひこ様は正三君の手を引いて長廊下ながろうかけだした。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その時、長廊下ながろうかをどたどたと、かけまろんできたひとりの弟子でしは、まっさおなおもてをぺたりと、そこへせて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と正三君は涙をふいて長廊下ながろうかをたどった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
石弥いしやが立ち、一同がちりかけると、そのとき、四十九けん長廊下ながろうかを、かけみだれてくる人々! 小谷おだにかたをまっ先に、つぼね侍女こしもとなど奥の者ばかり、めいめいさやをはらった薙刀なぎなたをかかえ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)