具合ぐあひ)” の例文
おれは昨夜ゆうべあの混血児あひのこの女がはうりこんだ、薔薇ばら百合ゆりの花を踏みながら、わざわざ玄関まで下りて行つて、電鈴の具合ぐあひを調べて見た。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ことに今日けふあたま具合ぐあひくないので、ぜんむかつても、御米およね何時いつものやうつとめるのが退儀たいぎであつた。つとめて失敗しつぱいするのはなほいやであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
水車みづぐるま川向かはむかふにあつてそのふるめかしいところ木立こだちしげみになかおほはれて案排あんばい蔦葛つたかづらまとふて具合ぐあひ少年心こどもごころにも面白おもしろ畫題ぐわだい心得こゝろえたのである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
足利時代あしかゞじだい寶篋印塔ほうきよういんとうの一部等ぶとうで、主墳しゆふんには古過ふるすぎたり、あたらぎたり。具合ぐあひ適合てきがふせぬので、またもや大失望だいしつばう
社の方でも山田やまだ平生へいぜい消息せうそくつまびらかにせんと具合ぐあひで、すき金港堂きんこうどうはかりごともちゐる所で、山田やまだまた硯友社けんいうしやであつたため金港堂きんこうどうへ心が動いたのです、当時たうじじつ憤慨ふんがいしたけれど
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「九十五ふん御座ございます」とひながら、それなり勝手口かつてぐちまはつて、ごそ/\下駄げたさがしてゐるところへ、うま具合ぐあひそとから小六ころくかへつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
書いてもあんな具合ぐあひには出来なからうと云ふ気がする。つまり僕にはあの小品が、現在の文壇の流行なぞに、とらはれて居らぬ所が面白いのである。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『なア水谷君みづたにくん素人しらうとはこれだからこまる。このどうもなになくツても、貝層かひそう具合ぐあひなんていね。うしてたゞつてても心持こゝろもちだねえ』とぼくふ。
その場所ばしよまつたくぼくつたのである、後背うしろがけからは雜木ざふきえだかさかさねておほひかゝり、まへかなひろよどみしづかうづまいながれてる。足場あしばはわざ/\つくつたやうおもはれるほど具合ぐあひい。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此間このあひだからあたま具合ぐあひがよくないため、寐付ねつきわるいのをにしてゐた御米およねは、時々とき/″\けて薄暗うすぐら部屋へやながめた。ほそとこうへせてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何故かと云ふと、お伽噺とぎばなしの中に出て来る事件は、いづれも不思議な事ばかりである。だからお伽噺の作者にとつては、どうも舞台を今にするのは具合ぐあひが悪い。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うした地主ぢぬしにばかり出會であはしてれば文句もんくいなどたはむれつゝ、其方そのはう發掘はつくつかゝつたが、此所こゝだ三千年せんねんらいのつかぬところであつて、貝層かひそう具合ぐあひ大變たいへんい。
そばにゐる男は脊中せなかを三四郎に向けてゐる。三四郎は心のうちに、此男がなにかの拍子に、どうかして此方こつちを向いて呉れゝばいと念じてゐた。うま具合ぐあひに其男は立つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それより竹藪の中にはひり、竹の皮のむけたのが、裏だけ日の具合ぐあひで光るのを見ると、其処そこらに蛞蝓なめくぢつてゐさうな、妙な無気味ぶきみさを感ずるものなり。(八月二十五日青根温泉にて)
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それでは其棄權そのきけんしたあと讓受ゆづりうけやうとて、けると、なるほど貝層かいそうは五六すんにしてきる。が、其下そのしたつち具合ぐあひだシキともえぬので、根氣好こんきよ掘下ほりさげてると、またあたらしき貝層かいそうがある。
小さい長火鉢ながひばちを買つたのもやはり僕の結婚した時である。これはたつた五円だつた。しかし抽斗ひきだし具合ぐあひなどは値段よりも上等に出来上つてゐる。僕は当時鎌倉のつじといふ処に住んでゐた。
身のまはり (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ちと具合ぐあひわるいので、三にん其所そこつてると、それとつた男子達をとこたちは、きこえよがしに高話たかばなしである。何處どこやつだか、んな大穴おほあな穿けやアがつた。今度こんど見附次第みつけしだい叩殺たゝきころしてやるといふ血腥ちなまぐさ鼻息はないき
一中節いつちうぶし師匠ししやうになることはとうとうおそうさんには出来なかつた。お宗さんはあの震災のために家も何も焼かれたとかいふことだつた。のみならず一時は頭の具合ぐあひも妙になつたとかいふことだつた。
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)