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黒檀
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こくたん
ふりがな文庫
“
黒檀
(
こくたん
)” の例文
と客の前から、いきなり座敷へ飛込んで、
突立状
(
つったちざま
)
に
指
(
ゆびさ
)
したのは、床の間
傍
(
わき
)
の、
欞子
(
れんじ
)
に据えた
黒檀
(
こくたん
)
の机の上の立派な卓上電話であった。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
紫檀
(
したん
)
黒檀
(
こくたん
)
の上等なる台のみには限る間敷、これも粗末なる杉板の台にてもよく、または
有合
(
ありあわ
)
せのガラクタ道具を利用したるもよく
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
この部屋にはまた、西側の壁に、巨大な
黒檀
(
こくたん
)
の時計が立ててあった。振子は鈍い重々しい、単調な響を刻んで、左右にゆれていた。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
あの
華美
(
はなやか
)
だった部屋だというのか。熊の毛皮を打ち掛けた
黒檀
(
こくたん
)
の
牀几
(
しょうぎ
)
はどこへ行った。夜昼絶えず燃えていた銀の香炉もないではないか。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
火事にも
逢
(
あ
)
わずに、だいぶ久しく立っている家と見えて、
頗
(
すこ
)
ぶる古びが附いていた。柱なんぞは
黒檀
(
こくたん
)
のように光っていた。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
聖母は
黒檀
(
こくたん
)
の衣を
纏
(
まと
)
ったまま、やはりその美しい
象牙
(
ぞうげ
)
の顔に、ある悪意を帯びた嘲笑を、永久に冷然と
湛
(
たた
)
えている。——
黒衣聖母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
オランダの敷物、ペルシャの壁飾り、インドの窓掛、ギヤマンの窓、
紫檀
(
したん
)
黒檀
(
こくたん
)
に
玉
(
ぎょく
)
を
彫
(
ちりば
)
めた調度、見る物一つとして珍奇でないものはありません。
銭形平次捕物控:029 江戸阿呆宮
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
蛮娘
(
ばんじょう
)
の皮膚、みな
鳶色
(
とびいろ
)
して
黒檀
(
こくたん
)
のように光っている。髪をさばき、花を挿し、腰には鳥の羽根や動物の
牙
(
きば
)
を飾っていた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは
黒檀
(
こくたん
)
で彫るので、珊瑚の赤色には
好
(
よ
)
くうつるので、外国人向きとしてなかなか評判よろしく
能
(
よ
)
く売れるという。
幕末維新懐古談:36 脂土や石膏に心を惹かれたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
と、女の肌に
頸
(
くび
)
からつるしてあった細い
黒檀
(
こくたん
)
の
珠数
(
じゅず
)
とその先にぶら下がっている銅貨のようなものがちらりと見えた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
さて、野原には
黒檀
(
こくたん
)
の五十円の仏壇を送りました。本当は金ピカなのだろうが、記念の品を納める心持にふさわしいような、但シ格に従ったよい品です。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
省三は眼が覚めたように
四辺
(
あたり
)
を見まわした。青みがかった燈の
燭
(
とも
)
った
室
(
へや
)
で
己
(
じぶん
)
は
黒檀
(
こくたん
)
の
卓
(
テーブル
)
を前にして坐り、その左側に女が
匂
(
におい
)
のあるような笑顔をしていた。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
室の正面には
椅子
(
いす
)
三脚とネパール製の白布の長方形の厚い敷物があり、欧州風の
黒檀
(
こくたん
)
の
茶棚
(
ちゃだな
)
の上にはネパール製の
女神
(
めがみ
)
の獅子に乗って居る白色の置物あり
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
黒檀
(
こくたん
)
色の海の上で、船の
檣灯
(
しょうとう
)
の光が、いくつも重なり合い、ちょうど夜光虫のようにユラユラとゆれている。
墓地展望亭
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
黒檀
(
こくたん
)
の森茂げきこの世の
涯
(
はて
)
の老国より来て、彼は長久の座を吾等の
傍
(
かたはら
)
に占めつ、教へて曰く『寂滅為楽』。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
おまけに
脣
(
くちびる
)
が薄く、顔色にも見事な
黒檀
(
こくたん
)
の様な艶が無いことは、此の男の醜さを一層甚だしいものにしていた。此の男は、恐らく、島一番の貧乏人であったろう。
南島譚:01 幸福
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
紫檀
(
したん
)
や、
黒檀
(
こくたん
)
や、
伽羅
(
きやら
)
、
肉桂
(
にくけい
)
なぞを送つてゐたものだが、その後、日本の鎖国の為に、帰国出来なくなつた日本人が、此の地に同化した様子で、墓碑の表なぞに
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
壁のくすんだ
掛毛氈
(
かけもうせん
)
、
黒檀
(
こくたん
)
のように真っ黒な床、歩くにつれてがたがた音をたてる幻影のような紋章付きの戦利品などが、自分の幼少のころから見慣れていたもの
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
あの、
黒檀
(
こくたん
)
で彫刻した鬼の面とでも云ったような感じのする外殻を噛み破ると中には真白な果肉があって、その周囲にはほのかな紫色がにじんでいたように覚えている。
郷土的味覚
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
其
(
その
)
一室の如きは
二抱
(
ふたかゝ
)
へもある四角な
黒檀
(
こくたん
)
質の柱が参
拾本
(
じつぽん
)
以上並び、其れに電灯の映つた
下
(
もと
)
で幾十の食事の客が大理石の卓を囲んで居る光景は
他
(
た
)
に見られない壮観であつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
黒檀
(
こくたん
)
であろう、黒い木で作った
脚長
(
あしなが
)
の机と腰掛けが置いてあるのだが、引き上げられた三人は、掛ける気もせずに、眼白押しに壁ぎわに立った。机を隔てて白い袋がすわる。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
大きな白い十字架像がやみのうちに鎖に下がっている。
黒檀
(
こくたん
)
の台の上に大きな象牙のキリスト像が裸のまま並んでいる。血にまみれてるというよりも血を流してるような趣である。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そのために硬く粘り気のある
黄楊
(
つげ
)
を用いるようになりましたが、産地によって硬軟の差があるようにも聞きました。また桜、
黒檀
(
こくたん
)
、
黒柿
(
くろがき
)
なども用いられ、
胡桃
(
くるみ
)
なども多く使われます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
けい
紫檀
(
したん
)
だとか
黒檀
(
こくたん
)
だとかいうものは、いつ迄たっても変らないものですね。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
黒檀
(
こくたん
)
まがひのちやぶ臺、眞赤なメリンスの座蒲團、ビーズ細工を飾りつけた電燈、壁に貼りつけた活動俳優のプロマイド、ペンキ畫の富士山の額、一生懸命に明るく華やかに飾りつけてゐながら
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
なにをしてるんだい、え? コオセットをはめてるところ………………靴下はもちろん
黒檀
(
こくたん
)
色がいいよ、だが門外不出、自分で自分を監禁することはできないって? いや待ちたまえ、すぐ行く。
職業婦人気質
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
建物は米国風。応接室の中央に据えられるのは支那
黒檀
(
こくたん
)
の机。椅子は
籐
(
とう
)
。飾棚はセセッションの組立。一方には禅僧の筆になる
五言絶句
(
ごごんぜっく
)
。一方には油絵裸婦の像。娘は人絹の洋装。息子は
久留米絣
(
くるめがすり
)
。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
夜更
(
よふ
)
くるまで
黒檀
(
こくたん
)
の卓に物書けば
幸福
(
しあはせ
)
多きかな。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
そ ┃ みきは黒くて
黒檀
(
こくたん
)
まがひ
『春と修羅』
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
黄金の笛と
黒檀
(
こくたん
)
の笛とを持てる
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
姫はこのとき
黒檀
(
こくたん
)
の
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
黒檀
(
こくたん
)
の森わけて
信姫
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
唯
(
たゞ
)
見
(
み
)
る、
日本橋
(
にほんばし
)
檜物町
(
ひものちやう
)
藤村
(
ふぢむら
)
の
二十七疊
(
にじふしちでふ
)
の
大廣間
(
おほひろま
)
、
黒檀
(
こくたん
)
の
大卓
(
だいたく
)
のまはりに、
淺葱絽
(
あさぎろ
)
の
座蒲團
(
ざぶとん
)
を
涼
(
すゞ
)
しく
配
(
くば
)
らせて、
一人
(
ひとり
)
第一番
(
だいいちばん
)
に
莊重
(
さうちよう
)
に
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
る。
九九九会小記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
バビロンの淫婦は
爾
(
なんぢ
)
の
妃
(
ひ
)
、
七頭
(
しちとう
)
の毒竜は爾の馬、火と煙と
硫黄
(
いわう
)
とは
汝
(
なんぢ
)
が
黒檀
(
こくたん
)
の
宝座
(
みくら
)
の前に、不断の
香煙
(
かうえん
)
を
上
(
のぼ
)
らしめん。
LOS CAPRICHOS
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「
黒い河
(
リオ・ネグロ
)
」には
浮遊動物
(
プランクトン
)
も魚類も絶対に棲息しない。鳥も蚊もその上は飛ばないのである。この
黒檀
(
こくたん
)
色をした陰鬱な河。薄い霧。死滅した熔岩。悲しげな黄昏の色。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
小池はそう云いながら、部屋の隅に立てかけてあった
黒檀
(
こくたん
)
のステッキを持って来て、二人の前にさし出した。見れば、その握りの部分全体に、厚紙を丸くして
被
(
かぶ
)
せてある。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
満月の光を反射して閃くもの
凄
(
すご
)
い輝きを発していなかったら、
黒檀
(
こくたん
)
とも見まがうほどでした。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
或
(
ある
)
日
其
(
その
)
隣の何とか云ふレスタウランで澤木さん達と晩餐を一緒にしたが、
其処
(
そこ
)
の建築は珍しく一切木造で出来て居て、用材は各館共何と名を云ふのか、
黒檀
(
こくたん
)
質の立派な木である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
黒檀
(
こくたん
)
の
木地
(
きじ
)
に青貝の
象嵌
(
ぞうがん
)
がしてあるだけで、大して高価な印籠とも見えないが、夜の道に捨てられてあると、その青貝模様の光が、
蛍
(
ほたる
)
のかたまりが落ちているように、ひどく
妖美
(
ようび
)
に
燦々
(
きらきら
)
と見える。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人
(
ふたり
)
しのびて
黒檀
(
こくたん
)
の
春鳥集
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
垂
(
た
)
れ
布
(
ぬの
)
を掲げた部屋の中には大きい
黒檀
(
こくたん
)
の
円卓
(
テエブル
)
に、美しい
支那
(
しな
)
の少女が
一人
(
ひとり
)
、
白衣
(
びやくえ
)
の
両肘
(
りやうひぢ
)
をもたせてゐた。
わが散文詩
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と翁が呼ぶと、
栗鼠
(
りす
)
よ、栗鼠よ、古栗鼠の小栗鼠が、樹の根の、
黒檀
(
こくたん
)
のごとくに
光沢
(
つや
)
あって、木目は、蘭を浮彫にしたようなのを、前脚で抱えて、ひょんと出た。
貝の穴に河童の居る事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼の言葉の超人間的な力にまるで
呪文
(
じゅもん
)
の力でもひそんでいたかのように——彼の差したその大きい古風な扉の鏡板は、たちまち、その重々しい
黒檀
(
こくたん
)
の口をゆっくりうしろの方へと開いた。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
入海
(
いりうみ
)
の
翡翠
(
ひすゐ
)
の水の
障
(
しやう
)
として
黒檀
(
こくたん
)
を立つ老鉄の山
満蒙遊記:附 満蒙の歌
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
縁
(
へり
)
に金を入れた白い
天井
(
てんじょう
)
、赤いモロッコ皮の
椅子
(
いす
)
や長椅子、壁に
懸
(
か
)
かっているナポレオン一世の肖像画、
彫刻
(
ほり
)
のある
黒檀
(
こくたん
)
の大きな書棚、鏡のついた大理石の
煖炉
(
だんろ
)
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
木地の古びたのが
黒檀
(
こくたん
)
に見える、
卓子台
(
ちゃぶだい
)
にさしむかって、小村さんは襟を合せた。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
爽
(
さわやか
)
なるに驚きて、はかばかしく答もなさず、茫然としてただ、その
黒檀
(
こくたん
)
の如く、つややかなる
面
(
おもて
)
を
目戍
(
みまも
)
り居しに、彼、たちまちわが肩を
抱
(
いだ
)
いて、悲しげに囁きけるは
るしへる
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
瀧
(
たき
)
のその
或
(
ある
)
ものは、
雲
(
くも
)
にすぼめた
瑪瑙
(
めなう
)
の
大蛇目
(
おほじやのめ
)
の
傘
(
からかさ
)
に、
激流
(
げきりう
)
を
絞
(
しぼ
)
つて
落
(
お
)
ちた。また
或
(
ある
)
ものは、
玉川
(
たまがは
)
の
布
(
ぬの
)
を
繋
(
つな
)
いで、
中空
(
なかぞら
)
に
細
(
ほそ
)
く
掛
(
か
)
かつた。その
或
(
ある
)
ものは、
黒檀
(
こくたん
)
の
火
(
ひ
)
の
見
(
み
)
櫓
(
やぐら
)
に、
星
(
ほし
)
の
泡
(
あわ
)
を
漲
(
みなぎ
)
らせた。
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そうして今度はお栄にもわかるように、この
黒檀
(
こくたん
)
の麻利耶観音へ、こんな
願
(
がん
)
をかけ始めました。
黒衣聖母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
第一これは顔を除いて、他はことごとく
黒檀
(
こくたん
)
を刻んだ、一尺ばかりの立像である。のみならず
頸
(
くび
)
のまわりへ懸けた
十字架形
(
じゅうじかがた
)
の
瓔珞
(
ようらく
)
も、金と青貝とを
象嵌
(
ぞうがん
)
した、極めて精巧な
細工
(
さいく
)
らしい。
黒衣聖母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“黒檀(コクタン)”の解説
コクタン(漢字表記:黒檀・烏木、英名:Ebony、エボニー)は、カキノキ科カキノキ属の熱帯性常緑高木の数種の総称。
インドやスリランカなどの南アジアからアフリカに広く分布している。
木材は古代から世界各国で家具や、弦楽器などに使用され、セイロン・エボニーは唐木のひとつで、代表的な銘木である。
(出典:Wikipedia)
黒
常用漢字
小2
部首:⿊
11画
檀
漢検準1級
部首:⽊
17画
“黒檀”で始まる語句
黒檀柄
黒檀彫
黒檀縁
黒檀細工