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鬘
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かつら
ふりがな文庫
“
鬘
(
かつら
)” の例文
鬘
(
かつら
)
ならではと
見
(
み
)
ゆるまでに
結做
(
ゆひな
)
したる
圓髷
(
まるまげ
)
の
漆
(
うるし
)
の
如
(
ごと
)
きに、
珊瑚
(
さんご
)
の
六分玉
(
ろくぶだま
)
の
後插
(
あとざし
)
を
點
(
てん
)
じたれば、
更
(
さら
)
に
白襟
(
しろえり
)
の
冷豔
(
れいえん
)
、
物
(
もの
)
の
類
(
たと
)
ふべき
無
(
な
)
く——
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼は
確
(
たしか
)
に老人ではない、変装しているのだ。そう思って見ると、いかにも
巧
(
たくみ
)
に地の毛のように見せかけてはあるが、どうも
鬘
(
かつら
)
らしい。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
かく判明せる原因は、
該
(
がい
)
要保護人を署内(目白署)に収容せる後に至りて、該人物が巧妙なる
鬘
(
かつら
)
を
被
(
かむ
)
り居たることを発見せるに
因
(
よ
)
る。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
出し
半合羽
(
はんがっぱ
)
日和下駄
(
ひよりげた
)
にて
浅草山
(
あさくさやま
)
の
宿辺
(
しゅくへん
)
の
住居
(
すまい
)
より木挽町楽屋へ通ひ衣裳
鬘
(
かつら
)
大小
(
だいしょう
)
の道具帳を書きまた番附表看板
等
(
とう
)
の下絵を綺麗に書く。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
纔
(
わづか
)
に六畳と二畳とに過ぎない部屋は三面の鏡、二脚の椅子、芝居の衣裳、
鬘
(
かつら
)
、小道具、
其
(
それ
)
から青
枯
(
が
)
れた
沢山
(
たくさん
)
の
花環
(
はなわ
)
とで
埋
(
うづ
)
まつて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
▼ もっと見る
「芝居氣があるし、
女形
(
をやま
)
になれる男だよ。恐ろしくニチヤニチヤして一種うつたうしい女形のせゐさ。
髷
(
まげ
)
が大きかつたのは
鬘
(
かつら
)
のためだ」
銭形平次捕物控:278 苫三七の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
長い髪の毛(無論
鬘
(
かつら
)
に相違ない)で顔を隠していた為、今の今まで気づかなかったが、この乞食こそ、外ならぬゴリラ男であった。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
鬘
(
かつら
)
をためしてるのだった。衣裳方と一人の床屋とがそばにいた。彼女は巻毛をも少し高くしたいといって、床屋に種々注文をしていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
鬘
(
かつら
)
の上から水などを何杯浴びたって、ちっとも同情は起らない。あれを真面目に見ているのは、虚偽の因襲に
囚
(
とら
)
われた愚かな見物である。
明治座の所感を虚子君に問れて
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
腰元は
振袖
(
ふりそで
)
の
白無垢
(
しろむく
)
の
裾
(
すそ
)
をひいて、
水浅黄
(
みずあさぎ
)
ちりめんの
扱帯
(
しごき
)
を前にたらして、縄にかかって、島田の
鬘
(
かつら
)
を重そうに首を垂れていた。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
露八は、どこで工面して来たのか、坊主頭に
大髻
(
おおたぶさ
)
の
鬘
(
かつら
)
をかぶって、大小をたばさみ、白緒の草履で、りゅうとしてやって来たのであった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
畳紙
(
たとう
)
の包を取り
揃
(
そろ
)
えて
衣裳行李
(
いしょうごうり
)
に入れ、それと、
鬘
(
かつら
)
の箱と、あの時の
傘
(
かさ
)
とを自動車に積んで出掛けたあと、折よく二人きりになったので
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
白い著物、白い
鬘
(
かつら
)
、手は足は、すべて旅の
装束
(
いでたち
)
である。頭より上に出た杖をついて——九柱。この坦に来て、森の前に立つた。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
私は、彼が日ましに薄くなる頭髪を気にしていたことを思い出したが、あいにく武士の
鬘
(
かつら
)
をつけていたので、その現状はよくわからなかった。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
地下室から戻ってきたジョオジは、頭から変装用の
赭毛
(
あかげ
)
の
鬘
(
かつら
)
を
脱
(
と
)
り、顔に塗った
白粉
(
おしろい
)
をおとした、紛れもない龍介である。
黒襟飾組の魔手
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
なぜならば、いったん、斬られて倒れた人間が、暗に紛れて
這
(
は
)
い出してまた
鬘
(
かつら
)
を
冠
(
かぶ
)
り直し、太刀取りのべて、やあやあと向って来るからである。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「別の箱にあり、程よき巻き髪の
鬘
(
かつら
)
、緑色の眼鏡、時計の飾り玉、および、綿にくるみたる長さ一寸の小さな羽軸二本。」
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼は同行のオランダ人と共に、帽子をかぶること、話しながら室内を歩くこと、また彼らが十七世紀風の
鬘
(
かつら
)
を脱いで見せることなぞを命ぜられた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これまで見たことのある厭な意地くねの悪い顔をいろいろ取りだして、白髪の
鬘
(
かつら
)
の下へ
嵌
(
は
)
めて、鼻へ
痘痕
(
あばた
)
を振ってみる。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
幕の外に出ている玉乗りの女の異様な
扮装
(
ふんそう
)
や、大きい女の
鬘
(
かつら
)
を
冠
(
かぶ
)
った
猿
(
さる
)
の顔にも、釣り込まれるようなことはなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
奔流、ごろつきのような波の音が僕に英国少女メリーの靴の
踵
(
かかと
)
と、乳房に
鬘
(
かつら
)
をかむったような女主人を思い出させた。
飛行機から墜ちるまで
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
ヴェルサイユ宮殿の王子として、巻毛の
鬘
(
かつら
)
をかぶり、
金色燦然
(
こんじきさんぜん
)
たる着物に白タイツ、装飾靴という扮装のままだった。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
下手
(
しもて
)
に涎くりとほかに三人の子供が机にむかっている。いずれも日本風の
鬘
(
かつら
)
をかぶって、日本の衣裳を着ています。
米国の松王劇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ブロンドの
鬘
(
かつら
)
をつけた少女は要するに綣村だと、わたしはすぐ意識をとりもどしましたが、この東京の一隅
ハムレット
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
裁判官
(
さいばんくわん
)
は
序
(
つひ
)
でに、
王樣
(
わうさま
)
がなされました。
王樣
(
わうさま
)
は
鬘
(
かつら
)
の
上
(
うへ
)
に
其
(
そ
)
の
冠
(
かんむり
)
を
戴
(
いたゞ
)
き、
如何
(
いか
)
にも
不愉快
(
ふゆくわい
)
さうに
見
(
み
)
えました、それのみならず、それは
少
(
すこ
)
しも
似合
(
にあ
)
ひませんでした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
丁度油をコテコテ
塗
(
なす
)
って
鬘
(
かつら
)
のように美くしく
結上
(
ゆいあ
)
げた
束髪
(
そくはつ
)
が如何にも日本臭いと同様の臭味があった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
と云うのは、それが何あろうか、巧妙な
鬘
(
かつら
)
であって、下は半白の、疎らな
短
(
みじ
)
か
毛
(
げ
)
であった。そうして、屍体の手に、一枚の揉みくちゃな紙が握られていたのである。
地虫
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
どす黒く腐敗した瓜に
鬘
(
かつら
)
を被せるとこんな首になろうか、顎にも眉にも毛らしいものは見当たらないのに、頭髪だけは黒々と厚味をもったのが、毎日油をつけるのか
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
緑牡丹はその支那鞄の一つに、
鬘
(
かつら
)
だけは脱いでいたが、
妓女蘇三
(
ぎじょそさん
)
に扮した儘、丁度茶を飲んで居る所だった。舞台では
細面
(
ほそおもて
)
に見えた顔も、今見れば存外
華奢
(
きゃしゃ
)
ではない。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
禿頭以外の何物でも、断じてこれある
筈
(
はず
)
はない。彼は
鬘
(
かつら
)
を以て之の隠蔽をなしおるのである。ああこれ実に何たる滑稽! 然り何たる滑稽である。ああ何たる滑稽である。
風博士
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
その貴様の顔が入用なんだよ。というのは、貴様に白い
鬘
(
かつら
)
をきせて、
胡麻塩
(
ごましお
)
の口髭と頤髭とを
稀有の犯罪
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
鬘
(
かつら
)
を
被
(
き
)
たるやうに
梳
(
くしけづ
)
りたりし彼の髪は
棕櫚箒
(
しゆろぼうき
)
の如く乱れて、
環
(
かん
)
の
隻
(
かたかた
)
捥
(
も
)
げたる羽織の
紐
(
ひも
)
は、
手長猿
(
てながざる
)
の月を
捉
(
とら
)
へんとする
状
(
かたち
)
して
揺曳
(
ぶらぶら
)
と
垂
(
さが
)
れり。主は見るよりさも
慌
(
あわ
)
てたる顔して
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
「
鬘
(
かつら
)
を着けていたひにゃア、切り髪なんかわかるまいに、どうしてお前は探ったな?」「いえ、そいつはこうなので、見物の中に見巧者がいて、噂をしたのでございますよ」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ストリンドベリイなども、ときどき熱演のあまり
鬘
(
かつら
)
を落して、それでも平気で
大童
(
おおわらわ
)
である。
女人創造
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ぽっと
鬘
(
かつら
)
をかぶった故人菊五郎の与次郎が、本物の猿を廻わしあぐんで、長い
杖
(
つえ
)
で、それ立つのだ、それ
辞義
(
じぎ
)
だと、
己
(
わ
)
が物好きから舞台面の
大切
(
たいせつ
)
な情味を散々に
打壊
(
ぶちこわ
)
して居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
鬘
(
かつら
)
なども本式のを
損料
(
そんりょう
)
で借り、芝居の衣裳付や床山が出張してきていて、当日私が本陣である大文字屋へ行ったときには、その庭先に助六、権太、法界坊、お嬢吉三、定九郎など
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
こんなに沢山の新しい生命のある中に、野原や牧場のあちこちで、もう種になってしまったたんぽぽの白い
鬘
(
かつら
)
を見ると、何だか変でもあり、ひどくいたましい気もするのであった。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
毎日喧嘩ばかりしてゐるといひながら、矢張り亭主がくると
鬘
(
かつら
)
を直してやつたり、
扮
(
つく
)
つた顏を見直してやつたりしてゐた。今度の給金の事でよく小山と
紛
(
もつ
)
れあつてゐたのもこの早子だつた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
ちぢれた半白の頭髪が、
鬘
(
かつら
)
でも被っているようである。原田は坐りなおした。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
明治座の舞台稽古は、衣裳や
鬘
(
かつら
)
の都合で、
甚
(
ひど
)
く遅くなつたのです。私は其の間、早く稽古を済して、帰りたいと思つてゐました。それで
漸
(
やうや
)
く稽古が済んだのは、もう五日の午前二時頃でした。
忘れ難きことども
(新字旧仮名)
/
松井須磨子
(著)
若い者は珍らしい一方で、散髪になりたくても、老人などの思惑を兼ねて、散髪の
鬘
(
かつら
)
を
髷
(
まげ
)
の上に冠ったのなどがありますし、当時の床屋の表には、切った髷を
幾
(
いく
)
つも吊してあったのは奇観だった。
江戸か東京か
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
夫
(
それ
)
は何かと云うに
鬘
(
かつら
)
です鬘や
仮面
(
めん
)
には随分逆毛が沢山交ッて居ます
夫
(
それ
)
だから私しは若しや茶番師が催おしの帰りとか或は又
仮粧蹈舞
(
ファンシーボール
)
に出た人が殺したでは無いかと一時は斯も疑ッて見ました併し大隈伯が強硬主義を
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
胴に
針金
(
はりがね
)
、お
面
(
めん
)
に
鬘
(
かつら
)
、寄せて集めて兒が出來る。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と、
床山
(
とこやま
)
に
鬘
(
かつら
)
をはずさせながらたずねると
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「金髪をとれ、その
鬘
(
かつら
)
だ」
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
口上言ひの玉六は、一寸法師といふほどではありませんが、ひどく小柄な男で福助
鬘
(
かつら
)
を冠つて、これも
裃
(
かみしも
)
を着けてをりました。
銭形平次捕物控:118 吹矢の紅
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
とはいえ当年の面影はなく、つい
少時前
(
すこしまえ
)
舞台で見た艶麗優雅さは、衣装や
鬘
(
かつら
)
とともに取片附けられてしまって、やや
権高
(
けんだか
)
い令夫人ぶりであった。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
一着の古い黒の背広服、黒
天鵞絨
(
ビロード
)
のソフト帽、その横に白紙をのべて、上に黒眼鏡と、長髪の
鬘
(
かつら
)
と、つけ髭が並べてある。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
さればこの
中
(
うち
)
の一を改むれば
忽
(
たちまち
)
全体を
毀損
(
きそん
)
するに終る。俳優にして江戸演劇の
鬘
(
かつら
)
をつけ西洋近世風の背景中に立つが如きは最も
嗤
(
わら
)
ふべき事とす。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
其れは別段驚くべき事でもないが、
其
(
その
)
床屋の
店飾棚
(
ヸトラン
)
が
悉
(
ことごと
)
く
鬘
(
かつら
)
と
附髷
(
つけまげ
)
、前髪の
添毛
(
そへげ
)
で満たされて居るのを見ると、
其
(
それ
)
等の需要の多い事が
先
(
ま
)
づ
解
(
わか
)
る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
鬘
漢検1級
部首:⾽
21画
“鬘”を含む語句
鬘下地
玉鬘
勝鬘経
花鬘
百日鬘
黒御鬘
目鬘
御鬘
鬘下
華鬘
鬘師
花見鬘
華鬘草
鬘髭
鬘臺
鬘桶
鬘捻
丁髷鬘
鬘屋
鬘台
...