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額
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ひたい
ふりがな文庫
“
額
(
ひたい
)” の例文
それが私の方へじろりと、何か話したそうな
唇
(
くちびる
)
を動かしかけて、またすぐ目をそらした。ハンケチでしきりに
額
(
ひたい
)
の汗をぬぐっている。
浴槽
(新字新仮名)
/
大坪砂男
(著)
とつぜん、氷のように冷たい手が私の
額
(
ひたい
)
にさわって、いらいらしたような早口の声が耳もとで「起きろ!」という言葉をささやいた。
早すぎる埋葬
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
もし疑わしくなると、
額
(
ひたい
)
が曇って来る。考えた事の不充分のために、うまく行かないからで、また新しい工夫をしなければならない。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
母はお豊と
額
(
ひたい
)
を突きよせて密談の末に、ようやく案じ出したのがお直の家出という狂言の筋書で、お力には母からよく云いふくめて
半七捕物帳:35 半七先生
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「義さん」と
呼吸
(
いき
)
せわしく、お香は一声呼び
懸
(
か
)
けて、巡査の胸に
額
(
ひたい
)
を
埋
(
うず
)
めわれをも人をも忘れしごとく、ひしとばかりに
縋
(
すが
)
り着きぬ。
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
「滝川とて、うつけじゃない。おそらく一益、あの禿げ上がった
額
(
ひたい
)
をたたいて、ちと早かったと、
臍
(
ほぞ
)
を噛んでおるにちがいないわさ」
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
長い細やかな
房々
(
ふさふさ
)
した髪に縁取られてる
円
(
まる
)
い
額
(
ひたい
)
、そしてその髪は、縮れもせずにただ軽いゆるやかな波動をなして、顔にたれていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
打見たよりも山は高く、思うたよりも路は急に、靴の足は滑りがちで、約十五分を費やして上り果てた時は、
額
(
ひたい
)
も
背
(
せな
)
も
汗
(
あせ
)
ばんで居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
兄
(
あに
)
は、なにごとがあって、
呼
(
よ
)
び
止
(
と
)
めたのだろうと
思
(
おも
)
って、
額
(
ひたい
)
ぎわに
流
(
なが
)
れる
汗
(
あせ
)
をふいて、おじいさんの
方
(
ほう
)
を
向
(
む
)
いて
立
(
た
)
ち
止
(
ど
)
まりました。
村の兄弟
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
遊んでいる
金槌
(
かなづち
)
をこっそりにぎったりすると、
鍛冶屋
(
かじや
)
のおやじは
油汗
(
あぶらあせ
)
で黒く光っている
額
(
ひたい
)
にけわしいしわをつくっていうのだった。
空気ポンプ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
額
(
ひたい
)
がいけない。新聞では、本の広告文が一ばんたのしい。一字一行で、百円、二百円と広告料とられるのだろうから、皆、一生懸命だ。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
まっ白な大きな顔の、
額
(
ひたい
)
のまん中に、目が一つしかないのです。そして、まっかなくちびるをひらいて、ケラケラと笑っているのです。
鉄人Q
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
女は
前髪
(
まえがみ
)
を割った
額
(
ひたい
)
に、かすかな憂鬱の色を浮べた。が、すぐにまた元の通り、快活な微笑を取り戻すと、
悪戯
(
いたずら
)
そうな眼つきになった。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして、彼等がだんだん近づいて来るのを見ると、彼等のうちの二人は、その
額
(
ひたい
)
のまん中に、
空
(
から
)
っぽの
眼窩
(
めのあな
)
だけがあいているのでした。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
額
(
ひたい
)
の真中の、永い間掻き消されていた、活動的な鋭い知能の
徴
(
しるし
)
が、彼にかぶさっていた黒い霧を押し分けてだんだんと現れて来た。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
顔は
下膨
(
しもぶくれ
)
の
瓜実形
(
うりざねがた
)
で、豊かに落ちつきを見せているに引き
易
(
か
)
えて、
額
(
ひたい
)
は
狭苦
(
せまくる
)
しくも、こせついて、いわゆる
富士額
(
ふじびたい
)
の
俗臭
(
ぞくしゅう
)
を帯びている。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「どうも申訳が
御在
(
ござい
)
ません。どうぞ御勘弁を……。」とばかり前髪から滑り落ちる
簪
(
かんざし
)
もそのままにひたすら
額
(
ひたい
)
を畳へ
摺付
(
すりつ
)
けていた。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
他処行
(
よそゆ
)
きの着物を着たり、半分裸だったり、笑ったり、
額
(
ひたい
)
に八の字を寄せたり、種々様々な姿で、立派な背景の中に
納
(
おさ
)
まっている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
そして、
額
(
ひたい
)
の
脂汗
(
あぶらあせ
)
を拭きながら、見るともなしに
後
(
うしろ
)
の客席に眼をやった。左側の二番の客席に、
痩
(
や
)
せぎすな一人の紳士が腰をかけていた。
飛行機に乗る怪しい紳士
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
黒みがかった髪がゆったりと巻き上がりながら、白い
額
(
ひたい
)
を左右から
眉
(
まゆ
)
の上まで隠していた。目はスペイン人らしく大きく、
頬
(
ほお
)
は赤かった。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
すっかり
禿
(
は
)
げ上った白髪を総髪に垂らして、
額
(
ひたい
)
に年の波、鼻
隆
(
たか
)
く、
褪
(
あ
)
せた
唇元
(
くちもと
)
に、和らぎのある、上品な、六十あまりの老人だ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
その日にやけた年とった
顔
(
かお
)
には、いつにない
若々
(
わかわか
)
しい元気がうかんでいました。
彼
(
かれ
)
は
額
(
ひたい
)
に
汗
(
あせ
)
をにじましながら、つよい
調子
(
ちょうし
)
でいいました。
活人形
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
哀れを止むる馬士歌の箱根八里も山を貫き
渓
(
たに
)
をかける汽車なれば
関守
(
せきもり
)
の前に
額
(
ひたい
)
地にすりつくる面倒もなければ煙草一服の間に山北につく。
東上記
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
殿下は二十七歳、
白晳
(
はくせき
)
の
額
(
ひたい
)
、亜麻色の髪涼やかに、長身の
眼許
(
めもと
)
凜々
(
りり
)
しい独身の容姿は、全
丁抹
(
デンマーク
)
乙女の
憧
(
あこが
)
れの対象でいらせられる。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
豊雄は、
額
(
ひたい
)
を地にすりつけるようにして、これまでのできごとをはじめからものがたり、「今後もどうか
生命
(
いのち
)
の助かるようにして下さい」
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
『
左様
(
さよう
)
さ
左様
(
さよう
)
さそれはそうだ。』と、イワン、デミトリチは
額
(
ひたい
)
の
汗
(
あせ
)
を
拭
(
ふ
)
く、『それはそうだ、しかし
私
(
わたし
)
はどうしたらよかろう。』
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
神経性の
痙攣
(
けいれん
)
が下唇の端をぴくぴくと引っ
攣
(
つ
)
らせ、くしゃくしゃになった
縮
(
ちぢ
)
れ
髪
(
げ
)
が、まるで
鬣
(
たてがみ
)
のように
額
(
ひたい
)
に垂れかかっている。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
野幇間
(
のだいこ
)
を稼業のようにしている
巴屋
(
ともえや
)
七平は、血のような赤酒を
注
(
つ
)
がせて、少し
光沢
(
つや
)
のよくなった
額
(
ひたい
)
を、ピタピタと叩くのです。
銭形平次捕物控:091 笑い茸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
少年のくせに
額
(
ひたい
)
が
禿
(
は
)
げあがっており、背は低いが、顔は大人のような子供で、いつも皆とは遊ばずひとりで考えごとをしているのが好きで
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
豚も、
額
(
ひたい
)
をガンとやられて、首をごそごそとやられたら、手や足や、身体全体を、ひくひくと
顫
(
ふる
)
え動かして苦しむだろう……と彼は思った。
首を失った蜻蛉
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
すると、及川はぐっと口を結んだが、
額
(
ひたい
)
の
小鬢
(
こびん
)
には興奮の血管が太く二三筋現れました。けれどやがてその興奮をも強く圧えてから云った。
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして、その白く抜けた
額
(
ひたい
)
に、軽がると降りかかるウエーヴされた断髪は、まるで海草のように
生々
(
なまなま
)
しく、うつくしく見えた。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
と言って平野老人は、再び手許に戻って来た名刀を
貪
(
むさぼ
)
り見ると、神尾主膳もまた老人と
額
(
ひたい
)
を突き合せるようにして刀ばかりを見ていました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
中部では
八丈島
(
はちじょうじま
)
と、北は北海道の前からの住民とのあいだに、
負紐
(
おいひも
)
を
額
(
ひたい
)
にあてて背負うものがあって、これも女の運搬に多く行われている。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼は
額
(
ひたい
)
から汗が流れた。彼は荒々しい目つきを二つの燭台の上に据えた。その間にも彼のうちで語る声はやまなかった。声は続けて言った。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
小畑の
球
(
たま
)
はよく飛んだ。引きかえて、清三の球には力がなかった。二三度
勝負
(
しょうぶ
)
があった。清三の
額
(
ひたい
)
には汗が流れた。心臓の
鼓動
(
こどう
)
も高かった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
豊かの頬、二重にくくれた頤、本来の老武士の人相は、円満であり寛容であるのに、
額
(
ひたい
)
を
癇癖
(
かんぺき
)
の筋でうねらせ、眼を怒りに血ばしらせている。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
炭火
(
すみび
)
はチラチラ青い
焔
(
ほのお
)
を出し、
窓
(
まど
)
ガラスからはうるんだ白い雲が、
額
(
ひたい
)
もかっと
痛
(
いた
)
いようなまっ
青
(
さお
)
なそらをあてなく
流
(
なが
)
れていくのが見えました。
耕耘部の時計
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それから、こんどはお姫さまの
額
(
ひたい
)
のことをいって、それは、このうえなくりっぱな広間と絵のある雪の山だといいました。
ひこうかばん
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
侍女は上眼づかひに「
御館
(
みたち
)
に残らるるは上の姫様だけ」と答へる。「ジェイン様か、それは。」碩学の肉づきのいい
額
(
ひたい
)
を、かすかに
若皺
(
わかじわ
)
が寄る。
ジェイン・グレイ遺文
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
彼はそのまま右手をソット
額
(
ひたい
)
に当てた。その
掌
(
てのひら
)
で近眼鏡の上を
蔽
(
おお
)
うて、何事かを祈るように、頭をガックリとうなだれた。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ぐっと
伸
(
の
)
ばした
松
(
まつ
)
五
郎
(
ろう
)
の
手先
(
てさき
)
へ、
春重
(
はるしげ
)
は
仰々
(
ぎょうぎょう
)
しく
糠袋
(
ぬかぶくろ
)
を
突出
(
つきだ
)
したが、さて
暫
(
しばら
)
くすると、
再
(
ふたた
)
び
取
(
と
)
っておのが
額
(
ひたい
)
へ
押
(
お
)
し
当
(
あ
)
てた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「ああ、兄よ。」と香取はいうと、彼女の悲歎の
額
(
ひたい
)
は重く数本の忍竹へ傾きかかり、そうして、再び地の上へ崩れ伏した。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
のみならずこのせわしい選挙さわぎの最中に阪井の息子が柳の息子の
額
(
ひたい
)
をわったというので、それを政党争いの意味にいいふらすものもあった。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
つやつやした
髪
(
かみ
)
を七三にわけて、青白い
額
(
ひたい
)
にたらし、きちんと背広を着こんだところは、どう見ても小都会のサラリーマンとしか思えなかった。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
こう言いながら長十郎は忠利の足をそっと持ち上げて、自分の
額
(
ひたい
)
に押し当てて戴いた。目には涙が一ぱい浮かんでいた。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
蒼白い広い
額
(
ひたい
)
のしたに煙ったような黒い眼があって、熱情と沈鬱をあらわしている。頬は丁寧に剃られて子供の頬のようにつやつやと光っていた。
キャラコさん:02 雪の山小屋
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
チチアネルロ
疾
(
と
)
うに、夜明前に——その時君等はまだ
寝
(
ね
)
ていたが——そっと門の外へ出て往った。青い
額
(
ひたい
)
へ愛の接吻、その脣へ
悋気
(
りんき
)
の言葉……。
チチアンの死
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
ホームズはしばらくの間無言のまま、
額
(
ひたい
)
に両手をあてて、じっと考えに沈みながら坐っていた。が、やがて彼は云った。
黄色な顔
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
三人連れだって両国の
旅籠屋
(
はたごや
)
まで
戻
(
もど
)
って来た時は、互いに街道の推し移りを語り合って、今後の成り行きに
額
(
ひたい
)
を
鳩
(
あつ
)
めた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“額”の意味
《名詞》
(ガク)金銭の量。金額。
(ガク)書画などを入れ壁にかけるなどして飾るための枠。額縁。
(ひたい)顔のうち、髪の生えぎわからまゆまでの部分。おでこ。
(ぬか)(古) ひたい。
(出典:Wiktionary)
“額”の解説
額(ひたい)は、顔の上部で、眉と髪の生え際の間のことである。くだけた言い方でおでこ(でこ)、古語ではぬかともいう。眉と眉の間は特に眉間(みけん)という。
(出典:Wikipedia)
額
常用漢字
小5
部首:⾴
18画
“額”を含む語句
前額
額越
額際
出額
金額
富士額
真額
額付
額髪
額田
巨額
額着
額田王
少額
額縁
扁額
板額
額部
凸額
額堂
...