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音色
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ねいろ
ふりがな文庫
“
音色
(
ねいろ
)” の例文
ただ、その
証拠
(
しょうこ
)
に、もはや、このオルガンの
音色
(
ねいろ
)
が
海
(
うみ
)
の
上
(
うえ
)
をころがっても、
魚
(
さかな
)
が、
波間
(
なみま
)
に
跳
(
は
)
ねるようなことはなかったのであります。
楽器の生命
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「箏の裏板へ大きな
扉
(
とびら
)
をつけて、あの開閉で、響きや、
音色
(
ねいろ
)
の具合を見ようという試みね、
巧
(
うま
)
くいってくれればようござんすね。」
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
或る人の覺えてゐるのはまだ乳呑兒の頃に、枕の傍で添伏しの母の懷のなかから、樂しく聞いた時計のオルゴオルの
音色
(
ねいろ
)
である。
地方主義篇:(散文詩)
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
そしてもう階下では、ヴァイオリンの調子を合わせたり、クラリネットで甘ったるい
音色
(
ねいろ
)
の音階の練習をやったりしているのが聞こえた。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
わたしはこの水の底深くひそんでいて毎日笛をふいておる。だが、わたしのふきならす笛の
音色
(
ねいろ
)
はあなた方、土の上の者には聞こえはせぬ。
おしどり
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
▼ もっと見る
無論、
佛
(
ブツ
)
、
法
(
ポウ
)
、
僧
(
ソウ
)
などの乾いた
音色
(
ねいろ
)
ではゆめさら無く、郭公、筒鳥の寂びた聲に較べては更に數段の強みがあり、つやがある。
梅雨紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
その音竜の
嘯
(
うそぶ
)
くが如しと、こう形容したいほど清く涼しい
音色
(
ねいろ
)
であったが、林をくぐり森を越え遥かの空へ渡って行くらしい。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その代り、私は忘れられぬほど
音色
(
ねいろ
)
の深い上野の鐘を聴いた事があった。日中はまだ残暑の去りやらぬ
初秋
(
しょしゅう
)
の夕暮であった。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
すると、どこでするのか、だれのすさびか、秋にふさわしい
笛
(
ふえ
)
の
音
(
ね
)
がする。その
妙
(
たえ
)
な
音色
(
ねいろ
)
は、ふと伊那丸の心のそこへまで
沁
(
し
)
みとおってきた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして今までよりは一層熱心に演壇の上から流れて来るヴァイオリンの静かな
音色
(
ねいろ
)
に耳を傾けているらしかった。……
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
成程結構な演奏ではあるが、さうかといつて、一弗六十五仙の
先刻
(
さつき
)
の
提琴
(
ヴアイオリン
)
と比べて、
音色
(
ねいろ
)
に格別の
異
(
ちが
)
ひはなかつた。それにつけても
聴衆
(
ききて
)
も思つた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
従つて、いくら平生の自分に帰つて、梅子の相手になる積でも、梅子の予期してゐない、変つた
音色
(
ねいろ
)
が、
時々
(
とき/″\
)
会話の
中
(
なか
)
に、思はず知らず
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
絶えず続いて、
音色
(
ねいろ
)
は替っても、
囃子
(
はやし
)
は留まらず、
行交
(
ゆきか
)
う船脚は水に流れ、
蜘蛛手
(
くもで
)
に、
角
(
つの
)
ぐむ
蘆
(
あし
)
の根を
潜
(
くぐ
)
って、消えるかとすれば、ふわふわと浮く。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この楽器によって御父帝の御時のこと、また御姉宮に賜わった時のことが思召されて六条院はことさら身に
沁
(
し
)
んで
音色
(
ねいろ
)
に聞き入っておいでになった。
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
実
(
じつ
)
に
此
(
この
)
音色
(
ねいろ
)
を
蓄
(
たくは
)
へて
置
(
お
)
く
等
(
など
)
といふは、
不思議
(
ふしぎ
)
と
申
(
まう
)
すも
余
(
あまり
)
あることでござりまする。
殊
(
こと
)
に親、
良人
(
をつと
)
、
誰
(
たれ
)
に
拘
(
かゝは
)
らず
遺言
(
ゆゐごん
)
抔
(
など
)
を
蓄
(
たくは
)
へて
置
(
お
)
いたら
妙
(
めう
)
でござりませう。
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
東洋趣味のボー……ンと鳴り渡るというような鐘の声とは違って、また格別な、あのカン……と響く
疳
(
かん
)
の
音色
(
ねいろ
)
を聴くと、
慄然
(
ぞっ
)
と
身慄
(
みぶるい
)
せずにいられなかった。
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
そのとき耳を澄ませて聴くならばいま叩いた缶は手でおさえて振動をとどめたにも
拘
(
かかわ
)
らず、それと同じような
音色
(
ねいろ
)
の音が、かなり強くきこえるではないか。
振動魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その
音色
(
ねいろ
)
だけが問題になって、
主
(
ぬし
)
はあらぬ方へ持って行って、かたづけられてしまうことが多いのであります。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それゆえ私が、どんなにか、探偵小説的な
詭計
(
からくり
)
を作り、またどんなにか、怒号したにしても、あの
音色
(
ねいろ
)
だけは、けっして殺害されることはないと信じている。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それは、
昔
(
むかし
)
鎌倉
(
かまくら
)
の
奥山
(
おくやま
)
でよくきき
慣
(
な
)
れた
時鳥
(
ほととぎす
)
の
声
(
こえ
)
に
幾分
(
いくぶん
)
似
(
に
)
たところもありますが、しかしそれよりはもッと
冴
(
さ
)
えて、
賑
(
にぎや
)
かで、そして
複雑
(
こみい
)
った
音色
(
ねいろ
)
でございます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
鈴虫松虫
蟋蟀
(
こおろぎ
)
などの
音色
(
ねいろ
)
を分け得ない私の耳にも、千年の昔の虫の声々が、哀れを伝えて来るのである。
軽井沢にて
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
激しい歴史のうつりかはりが感じられて、その
音色
(
ねいろ
)
から、超然とした運命が流れ出てゐるやうに思へる。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
この古い琴の
音色
(
ねいろ
)
には
幾度
(
いくたび
)
か人の胸に
密
(
ひそ
)
やかな
漣
(
さざなみ
)
が起った事であろう。この道具のどれかが己をそういう目に
遇
(
あ
)
わせてくれたなら、どんなにか有難く思ったろうに。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
つぼの中のお湯がわくと、その鈴はたいへん美しい
音色
(
ねいろ
)
をたてて、リンリンと鳴るのです。そして
ブタ飼い
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
しかし僕は
三味線
(
しゃみせん
)
の浮き浮きした
音色
(
ねいろ
)
を
嫌
(
きら
)
いでないから、かえって面白いところだと気に入った。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
音譜に「
音色
(
ねいろ
)
」というものが表わせるでしょうか「音色」という弾力を、マキシマムに発揮しなければ、その流行歌は人の心を、芯底から
搏
(
う
)
つものとは思われませんね。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
打つや
鼓
(
つづみ
)
のしらべ、三味の
音色
(
ねいろ
)
に事かかぬ場処も、祭りは別物、
酉
(
とり
)
の
市
(
いち
)
を
除
(
の
)
けては一年一度の
賑
(
にぎは
)
ひぞかし、
三嶋
(
みしま
)
さま
小野照
(
をのてる
)
さま、お
隣社
(
となり
)
づから負けまじの競ひ心をかしく
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
目を
瞑
(
つぶ
)
ったまま近くの寺々を思い浮べて見たが、さてどの辺とも分らない。やがて彼方此方、
音色
(
ねいろ
)
の違った、然し同じくやや高い鐘の音が、入交って静かに秋雨の中に響いて来る。
雨の宿
(新字新仮名)
/
岩本素白
(著)
チャリンチャリンと美しい黄金の
音色
(
ねいろ
)
が、まるで音楽のように聞えて来ます。
新宝島
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
楽器の
音色
(
ねいろ
)
がかなり違って聞こえても、管弦楽はやはり管弦楽として聞取られるし、長唄はやはり長唄として聞かれる。聞きたくなければ聞流している事も音楽ならばそれほど困難ではない。
ラジオ雑感
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鳴り響く青玉の
音色
(
ねいろ
)
も暮れてゆく……孱弱な心、繊細な絹糸のもつれをかたよせて、私はまた久し振りに、あの銀座の青い柳のかげの白い瀟洒な喫茶店の椅子に寂しい孤独の身をなげかけて
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
あの
飴屋
(
あめや
)
さんの
吹
(
ふ
)
く
笛
(
ふえ
)
は、そこいらの
石垣
(
いしがき
)
へ
浸
(
し
)
みて
行
(
い
)
くやうな
音色
(
ねいろ
)
でした。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
それが
太夫
(
たゆう
)
の沈んだ声と
三絃
(
さんげん
)
の
音色
(
ねいろ
)
とに不思議な調和を保っていた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
エルマン・トーンというものは、全く特色的なトーン・カラーで、かつての神童エルマンが、一躍世界楽壇の寵児になったのも、一にあの幻妙不可思議な美しい
音色
(
ねいろ
)
を持っていたためにほかならない。
名曲決定盤
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
、
野村長一
(著)
甲樂人 はて、
銀
(
ぎん
)
は
好
(
よ
)
い
音色
(
ねいろ
)
を
出
(
だ
)
すからでござります。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
2、
音色
(
ねいろ
)
は、霞むやうな銀の鈴の
遠音
(
とほね
)
の断続。
「香水の表情」に就いて:――漫談的無駄話――
(新字旧仮名)
/
大手拓次
(著)
しかし彼は、はっきりと
音色
(
ねいろ
)
を
区別
(
くべつ
)
していた。
ジャン・クリストフ
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「本当にメランコリイの
音色
(
ねいろ
)
がしますわ。」
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
自然にかかる
音色
(
ねいろ
)
を
出
(
いだ
)
すやうになりぬ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
琵琶の
音色
(
ねいろ
)
を聞き
澄
(
す
)
みて。
北村透谷詩集
(旧字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
消えて行く
音色
(
ねいろ
)
の變化
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
影を愛し、
音色
(
ねいろ
)
を思ひ
季節の馬車
(旧字旧仮名)
/
佐藤惣之助
(著)
山彦の
音色
(
ねいろ
)
さびて
信姫
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
「
美
(
うつく
)
しいお
姫
(
ひめ
)
さまがいられて、いい
音楽
(
おんがく
)
の
音色
(
ねいろ
)
が、
夜
(
よる
)
も
昼
(
ひる
)
もしているということだ。」と、また
他
(
た
)
の
一人
(
ひとり
)
の
旅人
(
たびびと
)
がいっていました。
お姫さまと乞食の女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それは耳をそばだてて胡弓の声にきき入り、そののんびりしたような、また
物哀
(
ものがな
)
しいような
音色
(
ねいろ
)
を味わっていた。木之助は一心にひいていた。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
箏の音はまた、それとは違うて、
渺々
(
びょうびょう
)
としておるので——真の、玉琴というのはああした
音色
(
ねいろ
)
と、余韻とでなければ——
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
実はその鉢合の反響が人間の心に個々別々の
音色
(
ねいろ
)
を起すからである。第一主人はこの事件に対してむしろ冷淡である。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
壮
(
そう
)
な
音色
(
ねいろ
)
、
悲愁
(
ひしゅう
)
な叫び、または
嘈々
(
そうそう
)
としてさわやかに転変する笙の
余韻
(
よいん
)
が、
志賀
(
しが
)
のさざ波へ
微
(
び
)
に
妙
(
たえ
)
によれていった——
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
鐘鳴器
(
カリリヨン
)
は一つ一つに
音色
(
ねいろ
)
も音階も違うのだから、距離の近い点や同じ建物の中で聴いていると、後から後からと引き続いて起る音に干渉し合って、終いには
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
しかしそれとは全然性質を異にする三味線はいわば極めて原始的な単純なもので、決して楽器の
音色
(
ねいろ
)
からのみでは純然たる音楽的幻想を起させる力を持っていない。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
“音色”の意味
《名詞》
同じ波長の音で、聞く際にできる音の特性、音の聞こえ方のこと。音響学的には、音の波形の差異。
(出典:Wiktionary)
“音色”の解説
音色(おんしょく、ねいろ、en: timbre)とは、音の質を表現するために用いられる用語である。音高や音圧が同じであっても音色の異なる音は異なる聞こえ方をする。専門的な場面では「おんしょく」と読まれる。一般語としては「ねいろ」の読みも見られる。
(出典:Wikipedia)
音
常用漢字
小1
部首:⾳
9画
色
常用漢字
小2
部首:⾊
6画
“音”で始まる語句
音
音信
音沙汰
音楽
音頭
音曲
音声
音羽
音響
音物