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逞
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たくま
ふりがな文庫
“
逞
(
たくま
)” の例文
T君は
勿論
(
もちろん
)
僕などよりもこう云う問題に通じていた。が、
逞
(
たくま
)
しい彼の指には余り不景気には縁のない
土耳古
(
トルコ
)
石の
指環
(
ゆびわ
)
も
嵌
(
は
)
まっていた。
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
手足にも胸にも
逞
(
たくま
)
しく毛が生えているし、
髭
(
ひげ
)
もずいぶん濃い。一日でも
剃刀
(
かみそり
)
を当てないと、両頬の上のほうまで黒くなるのであった。
四日のあやめ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
大柄で筋骨
逞
(
たくま
)
しい
身体
(
からだ
)
や、額の
疵
(
きず
)
や、
赤銅
(
しゃくどう
)
色の刻みの深い顔など、悪人らしくはありませんが、大親分の昔を忍ばせるには充分です。
銭形平次捕物控:045 御落胤殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
避ける工夫は仕て
無
(
なか
)
ッた、殺すと早々逃たのだろう、余り智慧の
逞
(
たくま
)
しい男では無いと見える、
此向
(
このむき
)
なら捕縛すれば
直
(
じき
)
に白状するだろう
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
荒行にたえたその童貞の身体は
逞
(
たくま
)
しく、彼の唄う梵唄はその深山の修法の日毎夜毎の切なさを
彷彿
(
ほうふつ
)
せしめる哀切と荘厳にみちていた。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
▼ もっと見る
その
頃
(
ころ
)
良人
(
おっと
)
はまだ
若
(
わこ
)
うございました。たしか二十五
歳
(
さい
)
、
横縦
(
よこたて
)
揃
(
そろ
)
った、
筋骨
(
きんこつ
)
の
逞
(
たくま
)
ましい
大柄
(
おおがら
)
の
男子
(
おとこ
)
で、
色
(
いろ
)
は
余
(
あま
)
り
白
(
しろ
)
い
方
(
ほう
)
ではありません。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
その勢力を欧州に
逞
(
たくま
)
しゅうするあたわざるのみか、東亜においてさえ思うほどには逞しゅうするあたわざるゆえんのものはなんぞや。
将来の日本:04 将来の日本
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
かつ事をなすには時に便不便あり、いやしくも時を得ざれば有力の人物もその力を
逞
(
たくま
)
しゅうすること
能
(
あた
)
わず。古今その例少なからず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ふっくら
豊頬
(
ほうきょう
)
な面だちであるが、やはり父義朝に似て、
長面
(
ながおもて
)
のほうであった。一体に源家の人々は、四
肢
(
し
)
逞
(
たくま
)
しく、
尖
(
とが
)
り骨で顔が長い。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし
疫病
(
えやみ
)
は日一日と益〻猛威を
逞
(
たくま
)
しゅうし、
斃
(
たお
)
れる人間の数を知らず、それこそ
本統
(
ほんとう
)
の
死人
(
しびと
)
の丘が町の真ん中に出来そうであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
門の
鉄扉
(
てっぴ
)
の外側に子守が二、三人立って門内の露人の幼児と何か言葉のやりとりをしていると、玄関から
逞
(
たくま
)
しいロシア婦人が出て来て
札幌まで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
時頼
是
(
こ
)
の時年二十三、
性
(
せい
)
濶達にして身の
丈
(
たけ
)
六尺に近く、筋骨飽くまで
逞
(
たくま
)
しく、早く母に別れ、武骨一邊の父の
膝下
(
ひざもと
)
に養はれしかば
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
「それがですね、塩田大尉」と、
小浜
(
こはま
)
という姓の兵曹長が、
達磨
(
だるま
)
のように頬ひげを
剃
(
そ
)
ったあとの青々しい
逞
(
たくま
)
しい顔をあげていいました。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
案内もなく入り込んで来たのは、
髻
(
もとどり
)
を高く結び上げて、
小倉
(
こくら
)
の袴を穿いた
逞
(
たくま
)
しい浪士であります。手には
印籠鞘
(
いんろうざや
)
の長い刀を
携
(
たずさ
)
えて
大菩薩峠:04 三輪の神杉の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
従って、あるいは堀のいら立たしげな強硬論がますます空想を
逞
(
たくま
)
しくするのかも知れない。——それは本当に明治の初年であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
人間世界に
降
(
くだ
)
って蕃殖し、且つ兇暴を
逞
(
たくま
)
しくするのだと、ある限りの悪称をもって憎み
罵
(
ののし
)
っているのは、珍らしい古文献といってよい。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「
大豆打
(
でえづぶち
)
にかつ
轉
(
ころ
)
がつた
見
(
み
)
てえに
面中
(
つらぢう
)
穴
(
めど
)
だらけにしてなあ」
剽輕
(
へうきん
)
な
相手
(
あひて
)
は
益
(
ます/\
)
惡口
(
あくこう
)
を
逞
(
たくま
)
しくした。
群衆
(
ぐんしふ
)
は
一聲
(
ひとこゑ
)
の
畢
(
をは
)
る
毎
(
ごと
)
に
笑
(
わら
)
ひどよめいた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
葦城夫人が頼母木少年の
逞
(
たくま
)
しい気魄に親しめないで、些細な落ち度を柄にとりお払い箱を喰わしたのであると伝える人もいるが
春宵因縁談
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
五十二歳になる袴野は野装束をつけると、
眼附
(
めつき
)
も足もとも違った
逞
(
たくま
)
しさを現しはじめた。しかしすての気づかいは本気で言った。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
政府が人権を
蹂躙
(
じゅうりん
)
し、抑圧を
逞
(
たくま
)
しうして
憚
(
はばか
)
らざるはこれにても
明
(
あき
)
らけし。さては、平常先輩の説く処、
洵
(
まこと
)
にその
所以
(
ゆえ
)
ありけるよ。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
悟浄は、自分を取って
喰
(
く
)
おうとした
鯰
(
なまず
)
の
妖怪
(
ばけもの
)
の
逞
(
たくま
)
しさと、水に溶け去った少年の美しさとを、並べて考えながら、蒲衣子のもとを辞した。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「子猫の
褒美
(
ほうび
)
に——お手を」と、軽騎兵は、にやりと笑うと、新調の軍服にきっちり締め上げられた
逞
(
たくま
)
しい全身を、ぐいと反り返らせた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
目的もなにもない酔ひと云ふものは気安くて、多勢の友人にとりかこまれたやうな賑やかなものを身につけてしまふ。
逞
(
たくま
)
しくなつて来る。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
私との商取引ができた後、私は四、五人の
逞
(
たくま
)
しい、異国人たちに取囲まれ、
喧嘩
(
けんか
)
になった時、彼女は最後まで私の味方だった。
野狐
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
室に入りて相対して見れば、形こそ
旧
(
もと
)
に比ぶれば
肥
(
こ
)
えて
逞
(
たくま
)
しくなりたれ、依然たる快活の気象、わが
失行
(
しっこう
)
をもさまで意に介せざりきと見ゆ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
二人は真に政宗が頼み切った老臣で、小十郎も剛勇だが智略分別が勝り、藤五郎も智略分別に
逞
(
たくま
)
しいが勇武がそれよりも勝って居たらしい。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
殺伐というより
逞
(
たくま
)
しい計画だ。革命はこうでなくてはならない。流血の惨事を俺は歓迎したいのだった。三下みたいな役目でもかまわない。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
パリスどのと
祝言
(
しうげん
)
するよりも
寧
(
いっ
)
そ
自害
(
じがい
)
せうと
程
(
ほど
)
の
逞
(
たくま
)
しい
意志
(
こゝろざし
)
がおりゃるなら、いゝやさ、
恥辱
(
はぢ
)
を
免
(
まぬか
)
れうために
死
(
し
)
なうとさへお
爲
(
し
)
やるならば
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
尤
(
もっと
)
も
師走
(
しわす
)
に想像を
逞
(
たくま
)
しくしてはならぬと申し渡された次第でないから、
節季
(
せっき
)
に正月らしい振をして何か書いて置けば、年内に
餅
(
もち
)
を
搗
(
つ
)
いといて
元日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
気候とか養分の
摂
(
と
)
り方に、もっと適応し
逞
(
たくま
)
しく進化して行けば、此処で見るような巨大な実を結び、花を咲かすことが出来るのかも知れない。
火星の魔術師
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
この
時
(
とき
)
の
鼠
(
ねずみ
)
の
憎
(
にく
)
さは、
近頃
(
ちかごろ
)
、
片腹痛
(
かたはらいた
)
く、
苦笑
(
くせう
)
をさせられる、あの
流言蜚語
(
りうげんひご
)
とかを
逞
(
たくま
)
しうして、
女小兒
(
をんなこども
)
を
脅
(
おびや
)
かす
輩
(
ともがら
)
の
憎
(
にく
)
さとおなじであつた。……
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
また自分よりも
逞
(
たくま
)
しい骨格、強い意志、
確乎
(
かっこ
)
とした力を備えた男性という頼母しい一領土が、偶然にも自分に
依
(
よ
)
ってこの世界に造り出された。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
勝ち誇ったる檜垣衆は日増しに猛威を
逞
(
たくま
)
しゅうして、領内を荒らし廻り、僅か一と月ばかりの間に方々の
子城
(
こじろ
)
を攻め落すと云う有様であった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
逞
(
たくま
)
しい彼の手が私の握り締めを解いた。私の腕がつかまれた、肩も——
頸
(
くび
)
も——腰も——私は絡まれ、彼に抱き寄せられた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
人は只
實心
(
じつしん
)
を旨とし
苟且
(
かりそめ
)
にも
僞
(
いつは
)
り
欺
(
あざむ
)
く事勿れと然るを言行相反し私欲を
逞
(
たくま
)
しうなす者必ず其の身を
亡
(
ほろぼ
)
すこと古今珍しからずと雖も人世の
欲情
(
よくじやう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ちょっと、普通の人間に出来る芸当ではないと、その図々しいといおうか。
逞
(
たくま
)
しいといおうか、人並みはずれた実行力におれは惚れこんだのだ。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
この花を、山家の少女の衣模様に染めたらば、などと思いながら、森を出て、河原に下り、太い
逞
(
たくま
)
しい樹の蔭に立った。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
そういってペコペコ頭を下げながら前に進み出たのは、四人の中でも一番
年層
(
としかさ
)
らしい、色の黒い、
逞
(
たくま
)
しい鬚男であった。
女坑主
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
如何にも房枝は女給仕時代並びに同棲生活の当初に於いてこそ経済的にも裕福であり、
逞
(
たくま
)
しい程の肉体的魅力を全身から溢れさせて居りましたが
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
そこには太子の心労のみならず、古事記にもみられるような
逞
(
たくま
)
しい原始力があって、それが仏法をも貫いて発揚されて行ったと云えないだろうか。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
細い
革鞭
(
かわむち
)
を持って、娘の方でも思いがけぬところへ現れた私の姿に、びっくりしているのです……手綱を絞られたその馬のまた、
逞
(
たくま
)
しく大きくて
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
憲兵の
逞
(
たくま
)
しい姿は忽ち
飛鳥
(
ひちょう
)
の如く裏門に走り、外の小径へと消えて行った。それは丁度設計班の人々の夕飯時であった。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
少年の事情はせめて小林監督にでも話してやろう、私は顔をあげて死骸の傍に突っ立っている
逞
(
たくま
)
しい労働者の群を見た。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
そうしてその容貌の
魁偉
(
かいい
)
にしていかにも筋骨の
逞
(
たくま
)
しきところは、ただその
禅定
(
ぜんじょう
)
だけやって坐って居るような人と見えないほどの骨格の逞しい人で
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
見た処は強そうな、散髪を
撫付
(
なでつ
)
けて、肩の幅が三尺もあり、腕などに毛が生えて筋骨
逞
(
たくま
)
しい男で、
一寸
(
ちょっと
)
見れば名人らしく見える先生でございます。
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それに体格もちがっていた。彼等の肌は
赤銅色
(
しゃくどういろ
)
で、手足も
逞
(
たくま
)
しかった。僕らは、老人もいたし若いのもいたが、概して虚弱な感じの者ばかりだった。
魚の餌
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
また
殿
(
しんがり
)
で敵に向いなさるなら、
鹿毛
(
かげ
)
か、
葦毛
(
あしげ
)
か、月毛か、栗毛か、馬の太く
逞
(
たくま
)
しきに
騎
(
の
)
った大将を打ち取りなされよ。
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
色の浅黒い筋骨の
逞
(
たくま
)
しい大男であったが、東北では指折りの豪農の総領で、そのころはまだ未婚の青年であり、遊びの味は身に
染
(
し
)
みてもいなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
でっぷり
肥
(
ふと
)
った、
逞
(
たくま
)
しい老人を選び、それに三角帽をかぶせ、赤いチョッキを着せ、なめし革のズボンをはかせ、頑丈な
樫
(
かし
)
の
棍棒
(
こんぼう
)
をもたせたのである。
ジョン・ブル
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
鍛えに鍛えた
逞
(
たくま
)
しい体力と鉄石のような負けじ魂と加うるに、この数年師匠を驚かすくらいに上達した北辰一刀流の剣技——この三つの
権化
(
ごんげ
)
であった。
平馬と鶯
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
逞
漢検1級
部首:⾡
11画
“逞”を含む語句
不逞
不逞々々
不逞不逞
百逞
不逞団
不逞漢
不逞群衆
不逞鮮人
勢逞
口髭逞
林逞策
逞野心
骨逞