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装
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よそお
ふりがな文庫
“
装
(
よそお
)” の例文
旧字:
裝
わしはあの
優雅
(
ゆうが
)
な
都
(
みやこ
)
の言葉がも一度聞きたい。あの
殿上人
(
てんじょうびと
)
の
礼容
(
れいよう
)
ただしい
衣冠
(
いかん
)
と、そして美しい
上﨟
(
じょうろう
)
の
品
(
ひん
)
のよい
装
(
よそお
)
いがも一度見たい。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
また、じりじりと
焦
(
あせ
)
ってもならぬ。姿こそ、
変生女性
(
へんじょうにょしょう
)
を
装
(
よそお
)
っては居れ、胆は、あくまで
猛々
(
たけだけ
)
しいわたしでなければならぬ。眠ろう——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「嫌ではあろうが、森啓之助の所へ帰って、しばらくすなおを
装
(
よそお
)
っていて貰いたい。いずれ
近々
(
ちかぢか
)
には、拙者も阿波へ渡るつもりだが」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
勝氏は
真実
(
しんじつ
)
の攘夷論者に非ざるべしといえども、
当時
(
とうじ
)
の
勢
(
いきおい
)
、
止
(
や
)
むを得ずして攘夷論を
装
(
よそお
)
いたるものならん。その
事情
(
じじょう
)
以
(
もっ
)
て知るべし。
瘠我慢の説:04 瘠我慢の説に対する評論について
(新字新仮名)
/
石河幹明
(著)
しかし、それが、
所謂
(
いわゆる
)
恋愛らしい、形を採ればとるほど、ぼくは恋愛を
装
(
よそお
)
って、実は、損得を計算している自分に気づくのでした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
▼ もっと見る
ある小鳥のようなわざとらしい落ち着きのない態度と、
愛嬌
(
あいきょう
)
を
装
(
よそお
)
ってはいるが
淑
(
しと
)
やかさと親愛さとに富んだ話し方をそなえていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
三十分ばかり、用もないのに机に
靠
(
もた
)
れて、手紙をかくような風を
装
(
よそお
)
っていた私は、とうとう根負けがしてしまって声をかけました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
とかく俳人などという形式のみ
殊勝
(
しゅしょう
)
ぶり、心にもない隠遁生活を
装
(
よそお
)
うたりするものが多いが、それは芭蕉のこの一句に
愧死
(
きし
)
すべきである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
その
噂
(
うわさ
)
を聞き伝えた奴国の宮の娘を持った母親たちは、
己
(
おのれ
)
の娘に
華
(
はな
)
やかな
装
(
よそお
)
いをこらさせ、髪を飾らせて戸の外に立たせ始めた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
それをかぶっている人の無頓著を
装
(
よそお
)
う態度には不釣合なほど、鋭さと細心さと嫌悪とを強く集中させて、彼を横目にじっと見た。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
しかし余り
無造作
(
むぞうさ
)
に解決出来る場合だけは、——保吉は
未
(
いま
)
だにはっきりと
一思案
(
ひとしあん
)
を
装
(
よそお
)
った粟野さんの
偽善的
(
ぎぜんてき
)
態度を覚えている。
十円札
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
黒衣覆面の男の
装
(
よそお
)
いして、両国のお角の宅を出し抜き、こうしてここまで
辿
(
たど
)
って来たお銀様。ここでまたも方角を失いました。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
酒はいくらでも飲むが、女には無関心なふうを
装
(
よそお
)
っていた。どんな生活をしているのか、住所は絶えず変って、一定していないようであった。
花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
だが、しかし、その偵察機の上にも、同じ
悲憤
(
ひふん
)
に、唇を噛みしめる軍人たちが、
強
(
し
)
いて冷静を
装
(
よそお
)
って、
方向舵
(
ほうこうだ
)
を
操
(
あやつ
)
っていた。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
有
(
あれ
)
ども無きがごとくに
装
(
よそお
)
え。
昂然
(
こうぜん
)
として水準以下に取り扱え。——気がついた男は面目を失うに違ない。これが
復讐
(
ふくしゅう
)
である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鉤
(
かぎ
)
の手になっている長い廊下を右の方へはいって行く。それは婚礼の行列であって花嫁姿に
装
(
よそお
)
った芳江姫の美しい姿が列の先頭に立っている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
世間或は人目を
憚
(
はばか
)
りて態と妻を顧みず、又或は内実これを顧みても表面に
疏外
(
そがい
)
の風を
装
(
よそお
)
う者あり。たわいもなき挙動なり。
新女大学
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
彼は頬をややこわばらせ、それでも何気ない
風
(
ふう
)
を
装
(
よそお
)
いながら、無意味な視線を隊長と高城伍長の上にかたみに移していた。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
かれは、しかし、あくまでも眼を先生と恭一とのほうにそそぎ、熱心に二人の話に聞き入っているかのように
装
(
よそお
)
った。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
若
(
わか
)
い、
派手
(
はで
)
やかな
装
(
よそお
)
いをした
女
(
おんな
)
たちが、なまめかしいはやし
声
(
ごえ
)
で
山車
(
だし
)
を
引
(
ひ
)
くと、
山車
(
だし
)
の
上
(
うえ
)
の
自分
(
じぶん
)
のおじいさんは、ゆらゆらと
赤
(
あか
)
い
顔
(
かお
)
をして
揺
(
ゆ
)
られました。
さかずきの輪廻
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
お蓮様も丹波も在宅のように
装
(
よそお
)
って、屋敷を明けていることはひた隠しにかくしているのだが、なんの交渉もないとはいえ、またいかに広い屋敷内でも
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
が、急いで素知らぬ顔を
装
(
よそお
)
って、耳を傾けていた。宴は殿下を中心として七時半から始まって、十時に終った。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
いろいろに
装
(
よそお
)
わせることが
流行
(
はや
)
りましたが、お春は金沢町のピカ一だけに、今年は思い切って手古舞姿になり、町内の若い師匠や、
容貌
(
きりょう
)
自慢の娘達三四人と
銭形平次捕物控:017 赤い紐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
じゃ、偶像は、
木
(
き
)
、
金
(
かね
)
、
乃至
(
ないし
)
、土。それを金銀、
珠玉
(
しゅぎょく
)
で飾り、色彩を
装
(
よそお
)
ったものに過ぎないと言うんですか。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一月ばかりの間、彼は、運転を覚えたばかりの嬉しさに、用もないのに自動車を乗り廻している、という
体
(
てい
)
を
装
(
よそお
)
いつつ、無闇と彼の所謂自動車放浪を試みた。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
同様に現在の今日只今も、何一つ知らぬかの如く
装
(
よそお
)
うて、私の
掌
(
てのひら
)
に乗っかっている……が……しかし……。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
豹一の眼が絶えず敏感に動いていることや、
理由
(
わけ
)
もなくぱッと
赧
(
あか
)
くなることから押して、いくら傲慢を
装
(
よそお
)
っても、もともと内気な少年なんだと見抜いていたのだ。
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
かの岩間に咲く
蓮馨花
(
さくらそう
)
は人に見えざるがゆえに彼女は
紅衣
(
こうい
)
を以て
装
(
よそお
)
わざるか、年々歳々人知れずして
香
(
こう
)
を砂漠の風に加え、色を無覚の岩石に呈する花何ぞ多きや
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
その舞踏室の
装
(
よそお
)
いからまだなかばも夜の休みのために解いてなく、あまたのダイヤモンドのちりばめられている間に、若いヒヤシンスのそれのような捲毛となって
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
装
(
よそお
)
いをこらした若い女の全身像である。修整もあまり上手でなく、いくらか固い表情ではあるが、キリヽとしたところのある豊かな顔だちが、まず彼の眼を惹いた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
彼は、お前に降伏したような様子を見せながら、お前を肉体的に、征服しようとしているのだ。
兜
(
かぶと
)
を脱いだような風を
装
(
よそお
)
いながら、お前に飛び付こうとしているのだ。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
同伴者は皆互いに見知らぬ
風
(
ふう
)
を
装
(
よそお
)
えるなり、その退屈さと心配さとはなかなか筆紙に尽しがたし。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
客観的な状況では、不慮の死だが、じつは、アクシダントを
装
(
よそお
)
った計画的自殺だったので、場所や条件を、実地について、相当、長い間研究したことが、手紙に書いてあった。
蝶の絵
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
まだこの村にこんな私の知らない部分があることを心のうちでは
驚
(
おどろ
)
きながら、しかし私はそのへんをいかにも知り
抜
(
ぬ
)
いているように
装
(
よそお
)
いながら、さっさと彼女を導いて行った。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
自分が
魚餌
(
えさ
)
を
鉤
(
はり
)
に
装
(
よそお
)
いつけた時であった。偶然に少年は自分の方に
面
(
おもて
)
を向けた。そして
紅桃色
(
こうとうしょく
)
をしたイトメという虫を五匹や六匹ではなく沢山に鉤に装うところを
看詰
(
みつ
)
めていた。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかしこの世には感謝すべき仕組みが用意されているのであります。込み入った
装
(
よそお
)
いのものよりは、単純なものの方に、かえって美しさが
豊
(
ゆたか
)
に現れるようにしてあるのであります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
一枚々々熱心に自分への宛名を探す海獣たち——僕もこうしていまその一人を
装
(
よそお
)
ってるんだが——この時は、彼らも完全に
良人
(
おっと
)
であり、父であり、息子であるだろう! それだのに
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
夕方近くあかこを取ることを
装
(
よそお
)
って、復一はこそこそと崖の途中の汚水の溜りまで登って、そこで
蹲
(
うずくま
)
った。彼は三十前なのに大分老い
晒
(
さら
)
した人のような身体つきや動作になっていた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
真白き
装
(
よそお
)
いをして、薄い
傘
(
からかさ
)
をさして、「しょんぼりとかあいらしく」たたずんだあの不思議に
艶
(
えん
)
な姿は、いかなるロシア舞踊の傑作にも見られない特殊な美しさを印象しはしないか。
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
あるいは平気を
装
(
よそお
)
うて居たのか実際
呑気
(
のんき
)
であったのか分らんが、一体チベット人は何か大事に臨むとごく度量が据って居るかのように
横柄
(
おうへい
)
くさく構えて居る風が誰にもあるようです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
主翁は女房に悟られまいと思って、平気を
装
(
よそお
)
うて
行火
(
あんか
)
を出てもとの処へ坐った。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
初めて恐怖がマタ・アリを把握したが、さり気なく
装
(
よそお
)
うことには慣れている。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
お登和嬢は
明白
(
あらわ
)
にそれとも言い兼ね「イイエ、別にどうも致しませんが何だか気分が悪くって」中川「何で気分が悪い」お登和嬢「イエモー大概
癒
(
なお
)
りました」と
強
(
し
)
いて元気を
装
(
よそお
)
いて兄の懸念を
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
が、彼はこんどはいきなり冷水をぶっかけられたように、ゾッとしはしたが千二百十三、千二百十四と、
数珠
(
じゅず
)
をつまぐるように数え続けた。そして身動き一つ、
睫毛
(
まつげ
)
一本動かさないで眠りを
装
(
よそお
)
った。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
路
(
みち
)
のかたわらなる草花は
或
(
あるい
)
は赤く或は白い。
金剛石
(
こんごうせき
)
は
硬
(
かた
)
く
滑石
(
かっせき
)
は
軟
(
やわ
)
らかである。牧場は緑に海は青い。その牧場にはうるわしき牛
佇立
(
ちょりつ
)
し羊群
馳
(
か
)
ける。その海には青く
装
(
よそお
)
える鰯も泳ぎ
大
(
おおい
)
なる鯨も
浮
(
うか
)
ぶ。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
と思い違いを
装
(
よそお
)
ったが、そんな頭の悪い僕ではない。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
時はお前のため花の
装
(
よそお
)
いをこらしているのに
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
装
(
よそお
)
っているのではないのですか
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
君が
装
(
よそお
)
し
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
典厩信繁、その日の
装
(
よそお
)
いは、
卯
(
う
)
の花おどしの鎧に、
鍬形
(
くわがた
)
のかぶとを
猪首
(
いくび
)
に着なし、長槍を小脇に、甲斐黒の逸足にまたがっていた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“装”の意味
《名詞》
(ソウ)装い。
(ソウ)書物の体裁。
(出典:Wiktionary)
装
常用漢字
小6
部首:⾐
12画
“装”を含む語句
扮装
服装
装束
装飾
身装
衣装
行装
旅装
装填
装置
偽装
盛装
黒装束
形装
仮装
装立
装幀
艤装
装上
装釘
...