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練絹
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ねりぎぬ
ふりがな文庫
“
練絹
(
ねりぎぬ
)” の例文
(いゝえ
誰
(
たれ
)
も
見
(
み
)
て
居
(
を
)
りはしませんよ。)と
澄
(
す
)
まして
言
(
い
)
ふ、
婦人
(
をんな
)
も
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
衣服
(
きもの
)
を
脱
(
ぬ
)
いで
全身
(
ぜんしん
)
を
練絹
(
ねりぎぬ
)
のやうに
露
(
あら
)
はして
居
(
ゐ
)
たのぢや。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
この美女たちがいずれも長い
裳裾
(
もすそ
)
を曳き、薄い
練絹
(
ねりぎぬ
)
の
被衣
(
かつぎ
)
を微風に
嬲
(
なぶ
)
らせながら、
擦
(
す
)
れ違うとお互いに
淑
(
しと
)
やかな会釈を交わしつつ
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ちょうど正面の松林が
疎
(
まば
)
らになって、窓の
如
(
ごと
)
く
隙間
(
すきま
)
を作っている向うから、その
冴
(
さ
)
え返った銀光がピカピカと、
練絹
(
ねりぎぬ
)
のように輝いている。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
前路を見ても足下を見ても、
遮
(
さえぎ
)
る物の影もなかった。綿と云おうか
練絹
(
ねりぎぬ
)
と云おうか、上へ上へと立ち上る、白いものばかりが眼に触れた。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
練絹
(
ねりぎぬ
)
のような美しい
膚
(
はだ
)
が、急に
茜
(
あかね
)
さして、恐ろしい
忿怒
(
ふんぬ
)
に黒い瞳がキラリと光るのさえ、お駒の場合にはたまらない魅惑です。
黄金を浴びる女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
皮膚が
練絹
(
ねりぎぬ
)
のように細かくやわらかであるから、
白粉
(
おしろい
)
の乗りがいい。爽やかな眼を大きく張って、この二人も明るく唄った。
淡紫裳
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
女性に
殊
(
こと
)
に著しい美的
扮装
(
ふんそう
)
(これは
極
(
きわ
)
めて外面的の。女性は
屡〻
(
しばしば
)
練絹
(
ねりぎぬ
)
の外衣の下に
襤褸
(
つづれ
)
の肉衣を着る)、本能の如き
嬌態
(
きょうたい
)
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
筒井のために作られた衣裳はまるで御娘子と同じ模様の
襲
(
かさね
)
も青い
練絹
(
ねりぎぬ
)
であった。筒井はそれを携えた御娘子に辞退して、押しやって
勿体
(
もったい
)
ながった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「
蚊帳釣草
(
かやつりぐさ
)
」の穂の
練絹
(
ねりぎぬ
)
の如くに細く美しき、「猫じゃらし」の穂の毛よりも柔き、さては「
赤
(
あか
)
の
飯
(
まま
)
」の花の暖そうに薄赤き、「
車前草
(
おおばこ
)
」の花の
爽
(
さわやか
)
に
蒼白
(
あおじろ
)
き
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それから彼女はヴィール夫人を慰めるつもりで、二、三度その上着の袖を持ってそれを
褒
(
ほ
)
めると、ヴィール夫人はこれは
練絹
(
ねりぎぬ
)
で、新調したものであると話した。
世界怪談名作集:07 ヴィール夫人の亡霊
(新字新仮名)
/
ダニエル・デフォー
(著)
下の小袖も同じような白の
生絹
(
すぎぬ
)
である。もう一重その下に、紅梅の
練絹
(
ねりぎぬ
)
をかさねて袖口にのぞかせている。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
婢
(
じょちゅう
)
が出て往ったところで、天風の頭に
練絹
(
ねりぎぬ
)
に包まれたような
壮
(
わか
)
い女の白い肉体が浮んで来た。
文妖伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
風呂に入りますと、
浴槽
(
ゆぶね
)
の湯が温泉でも下に湧き出して居るやうに、
地車
(
だんじり
)
の響で波立ちます。大鳥さんの日の着物は、大抵紺地か黒地の
透綾上布
(
すきやじやうふ
)
です。
襦袢
(
じゆばん
)
の袖は桃色の
練絹
(
ねりぎぬ
)
です。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
鳳凰の淡き
練絹
(
ねりぎぬ
)
纏いし姿は、さもあらばあれ、白峰甲斐駒の諸峰は、更に山の膚を見ず、ただ峻谷の雪かすかなる、朧銀の色をなして、鉛色なる空より浮き出で巨大なる蛇の舌
閃
(
ひらめ
)
いて
雪の白峰
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
何時
(
いつ
)
の間にか月がさして、
練絹
(
ねりぎぬ
)
を延べた様なロアル河は
直
(
す
)
ぐ前に白く、其れを隔てたツウルの街は
唯
(
たゞ
)
停車場
(
ステエシヨン
)
の
灯火
(
あかり
)
を一段
際
(
きは
)
やかに残した
丈
(
だけ
)
で、外は墨を塗つた様に黒く
静
(
しづか
)
に眠つて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
何處
(
どこ
)
かでは
固
(
かた
)
パンをかじる鼠が
練絹
(
ねりぎぬ
)
のカアテンにひそんで
啜泣
(
すすりな
)
いてゐるだらう
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
鴉のように黒い髪をこのごろ流行る茶屋辻模様の
練絹
(
ねりぎぬ
)
の小袖の肩にこぼしている姿は、然るべき
公家
(
くげ
)
か、武家の息女か、おそらく世に時めく武家の
愛娘
(
まなむすめ
)
であろうと、兼好はひそかに判断した。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
練絹
(
ねりぎぬ
)
を垂れかけたようにするすると岩壁を駆け下りている。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
麓
(
ふもと
)
を
籠
(
こ
)
めて、
練絹
(
ねりぎぬ
)
を織って流るる川に、渡した橋は、細く解いた鼓の二筋の緒に見えた。山の
端
(
は
)
かえす夕映の、もみじに染まって。……
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
髪に
櫛
(
くし
)
を入れ、持ってきた
練絹
(
ねりぎぬ
)
の白いさるまた、新しい腹巻、
襦袢
(
じゅばん
)
、
縞脚絆
(
しまきゃはん
)
、すべて
垢
(
あか
)
一つない物にすっぱり着代えて、朝飯をすますやいな、「黒旋風、さあ、行こうぜ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「さわらしてくだされ、抱かしてくだされ! ……姥の通力やぶれてもよい! ……本望じゃ、さわらせてくだされ! ……
柘榴
(
ざくろ
)
のようなその唇へ、
練絹
(
ねりぎぬ
)
のようなその頬へ!」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
五色の
練絹
(
ねりぎぬ
)
を以て手足を床に縛らし、一度に躍りあがると、絹は皆切れる、もし、その絹を三
幅
(
はば
)
合せて縛ると切れない、今、絹の中に麻を入れて縄にして縛ると、どんな事があっても切れる事がない
美女を盗む鬼神
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その通りにして、一行は息を忍ばせて待っていると、日も早や
申
(
さる
)
の刻(午後三時—五時)とおぼしき頃に、
練絹
(
ねりぎぬ
)
のような物があなたの山から飛ぶが如くに走って来て、たちまちに
洞
(
ほら
)
のなかにはいった。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
(いいえ誰も見ておりはしませんよ。)と
澄
(
すま
)
して言う、
婦人
(
おんな
)
もいつの間にか
衣服
(
きもの
)
を脱いで全身を
練絹
(
ねりぎぬ
)
のように
露
(
あらわ
)
していたのじゃ。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、
練絹
(
ねりぎぬ
)
のようにそれへ横たわると、もう身も世もない姿だった。同時に、彼女の肌の
蒸
(
む
)
れでもない
妖
(
あや
)
しい香気、それも
薫々
(
くんくん
)
と
身悶
(
みもだ
)
えを感じるような匂いの底に
焚
(
た
)
きくるまれる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この二人を照らしているものは、
練絹
(
ねりぎぬ
)
で包んだような、
朧
(
おぼ
)
ろの月であった。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
手の裏かえす無情さは、足も手もぐたりとした、烈日に裂けかかる氷のような
練絹
(
ねりぎぬ
)
の、紫玉のふくよかな胸を、
酒焼
(
さかやけ
)
の胸に
引掴
(
ひッつか
)
み、
毛脛
(
けずね
)
に挟んで
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その日の彼の支度を見ると、肌には
練絹
(
ねりぎぬ
)
の二ツ小袖、上には墨で蝶散らしを描いた白の鎧
直垂
(
ひたたれ
)
をかけ、
兜
(
かぶと
)
はかぶらず、
浅葱
(
あさぎ
)
絹のふくろ頭巾に、朱の
頬楯
(
ほおだて
)
をして、緒を
顎
(
あご
)
にむすんでいた。
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
資朝の前に立たせられたは、まだ
御年
(
おんとし
)
御
(
おん
)
十七歳ばかり、はなはだお若くはあらせられたが、ご身長抜群の
御方
(
おんかた
)
で、白の
練絹
(
ねりぎぬ
)
で御顔を包まれ、黒の道服を召されていた。ご微行なるがゆえであろう。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
手の裏かへす無情さは、足も手もぐたりとした、
烈日
(
れつじつ
)
に裂けかゝる氷のやうな
練絹
(
ねりぎぬ
)
の、紫玉の、ふくよかな胸を、
酒焼
(
さかやけ
)
の胸に
引掴
(
ひっつか
)
み、
毛脛
(
けずね
)
に挟んで
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
まっ白な
練絹
(
ねりぎぬ
)
の
寝衣
(
ねまき
)
をきた重喜の相貌が、
手雪洞
(
てぼんぼり
)
のかげに別人のようにすごくみえたので、伊織がヒヤリとして腰をうかしかけると、重喜の目がジイとすわって、彼をそこへ居すくませた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
豐岡
(
とよをか
)
から
來
(
く
)
る
間
(
あひだ
)
、
夕雲
(
ゆふぐも
)
の
低迷
(
ていめい
)
して
小浪
(
さゝなみ
)
に
浮織
(
うきおり
)
の
紋
(
もん
)
を
敷
(
し
)
いた、
漫々
(
まん/\
)
たる
練絹
(
ねりぎぬ
)
に、
汽車
(
きしや
)
の
窓
(
まど
)
から
手
(
て
)
をのばせば、
蘆
(
あし
)
の
葉越
(
はごし
)
に、
觸
(
さは
)
ると
搖
(
ゆ
)
れさうな
思
(
おもひ
)
で
通
(
とほ
)
つた。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それはまたおそろしく大きな
旗幟
(
はたのぼり
)
だった。幅は
練絹
(
ねりぎぬ
)
で三幅。長さは一丈三尺。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ただ引伏せた
練絹
(
ねりぎぬ
)
に似た、死んだようなお冬の姿が、
撓
(
しな
)
うばかりに揺れたのであります。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、
練絹
(
ねりぎぬ
)
の縄と短刀とを、突きつけた。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
陽炎
(
かげらふ
)
は、
爾
(
しか
)
く、
村里
(
むらざと
)
町家
(
まちや
)
に
見
(
み
)
る、
怪
(
あや
)
しき
蜘蛛
(
くも
)
の
囲
(
ゐ
)
の
乱
(
みだ
)
れた、
幻影
(
まぼろし
)
のやうなものでは
無
(
な
)
く、
恰
(
あだか
)
も
練絹
(
ねりぎぬ
)
を
解
(
と
)
いたやうで、
蝶
(
てふ/\
)
のふわ/\と
吐
(
つ
)
く
呼吸
(
いき
)
が、
其
(
その
)
羽
(
はね
)
なりに
飜々
(
ひら/\
)
と
拡
(
ひろ
)
がる
風情
(
ふぜい
)
で
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
自分が
彳
(
たたず
)
んでいた七八間さきの、
切立
(
きった
)
てに二丈ばかり、沖から燃ゆるような
紅
(
くれない
)
の日影もさせば、一面には山の緑が月に映って、
練絹
(
ねりぎぬ
)
を裂くような、
柔
(
やわらか
)
な
白浪
(
しらなみ
)
が、根を一まわり結んじゃ解けて拡がる
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
練絹
(
ねりぎぬ
)
の
五色
(
ごしき
)
の
絲
(
いと
)
を
綆
(
つな
)
とす。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
練
常用漢字
小3
部首:⽷
14画
絹
常用漢字
小6
部首:⽷
13画
“練”で始まる語句
練
練塀
練馬
練習
練塀小路
練衣
練磨
練兵場
練物
練道