祖父そふ)” の例文
しかし祖父そふきたいと思ってるのは、そんなものではなかった。祖父そふは口をつぐんで、もうクリストフに取りあわないふうをした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
炭焼すみやきじいさんの、まご秀吉ひできちは、よく祖父そふ手助てだすけをして、やまからたわらはこぶために、村端むらはずれ坂道さかみちのぼったり、くだったりしました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
磯崎いそざき神社前の海辺うみべに組立てられた高さ五十尺のやぐらの上には、薄汚れた一枚の座布団ざぶとんを敷いて、祖父そふと孫とが、抱き合っていた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
維盛卿は父に向ひ、『先刻祖父そふ禪門ぜんもん御勸おんすゝめありし宋朝渡來の醫師、聞くが如くんば世にも稀なる名手めいしゆなるに、父上のこばみ給ひしこそ心得ね』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「そうそう、おまえの祖父そふは、生涯、時を得ず終ってしまったが、源家の残党は、義経というものを育てて、時を得たのだ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うちにゐると祖父そふから終日いちんちなんだかだと解らない事を言つて、がみ/″\言はれるのが五月蠅くてたまらないので、どこか一人かけ離れたところへ遁げて
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
祖父そふにつきはなされた松女まつじょ祖母そぼにまつわって祖母そぼにしかられ、しくしくべそをかいて母のこしにまつわるのである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
父を説きつけて祖父そふをつれもどったという点は、第一種のもっこをもってかえろうといった話であり、それから家にかくして置くうちに祖父の智恵によって
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すると祖父そふからぐずぐず言われた。それからかれは、わたしたちがフランスにいたころ、食べるだけのお金が取れていたか、わたしから聞き出そうとした。
父同様に育ててくれた祖父そふに、一眼会いたいというお美夜坊のまごころ——また、不孝をしつづけてきた老父に、最後の詫びを願いたいというお蓮どのの赤誠せきせい
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
此處こゝあるじ多辨はなしずきにやしわぶき勿躰もつたいらしくして長々なが/\物語ものがたいでぬ、祖父そふなりしひと將軍家しやうぐんけおぼあさからざりしこと、いまあしにて諸侯しよかうれつにもくわたまふべかりしを不幸ふかう短命たんめいにして病沒びやうぼつせしとか
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ちなみにいふ、旧友きういう寺泊てらとまりすむ丸山氏の(医家)祖父そふ博学はくがくきこえありし人なりき。
うもさう一時いちどきまとめてかれるとわからぬね、このぷくつゐぢくおれ祖父そふ拝領はいりやうをしたものぢやがね、かまなにかはみなおれが買つたんだ、しか貴様きさま見込みこみくらゐものがあるぢやらう、此四品このよしなで。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それがし祖父そふ興津右兵衛景通おきつうひょうえかげみちもうしそろ永正えいしょう十一(十七)年駿河国するがのくに興津おきつに生れ、今川治部大輔いまがわじぶたいふ殿に仕え、同国清見きよみせきに住居いたし候。永禄えいろく三年五月二十日今川殿陣亡じんぼう遊ばされそろ時、景通かげみち御供おともいたし候。
興津弥五右衛門の遺書 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして爪先つまさきでぐるっとまわって、ふりむくと、半開はんびらきのドアあいだから、こちらを見ている祖父そふの顔が見えた。祖父に笑われてるようながした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
林檎色りんごいろほおをした、健康そうな少女たちばかりすんで、いったい、なにを職業とし、父や兄や祖父そふなどはないものかしら?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうえわたしの言ったほかになにかつけくわえて言ったらしく、みんなをわらわせた。祖父そふはたびたび目をぱちくりやって、「どうもえらい犬だ」と言った。
あちらのへやで、明日あした宿題しゅくだいをしていた正二しょうじは、何事なにごとかとおもって、すぐに祖父そふのところへやってきました。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
祖父そふは弟のする事は何をしても叱らないで、自分ばかりを仇敵かたきのやうにがみ/″\いふのである。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
祖父そふ奧木佐十郎が顔を出しに参りましたのを見ると、親のかたきが討ちたいからおひまを戴いてくれと云うので、祖父じいが亀甲万の主人に面会致し、只管ひたすら暇をくれるようにと頼み、幾ら止めてもきません。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
松女は祖父そふにすがりついて
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それから一週間しゅうかんたって、クリストフがそのことをすっかりわすれてしまった頃、祖父そふはもったいぶった様子ようすで、彼に見せるものがあるといった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
聡明そうめいなるそなたにこれ以上いじょう多言たごんようすまいと思う。せつに、そなたの反省はんせいをたのむ。そしてそなたが祖父そふ機山きざんより以上いじょう武士もののふぎょうをとげんことをいのる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祖父そふれいの大きないすにこしをかけて、もうゆうべからすわったなりいるように、火の前にがんばっていた。
おとこは、なんでも、おもったことは、いうのだぞ。)と、祖父そふの、ごろのいいつけが、かびました。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)
にも、そのかずすくない利助りすけさくを、祖父そふにいれて、それをあいしたこと、そのさかずきはながあいだふるびた仏壇ぶつだんのひきだしのなかれてあったのを、自分じぶん
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わしひとりのいのちをとるのに、なんとぎょうぎょうしいことであろう。冥土めいどにおわす祖父そふ信玄しんげんやその他の武将たちによい土産話みやげばなし甲州侍こうしゅうざむらいのなかにも、こんな卑劣者ひれつものがあったと笑うてやろう!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おりも、おり、れいまごは、このこのまちとおりかかりました。そして、はなやかな、まつりの光景こうけいて、自分じぶんいえ祖父そふまでは、この東京とうきょうんでいたのだなとおもいました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正直しょうじきな百しょうだった、祖父そふや、父親ちちおやは、みんなといっしょにはたらくことをよろこび、いいことがあればみんなとともにたのしみ、かなしいことがあれば、ともにくるしむというふうであったのを
武ちゃんと昔話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくは、祖父そふが、ひとりへやのうちで、たいくつそうにしていられるので、そばへいって
世の中のために (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、また、「自分じぶん祖父そふは、よほど、趣味しゅみふかい、ききであった。」とおもいました。そして、かれは、そうおもうと、いままでかんじなかった、なつかしさを、祖父そふたいしてかんずるようになったのです。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先生せんせいからのはなしとあって、祖父そふは、わけもなく賛成さんせいしたのです。
しいたげられた天才 (新字新仮名) / 小川未明(著)