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疾
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とく
ふりがな文庫
“
疾
(
とく
)” の例文
歌物語
(
うたものがたり
)
に何の
癡言
(
たはこと
)
と聞き流せし戀てふ魔に、さては吾れ
疾
(
とく
)
より
魅
(
み
)
せられしかと、初めて悟りし今の刹那に、瀧口が心は
如何
(
いか
)
なりしぞ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
七
時過
(
じすぎ
)
に
彼
(
かれ
)
ははつとして、
此
(
この
)
夢
(
ゆめ
)
から
覺
(
さ
)
めた。
御米
(
およね
)
が
何時
(
いつ
)
もの
通
(
とほ
)
り
微笑
(
びせう
)
して
枕元
(
まくらもと
)
に
曲
(
かゞ
)
んでゐた。
冴
(
さ
)
えた
日
(
ひ
)
は
黒
(
くろ
)
い
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
を
疾
(
とく
)
に
何處
(
どこ
)
かへ
追
(
お
)
ひ
遣
(
や
)
つてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
こは富山唯継が
住居
(
すまひ
)
にて、その女客は宮が母なり。
主
(
あるじ
)
は
疾
(
とく
)
に会社に出勤せし後にて、例刻に
来
(
きた
)
れる髪結の今方
帰行
(
かへりゆ
)
きて、まだその跡も掃かぬ程なり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ず
出行
(
いでゆき
)
たり元より足も達者にて一日に四十里づつ
歩行
(
あるく
)
珍
(
めづら
)
しき若者なれば程なく松の尾と
云
(
いふ
)
宿迄
(
しゆくまで
)
來懸
(
きかゝ
)
りしに最早
疾
(
とく
)
日は暮て
戌刻頃
(
いつゝごろ
)
とも思ひしゆゑ夜道を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ひとたび歩を急にせんか、八田は
疾
(
とく
)
に渠らを通り越し得たりしならん、あるいはことさらに歩をゆるうせんか、眼界の外に渠らを送遣し得たりしならん。
夜行巡査
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
「殿には学問を好ませられ、多くの書物もご覧のことゆえ、宇治拾遺物語などは
疾
(
とく
)
に承知でございましょうな?」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「いかにも! すべて殿の
命
(
めい
)
でござる。いたるところに
疾
(
とく
)
に手配してあるによって、安堵して追いつめられい!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
笹屋とは飯山の町はづれにある飲食店、農夫の為に地酒を暖めるやうな
家
(
うち
)
で、老朽な敬之進が浮世を忘れる隠れ家といふことは、
疾
(
とく
)
に丑松も承知して居た。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
抑
(
そ
)
も一朝一夕の
故
(
ゆゑ
)
に非らずサ、
遂
(
つひ
)
に
石心木腸
(
せきしんもくちやう
)
なる井上与重の如きをして、物や思ふと問はしむる迄に至つたのだ、僕の如きは
疾
(
とく
)
の昔から彼女をして義人を得
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
その村長の名はニェルバ・タルボと言って誠に温順な人で、その妻君は
疾
(
とく
)
に
逝
(
かく
)
れて二人の娘があるです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
さア、これで宜しい、私が
父親
(
てゝおや
)
なれば
疾
(
とく
)
に手打にして命はないのだから、手前の命は亡いものと心得ろ。
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
もう此家は
疾
(
とく
)
に起きていると思われたからだ。私は其の時からこの家にはどういう人々が住んでいるだろうかと思った。私は直ちに生活に奮闘している人々だと考えた。
ある日の午後
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
焼
(
た
)
く香の煙の煙立つ夕を
疾
(
とく
)
も来れと待つ間、一字三礼妙典書写の功を積みしに、思ひ出づるも腹立たしや、たゞに朕が現世の事を破りしのみならず、また未来世の道をも妨ぐる人の振舞
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「狐を釣るに
鼠
(
ねずみ
)
の
天麩羅
(
てんぷら
)
を用ふる由は、われ
猟師
(
かりうど
)
に
事
(
つか
)
へし故、
疾
(
とく
)
よりその法は知りて、
罠
(
わな
)
の掛け方も心得つれど、さてその
餌
(
えば
)
に供すべき、鼠のあらぬに
逡巡
(
ためら
)
ひぬ」ト、いひつつ天井を
打眺
(
うちなが
)
め
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
長い年月の間には、種々の事情の爲、先例そのものの精神が
疾
(
とく
)
に失はれても、その形式だけを大事に守つて行く。支那人の習慣のうちには、名實隔離して、他國人から觀ると隨分奇妙なことが多い。
支那人の文弱と保守
(旧字旧仮名)
/
桑原隲蔵
(著)
起していては脳が
疾
(
とく
)
に消えて
亡
(
な
)
くならなければならん。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
修善寺
(
しゅぜんじ
)
が村の名で
兼
(
かね
)
て寺の名であると云う事は、行かぬ前から
疾
(
とく
)
に承知していた。しかしその寺で鐘の代りに太鼓を
叩
(
たた
)
こうとはかつて
想
(
おも
)
い至らなかった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
同じく舎弟の七郎にて
候
(
そうろう
)
、大塔宮様お迎えとして、
疾
(
とく
)
よりここにて待ち受けたり! ……勿体なくも宮家に対し
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
久八は
疾
(
とく
)
に
察
(
さつ
)
し何事も
心切
(
しんせつ
)
を盡し内々にて
小遣錢
(
こづかひぜに
)
迄も與へ
陰
(
かげ
)
になり
日向
(
ひなた
)
になり心配して
呉
(
くれ
)
けるゆゑ久八が
忠々
(
まめ/\
)
敷心に
愛
(
めで
)
て千太郎は奉公に來し心にて
辛抱
(
しんばう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
外「お前の
家
(
うち
)
に百
幅
(
ぷく
)
幽霊の掛物があるという事で
疾
(
とく
)
より見たいと思って居たが、
何卒
(
どうぞ
)
見せて下さい」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
しかるに
疾
(
とく
)
より聞きつけたと覚しく、娘の立姿、こぼるるもみじの葉の中へ、はらりと出でて見ゆるや否や、床几を立って、
恭
(
うやうや
)
しく帽子を
踵
(
くびす
)
の
辺
(
あたり
)
まで、手とともにずッと垂れて
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
疾
(
とく
)
時機
(
とき
)
の来よ此源太が
返報
(
しかへし
)
仕様を見せて呉れむ、清吉ごとき
卑劣
(
けち
)
な野郎の為た事に何似るべき歟、
釿
(
てうな
)
で片耳殺ぎ取る如き下らぬ事を我が為うや、我が腹立は木片の火のぱつと燃え立ち直消ゆる
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
振
(
ふ
)
りながら何の御禮に及びませうぞ
夫
(
それ
)
其處
(
そこ
)
は
水溜
(
みづたま
)
り此處には石が
轉
(
ころ
)
げ有りと
飽迄
(
あくまで
)
お安に安心させ
何處
(
どこ
)
へ
連行
(
つれゆき
)
殺
(
ばら
)
さんかと心の内に目算しつゝ麹町をも
疾
(
とく
)
過
(
すぎ
)
て初夜の
鐘
(
かね
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
帰る前に、実は本屋からも少しは前借はしたんだが、それは
疾
(
とく
)
の昔に使ってしまったんだと自白した。寺尾の帰ったあとで、代助はああ云うのも一種の人格だと思った。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、拙者代わりの品物を作り、本物とすり換えて本物の独楽は、
疾
(
とく
)
より拙者所持しておる。
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何がさて母君は
疾
(
とく
)
に世に亡き
御方
(
おんかた
)
なれば、出来ぬ相談と申すもの、とても出来ない相談の出来よう
筈
(
はず
)
のなきことゆえ、いかなる鼻もこれには弱りて、しまいに泣寝入となるは
必定
(
ひつじょう
)
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
斯うやって
父子
(
おやこ
)
で度々遊びに来るのは宜しいが、多助も馬鹿でない男だから、
疾
(
とく
)
より
訝
(
おか
)
しいと感附いて居るだろうが、来る度に厭な顔もしないで、旦那様
宜
(
よ
)
くいらっしゃいました
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
帰る前に、実は本屋からも少しは前借はしたんだが、それは
疾
(
とく
)
の
昔
(
むかし
)
に
使
(
つか
)
つて仕舞つたんだと自白した。寺尾の帰つたあとで、代助はあゝ云ふのも一種の人格だと思つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
目付の情を
以
(
もっ
)
て柔和に調べ
遣
(
つか
)
わすに、以ての
外
(
ほか
)
の事を申す奴だ、
疾
(
とく
)
に証拠あって取調べが届いて
居
(
お
)
るぞ、最早
遁
(
のが
)
れんぞ、兄弟共に
今日
(
こんにち
)
物頭
(
ものがしら
)
へ預け置く、勘八其の方は不埓至極の奴
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
もう
疾
(
とく
)
に、
余所
(
よそ
)
の
歴
(
れっ
)
きとした奥方だが、その私より年上の娘さんの頃、秋の山遊びをかねた茸狩に連立った。男、女たちも大勢だった。茸狩に
綺羅
(
きら
)
は要らないが、山深く分入るのではない。
小春の狐
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それは
疾
(
とく
)
より承知でござる」
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何事とは
不埓
(
ふらち
)
な奴だ、汝が
疾
(
とく
)
より我が召使國と不義
姦通
(
いたずら
)
しているのみならず、
明日
(
みょうにち
)
中川にて
漁船
(
りょうせん
)
より我を突き落し、命を取った暁に、うま/\此の飯島の家を
乗取
(
のっと
)
らんとの悪だくみ
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
自分はただ
俯向
(
うつむ
)
いていた。いつもの兄ならもう
疾
(
とく
)
に手を出している時分であった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
桂木は
切尖
(
きっさき
)
を
咽喉
(
のど
)
に、
剣
(
つるぎ
)
の峰からあはれなる顔を出して、うろ/\
媼
(
おうな
)
を求めたが、其の
言
(
ことば
)
に従はず、
故
(
ことさ
)
らに
死地
(
しち
)
に
就
(
つ
)
いたを憎んだか、
最
(
も
)
う影も形も見えず、推量と多く
違
(
たが
)
はず、家も
床
(
ゆか
)
も
疾
(
とく
)
に消えて
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
澤田右衞門夫婦は
疾
(
とく
)
に相果て、今は養子の代に相成って
居
(
お
)
る事ゆえ母の行方さえとんと分らず、
止
(
や
)
むを得ず
此処
(
こゝ
)
に十日ばかし、
彼処
(
あすこ
)
に五日逗留いたし、
彼方此方
(
あちこち
)
と心当りの
処
(
ところ
)
を尋ね
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
すべてが恐ろしい魔の支配する夢であった。七時過に彼ははっとして、この夢から
覚
(
さ
)
めた。御米がいつもの通り微笑して枕元に
曲
(
かが
)
んでいた。
冴
(
さ
)
えた日は黒い世の中を
疾
(
とく
)
にどこかへ追いやっていた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また一座の
中
(
うち
)
に、下宿の二階に住んで六畳の半ばを
蔽
(
おお
)
う白熊の毛皮を敷いて、ぞろりと着流して坐りながら、下谷の地を操縦する、神機軍師
朱武
(
しゅぶ
)
あって、
疾
(
とく
)
より秘計を
囲
(
めぐ
)
らし、兵を伏せて置いたれば
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母「はい、源次郎お國は私が手引をいたしまして
疾
(
とく
)
に逃がしましたよ」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
疾
常用漢字
中学
部首:⽧
10画
“疾”を含む語句
疾風
疾病
疾走
病疾
口疾
疾患
疾駆
疾風迅雷
疾呼
痔疾
気疾
疾足
疾駈
瘧疾
疾苦
速疾
疫疾
癈疾
疾視
目疾
...