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うと
ふりがな文庫
“
疎
(
うと
)” の例文
下剃の幾松を
疎
(
うと
)
ましく見たのはまことに自然な成行きで、幾松がそれを悲観して、極度の
憂鬱症
(
メランコリー
)
に陥ったのも考えられることでした。
銭形平次捕物控:122 お由良の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
老年期の父の血を受けたせいか、とかく感激性に乏しく、情熱にも欠けており、骨肉の愛なぞにも
疎
(
うと
)
いのだと思われてならなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
鷺
(
さぎ
)
なりと
僞
(
いつは
)
り
喰
(
くは
)
せ我を
癩病
(
らいびやう
)
になし妻子親族に
疎
(
うと
)
ませたり故に餘儀なく我古郷を立去て原の
白隱禪師
(
はくいんぜんし
)
の御弟子となり日毎に
禪道
(
ぜんだう
)
の
教化
(
けうげ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
『新古今』以後門派の争ひ
烈
(
はげ
)
しく、形式を論じて実際に
疎
(
うと
)
く、花はかく詠むもの月はかく詠むもの、千鳥の名所は
何処々々
(
どこどこ
)
に限り
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
気先
(
きさき
)
が
疎
(
うと
)
くて察しられなかった。ベケットもエベットも顔にこそは出さないが、そういうことならどんなにか迷惑したこったろう。
重吉漂流紀聞
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
しかも村野はひどく筆
不精
(
ぶしょう
)
な
質
(
たち
)
で、赤座の手紙に対して三度に一度ぐらいしか返事をやらないので、自然に双方のあいだが
疎
(
うと
)
くなって
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
去る者日々に
疎
(
うと
)
しとは一わたりの道理で、私のような浮世の落伍者は
反
(
かえっ
)
て年と共に死んだ親を慕う心が深く、厚く、
濃
(
こまや
)
かになるようだ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
さるほどに
親族
(
うから
)
おほくにも
疎
(
うと
)
んじられけるを、
七
朽
(
くち
)
をしきことに思ひしみて、いかにもして家を
興
(
おこ
)
しなんものをと
八
左右
(
とかく
)
にはかりける。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
またいかに他人が自分を
疎
(
うと
)
んじても、我はあくまでも自ら
重
(
おも
)
んじて、所信を
貫
(
つらぬ
)
くという、みずから
潔
(
いさぎよ
)
しとするところがなければならぬ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
一説に曰く、桔梗の方が
俄
(
にわ
)
かに公を
疎
(
うと
)
んずるようになったのは、公が最初の約束に
背
(
そむ
)
いて則重の
嗣子
(
しゝ
)
を殺害したのが原因であると。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
けれども
簓
(
ささら
)
で神経を洗われる不安はけっして起し得なかった。要するに彼らは世間に
疎
(
うと
)
いだけそれだけ仲の好い夫婦であったのである。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
日頃、玄蕃のようでなく、何となく主君から
疎
(
うと
)
まれていることを知っている勝助は、常に口数を慎んでいるふうであったが、このとき
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しばらくの間友の下宿へも
疎
(
うと
)
くなっていたが、悲しい事情のために再び家をたたんで下宿住いをしなければならぬ事になった時
雪ちゃん
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
読書好きな人で、
暇
(
ひま
)
さえあれば居間にこもって書物を読んだり書き物をしたりしている。
利殖
(
りしょく
)
の道には
疎
(
うと
)
い人だと、誰でもが言っていた。
万年青
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
兄弟の父は今申す鎧師、その頃は鎧師などいう職業はほとんど
頽
(
すた
)
っていましたし、それに世渡りの才は
疎
(
うと
)
い人で、家は至って貧乏でした。
幕末維新懐古談:77 西町時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
しかし山津波に襲われた夜の、父と母とのあの呼び声だけで、自分が
疎
(
うと
)
まれたり故意に冷たく扱われていたのでないことがわかったのだ。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
戸
(
かど
)
のお札をさえ見掛けての御難題、坊主に茶一つ恵み給うも功徳なるべし、わけて、この通り耳も
疎
(
うと
)
し、
独旅
(
ひとりたび
)
の
辿々
(
たどたど
)
しさもあわれまれよ。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は斯う口に出かゝる問ひを、下を向いてぐつと
唾
(
つば
)
と一しよに呑み込み呑み込みし、時に
疎
(
うと
)
ましい探るやうな目付を彼に向けた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「三郎は然ういうことに
疎
(
うと
)
い方ですから、見ても分らないんですわ。年も二十一から二十六までを順々に言っているんですもの」
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
相覧の子を
周覧
(
ちかみ
)
と云つた。父は子を教ふるに意を用ゐなかつた。周覧は狭斜に出入し、悪疾に染まつて
聾
(
みゝしひ
)
になり、終に父に
疎
(
うと
)
んぜられた。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
同時にまた私の進まなかった理由の
後
(
うしろ
)
には、去る者は日に
疎
(
うと
)
しで、以前ほど悲しい記憶はなかったまでも、私自身打ち殺した
小夜
(
さよ
)
の面影が
疑惑
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それかの
女
(
をんな
)
は、
最初
(
はじめ
)
の夫を失ひてより、千百年餘の間、
蔑視
(
さげす
)
まれ
疎
(
うと
)
んぜられて、彼の出るにいたるまで招かるゝことあらざりき 六四—六六
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
彼の
為人
(
ひととなり
)
を知りて畜生と
疎
(
うと
)
める貫一も、さすがに艶なりと思ふ心を制し得ざりき。満枝は貝の如き前歯と隣れる金歯とを
露
(
あらは
)
して
片笑
(
かたゑ
)
みつつ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
芝居は眼に
愬
(
うつ
)
たへる方が主で、耳に愬たへる方が従であるといふやうに解釈するものがあるとすれば、それはあまり芝居の歴史に
疎
(
うと
)
すぎます。
演劇漫話
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
それからややしばらくの間その少年は、気が
疎
(
うと
)
くなっていたようだったと、同じ村の今三十五六の婦人が話をしたという(早川孝太郎君報)。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
紅のリボンのお駒というは、今年十五にて、これも先妻の腹なりしが、夫人は姉の浪子を
疎
(
うと
)
めるに引きかえてお駒を愛しぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
このグルウプを
疎
(
うと
)
んじて来出し、そういうわたくしまで、何だかこれ等の友達に秘密を構えねばならなくなった仕儀を感じて来たからでした。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私は都会育ちで木や草には馴染みがうすく、とんと
疎
(
うと
)
い方なのだが、いつかいぬしでの樹に親しみを感ずるようになった。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
すゝめもなさず
去
(
さ
)
るものは
日々
(
ひゞ
)
に
疎
(
うと
)
しの
俚諺
(
ことわざ
)
もあり
日
(
ひ
)
をだに
經
(
ふ
)
れば
芳之助
(
よしのすけ
)
を
追慕
(
つゐぼ
)
の
念
(
ねん
)
も
薄
(
うす
)
らぐは
必定
(
ひつぢやう
)
なるべし
心
(
こゝろ
)
ながく
時
(
とき
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
しかるに私たちの物を識る力は、時間と空間とに縛られている。時が隔たれば忘却し処が異なれば
疎
(
うと
)
くならざるを得ない。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
二人は、一年ぐらいは仲
善
(
よ
)
しだったが、だんだん、いろんなことで、貧富の区別が、
弁
(
わか
)
りはじめると、自然
疎
(
うと
)
くなった。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
飯の
炊
(
た
)
き方まで手を取らないまでにして世話してもらったのであるが、月日の
経
(
た
)
つに従い、この新夫婦はその恩義を忘れたかのように
疎
(
うと
)
くなった。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
わたしは学問をする人間で、書物に
埋
(
うず
)
もれているものですから、実生活のほうには、これまでずっと
疎
(
うと
)
かったわけです。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
吉原のことも遂に去るもの日々に
疎
(
うと
)
く、忘れるような事になりましょうから、早く御新造をお持たせ申すが宜うございます、万事
私
(
わたくし
)
にお任せなさい
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
かゝる事は
仏
(
ほとけ
)
に
疎
(
うと
)
き人らにもかたりきかせて
教化
(
けうぐゑ
)
の
便
(
よすが
)
ともなすべくおもへども、たしかに見とゞけたりといふ
証人
(
しやうにん
)
なければ人々
空言
(
そらこと
)
とおもふらん
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
西田先生は、世事に
疎
(
うと
)
いいわゆる哲学者ではない。人生の種々の方面について先生が深い理解を持っていられるのを知って驚くことがしばしばある。
西田先生のことども
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
予は詩人がしばらく空しき想像を離れて、先づ天地と人生とを見んことを希望す。彼等世に遠かるが故に世と
疎
(
うと
)
き也。
詩人論
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
只圓翁の茶事に
疎
(
うと
)
かりし事は御説の通りに候。そこに只圓翁の尊さが出て来るのに候。只圓翁の茶の手前は決してうまいものにては無かりし筈に候。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
しかし、お君はムク犬を粗末にするわけではなく、ムク犬もまた主人を
疎
(
うと
)
んずるというわけではありませんでした。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
譬へば木葉落ち盡したる梢にとまる小鳥の如し、そを
籠
(
こ
)
の内に養ひしは世の人にいやしまれ
疎
(
うと
)
まるゝ猶太教徒なり
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
事情に
疎
(
うと
)
い外国の婦人の身をもって、果して適当な配偶者を異郷に
見出
(
みいだ
)
すことが出来たであろうか、こうした
掛念
(
けねん
)
がありありと老婦人の顔に読まれた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ここを
叩
(
たた
)
いて開けて頂こうかしら。いやいや、この夜更けに、そんなことをしたなら、はしたない心の内を見すかされ、
猶更
(
なおさら
)
疎
(
うと
)
んじられはしないかしら。
人でなしの恋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
斯
(
かく
)
の如く将門思惟す、
凡
(
およ
)
そ当夜の敵にあらずといへども(良兼は)脈を
尋
(
たづ
)
ぬるに
疎
(
うと
)
からず、氏を建つる骨肉なり
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
その時から朱のくるのが漸く
疎
(
うと
)
くなって、月に一度か二度しかこないようになった。ある夜来て細君に言った。
陸判
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
併
(
しか
)
し頭
許
(
ばか
)
りで手の
疎
(
うと
)
い国民である上に英政府が多年の巧妙な経営に
馴致
(
じゆんち
)
されて居るのだから、支那の革命党の様な実行の危険は永久に
起
(
おこ
)
るまいと想はれる。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「風流の道は賢くとも、武道は
疎
(
うと
)
かろうと存じます。武士の魂の刀など、どんなものを差しておらるるやら」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかるに本院の侍従にのみ思いを遂げず、その欠点を聞いて思い
疎
(
うと
)
みなばやと思えど何一つの欠点を聞かず。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
伯父は
幾分
(
いくぶん
)
か眉を
顰
(
ひそ
)
めてその
思慮無
(
はしたな
)
きを
疎
(
うと
)
んずる色あれども伯母なる人は
親身
(
しんみ
)
の
姪
(
めい
)
とてその
心根
(
こころね
)
を哀れに思い
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それをまかしと云って、その時期には自然○○○が
疎
(
うと
)
くなり、稼ぎが低くなるのであるから、その対策として、楼主側では「釘抜」と呼ぶ制裁法を
具
(
そな
)
えていた。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
少し月の光が
疎
(
うと
)
く成つたと思ふやうでも、まだ瓜畑には一杯の明るさであります。蚊帳越しではありますが彼の目には白い瓜がやつぱり目に映るのでありました。
白瓜と青瓜
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
疎
常用漢字
中学
部首:⽦
12画
“疎”を含む語句
疎々
疎遠
気疎
疎髯
疎通
疎忽
疎漏
疎懶
疎外
疎略
空疎
疎濶
疎匆
疎雑
佳人意漸疎
可疎
疎林
疎開
疎隔
疎末
...