“珍(めずら)” の例文
「もう、半月(はんつき)もたちゃ、すいかだって珍(めずら)しくはない。いまなら値(ね)が張(は)っても売(う)れるだろう。」と、主人(しゅじん)は、つけくわえていいました。
初夏の不思議 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いったい吉野の山奥から熊野(くまの)へかけた地方には、交通の不便なために古い伝説や由緒(ゆいしょ)ある家筋の長く存続しているものが珍(めずら)しくない。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
けれどもわたしは、それよりももっと珍(めずら)しい、もう一つの都市を知っています。それは都市の死骸ではなくて、都市の幽霊(ゆうれい)です。
何も世間をあっと言わせるような、珍(めずら)しい生活形式を強(し)いて作りだそうというのではない。形式は、むしろ平凡(へいぼん)なほうがいい。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ただ、赤いユニホォムを着た、でぶの爺(じい)さんが、米国一流のハムマア投げ、と、きかされ、もの珍(めずら)しく、眺(なが)めていたのだけ記憶(きおく)にあります。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ところが、その追いまわし方というのが、こんなこと僕にはさっぱり新しくも珍(めずら)しくもない、といった風だったのですよ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
奴里能美(ぬりのみ)のうちに珍(めずら)しい虫を飼(か)っておりますので、ただそれをご覧(らん)になるためにおでかけになりましたのでございます。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
田舎(いなか)に珍(めずら)しい色白の美人である。氏長は、心がうごいて馬から降りると、その女が桶をささえている左の手をとった。
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
お前(まえ)さんのような人(ひと)は、いまどき珍(めずら)しい。それじゃ、あそこへ井戸(いど)を掘(ほ)らしてあげよう。どんな井戸(いど)でも掘(ほ)りなさい。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
春に新葉(しんよう)と共(とも)に茎上(けいじょう)に短い花穂(かすい)をなし、数花が咲くのだが、ちょっと他に類のない珍(めずら)しい花形(かけい)である。これを地に栽(う)えるとよく育ち、毎年花が着(つ)く。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
来れば人の及びもつかぬ珍(めずら)かな音物(いんもつ)を携え、召使にも愛想をこぼし、わけて登子を笑わすことに妙をえていた。で、大蔵の家中誰でも、彼を目(もく)すに
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
容器を熔融水晶(ようゆうすいしょう)で作ることはあまり珍(めずら)しくないとして、その枝(えだ)の管から導線を引き出す場合、絶対に空気が漏(も)れず
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
これは熨斗目(のしめ)の紋着振袖(もんつきふりそで)という、田舎に珍(めずら)しい異形(いぎょう)な扮装(なり)だったから、不思議な若殿、迂濶(うかつ)に物も言えないと考えたか、真昼間(まっぴるま)、狐が化けた? とでも思ったでしょう。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人々は珍(めずら)しがってシャクの譫言を聞きに来た。おかしいのは、シャクの方でも(あるいは、シャクに宿る霊共の方でも)多くの聞き手を期待するようになったことである。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
と愛想(あいそ)をいって、宿へも女にも幾分(いくぶん)か心づけをする。書生としては珍(めずら)しい客だから宿の受けはもちろんよい、火鉢に茶具(ちゃぐ)、比較的下等でないのを取りそろえて貸してくれた。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
ゆうべ吉原(よしわら)で振(ふ)り抜(ぬ)かれた捨鉢(すてばち)なのが、帰(かえ)りの駄賃(だちん)に、朱羅宇(しゅらう)の煙管(きせる)を背筋(せすじ)に忍(しの)ばせて、可愛(かわい)いおせんにやろうなんぞと、飛(と)んだ親切(しんせつ)なお笑(わら)い草(ぐさ)も、数(かず)ある客(きゃく)の中(なか)にも珍(めずら)しくなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ところどころに見(み)なれない草木(くさき)が生(は)えて、珍(めずら)しい匂(にお)いの花(はな)が咲(さ)いていました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「珍(めずら)しい芸当だ」——ルピック氏はいう——「そいつは、と、なんかの役に立つさ。ことにおっつけ、一人きりで、駱駝(らくだ)にも乗らず、砂漠の中で道に迷いでもしたような時にはなおさらだ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
東京を出た事のないものには蜜柑の生(な)っているところはすこぶる珍(めずら)しいものだ。あの青い実がだんだん熟してきて、黄色になるんだろうが、定めて奇麗(きれい)だろう。今でももう半分色の変ったのがある。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その度が強くなると、世間に珍(めずら)しくない嘲笑(ちょうしょう)の客体となるのだが、少しは期待してよいだろう。そしてそのねらいを含めて、子供に対する自分の態度の舵(かじ)をとって行くことは、ひそかな喜びでもある。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
「珍(めずら)しかとじゃろな、二三日泊(とま)って見たらどうかな」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
子供(こども)らは、はじめのうちは、おじいさんの弾(ひ)くバイオリンの音(ね)を珍(めずら)しいものに思(おも)って、みんなそのまわりに集(あつ)まって聞(き)いていました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこは大阪にはちょっと珍(めずら)しい樹木の繁(しげ)った場所であって琴女の墓はその斜面の中腹を平らにしたささやかな空地(あきち)に建っていた。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
すると、二三日経(た)って、甲板(かんぱん)で逢った内田さんがぼくに、「坂本さん、お願いがあるんやけれど」と珍(めずら)しく改まった調子です。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
テーブルの上には、この塾堂にしては珍(めずら)しい、豪華(ごうか)な洋なまなどを盛(も)った菓子鉢(かしばち)がおいてあったが、それも朝倉先生が一つつまんだきりだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
墓の上のプルチネッラ、それはまことに珍(めずら)しいこっけいなものです。もしも見物人がこのお気に入りの役者を見たならば、きっとさわぎたてたことでしょう。
しかしまた、去るにも惜しいとするジレンマにも陥(お)ちる。なお珍(めずら)かな彫刻、染織、仏像、舞楽面、蒔絵もの、熊野懐紙やら消息やらが……応接にいとまもない。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これはただいま途中で手に入れたいぬだ。珍(めずら)しいものだから進物(しんもつ)にする」とおっしゃって、さっきの白いぬを若日下王(わかくさかのみこ)におくだしになりました。しかし王(みこ)は
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
六月の中ばとはいっても、この辺には珍(めずら)しい酷(ひど)く暑い日だと思いましたが、川を渡り切った時分から、戸室山(とむろやま)が雲を吐いて、処々(ところどころ)田の水へ、真黒な雲が往(い)ったり、来たり。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孔子は孔子で、この弟子の際立った馴(な)らし難さに驚いている。単に勇を好むとか柔(じゅう)を嫌(きら)うとかいうならば幾(いく)らでも類はあるが、この弟子ほどものの形を軽蔑(けいべつ)する男も珍(めずら)しい。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「これは珍(めずら)しい者(もの)がやって来(き)たぞ。なにしろ大王様(だいおうさま)に申(もう)し上(あ)げよう。」
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ほう、こいつァ珍(めずら)しい。どこで拾(ひろ)った」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ただ、いままで知(し)らなかった大(おお)きな自然(しぜん)の中(なか)で、なにを見(み)ても珍(めずら)しいので、忙(いそが)しそうに動(うご)いて、すこしもじっとしていませんでした。
山へ帰ったやまがら (新字新仮名) / 小川未明(著)
見かけることが珍(めずら)しくなかった彼女の傍(かたわら)にはいつも佐助が侍(はべ)り外(ほか)に鳥籠の世話をする女中が一人附(つ)いていた女師匠が命ずると女中が籠の戸を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
毎回開塾の当初はそうだったし、時刻どおりに板木が鳴ることさえ珍(めずら)しかったので、今朝の板木当番の正確さだけでも上できだぐらいに思っていたのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と、口子(くちこ)は子供でも心得ているかいこのことを、わざと珍(めずら)しそうに、じょうずにこう申しあげました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
わたしは海面よりもずっと下に生えている珍(めずら)しい植物を見ることができました。それらは森の中の巨木(きょぼく)のように、幾尋(いくひろ)もある茎(くき)をわたしのほうへさし上げていました。
「山城どの。いや舅どの。時にきょうは、これへ参る途中、珍(めずら)かな者に出会うてござる」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日頃、太ッ腹な氏としては、珍(めずら)しく、話すのも汚(けが)らわしいといった激越(げきえつ)ぶりでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
彼の家の近くに住む一商人はある夜紀昌の家の上空で、雲に乗った紀昌が珍(めずら)しくも弓を手にして、古(いにしえ)の名人・羿(げい)と養由基の二人を相手に腕比べをしているのを確かに見たと言い出した。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
その時(とき)ちょうど奈良(なら)から初(はつ)もののうりを献上(けんじょう)して来(き)ました。珍(めずら)しい大きなうりだからというので、そのままお盆(ぼん)にのせて四人(にん)のお客(きゃく)の前(まえ)に出(だ)しました。するとまず安倍晴明(あべのせいめい)がそのうりを手にのせて
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
(おじ様、今日はお前、珍(めずら)しいお客がお二方ござんした、こういう時はあとからまた見えようも知れません、次郎さんばかりでは来た者が弱んなさろう、私(わたし)が帰るまでそこに休んでいておくれでないか。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やあ、こんな花(はな)がここに咲(さ)いているのは珍(めずら)しい。このとこなつは、高(たか)い山(やま)にあるとこなつです。」と、ほかの人々(ひとびと)を顧(かえり)みていった。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この古代独楽(ごま)は、竹生島(ちくぶしま)の宮にあった火独楽(ひごま)と水独楽(みずごま)という珍(めずら)しいものだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坂を登って行く津村は、それらの丘の上の家々から若い女たちがちょっと仕事の手を休めて、この辺に見馴(みな)れない都会風の青年紳士(しんし)が上って来るのを、珍(めずら)しそうに見おろしているのに気づいた。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ほう、これは珍(めずら)しいうりだ。」
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いろいろな珍(めずら)しいものを、できるだけ多(おお)く見(み)たいと思(おも)います。それから私(わたし)たちは、どうなるでしょうか……。知(し)ってはいられませんか?
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もって頭を殴(なぐ)り弟子がしくしく泣き出すことも珍(めずら)しくなかった
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「さてさて珍(めずら)しい刀をみることじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
為朝(ためとも)は、いよいよ珍(めずら)しく思(おも)って
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)